97 名前: ブロードウェイを目指して ◆bvueWC.xYU [sage] 投稿日: 2006/06/27(火) 15:55:23

 むかしむかし、あるところにおじいさんとおばあさんがおりました。
 おじいさんとおばあさんは仲よく暮らしていました。

 ある日のこと、おじいさんはいつも行っている竹林で竹を取ろうとすると、一本の竹がキラキラとかがやいていました。
 おじいさんが光っている竹を切ってみると、中から何とも小さなかわいい女の子があらわれました。
 おじいさんはおどろいてその女の子を家に連れて帰っておばあさんに世話をさせました。

 女の子を育てるようになってからおじいさんが竹を取りに行くとおなじように中が光っている竹を
 何度も見かけるようになりました。そのたびにおじいさんはその竹を切ってみると、中からたくさんの金が
 入っていておじいさんはそれを家に持って帰っておじいさんの家はお金持ちになりました。

 ふしぎなことに女の子はあっというまに一人前の姿に成長し、
 おじいさんたちはあれこれと女の子に着物を着せたりして名前もかぐや姫と名づけました。

 かぐや姫のウワサを聞いて結婚を申し出る男がたくさんあらわれました。そのたびにかぐや姫は断りましたが、
 中でも五人の貴公子はとくに熱心で、かぐや姫はそれぞれに難題をあたえました。

 「つばめの子安貝、火ねずみのはごろも、龍が持つ玉、お釈迦様の鉢、不死となるための枝を持って来たならば、
 私はその人と結婚するだろう」とかぐや姫は言いました。
 貴公子達はがんばりましたが、誰もかぐや姫のいうものを持ってくることはできませんでした。

 やがて、かぐや姫のウワサは帝にまでおよんで、帝みずからかぐや姫会いに来ました。一目見ると帝はすぐに求婚しました。
 それでもかぐや姫は求婚を受けようとしませんでした。

 八月のある夜、かぐや姫は縁側に座って夜にうかんでいる月を見て泣いていました。
 おじいさんとおばあさんが尋ねると、
 「今まで隠していてすいません。私は月の都の者なのです。前世の宿命でこれまでこの地で暮らしていましたが
 もう帰らなければなりません。次の満月の夜に月の国から迎えがやってくるのです」

 おじいさんとおばあさんはそれを聞いて帝にお願いすると、おおぜいの兵士が満月の夜にかぐや姫のいる家の周りを守りました。
 けれど、天からやってくる月の国の人達に兵士はおびえてしまい、かぐや姫はおじいさんとおばあさんに
 不老不死の壺と二人に宛てた手紙を最後にかぐや姫は月の国へと帰ってしまいました。


「手紙と壺は月の国に一番近いと言われた駿河の山の頂上で燃やされ、その煙は今でも雲の中へ立ち上っている、
 そう言い伝えられています…………。おわり」

「ふ~ん」

 パタン、といい音をさせて本閉じる俺を見ているアルクェイドは、眠そうでもないのにベッドに潜り込んで話を聞いていた。

「何だよ、じっと人の顔見て」

「ん? 途中から何だか真剣に読んでるな~と思って」

「そ、そうだったか? 自分ではそんな風に思ってなかったけど」

 俺はそう言ってもう一度絵本の表紙を見やる。確かに色々と思うところがあったのは事実だ。

「定番なような気もするけど、こういうのもいいのかもな……」

 ある意味最大の関門であった演目の選定もこれでいけそうな気がしてきた。

「志貴志貴ぃ、何の話?」

「今度学校の文化祭で劇をする事になってたんだ。何にも決まってない状態だったけど多分これで決まりだ」

「それって、もしかしてあたしのおかげ?」

「あぁ、ありがとうアルクェイド。そうだ、お前もやってみるか、劇?」

「え、いいの? いっつも学校に来るなって言ってるのに」

「授業中に来なければ俺だって何も言わないよ。それに練習とかは放課後だし、今回は部外者も参加オーケーなんだ」

「やったー! これで志貴と一緒にいれる時間がもっと増えるのね。あたし、頑張っちゃうから」

「ハハ……ほどほどに頼むよ。それじゃ、俺はそろそろ寝るから」

「うん分かった! じゃあ志貴また明日~!!」

 こいつの事だからちょっとの事で大道具とかを簡単に壊しそうで恐いな……。そんな事を思いながら俺はアルクェイドを見送った。

 とにかくこれで八人集まった。とりあえず明日これでシエル先輩に報告しよう。そして俺は床に就いた。

98 名前: ブロードウェイを目指して ◆bvueWC.xYU [sage] 投稿日: 2006/06/29(木) 03:19:33

 真っ黒な海を泳いでるような感覚。これが夢だと認識するのにそう時間はかからなかった。
 波に任せて漂っていると、ドアが俺の目の前に現れた。気がつくと俺は自分の足でしっかりとバランスを取っていた。

 僅かな逡巡の後、俺はドアノブを握って一気に扉を開く。
 するとそこには……

「やあ(´・ω・`) ようこそ、バーボンハウスへ」



「何か…………嫌な夢見たな」

 珍しく翡翠に起こされる事無く俺は上半身を起こす。目は覚めたのだが気分は最悪といってもいい。
 何がバーボンだ。俺は酒なんか飲めないっていうのに。
 さて、馬鹿みたいな夢なんかさっさと忘れて着替えて学校に行くか。シエル先輩に昨日の成果を報告しないとな。





 で、昼休み。昨日のように二人で茶をすすりながらこれからの話をした。
 ただ、昨日と違って先輩の表情は昨日のそれとは違った。その理由として……

「遠野君の妹さんにあのあーぱーが参加するのですか…………」
「あ、やっぱりまずかったですか?」

 そう。この三人、どこをどうやっても顔を合わせれば今にも殺し合いが始まりそうな空気になるのを今更ながら思い出した。
 まったく、何だって仲よくできないのだろうか。

「いえ、遠野君に人選を任せたのは他ならぬ私ですから。これも神の御意思でしょう」

 そう言いながらもがっくりと肩を落とす先輩。やっぱり悪い事をしたのかもしれない。

「まぁ人が揃っただけでもよしとしましょう。でも遠野君、本当にかぐや姫をやるのだったら一つ問題があります」
「え? 何です?」
「配役ですよ。設定上ではかぐや姫とおばあさんを除いてすべてが男役なんです。女ばかりでは配役にムリがあるんじゃないですか?」

「あ、そうか…………考えてなかった」

 今更そんな事に気がついて今度は俺が落胆する番だった。

「でもそれは女性が男役を演じればいいのではないのですか、兄さん?」
「まぁそれでも無理は無い事は…………って秋葉!?」
「ハイ、何ですか兄さん」

 浅上に行っている我が妹が平然とした顔で俺の横で正座をしている。さすがのシエル先輩も目をまん丸にして
 手に持っていたカレーパンを落としそうになっていた。

「何でお前がここにいるんだよ」
「遠野の当主としてやると言った事には最大限の努力は惜しみませんから」

 答えのようなそうでないような答えで話を逸らし、秋葉は会話の主導権を握った。

「かぐや姫のキャストはかぐや姫にその両親となる年老いた夫婦、それに五人の貴公子、そして帝です。
 私の考えとしてはかぐや姫になれなかった女性が残りの配役を担うというものですが…どうでしょうか、先輩?」

 秋葉は挑戦するような、否、勝ち誇ったような目で先輩を睨みつけた。

「なるほど……そういう事ですか。『こんなメンバー如きで主役も張れない女』は余程の格下ってことですか」

「そういう事です。まぁ誰の事を言ってるのかは分かりませんがね……」

「あぁ、そうなんですか……ウフフフフフ」

 フッフッフ……と不敵な笑みを湛えて二人して何やらメラメラとやる気を燃え上がらせている。

「あ、そういえばそれでもまだメンバーが一人足りないよな。最悪一人二役ってのも考えられるけど」

 今いる人数八人に対して九人分のキャスト。これではどうしようもない。

「それにもぬかりはありません。こういう事もあろうかと声をかけておいた人がいるのです」

 俺の呟きに反応して更に鼻高々となる秋葉。我が妹ながらやる時は抜かりないな。

「もうすでに呼んでいます。入ってきなさい」

 そう言ってガラガラと茶道室の入り口が開かれる。
 ドアに立っていたのは…………。


 1.レンだった
 2.晶ちゃんだった
 3.シオンだった
 4.むしろ三人全員が立っていた

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最終更新:2006年09月05日 14:53