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~地球変革の日~

作者:◆1m8GVnU0JM

 西暦2000年2月21日。
 決死の破砕作戦も虚しく落下した隕石群によって、地球は壊滅的な被害を受けた。
 地震、津波、衝撃波によって蹂躙された後、舞い上がった粉塵が、人々から、月を、星を、太陽を奪う。
 あの日はまさに地獄だった。

 ――――いや、違う。

 無間の地獄は、今も、なお――――


真(チェンジ!)リング・デイ
~地球変革の日~
序章


 西暦2000年、3月。本来ならば暖かくなってくるはずの気温はむしろ下がる一方で、空気は淀み、空は暗い。
 それもこれもみんな、数週間前に落下した隕石のせいだ――――窓の外の闇を見ながら、裏白 ななこは怨めしそうに心中でひとりごちた。
 ななかはひとりぼっちだ。
 家族も友人もみんな、隕石衝突とそれに伴う天災・人災で失ってしまった。
 誰かに助けを求めようにも、ただでさえ災害の影響で混乱しているのだ。頼れる人なんて誰もいなかった。
 たかだか12歳の子供に、こんな未曾有の災害の中、ひとりっきりでどう生きていけというのか――――やるせない気持ちと、あきらめの気持ちを抱きつつも、点けていた部屋の電気を消す。発電施設は何とか生き残っていたようで、厳しい制限はあれど電気の使用は可能だった。
 ……もう、寝よう。


 ♪  ♪  ♪


 妙な違和感を感じて、目が開いた。
 外は暗い。塵芥のせいで朝かどうかもわからない、忌々しい。
 不機嫌な目で時計を見る。午前5時、早朝だ。

 真っ白な溜め息をひとつ吐くと、ふたたび布団を被った。
 その時、だった。
 ――――誰!?
 不意に扉が開いたのは。
 施錠はしていたはずだが、思い違いだったんだろうか。それともピッキングか何かか――――様々な憶測が頭の中を流れるが、とりあえず息を殺して布団の中に隠れる。
 鬼が出るか、蛇が出るか。すっかり暗闇に慣れた目で、ちらりと外の様子を伺う。
 そこにいたのは、鬼でも蛇でもなく――――
「あ……まだここ、人いたんだ」
 ウェーブがかった黒髪の、柔和な顔した優男だった。
「――――ッ!」
 気づかれた。
「ああ、ごめん、鍵が掛かってなかったから……それより、ここにいるのは君ひとりだけ?」
「……そうだよ」
 いきなり人の家に上がり込んできて、なんなんだよ突然――――苛立ちがこもった声で、ななこ。
「僕もひとりなんだ。だから生存者を捜してたんだけど……」
「なんで」
「なんでって……ひとりじゃ寂しいからだよ。情けない話だけどね」
 そう言って彼は苦笑した。まったく邪気の感じられないそれに、ななこの警戒心がほぐれる。
「名前、なんていうの?」
「僕の名前? 僕の名前は……ゲンヤ。ホウヅキ ゲンヤだ。君は?」
「ななこ。裏白 ななこ」
「ななこちゃんか、かわいい名前だね」
 ゲンヤがあまりに屈託のない笑顔で言うものだから、ななこは恥ずかしくなって、頬を赤らめた。
「は、恥ずかしい事言わないで」
「ははは、ごめんごめん。そうだななこちゃん、いま何時?」
 時計を見る。いつの間にか一時間近く経っていたようだ。
「もうすぐ6時だけど」
「そっか。じゃあ、そろそろ僕は行かなきゃ」
 おもむろにゲンヤが立ち上がり、ななこに背を向けた。

「もう行っちゃうの?」
 そんなななこを見て、ゲンヤは微笑を浮かべながら言う。
「夜になったらまた来るよ」
「絶対に?」
「絶対に」
 玄関の扉を開ける。
「絶対だよ」
「わかってるわかってる……じゃあ、また後で」
 静かな部屋に、扉の閉まる音だけが響いた。


 ♪  ♪  ♪


「断罪の。“ムゲン”の能力者はまだ見つからないのか?」
 周囲の闇に溶け込むような、黒いスーツを着た男が、宙に浮くソファーを見上げて問いかける。そのソファーには蒼い髪の女が足を組んで座っていた。
「落ち着きなさい、旭影の。まだ時間はあるわ」
「しかしな、目障りな政府の狗どもに先を越されると面倒だぞ」
「その時はその時でしっかり考えてあるわ、心配しないで」
 不敵な笑みを浮かべ、女は扇を取りだし、開く。
「すべては、我らG3団の意のままに」


 ♪  ♪  ♪


 薄暗い事務所の中で、男はブラインドの隙間から外を見た。電気の明かりがぽつぽつと灯っている以外は真っ暗だ。もう、日ノ出の時間だというのに。
「珍しく浮かない顔をしとるの、ブリーゼ」
 声に反応し、振り返る。そこには軍服を身に纏った中年の巨漢。
ラツィームか」
 “ブリーゼ”と呼ばれた男は頭を掻きながらごまかし笑いを浮かべる。
「“レインボーローズ”の件でちょっと、な」
 顎を撫でる。数日間剃ってない髭がジョリジョリと音を立てた。
「一応ウチのかわいい副隊長を向かわせたが……あいつらがどう出てくるかわからん以上どうにも不安で仕方ねーのよ」
「G3団か。あれとは間違いなく戦闘になるの」
 ブリーゼが苦虫を噛み潰したような表情をする。
「あいつらとは今まで後手に回ってばかりだったからな。今回くらいは先手を打ちたいんだが……」
「今は目の前の事件の対応に忙しいからの」
 ラツィームも肩を解しながら溜め息をひとつ。
 隕石が落ちてからというものの、治安の悪化が著しい。それは災害に伴う混乱によるものがほとんどだが、それ意外の“特殊な事件”も――――ごく少数ではあるが――――あった。ブリーゼやラツィームらは、その“特殊な事件”のために集められたチームだ。
 しかし、最初は少なかった“特殊な事件”は日を追うごとに増加していき、今では隊員を総動員してもいっぱいいっぱいになる程に膨れ上がっている。
「まったく、面倒な世の中になっちまったもんだ」
「本当にの」
 二人は自嘲気味に笑うと、事務所を出た。


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最終更新:2011年10月17日 22:55
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