最終話である第139話「あの丘の木に向かって」では、多くの伏線が回収されませんでした。
エレンの保有する進撃の巨人の力は、未来の継承者の記憶を見る能力です。
他の巨人は捕食によって過去の継承者の記憶を見る事ができますが、進撃の巨人だけは未来の継承者の記憶も見ることができます。
元ネタは星野之宣の『ヤマタイカ』。
『ヤマタイカ』では二千年前の「火の民(=日本人)」の巫女王フィミカ(ヒミコ)が、自分の後継者となる「未来の全ての巫女」と精神で繋がって会話をしたり、エネルギーを送ることすらできる。
進撃の巨人の継承者は、あたかも時空間旅行のように全ての継承者の記憶の中に入り、その場にいるかのように見る事ができます。
この時空間旅行にはエレン以外の者を同行させる事も可能であり、実際にジークに過去の記憶を見せています。
一部の者を除き、その場にいる者はエレンの存在を認識できません。
逆にエレンを認識できる者は、気配を感じたり、姿を見たり、言葉を聞くこともできる模様。
また、進撃の巨人継承者にとっては過去も未来も同時に存在するため、継承者の精神は著しく混乱するようです。
エレンが保有するもう一つの巨人は「始祖の巨人」です。
始祖の巨人の能力は大きく分けて2つです。
(1)巨人支配能力
全ての巨人を支配し、操作できる能力。
具体的には、攻撃(捕食)目標を指定し、襲わせることが可能。
12巻第50話「叫び」で巨人になったダイナと接触したことにより発現。
また、始祖の巨人の力を介して、全てのユミルの民に自分の意思を伝える事も可能。
私は始祖の巨人は「SISOの巨人」であり、いわば放送局で、全人類はテレビに相当すると考察していましたが、このエレンの意思放送により、この考察がほぼ的中していた事が確定。
軍隊で言えば司令官、あるいはドローンのリモコンのような存在。
(2)記憶改竄能力
全てのユミルの民=エルディア人の記憶を改竄できる能力。
ただしアッカーマン一族は記憶改竄できません。
最終話第139話で、最終決戦前にあらかじめアルミンたちに別れを告げておき、記憶を改竄して、決戦が終わるまで忘れさせていたことが判明しています。
エレンは進撃の巨人と始祖の巨人の力により、未来を含め進撃継承者がいる時空間に飛び、エルディア人と巨人の行動を操作する事が可能です。
要するに「作中の重要なシーンに見えないエレンがいて、展開に影響を与えている可能性がある」のが漫画『進撃の巨人』の最大のトリックです。
舞台劇に例えると、役者の中でエレンだけが台本を最後まで読んでおり、台本を読めない他の役者を、台本通りに動くように演出していた可能性があるわけです。
私は進撃の巨人を舞台劇の脚本家のような能力と考えていたが、プロンプターや歌舞伎の黒衣(クロゴ)の役割も担当していたとも言えそうです。
以上の点から、『進撃の巨人』の伏線の一部は、「あらかじめ未来の記憶を見ていたエレンが、進撃の巨人の力を使用して時空間を飛び越え、始祖の巨人の力でその場にいるエルディア人や無垢の巨人を操作し、未来の記憶(台本)通りの展開になるように調節していた」ということで説明できます。
エレンは登場人物たちが台本通りに動くように、将棋やチェスの駒のように操作していたわけです。
つまり、「エレンはエルディア人を操作してできる範囲の工作は可能」なのですが、これでは説明できないことがあります。
たとえば、「訓練兵時代の立体起動姿勢制御訓練」で、エレンが破損した装備で一時姿勢を保つことができた理由を説明できません。
加えて、伏線の説明すらないものも多数存在します。
たとえば、レイス関係の伏線はほぼ説明なし。
サシャ関係の伏線もほぼ説明なし。