370 :運命夜行 ◆ujszivMec6:2007/12/31(月) 20:45:04
ジリリリーン ジリリリーン
……電話だ。
廊下の電話の音が、オレの部屋まで聞こえてきた。
「……やかましい」
布団を頭まで被って抵抗したが、一向に音が止む気配はない。
「どこのどいつだ、こんな真夜中に……」
さすがに土蔵で鍛錬している士郎までは、電話の音は届いてないだろう。
どうやらオレが出るしかないらしい。
ついに根負けして、オレは布団から這い出た。
廊下で鳴り続けている電話の受話器を取る。
「……はい、衛宮です」
『夜分遅く失礼します。教会の者ですが』
電話の向こうからは女の声がした。
「間に合ってます」
ガチャン、と少々乱暴に受話器を置く。
そのまま部屋に戻ろうと、電話に背を向けた。
ジリリリーン ジリリリーン
「しつこいな、オイ」
再び鳴りはじめた電話の受話器を取る。
「はい、もしもし?」
『夜分遅く失礼します。教会の者ですが』
さっきと同じ女の声。一言一句同じセリフ。
……こりゃ、話を聞くまで何度でもかけ直してくるな。
仕方ないので先を促す。
「……で、アンタ誰だ。こんな夜遅くに何の用だよ」
『貴方、衛宮杏里ね?』
「ああ、オレが衛宮杏里だが」
『話があります。明日にでも言峰教会にいらして下さい』
「おい、結局アンタ誰だ。話って……」
ツー ツー ツー
今度は向こうから一方的に電話を切られてしまった。
「……何だったんだ、一体」
部屋に戻って布団に潜り、今度こそ寝ようと目を閉じた途端―――
カラン カラン カラン
今度は家に仕掛けてある結界の鳴子が鳴った。
「コントじゃねえんだから、勘弁してくれ……」
鳴子が鳴ったということは、家に侵入者が現れたということだ。
さすがに悠長に寝るわけにもいかず、布団から出て周囲を警戒する。
……サーヴァントの気配がする。
その気配を感じた瞬間、オレは転がるように身をかわし、さっきまでオレがいたところに何かが突き刺さった。
「―――っ」
「ヘ、やっぱ狸寝入りだったか。サーヴァントのくせに人間のふりなんぞしやがって」
続いて降って来た人影が、畳に突き刺さった何かを引き抜く。
「だが、サーヴァント同士でそんな芝居が通用しないことぐらい、テメエもわかってるだろ?」
とんでもない勘違いである。
「あいにくとオレはそもそもサーヴァントじゃないんで……なっ!」
タイミングを計って部屋から弾けるように飛び出した。
「ハッ、テメエがサーヴァントじゃないなら、なんだっていうんだ?」
当然のように人影はオレを追って来る。
殺気を纏って突き出される槍のようなものを、無様に這いつくばってかわし、縁側から庭に転がり出た。
「杏里! 大丈夫か!?」
庭に出ると、士郎が木刀を持ってこちらに駆け寄ってきた。
鳴子の音を聞いて、土蔵から飛び出してきたのだろう。
「何とか大丈夫だ、それよりヤツが来る、離れろ!」
「ほう、そっちの坊主がテメエのマスターか?」
人影が庭に躍り出てきた。
「杏里、こいつは誰だ?」
「ああ、どうやらお客さんみたいだな」
庭に出てきたことで、月明かりに照らされたそいつの姿がはっきり見える。
赤い槍に青い軽鎧、青髪、短髪の野性的な男……
……もしかしてコイツが、バゼットのサーヴァントだったヤツか?
なら―――
死神の正位置:士郎と二人がかりで戦いを挑む
運命の輪の正位置:土蔵に逃げ込む
愚者の逆位置:家の外に逃げる
最終更新:2008年01月17日 17:42