396 名前: 371 投稿日: 2006/08/07(月) 08:19:22

「まきますか? まきませんか?」

 紙にはそう書かれていて、その下に小さく「どちらかに丸をつけてください」と付け加えられていた。

「なんだこりゃ?」

 首を捻りつつもう一度文面を読み直してみるが、書いてあることはそれだけだった。
 なにかのアンケートだろうか?
 それにしては質問内容がわかりにくすぎる気がするが。

「隙間に挟まってたのか?」

 トランクを持ち上げた途端に落ちたのだから、多分そうなのだろう。
 念のため、トランクをひっくり返したり振ってみたりしたが、それ以上は何も起こらなかった。

「これ以上は手がかりは無し、か」

 もっとも、現時点で手がかりと呼べるものは皆無なのだけれど。
 謎のトランクはいまだ持って、謎のトランクのままだった。

 こうなったら、一度開けてみるべきなのだろうか?
 中に身分がわかるものが入っているかもしれないし。
 そう考えて、トランクの止め金に手を伸ばした。

「あれ」

 開かない。
 止め金は固く固定され、カチャカチャと音を立てるだけだった。
 どうやら鍵がかかっているようだった。
 当然といえば当然か。
 しかし、開かないとなると、余計に中身が気になってくる。
 落とした誰かには申し訳ないが、俺にだって好奇心というものがあるのだ。

 ——こうなったら最後の手段、こいつを『解析』してしまおうか。
 いやしかし、玄関先でそんな魔術行使をしていたら誰に見られるかわかったもんじゃない。ここは一度家の中に持っていってから……。
 そんなことを考えながら、指で金具をなぞっていると。

「……痛っ!」

 指先を、金具の尖った部分に引っ掛けてしまったらしい。
 ぷくり、と指先から赤い血の玉がにじみ出る。
 慌てて口に咥えたが、一、二滴ほど零れ落ちて——

 ——アンケート用紙の「まきますか?」の上に、赤い点をつけてしまった。

397 名前: 371 投稿日: 2006/08/07(月) 08:20:17

「あ、やばっ」

 慌てて服の袖を押し付けるが、既に遅し。
 赤い点はしっかりと、紙に染み込んでしまっていた。

「しまったな、こりゃ擦っても滲むだろうし……」

 アンケート用紙を手に、少々途方にくれていると……。

 カチリ。

「……え?」

 トランクの止め金の部分から、音が聞こえた気がした。
 例えて言うなら、鍵が外れたような音。

「そんな、バカな」

 ひとりでに外れる鍵などあるはずが無いし、あったらそれは欠陥品だ。
 欠陥品にしたって、俺が見つけた途端に鍵が外れるなど、出来すぎとすら言えない。
 つまり、これは偶然ではなく必然。
 そしてこんな必然を引き起こすモノといったら、それは……。

「魔術……!?」

 咄嗟にもう一度、周囲を見回す。
 幸いなことに、相変わらず人影は無い。
 それを確認すると、俺はトランクを引っ掴み……。

α:思い切って中を見てみることにした。
β:人目につかないように、土蔵まで運び込んだ。
γ:その中身を『解析』しようとした。
δ:師匠である遠坂の部屋に駆け込んだ。

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最終更新:2006年09月03日 17:05