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648 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/10/26(日) 23:31:01


(独立宗教法人柳洞寺の6ターン目です)
イベントが発生しました。


キャスター/馬鹿っぷるへの制裁

 先日、所属不明の組織に柳洞寺の境内への侵入を許し、第二種警戒態勢を強いている中、諜報部の
外部顧問である黒桐幹也があろう事か夜中に恋人(名前は両儀式と言うそうです)を連れ込み、
朝からチュッチュ、チュッチュといちゃついていた事が発覚いたしました。
 まだ証拠はあがっていませんが、ひょっとすると夜中にハッスルしていた可能性もあります。
 これは諜報部の外部顧問としての責務を忘れた行為であり、厳罰に処する必要があるとの閣下からの
お言葉です。外部顧問も無断で女性を連れ込んだ事を認めておりますし、処罰自体は何の問題もありません。
 処罰として、閣下から5つの提案が出ておりますので、下記の5つのうち1つを選んで処罰を下せば良いかと
思います。
 ただ、外部顧問は諜報部部員から慕われており、あまり厳し過ぎる処罰は諜報部からの反発を招く可能性が
あります。

処罰1:馬車馬のように働かせる(黒桐氏、両儀式氏に24時間完全勤務を命じます)
処罰2:録画した告白の様子を寺内部へ放送する(何故、そんなものが録画されているのかは
    聞いてはいけません)
処罰3:両儀式に寺の警備を命じる(両儀氏へは黒桐氏に責任を持って説得していただきます)
処罰4:黒桐幹也の減給を実施する(選択後、半額から1/10まで選びましょう)
処罰5:両儀式に黒桐+諜報部の警備を命じる(両儀氏へは黒桐氏に責任を持って説得していただきます)


この提案を受け入れた場合の変動は以下の様になります。

A-1:諜報部の警戒態勢が1ターン限定でさらに大幅に強化されます。
A-2:諜報部の士気が+2、柳洞零観の不満度-10、葛木宗一郎の不満度-10、
    両儀式が幕僚になった際、マイナスイベントが発生する可能性があります。
A-3:幕僚に両儀式が加わります(3ターン限定、防衛戦のみ)
A-4:減額幅により、柳洞寺の収入に+されます
A-5:諜報部が3ターン限定で大幅に強化されます

この提案を受け入れない事はできません。


Y-1/馬車馬のように働かせる
Y-2/録画した告白の様子の寺内部への放送する
Y-3/両儀式に寺の警備を命じる
Y-4/黒桐幹也の減給を実施する
Y-5/両儀式に黒桐+諜報部の警備を命じる


661 :Hearts of Lion ◆4wSURDq66Q:2008/10/27(月) 21:44:46


キャスター/交渉成立ね

代表、この資源を元手に内政や研究を進める事が出来ます。
また独立法人柳洞寺は比較的親しい勢力がありませんので、
そう簡単に技術が流出する事はないでしょう。

このイベントによる変動は以下のようになります。
資源40と薬学の基礎研究Ⅰ、戦時体制の概念Ⅰを交換しました。

中立勢力との交渉先を選定してください
(選択)訪問先を選択してください

A/藤村組
B/穂群原学園(弓道部、陸上部、文化部、生徒会)
C/冬木市街(喜多邑茶屋、コペンハーゲン、港、ヴェルデ、メシアン、喫茶店) 
D/深山商店街(花屋、魚屋、骨董店、ス○ス銀行・深山支店、中華料理店・泰山)
E/海外(時計塔、聖堂教会)

F/訪問しない


713 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/10/28(火) 18:19:12


「で、何か言いたい事はあるかしら?」
「この拘束魔術、そろそろ解いて欲しいんですが。膝に石を載せているのとほとんど
変わらないと思うんですけど」

 僕は畳の上に正座し、身じろぎ一つできない体勢で拘束されていた。
 おまけに、重力魔術か何かをかけられているらしく、足がギシギシといって物凄く痛い。

「反省の様子がみられないようね。自分の犯した罪の大きさに気がついていないのかしら?」
「いや、反省はしているんですが」

 半分くらいは八つ当たりじゃないのかぁと思うけれど、口には出さない。

 式とかなり親密な恋人同士のキスをしていた最中に乱入したメディアさんは、ここ数日の
不満もあってか、即座に僕と式を拘束にかかった。
 式はあのシーンを他人に見られたという恥ずかしさが先に立ったのだろう。
 メディアさんの魔術をどこからともなく出したナイフで無力化すると、寝巻き姿のまま
一目散に逃げ出していた。
 その姿は、正に脱兎の如く、と言った感じで、やっぱり式はウサギだよなぁ、と僕は
思ったのである。
 もっとも、学人あたりが見たならば「悪戯がばれた時の猫だよ」と言われるような
逃げ足の速さでもあったんだけど。


「良いこと。昨日、間違いなく坊やに『明日、その子を柳洞寺に連れてきて良い』とは
言ったわよ。
 けれど、幾らなんでも12時を回って今日になった瞬間に彼女を連れ込む人間が居ますか!
 常識を考えなさい、常識を!」

 12時を回ったから式(というか織なんだけど)を連れ込んだのでなく、夜中だったから
事後承諾にしようと思ったのが本当の所なんだけど、やっぱりメディアさんは聞く耳を
持っていないようなので、僕はただ黙っていた。

「だいたい、坊やに客間を与えたのは、そこをラブホテルの一室にするためじゃないのよ!
 一つの布団で一緒に寝て、あまつさえ朝っぱらからあんな濃厚なキスをするなんて。
破廉恥にも程があります!」

 あそこまで濃厚なキスは坊やには10年早いわ! とか、あんな長時間のキスなんて私でも
やった事がないのに! という台詞も口走っている辺り、もはや完全な八つ当たりの気がする。
 しかし、メディアさん、いつから覗いていたんだろう。

「でも、メディアさんも、朝の行ってきますのキスと夕方のお帰りなさいのキスは
毎日欠かさないと聞きましたけど」
「あれはほっぺにするもんです!」

 く、唇へのキスなんて恥ずかしいじゃないの。

 そう言って、真っ赤になって身悶える姿は、人妻だというのに可愛くて、葛木氏はこういう所に
惚れたんだろうなぁ、と僕に思わせるのに十分だった。
 しかしまあ、

「あのー、メディアさん。本当にそろそろ勘弁して欲しいんですが」

 流石に、いつまでも見るわけにはいかないものである。
 足の痺れも限界に近づいているし。


 それから30分ほど経って、メディアさんを探ていた葛木氏が客間に現れたことで、僕は
ようやく解放された。
 僕を拷問している姿を葛木氏に見られたメディアさんが大慌てだったのに対し、葛木氏は
別段普段と変わりなくメディアさんに接したのには本当に参った。
 興味が無いという風には見えなかったので、メディアさんがこう暴走するのは普通の事なのか、
それともこの手の行動を当然と考えているのかのどちらかだと思う。

 メディアさんから事の顛末を聞いた葛木氏が出した答えは、「ルールを侵したのであれば、
それに伴うペナルティを与えれば良い」という事であり、それを受けてメディアさんが出した罰則は、
式を諜報部の警備に着かせることであった。無論、式の分の給料は払われない。
 また、僕もしばらくは諜報部の仕事に専念するように命じられ、こちらも当然の如く反論の余地は
なかった。

 ミスター陳の帳簿も詳細は手付かずのまま、諜報部の再建の最中に第二種警戒態勢の発令と、
色々あってオーバーワーク気味だったし、式と一緒に働けるのは願っても無い事なので悪い事ばかりでは
ないのだけれど、式や橙子さんの説得は大変そうだ。

 まあ、こうなった以上、やるしかないのだが。



【選択肢】現在時刻は8時半。11時から仮の追悼式です。
A:式を探す
 A-1:駐車場に行く
 A-2:柳洞寺の本堂周辺を見て回る 
 A-3:諜報部の部室に行く
B:橙子さんに電話を掛ける
C:追悼式の準備の手伝いに行く
D:部屋にいる

なお、Bは下一桁の合計を6で割り、割り切れれば有給扱い、余りが1~4の場合は欠勤扱い
5の場合は橙子さんにお金を払って欠勤を認めてもらう事になります



894 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/10/30(木) 23:10:14


「まずは橙子さんに電話するか」

 解放された後、体をほぐすために大きく腕を回し、屈伸運動をしながら僕はそう呟いた。
 昨日は服を着たまま寝たため、服は皺だらけ。シャツもよれよれで、お世辞にも良い格好とは
言えないが、本来泊まる予定で無かったので仕方が無い。
 買いに行く暇がないわけではないが、少なくとも追悼式が終わるまでは無理そうだ。

 実のところ、織の持ってきたバッグに僕の着替えが入っているのは知っているのだけれども、
式が居ないのに勝手に式のバッグを漁るわけにもいかず、このままである。
 あの織の事だ。式の下着と僕の着替えをサンドイッチにしているとか、それくらいは平気で
やってそうな気がする。それどころか、替えの下着を用意して、僕のと式のを交互にしている、
という可能性もかなり高そうで、どちらにしても迂闊に触るものではないと思う。
 織らしいと言えばそれまでだけど。

 それと、この服からはさっきまで抱き合っていた式の匂いがして、何となく気持ち良い。
 そんな事を思ってしまうというのも何だか変態みたいだが、恋人の匂いに包まれるというのは、
幸せな気分にさせてくれるものだと思う。

「橙子さん、起きているかなぁ。寝てなきゃ良いんだけど」

 現在の時刻は8時半。伽藍の堂の業務開始時刻は午前9時だから、多少どころかかなり
アバウトな所のある橙子さんでも普段ならば起きている時間なのだけど、今日は全国的に休み
(になりつつある)土曜日である。

『他人が遊んでいる時に仕事なんてしたくないだろ』

 という橙子さんのありがたいお言葉により、伽藍の堂も土日祝日は休みとなっており、
橙子さんがまだ寝ている可能性は十分にある。橙子さんの寝起きは悪いわけではないが、
良くも無いのでなるべくなら避けたい所だ。
 良い話ではないので早く伝えて説得の時間を確保したい、良い話ではないのでなるべく
機嫌の良い時に話したい。
 本来ならば、追悼式が終わって一段落する午後まで待って連絡を入れれば良かったのかも
しれないが、この時の僕は焦っていたようだ。

 客間から本堂を越えて手水の水で喉を潤して朝食代わりにした後、公衆電話に向かい、
伽藍の堂に電話をかける。
 普段、あまり使っていなかったテレホンカードがここ最近は大活躍である。小銭を用意する
手間が省けるのも良いが、金券ショップなどでは結構安く買えるのが良い。
 テレホンカード自体は、意外と皆持っているそうだが。

 一回、二回。三回、四回。呼び出し音は鳴り続けるが、反応はない。
 五回、六回……

『こちら伽藍の堂。本日は……』
「おはようございます、橙子さん。黒桐です」

 寝起きの、露骨に機嫌の悪い声であったため、僕は慌てて口を挟んだ。橙子さんが
言い終わるまで待っていれば、言い終わった後、問答無用でガチャンと切られる姿が
容易に想像できたからだ。

「なんだ、黒桐か。どうした、こんな早くに? 今日は休みだぞ」
「おはようございます。休みの日にすいません」

 幾分、声は柔らかくなったものの、相変わらず不機嫌そうな声であったため、まずは
丁寧に挨拶をする。

「ああ。せっかくの土曜日だというのに黒桐のせいで台無しになった。これは何か
償ってもらわねばならん」
「……橙子さん、ひょっとしてまた何か大きな買い物をしたんじゃないんでしょうね?」

 僕が謝ったのを受けて、橙子さんの声は急に機嫌の良いものになったが、それはそれで
酷く嫌な予感がする。

「なに、古代バビロニアの王が保有していたという剣が売りに出されていてな」

 天と地を別けたと言う伝説の剣だぞ、と浮かれた声で言う橙子さんに対し、僕の気分はどんどん
と悪い方向に向っていく。

「で、その伝説の剣を入手するために幾ら突っ込んだんです?」
「オークションが会員制だったんでな。会員になるための紹介料を払ったらおけらになった」
「意味がないじゃないですか!」

 どうして、この人はこういう事をするんだろうか。

「まあ、会員権自体は無効になったわけじゃない。これはこれで金が成る木と考える事は
できないのかね」
「本業に精を出してください」

 本当にお願いします、という僕に対し、橙子さんは「私はいつも本業に精を出しているが」と
まったく意に返さない返事が返ってきた。
 本当に、何でこの人の所で僕は働いているんだろうか。

「で、結局、いくら突っ込んだんですか?」
「言うと黒桐は真っ青になるぞ」

 まあ、三桁(百万の単位)はいってないから安心しろ、とまったく安心できない事を
いとも簡単に言ってくれた。

「ならば、聞き方を変えます。僕はどうしたら良いんですか」

 決まっているだろう。
 そう言うと、橙子さんは僕が立て替えている代金全てと引き換えで、この会員権を僕に買って
欲しいとの事だった。無論、橙子さんが何か欲しいものがあった際には、僕が代理として入札する事も
条件付きである。

「柳洞寺から、あと3~4週間ほどは柳洞寺の業務に専念して欲しいとのお願いを受けている
のですが、了解してもらえますか? あと、式への依頼も暫く遠慮して欲しいんですが」
「ああ、会員権を黒桐が購入してくれるのならな。あと、欠勤扱いでも良いのならば、だが」

 電話先で、橙子さんが不吉に笑ったような気がした。
 なんか、ドツボに嵌っているような気がするなぁ。



【選択肢】現在の貸付金:40万5638円
A:取引に応じる
B:購入金額の減額を交渉する

Bの場合、下一桁の合計が素数なら成功、それ以外なら失敗です。
なお、減額交渉に失敗すると、橙子さんがレートを引き上げる可能性があります。


132 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/11/02(日) 19:17:27


「橙子さん、僕が幾ら立て替えているかご存知ですか?」

 無謀かもしれないが、僕は一縷の望みに従って値引き交渉を試みた。
 それが藁にもすがる思いであり、所詮藁にすがった所で救われない事は分かっていたが、
僕が立て替えている金額が金額なだけに交渉せざるを得なかった。
 40万5638円。無論これには未払いの賃金も含まれるが、時給千円と考えても406時間。
1日8時間労働として約51日分になり、つまりざっと2ヶ月分の給料に相当する。
 それだけのお金を、得体の知れない会員権と引き換えにさせる事は、幾らなんでも
暴挙というものである。

「さて、幾らだったかな」
「……40万5638円です」
「ふむ、ちょっとした額だな」

 予想の範囲内とは言え、橙子さんの答えはどこか他人事のようであった。

「橙子さん」
「そういきり立つな。
 黒桐、金は天下の回り物というだろう。皆が金を使えば、回りまわって景気も良くなる。
皆が金を使わないで溜めていたら、あっという間に不景気だ」
「ミクロ経済とマクロ経済の話ですか」

 橙子さんが話をそらすためにこの話題を持ってきた事は分かっていたが、僕はあえて
乗る事にする。話を戻した所で、ごねられたら僕には勝ち目はないんだし。

「その通りだ。減税でせっかくの金を国民に渡しても貯蓄に回されるのであれば意味がない。
何故なら、金は使われる事で波及効果を生み出し、好景気を生み出す。
 特に日本には黒桐のように石橋を叩いて、渡れる頃には石橋すら腐らせているような
人間が多すぎる。
 大体、銀行金利が雀の涙の方がまだ多いという世の中なのに、未だに定期預金がメインと
いうのは相当可笑しな国民だ。ATMで2~3回引き出せば、利息なんぞ吹っ飛ぶし、
元本が保証されていてもインフレ率を考えれば目減りするだけだろう」
「ここ最近はデフレの時代でしたから。それに、借金はそれ以上に利息を取られますよ。
付け加えるなら、株式やら外貨取引やらは、どうせ証券会社に向い玉を立てられて
搾り取られるのがオチです」

 僕が言う「向い玉を立てて」というのは先物取引で昔からよくある手で、顧客にAという
商品について一定金額の買い注文(又は売り注文)を出させた後に、証券会社が同じだけの額で
反対側の注文をかける方法である。

 先物取引の場合、まず「先物取引とは何か」を説明しなければならないので、分かりやすさのために
外貨取引を例に出して説明すると、顧客が儲けるためには円高(1ドル=95円)の時に買って
円安(1ドル=105円)の時に売れば、その差額だけ儲ける事ができる。
 所が、向い玉を立てるやり方では、為替相場が「円高に振れる」と証券会社が読んだ場合、
顧客に買い注文を出すよう促し、証券会社は同じ金額だけ売り注文を出す。逆に「円安に振れる」と
読んだ場合は、顧客には売り注文、証券会社は買い注文を出す。
 同じ金額を扱っているので、証券会社は実際の円-ドルを売り買いする事なく、帳簿上でのみ
売り買いの記録をつける事ができ、顧客と証券会社をセットで考えるならば±0でリスクを負わない。
 そして、為替相場が証券会社の予想通り推移した場合、顧客は損をするが証券会社は利益を得る。
 仮に予想が外れて顧客が利益(含み益)を得ている時でも、顧客が現金化させないように話を
持っていき、最終的に大損を出させた状態で取引を終了させれば、証券会社はリスクを負う事なく
大もうけができる。しかも、売買の際の手数料まで手に入るというカラクリである
(詳細はナニワ金融道を参照)。

 証券会社が企業ぐるみで行う詐欺めいた手段であり、露見させるのがかなり難しく、相場で
負けたのかはめられたのか素人には分からないのが一番の問題だと思う。

「何だ、黒桐は投資反対派か」 
「別に反対派じゃありませんよ。ただ、『リスクを犯さない事がリスクになる』みたいに不安を
煽る事で投資を押し進める姿勢に反対なだけです」

 結局の所、現状では騙されても『欲をかいたお前が悪い』という事で終わってしまうので、
そこの意識が変わらない事には何にもしないのが安全だと思う。最終的には「信頼できる人物を
見つける」という話になるんだけど。

「どっちにしても、橙子さんが一人がお金を使った所で、ほかの皆が使ってくれなければ、
ただの浪費で終わるんですが」
「幹也君がお金を使わないからじゃない。幹也君は溜め込むだけで使わないんだから」
「そんな事はありませんよ。僕だって欲しいものはありますから」
「例えば、式の愛とか、そんな所かなー」

 からかう様な、というか実際にからかっているんだろうけど、わざわざ口調を変えてまで言う
橙子さんはすごく機嫌が良くなったようだ。僕をおもちゃにするのはやめて欲しいんだけど、
機嫌が良くなる事自体は悪いことではない。
 だからだろう。からかう橙子さんにストレートに返答したのは。

「そうですね。今朝、式からたっぷりもらいましたけど、式の愛はいくらあっても余るなんて
事のないものですから。ただ、その式の愛に答えるためにも、式と思い出を残すためにもお金が
ある方が便利です」

 愛はお金では買えない。
 それはその通りで式と一緒ならばどんな貧乏な生活でも乗り越えられると思うけど、そういう
生活をさせないのが男の甲斐性なんだと思う。 
 先月、まともな食事にありつけたのは式が食事を持ってきてくれた時だけ、みたいな状況を避ける
ためにも、この辺りはきっちりとしておきたい。

「驚いたわね。幹也君があっさりと式との話をするなんて。それに、朝たっぷりもらったって……」
「告白しただけですよ。式からちゃんとOKの言葉をもらったわけじゃないんですが、
態度はOKだったので大丈夫だと思うんですが」

 メディアさんを怒らせる様なキスをしていた僕たちだけど、まだ式からちゃんと返事をもらった
わけじゃない。式からちゃんとした返事をもらって、ちゃんとした交際を始めたいと思う。

「黒桐。ならばなおの事、お前はこの会員権を買うべきだ」

 再び橙子さんは眼鏡を外した時の真剣な口調で僕に言った。

「この会員権は、ちょっとやそっとでは手に入れられないものだ。
 天と地を別けたという乖離剣。そんなものが出品されるオークションに参加できるのは、
色んな意味で並みの人物では無理で、この会員権をもつ人間は並み以上の人間だと認められた
事になる。
 分かるか、黒桐。この会員権はお前にオークションに参加する権利だけではなく、人脈と地位を
与えてくれるものだ。名家の生まれである式に、生まれながらに地位と人脈を持った人間に
十分対抗できるカードとなるわけだ。
 加えて、いざという時に大いに役に立つ。金ではどうにもならぬ事もあるが、同時に金さえだせば、
何とかなる事も世の中には多い。
 名義変更はこちらでやってやる。黒桐、買え」

 橙子さんのその真剣な言葉に、僕は飲まれたのだろう。気がつけば、最初の条件で買い取る事を
了解していた。
 このカードが本当に役に立つかどうかは、これからの僕の人生次第なんだと思う。
 そして、橙子さんにこのカードを買い取る事を伝えた後、このカードが役に立たなくても別に良いと
思った。

 四畳半の貧乏アパート暮らしでも、式がいてくれれば僕は幸せだと思うし。でも、式を幸せにする
ためには、やっぱり四畳半の生活からは抜け出さないといけないかな。



アイテム:会員権を手に入れました(実際に使えるのは、橙子さんから送られてからです)


【選択肢】現在時刻は9時。11時から仮の追悼式です。
A:式を探す
 A-1:駐車場に行く
 A-2:柳洞寺の本堂周辺を見て回る 
 A-3:諜報部の部室に行く
B:追悼式の準備の手伝いに行く
C:客間に戻る


208 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/11/03(月) 21:02:27


 さて、紆余曲折あったものの、橙子さんからしばらく休むことについて許可を取り付けた後、
僕は駐車場に向った。
 寝巻き姿のまま、荷物も何もかも放り出してバイクに乗って家に帰ったとは思わないんだけど、
式が自分の家に戻るためにはバイクを使う以外の方法はちょっと考えられず、駐車場にバイクが
ある事を確認できれば、式は柳洞寺の境内にいると思って良いと思う。
 逆に言えば、バイクが無ければ問答無用で帰宅したという事になるんだけど。

 山門をくぐり、石段を降りる。
 いつもであれば、山門には佐々木さんがいて、軽く談笑してから移動するんだけど、今日は無人だ。
 昨夜は夜という事もあり、アーチャーさんの事ばかり考えていたが、普段居る人がそこに居ないと
いうのも、ひどく違和感を感じるものだ、と僕は思った。
 山門にいて当たり前だった佐々木さんが居ないというだけで、柳洞寺にはぽっかりと大きな穴が
開いたような気がする。
 実際、防衛戦力として考えても、防諜、警戒要員として考えても佐々木さんの抜けた穴は大きく、
それを必死に埋めている最中ではあるのだけれど、そういう理論的な話より何より、佐々木さんの
姿が見えないというだけで、大きな不安を抱く。
 失って始めて気がつく存在の大きさというべきか。

「おや。おはようございます、黒桐さん」
「ああ、おはよう。一成君。朝から精が出るね」

 石段の途中では、一成君が箒を持って石段の掃除をしていた。
 上から順に丁寧に掃いたのだろう。中央にはかなりの砂や土がたまり、盛り上がっていた。

「そうか、遺骨の代わりにするんだったね」
「ええ。アーチャーさんの骨は無いので」

 軍隊において間々見られる方法なのだが、遺体回収ができない場合、その周辺の土をもって
遺体の代わりとする事がある。
 時々、TVなどで見られる白木の箱に入った石や土(大概は「うちの息子がこんな石やと
言うんか!」みたいな批判的な内容ではあるのだけれど)は、まさにそれで今回もそれに
習ったものと言う事ができるだろう。

 淡々と作業をする一成君だが、内心は色々と思う所があるのだろう。箒もどこか雑に見え、表情も
決して良いものではない。
 僕は織によって救われたが、彼は自分で解決しなければならない。
 僕のような衝撃的な光景を見ていないとは言え、自分で乗り越えるというのはそれなりの苦労を
伴うものだろう。
 ただ、彼には零観さんという兄がいて、葛木宗一郎氏という兄代わりの人もいる。僕が織のおかげで
乗り越えられつつあるように、彼もきっと、家族の力で乗り越える事ができるだろう。
 そう思いつつ、「また後で」と言って僕は階段を下りた。

 急な階段を一歩一歩慎重に下りていく。
 降りた先の駐車場には、橙子さんのバイクがぽつんと置いてあり、式がまだ帰っていない事を
確信させた。

 うーん、どこに居るのかなぁ。



【選択肢】現在時刻は9時15分。11時から仮の追悼式です。
A:式を探す
 A-1:柳洞寺の本堂周辺を見て回る 
 A-2:諜報部の部室に行く
 A-3:客間に戻ってみる
B:追悼式の準備の手伝いに行く
C:メディアさんを探して式の居場所を尋ねる


298 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/11/06(木) 22:22:13


 バイクがまだ駐車場にある事を確認した僕は、一度諜報部の部室に行って見る事にした。
 第二種警戒態勢中につき、今日も諜報部員は諜報部としての通常業務に当たっている事、
諜報部の部員はそれなりの人数がいるため、式を目撃した子がいるんじゃないか、と期待した
ためである。
 あとは、僕が居ない時に彼らがちゃんと業務をやっているかどうかを見る、というのもある。

 部長や霧島さんを始めとする諜報部の部員たちが不真面目だと言う気はないのだけれど、彼ら、
彼女らはどうも現状を理解していない。
 現在の諜報部は未だ再建の途中であり、侵入者を撃退できたのも幸運のなせる業だ。

 もし、三枝さんが柳洞寺に偵察に来ていなければ
 もし、僕が運良く侵入者を発見できなければ

 第二種警戒態勢を敷いていたのは、侵入者の来襲について十分な確証があったからではなく、
どちらかと言えば諜報部の引き締め策の一環であったし、これは僕のミスでもあるのだが、
夜間の警備スケジュールについては後手後手に回り、僕の努力だけでカバーする状況だった。
 侵入者が機密情報の奪取を目論んでいたのか破壊工作を目論んでいたのかは分からないが、
最悪の場合は各種機密情報が奪われ、研究施設が破壊されていた可能性もある。
 それに、そもそもどこから侵入してきたのかが未だはっきりしていない。
 正面の門は佐々木さんが万全の体制で備えていたし、小数の侵入を警戒してメディアさんが
設置していた鳴子が鳴った形跡もないとの事だ。
 最も詳しい情報を握っていると思われる佐々木さんは絶対安静の状態だし、推測で語るには
分からない部分が多すぎる。
 そういう所を全て無視して、ただ遠坂陣営に一泡吹かせたと浮かれているように僕には見える
のだ。
 まあ、メディアさんが僕のこの発言を聞いたなら、「朝っぱらからいちゃついていた貴方が
一番浮かれているわよ!」と怒るだろうけど。


「おや、おはよう。黒桐殿」
「おはようございます、零観さん」

 降りた石段を再び上り、山門を潜った辺りで零観さんが居た。手に持っているのは

「それは、蓮ですか?」
「うむ。柳洞寺は一応、仏教の流れを汲む寺でな。何の花にするか悩んだが、やはりこれが
宜しかろう」

 零観さんは、昨日とはうってかわって、いつも通りの朗らかな顔を見せた。
 仏教において蓮の花は、釈迦が蓮華(れんげ、蓮の花の事)の上で瞑想する姿が描かれ、
極楽浄土の象徴とされる。意外なことに葬式の花として連想される菊は西洋で墓参りに
用いられる風習が日本に伝わった結果で、日本古来からのものではない。
 冷静に考えれば、縁起を気にする日本において御紋章にまでなっているのだから、菊が死を
連想する花というのは後付けのものと分かるんだけど、一度ついたイメージは中々払拭できない
と言った所だろうか。

「蓮は泥の中から這い出でて、蓮華のような綺麗な花を咲かせる。人はかくありたいという願いも
込めておこう」

 そう言うと、零観さんはかかと笑った。
 その笑顔はいつも通りの零観さんで、昨日のような悲痛な表情はちょっと連想できなかった。
 ひょっとするといつも通りの顔を見せようと努力しているだけなのかもしれないけれど、あえて
いつも通りの顔を作る事で、いつも通りにしようとしているのかもしれない。
 どちらにしても強い人だと思う。

「所で、諜報部には行かなくて良いのかな」
「え? 今から行くつもりですが」

 わざわざ言うと言う事は何かあるんだろうか。
 僕が不思議そうな顔をしていると、零観さんはまた、かかと笑った。

「いやいや。今、諜報部に行くと中々面白いものが見えますぞ」

 そんな零観さんの言葉に、僕が期待と不安を胸に抱きながら諜報部に向うと、確かにそこには
僕が予想だにしない光景が待っていた。


【選択肢1】黒桐が見た光景は、式が
A:寝巻きのままで
B:穂群原学園の制服を着て
C:黒い羽のついた黒いドレスを着て

【選択肢2】誰と
D:キャスター
E:蒔寺
F:葛木宗一郎
G:諜報部の面々

【選択肢3】何した
H:議論していた
I:写真を撮られていた
J:組み手をしていた


なお、選択肢1つにつき5票で有効とします(通しではなく、個別で判定)


454 :黒桐幹也の結婚 ◆mGFGwAwBPU:2008/11/09(日) 19:02:38


 式が葛木氏と組み手をしている。

 言葉が無い。
 何でこんな所に式がいて組み手をしているのか。
 しかも、白のインナーブラウスに黒のドレス。あと、パニエだったかな? ふんわりと膨らんだ
スカートに、背中には黒い羽が縫い付けて……と思わず糖を分解して乳酸に変える例の細菌を
取りたくなる美しさと格好。黒いブーツと黒のカチューシャも可憐だ。
 そして、五月蝿い、俺だって好きでこんな格好をしているんじゃないんだ。こっち見るな、と
言わんばかりのきつい目線。

 というか、恥ずかしいのか。久しぶりに着る洋装があのドレスで。
 式は足技はあまり使わないんだけど、それにしても蹴り上げる角度がいつもより低い。その分、
腕の動きはいつもの倍くらいで連続的に流れるように、畳み掛けるように仕掛けている。

 だとしたら、まずい。式もまずいが相手の葛木氏もまずい。
 式のあの美しさなら、妻以外に興味は無いという堅物の葛木氏と言えども、間近で見る式の
美しさに思わず見惚れてしまう可能性がある。
 そうなると、かなりまずい。怒り狂ったメディアさんによって、柳洞寺ごと式も僕も葛木氏も
異世界に送られてしまう。


 と、思っていたんだけど

「ああ、宗一郎様! その凛々しいお姿、素敵です♪」

 組み手をしている二人の姿(厳密には、組み手をしている葛木氏の姿)をデジカメに収めようと、
パシャパシャと撮影しているメディアさんの姿があった。

「ちょっと、そこの女子に男子。カメラなんか出すんじゃありません! 宗一郎様のお姿を撮って
良いのは私だけなのよ!」

 後ろに目があるのか、諜報部の女の子が携帯を取り出すと瞬時にキッと睨みつける。
 何をどうやったのか、その子が構えた瞬間に携帯がボンと白い煙を出して爆発したりで、本当に
容赦がない。

 あ、葛木氏が一旦距離をとり、ずれた眼鏡を指で上げた。葛木氏でもやはり恥ずかしいのか。

 式はと言うと、流石に眼鏡を直している時は何もしなかったものの、葛木氏が再び構えをとった
瞬間に飛び込む形で組み手を再開させた。

 式の表情にばかり注目していた僕だが、冷静にみるとこの二人の組み手というのは酷く恐ろしい。
 式はナイフで点を突く姿ばかりが強調されるが、それを可能にしているのは驚異的な身体能力で、
今も縦横無尽に駆け回っている。あの、ゴシックテイストな衣装を着て、というのがシュールでは
あるのだけれども。
 一方の葛木氏も、その式の縦横無尽の動きに素早く対応する。掴むときは掴み、離れる時は
離れる。その行動に躊躇はなく、イチかゼロかで反応する即応式のコンピューターのようですら
あった。
 寸止めではあるが、あの式が何発か良いものをもらっている所を見ると、只者ではない。
 葛木氏を見たときに最初に感じた『全身を絞り上げ「余分」という言葉をどこかに置き忘れた
ような』というイメージは、この組み手を見てさらに強まり、切れすぎる日本刀を思い浮かべる。
 もっとも、その葛木氏もスーツにネクタイで組み手をしているため、冷静に見ればかなり
シュールな光景になっているのだが。

「ああ、宗一郎様、素敵です!」

 まあ、メディアさんはそんな光景をまったく疑問に思うことなく、やはり縦横無尽に駆け巡って
葛木氏の姿を写真に収めており、今朝のあの不機嫌な様子など微塵も窺えないのであった。



「お疲れ、式」
「み、幹也。何でここに!?」

 組み手がひと段落し、メディアさんが「宗一郎様、お汗を拭いてください」とタオルを
差し出したのを見て、僕も式に声を掛けた。
 先ほど霧島さんが「黒桐さん、これどうぞ」とタオルを渡してくれたので、僕の手にも
タオルがあるので、それを式に差し出す。
 にしても、葛木氏と組み手をしていた時も鋭い視線で威嚇していたから、僕が見ているのは
気付いていたと思ったんだけど。

「く、来るな! 幹也」
「?」

 僕が一歩近づくと式は一歩下がる。いつも通り、式が「人畜無害」という笑顔が自然と
出てしまうため、僕が威嚇しているはずはないんだけど、式はまるで何かに怯えたように
じりじりと下がる。

「どうしたの? 式」
「い、今の俺は汗臭いから近寄るなって言っているんだ!」

 ああもう、可愛いなぁ。


【選択肢】
A:思わず抱きしめる
B:自制する

 なお、Aの場合、奇数ならメディアさんの怒りが再発します(言うまでも無く、後のイベントに
悪い影響が出ます)。


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最終更新:2008年11月14日 00:32