暗い夜道。
殴り合う鈍い音。
地面に倒れた黒服の男達。
至る所に拳銃の弾痕がある。
服部が黒服の男の首に関節技を掛けている。
ゴキっという音と共に力なく崩れ落ちる黒服の男。
服部は巨漢の男の死体を取り囲む男達に向かって投げつける。
「おい、やべーぞ」
「ガイがやられちまった」
蜂の巣をつついたように退散していく黒服の男達。
服部が首をコキコキと鳴らす。
ざわめく黒服の男達。
「先生!お願いします!」
黒服の集団が左右に割れる。
「うむ」
人相の悪い落ち武者風のムサシが一歩前に出る。
「血の臭いがするぞ……」
舌舐めづりをしながら、服部の周りをゆっくり歩くムサシ。
「先生はなぁ!今まで999人を始末してきたんだ!」
物陰に隠れたまま黒服の一人が叫ぶ。
ニヤニヤと笑う黒服達。
「999人?」
冷めた表情で首を傾げる服部が徘徊するムサシを睨む。
「そうだ……、999人だ……。貴様のような奴を始末してきた」
「……」
無表情で鼻でフンと笑う服部。
「恐ろしくて声も出ぬと見た覚悟!」
ムサシが服部に飛びかかる。
真紅の瞳になる服部。
服部とムサシが交差する。
「ど……、どういうことだ?何故スタークが発動しない?」
血を吐きながら地面に倒れるムサシ。
「殺した人数なんて数えてるような奴にやるほど安くない……」
「何故だ……」
「切り札は最後まで取っておくものだ」
目の光りがだんだん消えていくムサシ。
「……」
服部がゆっくりと歩き出す。
「畜生……、撤収だ!!!」
黒服の男達が我先にと走り出す。
男の一人がかなり大柄な通行人とぶつかる。
倒れる通行人。
飛んでいく眼鏡。
「邪魔だ!」
男が懐から拳銃を取り出す。
慌てて右足と右手を同時に動かして走る服部。
通行人が観念したように目を瞑る。
ハイキックする服部。
首が90度に曲がって吹き飛ぶ男。
服部が通行人に近づく。
立ち上がり服をはたく通行人。
「無事か?」
フウとため息をつく通行人。
「物騒な街になったもんだ」
通行人が寂しそうに夜空を見つめる。
「ずいぶん慣れた様子だが何者だ?」
「たいしたもんじゃない。通りすがりのしがない科学者だよ。
助けてくれてありがとう。
私の名前は神宮寺 秀祐……」
手を差し出す神宮寺。
「俺に握手の習慣はない」
「警戒心強いんだなぁ」
神宮寺が呆れたように笑う。
「こんな時間に出歩いてる人間の言うことを真に受けるほど、
俺はおめでたい性格はしていない」
「本当だって信じてよ」
無表情の服部がポツリと呟く。
「それにどんな能力者が居るかわからないからな……」
「成程一理あるね。ところでこの街の住人じゃ無さそうだけど、
随分厄介な連中と揉めてるみたいだね?」
地面に転がっている黒服達を見回す神宮寺。
「ふりかかる火の粉は払うだけだ」
「しつこい連中だよ?」
「問題ない……」
お腹のグーという音。
「もし行くところが無いなら、ここであったのも何かの縁だし我が家に来ないかね?」
「甘い話には裏があるというのを俺は知っている。
それにお前も能力者だろう?」
立ち去ろうとする服部。
「待った!実は私も彼らとトラブルになることが稀にあってね
確かに私は能力者だが、戦闘向きというわけではないんだよ」
「真逆の世界を生きているように見えるが?」
「なんていうのかな、頭が良いってのを万能と勘違いしてるみたいなんだよ」
「依頼人の嘘を俺は許さない」
服部が歩き出す。
「ほ……、ほんとだとも……」
「……」
神宮寺の額から汗が一滴二滴と流れる。
「詳しい話は私の家でするとしよう」
「わかった、引き受けよう」
暗闇の中を並んで歩く服部と神宮寺。
「そうだ私のことは
ドクトルJと呼んでくれ」
訝しげに目を細める服部。
「あだ名だよ。特に他意はないさ」
「依頼の一部ならば、それも了承した」
「ところで君は何者なんだい?」
「ビジネス以外のことで、俺を詮索しようとするな……」
「何か知られてまずいことでも?」
殺気だった目で神宮司を見つめる服部。
「わかったよ。でも名前くらいは教えてくれても良いだろう?」
「服部政宗……、今はそう名乗ることにしている」
「なんか訳ありみたいだね」
ジロリと神宮司を睨む服部。
「はいはい。わかってますって」
神宮司が思わず首をすくめる。
注射していた車に乗り込む服部と神宮寺。
満月が雲に隠れ、フクロウの鳴き声が夜空に響く。
登場キャラクター
最終更新:2010年10月03日 15:02