90 名前: 381 ◆3WmQZKDzxM [sage] 投稿日: 2006/11/21(火) 12:43:43
「――――その……マスターってのは一体何なんだ?」
真っ先に浮かんだ疑問を口にする。正直、自分が置かれている状況を理解出来ない。
学校の校庭で、剣と魔法の世界よろしく、
斬ったはったの殺し合いをしてる場面を見てしまい、
その片割れに見つかり殺されて、何故か生きていたと思ったら、又殺されそうな所に出てきた少女は偉そうで……
ああ~訳わかんねぇ、などと頭の中が軽いパニックになっている事などお構いなしに少女は宣告する。
「――――そうか。ならば死ね」
もはや不愉快そうな表情も消え、殺意すら感じられない。
殺意が無いのは当たり前。
それは蟻を踏み潰す人が、一々殺そうなどと考えぬ、
埃を払うよう時に力を込めぬ、
息を吐き出す様に当たり前の『仕草』でしか無いのだから当たり前だ。
虚空に手を翳し、唱える。
「――――王の財宝」
虚空(ソコ)から取り出した物は一振りの剣。
豪華な装飾など無い、だが存在自体が人に美しいと思わせる程の存在。
それは現代に有り得ぬ伝説(ゲンソウ)のモノ。
これは魔術ですら無い。いくら知識の無い俺にだって解る。
――――――――ソレハデンセツ
目の前のナニカが行ったのは一体何なのか。
――――――――――ソレハゲンソウ
少女がその剣を天へとかざし、俺へ振り下ろ―――――さなかった。
「……犬風情が何のつもりだ。」
先程まで少女を見て笑い転げていた男が、
鬼気迫る表情で少女の喉元へと紅槍を突きつけていた。
「貴様、それをどこで手に入れた?
それはお前が持っていて良いような物じゃねぇ」
俺へ向けていた殺気などは微風にも満たぬ様な、敵意を少女へ向ける。
返答次第では即座にその槍が少女へと穿たれるだろう。
だが少女は、そんな男の様子など気にした風も無い。
「言葉を慎め。何故、我が犬風情に答えねばならん。頭が高いぞ。」
突如、虚空から剣が射出される。
それは男の槍と比べれば各段に遅く、何より格が低い。
男は獣の様なバネで、一気に数m程距離を取った。
「この剣を知っている、か。
そしてその朱い槍、その俊敏性。おそらくクランの犬辺りか……」
少女の言葉を聞き、男の顔がより一層険しくなる。
「―――――どこのどいつか知らねぇが、テメェは此処でリタイアだ。」
91 名前: 381 ◆3WmQZKDzxM [sage] 投稿日: 2006/11/21(火) 12:46:43
男にとっては先程の俺とのモノは『戦い』では無く、
ちょっとした悪戯程度の事だったのだろうて分かってしまう、そんな動きだった。
離れた場所からで尚、男の動きすら目で追うのがやっとなのに槍など見える訳がない。
一撃一撃が必殺足り得る至高の技。
それを必殺足らしえぬ、極上の技。
目の前で繰り広げられる異形の戦。
朱槍が、寸分の狂い無く少女の心臓へと吸い込まれ、
それを剣の腹で僅かに起動を変えながら体を半分にする事で、
最小限の動きでかわし反撃へと転じようとするが、
男の槍は放たれた勢いを殺さずに動きを直進から円運動を変え、
その槍の柄が少女の脇腹へ叩き込まれる寸前に男との距離を縮め、槍を剣で受け止める事により防ぐ。
この間、僅か一秒にすら届かない。
やがて拮抗している様に見えていた戦いも次第に優劣がつき始める。
少女が押され始めたのだ。
一撃の速さ、重さ、精度、技。
あらゆる点で男が勝っているのだから当然である。
むしろここまで互角に渡り合っていた女性を賞賛すべきである。
やがて少女は、男の槍を受けきれなくなり、バランスを崩す。
「さぁ、これで終いだ、嬢ちゃん!!」
その機を逃さんとトドメを刺すべく男が追い討ちをかける。
「――くっ!」
それでも尚、槍を捌く絶技には閉口せざるを得ない。
だが少しずつでは有るが、少女の体に傷が付き始める。
男の槍は勢いが衰えるどころか、速度を更に増している。
―――ドクンッ
このままでは、目の前の少女が■■れる
――――ドクンッ
それは許容出来ぬ
―――――ドクンッ
それは認められぬ
――――――ドクンッ
『少女を助けなければ』
そう思った時には既に遅かった。
頭が反応した頃には、既に男の前に立ちはだかっていたのだから。
「―――何のつもりだ、小僧。」
そばに居るだけで呼吸すら困難な程濃密な敵意を向けられ、人の生存本能が叫び出す。
逃げろ、と。
だが俺は引かない。
人としての俺は当の昔に■んでいるのだから。
今いるのは正義の味方を目指す衛宮士郎(バカヤロウ)なのだから、目の前で少女が殺されそうになっているのを見逃せる筈がない。
「正直何がなんだか分からないけど……目の前で人が殺されるのは見逃せないだけだ。」
これで後には退けない。目の前の化け物に戦線布告をしてしまった。
92 名前: 381 ◆3WmQZKDzxM [sage] 投稿日: 2006/11/21(火) 12:50:43
「……クックック、フハハハハハハッ」
突然男は破顔し、気持ちの良い笑い声をあげる。
「いやいや、参った。サーヴァントを守るマスターか。
絶望的な戦力差を認識しながらも女を守る為に起つ。嬢ちゃん、なかなか良い騎士に当たったじゃねぇか。
テメェ気に入ったぜ。名前を聞かせて貰えるかな?」
警戒をしながらも衛宮士郎だ、とだけ答える。
「……士郎、か。良い名だ。
毒気も抜かれちまったし、元々偵察しろってマスターの命令だ。今日はこの辺でお暇させてもらうぜ」
先程までの緊張感が嘘のような、あっけらかんとした男の態度に戸惑う。
しかも何故か気に入られたようた。
だが少女はそれが気に食わないらしい。
「ここまで好き放題やっておいて、逃げる気か?逃がすと思うか?」
だが男は悪びれた様子もなく答える。
「ああ、逃げさせて貰うぜ。
全快の嬢ちゃんならいざ知らず、魔力もろくに無い状態でこれ以上無理は出来ねぇだろ?
それにもう一体のサーヴァントがこっちに向かってきてるみたいだしな。
その剣の事は次に聞かせて貰う事にする。」
男は軽く手を挙げ、まるで友人とでも別れるかの如く飛び去っていった。
「……ちっ、気付かれていたか。
これも貴様のせいだぞ、雑種!
お前がちゃんと召喚さえしていれば、犬如きに手こずりなどしないものを!」
男が去った途端に少女は俺に噛みつく様に吠える。
罵詈雑言、あらゆる暴言を浴びせられる。
「全く、酷いマスターに当たったものだ。
運は良い方だと思っていたが、生前に使い果たしたとみえる。
こんな状態でもう一戦やらねばならんか……」
少女が物騒なことを口走る。
おそらく、先程去っていった男が言っていた『サーヴァント』という存在だろう。
「……来たか」
そこに現れたのは同級生で密かに憧れていた遠坂 凛と……
選択肢
◎:灰色の巨人だった。
○:鎧を身に纏った金髪の少女だった。
▲:目のやり場に困る服装で長髪の女性だった。
△:仮面を被った不気味な男だった。
×:侍だった。
この選択肢でマスターとサーヴァントの組み合わせが決まります。
投票結果
最終更新:2007年04月04日 22:28