『要求仕様の探検学』G.M.ワインバーグ・D.C.ゴーズ、共立出版、isbn:4-320-02352-8
(2008.04.11)
「要求探検」という一連のページの総称は勿論この本から戴いた。
このページは「『要求仕様の探検学』を探検する」とでも題したいところだ。
ワインバーグの著作はみんなよいが、この本も例に漏れない(本書は共著だが)。
でも、初読の当時から、なんだか読みにくい印象があった。じきに訳文が悪いんじゃないかと思うようになり、真の理由は判らないまま最近ではほぼソレだろうと勝手に決めつけている。ひとつひとつを拾おうとするとまた全部読み返すことになるから今は控えておくけれど、あちこちに引っかかる語句や表現があって、すんなり著書の中に入っていけない感覚があるのだ。
最初の話題としていいのかどうか、まずは「これ、『誤訳』じゃねーの?」というネタから。
「文脈自由な質問」って何だ?
(2008.04.11)
中でも第6章(pp.65-75)の章題にもなっている「文脈自由な質問」はわけの判らない語句の代表といっていい。これは重要なキーワードでもあり道具でもあるんだが、ではそれが何なのかというのはサッパリ判らない。
イヤ、どんなものかというのは文中に用例が出ているからまあ判る。でも、なぜ「文脈自由」と称するのかが判らない。少なくとも訳文中ではその命名の由来とか理由に全然触れられていない(原書を当たれば判るのかも知れないが、アマゾンでも古本しか挙がっていないし、今手に入れるのは困難だろうなあ。てゆーかそんな手間をかけるほどの熱意はないよ)。説明っぽい文章としては――
文脈自由な質問とは、プロジェクトの初期で持ち出せる高いレベルの質問のことで、
(中略)全体的特性について情報を得るために行う。
(p.65)
文脈自由イコール「高水準(抽象度が高い)」ではないから、説明になっているようで実は何も説明していない。何とも収まりが悪い。
プログラマー(や
計算機科学者)にとっては、context-freeと言われたら何を措いてもまずは「文脈自由文法」が頭に浮かび、形式言語の世界が眼前に広がる。「文脈自由」と呼ばれるのは、構文解析中ある語句を解釈するのに前後の語句やその並びを気にせずにできるためだ。でもここで言っている「文脈自由」はそういう意味ではないだろう。
思うに、著者の用語は「設計のためとか仕様策定のためといった特定の目的や理由に関連しない、自立した質問」という意図なんじゃないか。
そうなんだとしたら、それを日本語にするのに逐語的に「文脈自由な質問」では翻訳になっていない。(原書では違う用語で、日本語で「文脈自由」と意訳したのなら、脚注が欲しい)
それでずーっと気持が悪かったんだけど、この度すっきりできそうな解釈を見つけたんでここに書き留めるわけで。
文脈自由な質問とは、
質問のことである。
日本語らしい名称を考えるなら、「俯瞰(的)質問」「全体俯瞰質問」とかの方が判りやすい。言葉として堅いのは否定しないが。
最終更新:2008年04月11日 10:24