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コニーの故郷が巨人に蹂躙され、コニーの家族や隣人が巨人化した事件。
第110話「偽り者」で、この事件がマーレの威力偵察であり、ジークの脊髄液を含むガス兵器により村人が「ジークの巨人」にさせられた事が明らかとなりました。
これにより、ラガコ村の巨人はジークの命令で動く私兵となり、ウトガルド城でヒストリアやライナーたちを襲ったわけです。
シガンシナ区決戦(血栓)の包囲網の中にもいたのかもしれません。
私は、このラガコ村事件は巨人のある重要な原則を明らかにしていると考えています。
その原則は、物語の根幹にかかわる内容です。
9巻第37話「南西へ」、第38話「ウトガルド城」でコニーの故郷ラガコ村が登場し、後に、ジーク・イェーガーの脊髄液を含んだガスによって彼の家族をはじめ住民が巨人にされていた事が分かります。
コニーの母親は家の中で巨人化しましたが手足が小さくて自立できず、あおむけに倒れたまま動けませんが、コニーを見て「オ…アエリ…」と言葉を発します。
さらに第39話「兵士」では、ウトガルド城で子供のように喧嘩をする小型巨人2体が登場しますが、この2体はコニーの兄弟のマーティンとサニーだと考えられます。
この2例から見て、私はこう考えました。
巨人の肉体や行動は、巨人化直前の思考に影響されるのではないか。
私の、コニーの家族と思われる巨人たちの分析を書き出してみましょう。
(1)喧嘩をする2体の小型巨人
まず最初に、9巻第38話「ウトガルド城」の冒頭で、2体の小さな巨人が喧嘩をしている事と、どうやら巨人はラガコ村の住人らしいと分かった事を考え併せて、「2体の小さな巨人はコニーの兄弟で、ちょうど喧嘩をしているときに巨人になったのではないか」と考えました。
ここで「巨人は、巨人化直前に最後に考えた事を実行しているのではないか」という仮説を思いついたわけです。
(2)コニーの母巨人
この仮説を、もう一体のコニーの母親と思われる巨人に当てはめてみました。
コニーの母の巨人は、手足が短く動けない上に、息子のコニーを見てお帰りと声をかけるという、特異な行動を見せました。
これを私は、コニー母巨人の手足が短いのは「祖先が魚だから」、あるいは「巨人化直前に”家を出ない”と考えていたから」ではないかと推測しました。
「祖先が魚だから」について。
私は、巨人は様々な生物が人型になった存在という仮説も立てています。
したがって、巨人のおかしな行動は、他の動物が無理やり人型にされているのが原因のひとつだと考えています。
「巨人化直前に”家を出ない”と考えていたから」について。
8巻第34話「戦士は踊る」で、コニーは「俺はお前みたいにチビに兵士は無理だって言われてた(中略)だから村に帰って見返してやんのさ ちょっとだけでいい… おれが生きてるうちに」と語っています。
この発言から、コニーはラガコ村であまり認められていなかったことが分かります。
このことから、私は次のように想像しました。
コニーの母は、村でバカにされている息子が兵士になった事を心配していた。
そして、ジークに巨人にさせられる直前にもコニーの身を案じていた。
「元気かい、コニー。辛かったらいつでも帰っておいで。いつまでもこの家で待っていてあげるから」
つまり、コニーの母は「家にいて息子のコニーを待っていてあげなければいけない。だからこの家から動いてはいけない」という想いから、歩けない体の巨人になったのではないかと、私は考えたのです。
コニーを見て「オアエリ(お帰り)」と話す事ができたのも、彼女が「コニーが帰ってきたら優しく迎えてあげよう、いつものように、お帰りと言ってあげよう」と考えていたからでしょう。
以上の仮説から、巨人の行動法則を考えてみましょう。
●巨人は、巨人化直前に「意識の刷り込み(プリンティング)」が行われる。
●巨人化の直前に考えた事が巨人化の後の行動に影響し、一番最後の記憶や感情を再現しようとする。
ホラー映画の傑作『ゾンビ』では、ゾンビは死ぬ前の習慣を再現します。
だから、普段から習慣的に買い物に来ていたスーパーマーケットに集まる性質があります。
『進撃の巨人』では、ゾンビに相当する巨人は「最後の思考を再現する」のではないでしょうか。
では、この巨人の行動法則を他の例に当てはめて、矛盾がないか考えてみましょう。
(1)エレン・イェーガー
エレンの巨人化には「強い意志」と「明確な目的」が必要である事が分かっています。
これも「巨人化直前に目的を強く意識して巨人化すると、目的に沿った行動ができる」と解釈できます。
(2)カヤの母を食べた巨人
サシャ・ブラウスが助けた少女カヤの母は3メートル級の巨人に生きたまま食べられます。
この巨人だけがカヤの村に来たのは何故でしょうか。
もしかして、この巨人は普段「カヤの家族を心配し、気にかけていた」人物ではないでしょうか。
そして、巨人化直前にもカヤとその母の身を案じていたため、カヤの家に来てしまい、巨人の食人欲求に従ってカヤの母を食べてしまったのではないでしょうか。
ですから、私はこのエピソードを読んだ直後は、この巨人がカヤの父ではないかと思っていました。
巨人の親が子を食べると言えば、ゴヤの『我が子を食らうサトゥルヌス』を想起します。
植物の茅(かや)や蚊帳(かや)だけでなく、画家のゴヤもカヤという名前の由来なのかもしれません。
また、この時カヤは巨人に無視されて食べられるのを免れますが、これは私の仮説では「座り込み、巨人と目を合わせず、言葉を発しなかったため」だと考えられます。
イルゼ・ラングナーが当初は巨人に食べられなかったのも、同じく「木を背にして座り込み、巨人と目を合わせず、言葉を発しなかったため」でしょう。
あるいは、この座り込んで動かないポーズは、大地の悪魔と対話する「ユミルさま」と同じ格好であったため、食べられなかったという可能性もあります。
(3)グリシャ・イェーガー
最も重要なのがグリシャの例でしょう。
3巻第10話「左腕の行方」で、エレンは悪魔として砲撃される直前、グリシャの登場する記憶映像を見ます。
その「誰かの記憶」の中で、「グリシャのような声」は次のように語ります。
「エレン…… 帰ったら…ずっと秘密にしていた地下室を…みせてやろう」
「エレン… この鍵を…ずっと 肌身離さずに持っているんだ…」
「そして この鍵を見るたびに思い出せ… お前が地下室に行かなくてはならないことを…」
「この注射のせいで今からお前に記憶障害が起こる… だから今説明してもダメなんだ…」
「だがいつか地下室に行けば真実が分かる… つらく厳しい道のりだが」
「お前はウォール・マリアを奪還して地下室に辿り着かなければならない… この「力(ちから)」はその時 役に立つはずだ」
「使い方は彼らの記憶が教えてくれるだろう…」
「ミカサやアルミン… みんなを救いたいなら お前はこの力を… 支配しなくてはならない」
このセリフは、グリシャが自分に、あるいはエレンに「巨人化直前に命令を与え、巨人化後に自分が命令した通りの行動をとるようプログラミングした」ものではないでしょうか。
例えるなら、一番最後の命令を実行するロボットに、命令をインプットしたのです。
これは、エレンが鏡に映った自分に「戦え」と命令している事とも通じています。
そして、この法則は物語最大のトリックのひとつに直結していると、私は考えています。
ついでに他の可能性も考えておくと、グリシャの巨人の力は「同名のエレン」から継承したものです。
したがって、この記憶は「クルーガーの父親がエレン・クルーガーに与えた命令」である可能性もあります。
あるいは、エレン巨人化の際に、グリシャとエレンのそばに第三者(ミカサやアルミンなど)がいた可能性も残っています。
これはレイス家襲撃映像の視線問題にも通じています。