651 名前: 371@銀剣物語 ◆snlkrGmRkg [sage] 投稿日: 2007/05/16(水) 23:46:15
「耳を貸す必要はあるまい、真紅」
聞こえてきたのは、俺にとって非常に聞き覚えのある――が、決して聞きたかったわけじゃない声。
なんだよアイツ居たのかよ。
「――――!?」
突如響いたその声に、薔薇水晶が弾かれたように視線を空へ向ける。
同時に聞こえてくる空を裂く風切り音。
左右から交差する軌道で、二本の剣が薔薇水晶に迫る!
「くっ!!」
慌てて地面を蹴る薔薇水晶。
一瞬前まで立っていた場所を黒い刃が、続いて白い刃が薙ぎ払う。
……夫婦剣・干将莫耶。
俺も良く知っている、二本一対のその剣は、そのまま交差すると大きく旋回し、再び吸い寄せられるように一箇所に帰っていく。
そして、その帰っていく先に立っているのは……。
「ほう、避けたか……まあ、声をかけてから投げたのだから、当然か」
二本の剣をなんなく受け止めながら、アーチャーは何の気負いもなく庭園に現れた。
……そこら一面薔薇の花だというのに、場違いにならないってのは、男として、そして俺の将来としてどうなんだそこんとこ。
「あなた……」
「アーチャー!」
同時に声を上げる薔薇水晶と真紅。
アーチャーはチラリと薔薇水晶に視線を向けるも、すぐに興味を失くしたかのように、真紅のほうに向き直る。
そして、いかにもやれやれ、という仕草で頭を振って見せる。
「真紅。
あんな言葉の誘惑に動揺するなんて君らしくないな。
『人間などよりずっと高貴な存在』の自称が泣くぞ?
まあ、君のすまし顔以外の表情が見られたのは僥倖だったが」
「あ、貴方、見ていたの?」
真紅の顔が驚きと羞恥に染まる。
対してアーチャーは涼しい顔で、そうそうその顔だ、と満足そうに頷いた。
「なに、姉妹水入らずの語り合いに水を差すのも悪いと思ったのだがな。
マスターがあんな甘言に容易く心動かされそうになっていたので、思わず身体が動いてしまった。
いや、我ながら行き過ぎた忠義心だ」
「む……」
白々しいことこの上ないが、真紅は睨みつけるだけで、何も言い返せない。
「士郎……あれが真紅のミーディアムね?」
その光景を見て、今まで静観していた水銀燈が、チラリと俺に視線を向ける。
「ああ。疑ってたわけじゃないが、あいつの話は本当だったってことだ」
「ふぅん」
水銀燈は、初めて目にしたアーチャーに対して――
α:「ふん、なんだかいけ好かない男だわぁ」
β:「強そうね。真紅にはもったいない感じぃ」
γ:「……なんかあの男、士郎に似てなぁい?」
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最終更新:2007年05月19日 23:39