218 :もしハサ ◆yfIvtTVRmA:2007/12/19(水) 10:30:33
この窮地を脱しつつ館は維持する。そんな都合のいい策など思いつけもせず
ハサンは確実に追い込まれていった。そしてついに決定的な一撃がバゼットと士郎に
よって与えられた。
ふらふらと椅子に倒れこむハサン、その途端椅子がハサンに触れた部分から崩れ落ち
消滅した。椅子だけではない、壁がモニターが天井がこの洋館を構成する全ての物質が
音を立て消えていく。参加者達に恐怖や悪意を植え付けた奇想奇館はついに完全に消滅
したのである。
残されたのはたったの一部屋しかない小さな小屋。
そこにはバゼットと士郎とハサンがいた。
間桐慎二と遠坂凛がいた。
間桐桜とイリヤスフィールがいた。
そして――――、
「全ての令呪を持って命ず。自決せよ」
ハサンの甘言に踊らされた男は誰よりも早く自分達のそして自分の現在の立場を理解し
最適な行動に移っていた。
そして、それを皮切りに次々とマスター達の声が続く。
「まさかこんなにあっけないとはね。それじゃあ自決しなさいハサン」
「ハサン、お前のマスターである間桐慎二が命じる。自決せよ。今度は上手くいけよ!」
「ごめんなさい、でも自業自得ですよね。えっと自決してください」
「さようならアサシン。結構楽しかったよ。それじゃあバイバイ」
「俺からもだ、自決せよアサシン」
最後にバゼットが凍りついた腕を前に出し、命令を下そうとする。
「ここに全員の意見が一致しました。貴方にはもう選択肢など残されてはいません。
では、私からも命じます。自――」
だがバゼットの命令よりも早くハサンは自らの腕を心臓につき立てた。
やはり現状ではバゼットはマスターの頭数に含まれていなかったのだろうか。
「さようならマスターの皆さん。これであなた達の聖杯戦争はお終いです。令呪も
きれいに使いきりましたし皆さんは私から、私は皆さんから自由の身となりました」
ゆっくりと、だが確実に足元から消えていきながらハサンはマスター達に語りかける。
「私は今回の様な特別な状況下で産まれた存在。今後聖杯戦争が行われたとしても、
もう二度とあなた達やその子孫に召還はされないでしょう。例え私が召還されたと
してもそれは全員とラインの繋がったこの私とは別個の存在のはず。今回の様な行為は
やりたくてもできません。ですからご安心ください」
ハサンは完全に目の前から消え去った。後には何も残ってはいない。最後の言葉は
今まで参加者達を翻弄してきた事と照らし合わせるとあまりにも素直すぎる様にも
感じられる。
これではまるで、ハサンが本当に皆に平等であろうとしていたかのようにも思えてくる。
ハサンの真意は何だったのかは今となっては誰にも分からない。
しかしバゼット達は誰一人犠牲になることなく奇想奇館を脱出できたのだ。
これに比べれば聖杯の事や互いに争った事ですら些細な事に感じる。
誰も口には出しはしない。だがここにいる全員が己の生命の無事に感謝し、その思いを
共感していた。
過去の戦争と同様に第五回聖杯戦争に勝者は存在しない、しかし過去の戦争とは違い
敗者もまた存在しなかった。
それでは最後の主人公をお選びください。(バッドエンド確定選択肢あります)
[選択肢]
イ.イリヤ
ロ.士郎
ハ.桜
二.言峰
最終更新:2008年01月17日 18:33