「『ゆーきちゃん、起きて』カピバラは言いました。『あれがタコスの国だよ』『おー、あれがそうn」
「透華さん、透華さん」
「?」
「ほら、もう眠ったみたいですよ」
「zzz......」
話には聞いていたが、どうやら本当に絵本の読み聞かせをしないと眠ってくれないらしい。
とても自分より一つ上の高校生とは思えない。その愛くるしい寝顔も含めて。
………絵本とは言っても、今回は私と咲さん、優希が書いた自作の絵本なのだが。
「いつも透華さんが絵本を?」
「いつも、というわけではありませんわ。でもまぁ、大体私ですわね」
「………ふふ」
「な、何ですの?」
「いえ。本当に、仲がいいんですね。透華さんも衣さんも、沢村さんもみんな」
「…………」
可愛いらしく跳ねた髪がギュンギュンと回っている。
なるほど。近くで見ると、これは面白い。
「………そちらこそ」
「え?」
「………い、いつもそのような格好を?」
「?ええ、まぁ。特に今年は残暑がひどいですし。変ですか?」
「…………」
先程よりも勢いが増して回っている。
顔が茹でダコのように真っ赤になっていた。
………暑がりなのだろうか。よく分からないが、ひどく落ち着かない様子である。
今日は9月6日、天江衣の誕生日だ。
つい先程まで誕生日会、という名のエビフライパーティーで盛り上がっていた。
まだまだ熱は冷めきらないが、主役はこの通り、もうお休みの時間らしい。
ここからはオフ会。
私達長野女子部屋メンバーの、オフ会がメインとなる。
以前龍門渕の屋敷でのオフ会が決定した時、開催日を天江衣の誕生日と重ねようという話になったのだ。
今さっき読み聞かせていた絵本も、清澄からの
プレゼントだ。
「さささて、これからどうしままままままま」
「そうですね。沢村さんが今どこにいるか分かりますか?」
「………こ、この時間ならお風呂、ですわね」
「あぁ、小鍛治プロ出演のラジオが始まる時間ですからね」
そうなのだ。
お風呂嫌い(面倒なだけ)のくせに、小鍛治プロ関連の放送がある前には、必ず汗を流す習慣があるらしい。
『身を清めてから視聴するのがマナーだろ』
意味が分からない。
というか、お風呂なら食前に皆で入ったはずである。
何を考えているのだろう。
「まったく。ともきには困ったものですわ」
「そうですね。ニ日に一度入ればいい方ですからね」
「おまけに学校はサボりますし」
「だらし無いですし」
「ゲーム三昧」
「ネット中毒」
「引きこもり」
「腐女子」
~10分後~
「ず、ずいぶんとともきについて詳しいですわね」
「えぇっと、ほら、チャットで本人から聞いたんです」
「…………」
「…………」
調子に乗りすぎた。
一応、沢村さんとは『最近』ネット麻雀で知り合ったということになっている。
実際は、2年以上の付き合いなのだが。
「それにしても、9月は忙しそうですね」
「?」
「だってほら、誕生日が9月な方が多いそうじゃないですか。沢村さんから聞きました」
「………そうですわね」
「ええ」
「………」
「透華さんも、9/10でしたよね」
「!?」
「あれ、違いましたっけ」
「いいいいやいやいやいや。あって、あってますわ」
「お祝い、させて下さいね」
「」
また、勢いよく回りだした。 タケ○プターみたいだな、と思った。
色合い的にも。
~~~
「namberさん。ほら、ここが僕の部屋だよ」
「・・・・・・言っていた程、広くはないんですね」
「え、そうかな。どんなのを想像してたの?」
「こう、キラキラした大きいベッドやソファーが置いてあったり」
「あー。まぁ、とーかの部屋はそんな感じかな」
実際、想像していた部屋とはかなり違っていた。
もちろん自分の部屋とは比べ物にならない程に広いが、何というか、普通の女子高生の部屋だ。
………まぁ、他人の部屋に入ることなど滅多にないのだが。
「さて、これからどうしよっかnamberさん」
「………あの。namber、はHNですし、その、こういう時ぐらいは」
「あ。それもそうだね。じゃあ、数絵さん」
「………」
油断していた。「南浦さん」をすっ飛ばされた。
自分を名前で呼ぶのはおじいさまぐらいだというのに。
………考えてみれば、自分も「一さん」と呼んでいる。
なら、これが自然なのかもしれない。
時計は夜の9時を指していた。全館冷房が効いているので、とても居心地がいい。
今は待ちに待ったオフ会 in 龍門渕家の最中だ。
………夏の終わりの今日という日を、きっと忘れることはないだろう。
あれだけのエビフライに囲まれるのは、きっと今日が最初で最後だ。
「それにしてもびっくりだなー。namberさんがあの『南浦数絵』だったなんて」
「…………」
「ねぇねぇ、平滝高校ってどんなところ?色々聞かせてよ」
おじいさま。
友達って、いいものですね。
「あと紫炎姫って人のこともね。数絵さんがベッタリの」
「…………えぇっと。その前に、一つ聞いていいですか」
「何かな?」
「壁に所々傷があるのは、どうしてですか?」
「あぁ、これこれ。ちょっと離れてて」
「?」
瞬間、一さんの手首から何かが放たれ―――
「イライラしてると、ついやっちゃうんだ」
いつの間にか、壁にトランプが突き刺さっていた。
深々と。
背筋が凍った。
~~~
「この、くそ、オラ!」
「あ、ちょ、あ、ああー!!」
「っしゃー!3連勝ー!!」
「ぐぬぬぬぬぬぬ。も、もう一回っす!!!」
おかしい。
こんなはずではない。
格闘ゲームは割と好きな方だ。
学校では自分に敵う者はいなかった。
と言っても、麻雀部の皆としかやったことはなかったのだが。
とはいえ、得意なジャンルであることは確かだ。
今やっているのも、そこそこ自慢できるぐらいに得意なシリーズだというのに。
「4連勝ー!!!」
「ああああああああああああああああもおおおおおおおおおおおおおおおおお」
惨敗だった。
「まぁ、今のはちょっと運がよかったかもしれねーな」
「ツイてたっすね」
「ツイてねぇよ!!!」
「えっ」
「えっ」
一つ言い訳をするならば、ゲーム画面が非常に見づらい。
画面が小さいからではない。『大きすぎる』のだ。
格ゲーの世界大会に参加しているような気分になる。
「そうか?智紀とやる時はいつもここでやってるぜ」
「………あー。だからそんなに強いんすね」
「まぁ俺でも智紀には全然敵わねーけどな」
何とはなしに時計を見ると、針は午後10時付近を指していた。
こんな立派な屋敷に来ているというのに、TVゲーム三昧は何か間違っている気もする。
今日という日のために、他の3人をどう弄ってあげようか色々考えては来たのだが。
………まぁ、それはいつだってできることだ。
もう少ししたら、他の皆がどうしているか、様子を見に行こう。
だから、もう少しだけ。
「よーし。じゃあ、ちょっと本気でいくっすよ」
「おう、かかってきやがれ」
「…………」
「…………あれ?」
「…………」
「え、ちょ、え?お前のキャラどこに………はぁ!?」
「…………」
「おい何だよ!!何で見えないんだよ!!どこから攻撃しtあー!!!!」
本気を出せばこんなものだ。
「おっかしいなー。バグったか?このソフトかなり古いからな。スーファミだし」
「じゃあ他のをやるっすか?」
「おう。何かやりたいのあるか?」
「あ、じゃあこれで」
「ぷよぷよか。ま、たまにはいいか」
「…………計画通り」
見せてあげよう。地獄を。
~~~
「だから何でだよ!?何で開始数秒でおじゃまぷよで埋めつくされるんだよ!?」
「全消しって知ってるっすか?ぷよを全部消すとボーナスd」
「最初から消えてるじゃねーか!!!!!」
「…………」
「…………」
透華さんと一緒に戻ってみると、そこはゲームソフトで散らかっていた。
「純、そろそろゲームは終わりですわ」
「
モモさん、長時間のプレイは目に悪いですよ」
「それもそうっすね」
「…………納得いかねぇ」
多分、モモさんの圧勝だったのだろう。
よく分からないが、それだけは分かる。
「あ、とーかだ」
「皆さん来ていたんですね」
時を同じくして、国広さんと南場さんも合流した。
「さてと。では、私達はこれで失礼いたしますわ」
「え?」
「もともと貴女達はオフ会がメインでしょう。あとはともきに任せますわ」
透華さんなりに気を利かせてくれたらしい。
沢村さんも、そろそろお風呂からあがる頃だ。
「じゃあまた明日ね、数絵さん」
「はい。おやすみなさい一さん」
「おい!!明日リベンジするからな!!」
「いいっすよー」
「透華さん、明日また一緒に打ちましょう」
「当たり前ですわ!!!」
オフ会をする度に思う。
楽しい時間はあっという間に終わってしまう。
とはいえ、まだまだ折り返し地点だ。今回は一泊二日の贅沢なオフ会だ。
透華さん達と別れ、私達はそれぞれ割り当てられた部屋に戻り―――
のどっち:いつもの、部屋にいた
紫炎姫:何言ってんだ?
ステルスモモ:すごいっすねー。ウチにあるPCとは大違いっすよ
namber:・・・・・・まさかPCまで用意してあるとは思いませんでした
のどっち:で、どうすんだよ。同じ屋敷にいんのにわざわざここに集まって
てる☆てる:9/6は妹の日。世界中の姉が胸をキュンキュンさせる日
愛宕洋榎:可愛い妹に感謝せなあかん日やな!!!
にゃー!:あかん日だし!!!
紫炎姫:とりあえずこいつら追い出そうぜ
愛宕洋榎:け!言われんでも出ていったるわー
にゃー!:今日は妹達と一緒に寝るんだしー
愛宕洋榎:あ、なら私も真似しよ
てる☆てる:
愛宕洋榎さんが退室しました
にゃー!さんが退室しました
てる☆てる:ちくしょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお
のどっち:ああああああああああああああああもおおおおおおおおおおおおおおおおお
~~~
のどっち:ようやく消えやがったな
ステルスモモ:何か無駄に疲れたっす
紫炎姫:さて、じゃあ麻雀でも打つか
ステルスモモ:・・・・・・あのー、どうせならリアルで打ちたいんすけど
紫炎姫:だって一日に一回はここで打たないと落ち着かねーし
namber:悔しいですが気持ちは分かります
紫炎姫:まぁ、何だ
紫炎姫:麻雀打ったら、私の部屋に来い
のどっち:え
ステルスモモ:え
namber:え
紫炎姫:・・・・・・今日ぐらい、一緒に寝たい
~~~
~~~
「………沢村さん、もうちょっと詰めてもらえますか。さすがに狭すぎます」
「………南場、ちょっと詰めて………」
「これで精一杯です」
「あのー、何か私のところだけ妙に余裕があるっすよ」
「あれ?エトペン、何故かいつもとは違う匂いがします」
「のどっち、それは私のエトペン………のどっちのは、こっち………」
「………紫炎姫さん、そのエトペン、使いますか?」
「いや、のどっちと違って抱いて寝たりはしない………」
「じゃあ、えと、その、貸して下さい」
「………いいけど…………」
「そろそろ電気消すっすよー」
「では皆さん、おやすみなさい」
「おやすみ………」
「おやすみなさい」
「おやすみっすー」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………クンカクンカ」
「…………」
「…………」
「…………」
「…………クンカクンカ」
「南場さんうるさいっすよ」
無駄に長くてごめんなさい。本当に
- 南場さんがオチ担当とはwwww -- 名無しさん (2010-09-07 05:09:32)
- 寝る時の並びはどうなってるんだ?モモは端っぽいけど -- 名無しさん (2010-09-07 09:36:50)
- お、この日に繋いできたか。GJ -- 名無しさん (2010-09-07 11:34:05)
- ステルス+ヨガの神秘とかステルス+サイコッパーワーとか…無理だ勝てねえ -- 名無しさん (2010-09-07 14:17:49)
- ぺ和智数桃 -- たぶんこんな感じにクンカクンカ (2010-09-07 14:56:33)
- その夜見た夢は、「アホ毛をタケコプターのように回転させて大空を飛び回る透華さん」だった。訳がわからない。 -- 名無しさん (2010-09-08 02:19:11)
- とーかはなんでとぶん? -- 名無しさん (2010-09-08 14:29:28)
- 失礼ですわね。満月の夜に衣と打ってもそうそう飛びはしませんでしてよ -- 名無しさん (2010-09-11 23:12:26)
最終更新:2010年09月11日 23:12