301 名前: 381 ◆3WmQZKDzxM [sage] 投稿日: 2007/09/18(火) 02:21:57


◎:黄金の少女

「――天地乖離す開闢の星エヌマ・エリシュ」
 突然現れたその声と共に、世界は切り裂かれた。

――Interlude out――

「アーチャーっ!!」
 今まさに放たれようとするアヴェンジャーの宝具を阻まんとアーチャーに命令する。
「わかっている。往くぞ、エア」
 それは幾千万の宝具の中で唯一アーチャーの相棒と呼べる宝具。それを傍らに弓兵は駆け出す。
「――天地乖離す開闢の星エヌマ・エリシュ」
 今まさにその身に宿す幻想を再現せんと、宝具の力を解放する。
 互いを滅ぼそうと黒と黄金がぶつかり合う。しかし絶対の自信を以て放たれた一撃は闇を打ち砕くことはなかった。
「――くっ、バカな!? エアが押し負けているだとっ」
 正直、目の前で起きている事が信じられない。心臓を貫かれたり、生き返ったりと今日はふざけた体験を幾つもしてきたが、これはそれに勝るとも劣りはしない。
 かつて世界を空と大地に分けたとされる宝具が軋みをあげている。
「――魔力不足がここまで響いているのかっ」
 アーチャーは悔しげに表情を歪ませる。それに併せるように徐々に光が飲み込まれていく。
「ライダー、貴女の宝具チカラを見せなさいっ!」
 遠坂の声に反応するように、ライダーは――己の首を掻き切った。
「お、おい、遠坂――」
しかし遠坂の表情に不安など一切なかった。ならばそれを信じるしか無いだろう。
 すると切り裂かれた首から噴水のように噴き出した血は、重力に従わずに空間に留まった。そしてそれは見たこともない複雑な陣を描き出すと、そこから光の奔流が産まれ出でる。
 それはアヴェンジャーへと迸り、眩い光の中へとアヴェンジャーの姿は消えた。

302 名前: 381 ◆3WmQZKDzxM [sage] 投稿日: 2007/09/18(火) 02:27:44


 やがて光が消えると、先ほどの輝きにも負けぬ程に輝く者が居た。
 それは空想上の存在モノであり、御伽噺の中の生物モノ。現へと姿を表したのは天馬ペガサスだった。
 しかしその姿は本来のものではない。体中に傷を付け羽根も焼け焦げている。しかし天馬は尚美しかった。
 傷はおそらくはアヴェンジャーの宝具を打ち破った代償であろう。

「へー、二対一とはいえアヴェンジャーに傷を付けるなんて大したものね」
 己がサーヴァントを失った筈の少女は謳うように告げた。未だに悪夢が存在すると……
 出鱈目にもほどがある。アーチャーの振るった宝具の出力は最強クラス、それに加えてライダーの攻撃も極めて強力である。
 アーチャーに至っては対界宝具であり、人間が――例えそれがサーヴァントであろうと、抗えるモノでは有り得ない。 闇夜から浮かぶ様に現れたアヴェンジャーの姿。それは傷付き、血に濡れた鎧は半ば砕け、脇腹は抉れていた。
 それでも復讐者は表情すら変えずに立っていた。

303 名前: 381 ◆3WmQZKDzxM [sage] 投稿日: 2007/09/18(火) 02:32:06

「アヴェンジャーに傷を付けたご褒美に、今日は見逃してあげるわ」
 ニコリと微笑み、少女は背を向けた。
「――――見逃しすてすって? 状況を分かっているの、アインツベルン。
此方は二人のサーヴァント。そっちは瀕死のサーヴァントが一体。どちらが有利かは一目瞭然でしょう」
 しかし少女は余裕を崩さない。
「……もう一度だけ言うわね。今は見逃してあげるわ、ミス遠坂」
 そういって目を細め、口元を歪める。それは悲痛にではなく、愉悦にである。
 そして「アヴェンジャー」と名前を告げた瞬間、復讐者の周囲に在った闇が彼女に吸い込まれる。
 すぐに闇が晴れた。そしてそこには、元の恐ろしくも見惚れるほどに美しい姿。その肌には擦り傷一つ残ってはいなかった。
「何よ、あれ……復元?吸血鬼だってあんな出鱈目な回復しないわよっ」
 先程まで浮かべていた笑みを消すことすら忘れ、頬をひきつらせている。
 しかもアヴェンジャーはあれ程の宝具を放っておいて、魔力が尽きた様子も無い。
 ライダーはどうか分からないが、アーチャーは己の存在を維持する魔力しか残ってはいない。平然を装ってはいるが、とても戦える状態ではない。
 呆然と立ち尽くす俺達を気にした風もなく、少女は去っていった。

386 名前: ◆3WmQZKDzxM [sage] 投稿日: 2007/09/20(木) 22:35:50


 じんわりとかいた汗が、冷たい夜風でひやされる。火照った体にはそれが心地よかった。
「たす……かったわね」
「――あぁ」
 緊張が解けたせいか、腰が抜けそうになる。だがそんな姿を、少なからず憧れていた女性に見られまいと踏ん張る。
「クソッ! 我の力が万全ならば、あやつらを跡形も無く吹き飛ばせたものをっ」
 地団太を踏む最古の王、ギルガメッシュ。この敗北は、彼女のプライドを酷く傷付けたのだろう。今にもアヴェンジャー達を追いかけて行きそうな勢いだ。
「ちょっとアーチャー、アレで全力じゃないって言うの?」
 遠坂の反応も当然であろう。先程のアーチャーの宝具は、小さなビルならば吹き飛ばせる位の威力。宝具としてはAランクに迫るものであったのだから。
「当たり前だ! エアはかつて世界を斬り裂いたのだ。あの程度な訳があるまい」
「しかも秘蔵の宝石一つ使っても、魔力が足りなかったって事?どんだけなのよ、全く」
 遠坂はギルガメッシュの宝具の余りの燃費の悪さに呆れかえる
 本当ならば、俺とパスが通っていないアーチャーは、魔力不足により宝具の使用は不可能だった。だがライダーを助けるためという事もあったので、アーチャーへの魔力補給に遠坂が長年かけて魔力を貯めていた宝石を使ったのだ。
 遠坂は、平然と他人の魔力を使えるのか不思議がっていたが、アーチャーの「我は王だからな。雑種共の献上品を使えて当たり前だ」発言で片付けられていた。
「ところでライダー。アヴェンジャーの正体分かった?」
「――はい。ある意味、聖杯戦争に最も相応しい人物かもしれませんね。
凛は聖杯と聞いて――この場合は伝説にある方ですが、真っ先に思い浮かぶ人物は誰ですか?」

387 名前: ◆3WmQZKDzxM [sage] 投稿日: 2007/09/20(木) 22:37:29


 おそらく、大抵の人は二人の人物を思い浮かべるだろう。一人はイエス・キリスト。そしてもう一人は――――
「……嘘。アーサー王? だってアヴェンジャーは女の子だったわよね?」
 中性的な顔立ちの少年に見えなくもないが、それは些か苦しいだろう。
「ですがアレが現実です。おそらくアーサー王に間違い無いでしょう。先程宝具を開放する際、エクスカリバーと呼んでいましたから」
 それは日本――いや、世界でも有数の伝説に名を残した人物。
 聖剣エクスカリバー。円卓の騎士。巨人の討伐。上げ始めればキリがない程でてくる。
 有名であればある程力を増すサーヴァントとしては文句の付けようが無い。
「――そう。衛宮君、相談があるんだけど……アヴェンジャーを倒すまで協力しない?」

◎:する(ライダーフラグ)
○:しない(アヴェンジャーフラグ)

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最終更新:2007年10月22日 18:39