6 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2007/12/10(月) 22:09:15
朝日が、土蔵の窓から差し込んでいた。
ぼんやりと窓を見つめる。
……そういえば、もうこの窓を開けておく必要って無いのか?
水銀燈はもう帰ってきたんだし。
それに……今の水銀燈には、あの窓はちょっと、手が届かないだろうから。
俺は、強張った身体を立ち上がらせると、ふらつきながらも窓枠に手を掛けた。
「……そうか」
ゆっくりと窓を閉めて、それから背後を振り返る。
「そういや、今日は日曜日だったっけ……」
それは、俺が水銀燈と出会ってから、一週間目の朝だった。
振り返った先には、未だに眠り続ける水銀燈の姿があった。
結局、昨晩遅くに家に帰ってきてから、俺は一睡もせずに土蔵に篭っていた。
いつも通りの魔術の鍛錬……をやっていたのは最初のうちだけ。
水銀燈の事が気になってりゃ、鍛錬に集中できるわけがない。
これまでの反省、これからの思案。
そんなものが綯い交ぜになったまま、気がつけば一夜を過ごしていた。
「結局……水銀燈、目を覚まさなかったな」
振り向いた視線の先、土蔵の中央にしかれたシーツの上に、水銀燈は横たわっている。
教会を去ってから今に至るまで、水銀燈は一度も目を覚ましていない。
揺すっても、声をかけても、全く反応しないのだ。
薔薇乙女《ローゼンメイデン》は、夜中はトランクケースの中で睡眠を取る決まりだという。
ならば水銀燈は、今はただ寝ているだけで、朝になったらちゃんと目を覚ますかもしれない。
こうして朝まで起きていたのは、そのことを期待していたからでもあるのだが……結果として、俺の徹夜は徒労に終った。
水銀燈は、未だに目覚める気配が無い。
それはつまり、この眠りが通常の眠りとは別物だということの証明でもあった。
まぁ、そんなことが証明できてもなぁ、という気持ちがないわけじゃないが。
さて、朝になったからには、衛宮士郎にはやらなきゃならんことがある。
「……朝飯の準備、しないとな」
水銀燈が心配だからと言って、他の事を疎かには出来ない。
のんびりしていたら、朝から腹をすかせた家族たちが目覚めはじめてしまう。
そろそろ仕込にはほど良い時間だろう。
俺は相変わらずふらつく足取りで、なんとか土蔵の扉を押し開けた。
「お、おっととと……?」
やば、立ち眩みが……。
どうやら自分で思っていた以上に、身体に疲れが溜まっているらしい。
やれやれ、直射日光を浴びた途端にこれじゃあ、今日一日が思いやられるな……。
いまいち締まらない身体になんとか気合を入れて、俺は土蔵を離れて台所へと向かった。
その途中で――
最終更新:2008年01月17日 20:42