739 :371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg:2008/05/01(木) 22:46:59
「こうして腕を組んだりして、強引にでも気を引くしかないんだろうな」
そう言うなり、氷室はぐいっと俺の腕を掴んで……そのまま、自分の両手でがっちりホールドした。
うん、こりゃあ完璧に極まっている。
そう簡単には抜け出せそうに無い……って、そうじゃなくて!
「……ん、ふふ」
「なっ、なにをするんだっ氷室っ!?」
「そういえば、衛宮とこうしてデートするのもこれで二度目だな。
まあ、目的が水銀燈へのプレゼントだというのは少々癪ではあるが」
ツッコミどころ多数確認――!?
デートってなにさ!?
プレゼントってなにさ!?
そもそも俺の質問に答えてないだろソレ!?
あわあわと絶句する俺の顔を、覗き込むように伺ってから、氷室はいたずらっぽく笑った。
「なに、押して駄目なら引いてみろ……その逆もまた然り、だ。
忍ぶ恋、というのも中々絵になるだろうが、ライバルが強力である以上、守りに徹していては勝てないだろう」
「だ、だから一体何を言ってるんだ?」
俺の片腕を占領した氷室は、そのまま顔を近づけてきた。
そして、俺の耳に吐息がかかるくらいの距離で、はっきりと囁いた。
「宣戦布告だ――覚悟するがいい。
衛宮が降参してしまうくらいに、私にめろめろにしてやろう」
……………………うぁ。
氷室の息が吹きかけられた耳元から伝わる熱が、顔に、頭に、全身に広がっていくのがわかる。
なんて絶望的な宣戦布告だろう。
聖杯戦争の最中でさえ、こんなに勝ち目の無い戦いに挑んだことは無い。
なんたって、もう既に手遅れなくらいに、俺は氷室に参っちまっているのだから。
「さし当たっては……そうだな、これが終わったら衛宮の家へ行こうか。
今日は水銀燈は居るのだろう?
色々と挨拶をしておかなければならないからな」
いや、そんなことをいきなり決められても、とか。
水銀燈に会ってなんの挨拶をするつもりだ、とか。
幸福な敗北感に翻弄されている今の俺には、そんなことを気にする余裕などこれっぽっちも無かったのだった。
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最終更新:2008年08月19日 03:50