※ネタバレや考察自体がお好きでない方は絶対に閲覧しないようお願いいたします。
※以下の内容を読んだ場合、今後作品を楽しむ喜びを損なう危険があります。閲覧は自己責任でお願いいたします。
※作中の描写だけでなく、作り手の意図や傾向、自分ならどうするかなど推測も交えて考察しております。
第66話「願い」に、「ヨロイ ブラウン」の小瓶が登場しました。
この小瓶のモチーフは、『不思議の国のアリス』だと思われます。
今までの展開から推測すると、「ブラウンという人の脊髄液で作った、鎧の巨人に変身する液体」ではないかと考えられます。
これは、私が昨年書いた「人間が液体になって巨人の中で生き続けている」説に合致した展開です。
> ところが何者かが宇宙船内に、遺伝子汚染された巨人細胞(プリオン)をバラまいてしまった。たちまちパンデミックが発生し、次々と巨人化してゆく人間や動物。その時、一部の人間たちが自分たちの記憶を特殊な液体に保存することを思いついた。この液体は巨人化能力と同時に、注射された相手に自分の記憶と意志を継承させることができる。その記憶は子孫にも受け継がれる。つまり、何世代にもわたって、相手の血液中で疑似的に生き続ける事ができるのだ。
> そして、このパンデミックが収まった時、誰かが巨人を見つけ、その体を調べて血液の異常に気付き、自分たちの記憶と意志を見つけて、再び人間の肉体に戻してくれることを期待した。要するに、巨人細胞パンデミックという災害を避ける為に、一時的に巨人の血液中に自分たちの記憶と意志を避難させ、ひたすら他の宇宙船からの救出を待つのである。
つまり、巨人や壁内人類の中に、最初から巨人化能力者が潜んでいたのだ、というのがこの仮説です。
この仮説を使えば、ベルトルトの「お願いだ 誰か僕らを見つけてくれ」(12巻第48話「誰か」)というセリフの意味も説明できます。
巨人化能力者は、巨人という救命カプセルの中で救助を待つ漂流者なのです。
このあたりのモチーフは『十五少年漂流記』や『ロビンソン・クルーソー』だと思われます。
以下、この仮説にしたがって考察してみます。
壁内では、レイス家や王政と戦う勢力がいると仮定します。
ここではその勢力を、グリシャ・イェーガー達だとしましょう。
レイス家のみに使用できるとされる「この世界のすべてを創造するシステム」は、本来は別の目的に使用されるはずだった。
しかし、レイス家は「神を生み祈りを捧げ、平和な世界を作る」ため、王政は自分たちの権力を維持するため、そのシステムを不正使用している。
このままでは、この世界の本来の目的が果たせません。
フリーダの「罪人」という言葉から、この世界は罪人を罰するための地獄のような場所ではないかと思われます。
事実、ユミルも「もう直(じき) この壁の中が地獄になるのは避けられない」と、12巻第50話「叫び」でナレーションしています。
(私自身、とある神話から、壁内は地獄だという説も考えていました。SFでも流刑星は良く出てくる設定です)
ただし、エレンが敵意を向けた巨人を、他の巨人が食べるのを見て、「この世界にも未来がある」と思い直し、ヒストリアに詫びてライナーたちの方へ走ります。
(ユミルは、エレンがいれば「この世界にも未来がある」と考えています)
(これはレイス家の巨人の持つ創造の力と関連する可能性が高いと思われます)
この世界を本来の正しい世界に戻そうとする勢力がいた。
それがエレンを所有するグリシャ・イェーガー達だった。
グリシャ達は「自分たちの体内に巨人が隠れている」という事実を知っていた。
彼らは王政から隠れて過去の歴史を保存し、体内の巨人の”戻し方”も知っていた。
つまり、世代を超えて壁内人類の体内に遺伝され続けてきた巨人化能力者を、もとの人間に戻す方法である。
その元の人間に戻す方法が、「①注射で巨人化して、②血縁者を食べる(正確には脊髄液を体内に入れる)」事。
この2つの条件が揃わないと、人間に戻れないのである。
巨人はなぜ人を食べるのか?
人間に戻るためである。
そのために、巨人には食人衝動が与えられている。
しかし、巨人がいくら人間を食べても、今のままでは絶対に人間には戻れない。
第1条件の「注射」が無いからである。
つまり、巨人たちは人間に戻るために人間を食べているのだが、まったくのムダなのだ。
ユミルはこれを、「終わらない悪夢を見ているようだった」と表現した。
ユミルのセリフは、巨人になっても人間の意識が残っているということを示している。
同時にこのセリフは、エレンの母を食べたカルラ・イーターにも、カルラの意識が残っていた可能性がある事を示している。
(この点については、各話考察や座標の項目で詳しく考察したいと思います)
ユミルは「マルセルを食った」とベルトルトは言った。
このマルセルという名前は、雑誌掲載時のべリックから、単行本になる際に変更されたものだ。
それとは別に、私は「ユミルが人間に戻ったのはライナーたちの仲間を食べたからではなく、彼の携行してた注射液を一緒に食べたから」という仮説を立てている。
私はこの仮説に基づき、「ユミルに食べられたのがべリック。べリックの携帯していた注射液の中身がマルセル(またはその逆)」だと考えている。
ライナーもベルトルトも実は注射液(脊髄液)の方の人格なので、べリックについても「注射液(脊髄液)の方の名前」で呼んでいるのではないだろうか。
実はキース・シャーディスも、グリシャの仲間だった。
グリシャ達は壁内の様々な場所に、様々な職業で潜伏した。
グリシャは医者になって攻撃目標であるシガンシナ区に潜伏し、キースは調査兵団に入って機会をうかがった。
グリシャは医者なので、堂々と住人の体を調べることができる。
健康診断や治療をしながら、グリシャは巨人を人間に戻すために、巨人に食べさせるイケニエを選びだした。
巨人の中で眠っている人間達を、仮に「巨人スリーパー」と呼ぼう。
巨人スリーパーの氏名は分かっていた。
もともと巨人スリーパーは人数が少ないのに加え、巨人の顔を見れば、その特徴から中で眠っているのが誰かは判別できた。
グリシャは巨人スリーパーの近親者(子孫または先祖)を探し出し、ピックアップした。
グリシャがその情報をキースに流し、キースはその中で調査兵団に入った者を隊員にした。
そして、キースはイケニエに選ばれた隊員を壁外調査に同行させ、巨人スリーパーを特定できた巨人にわざと食べさせた。
それがモーゼス・ブラウンである。
冒頭の巨人の顔が隠されているのも、これが理由である。
冒頭の巨人の中にはライナー・ブラウンが眠っていた。(※本名は違うかもしれない)
したがって、巨人の顔もライナー・ブラウンに似ていたと考えられる。
その場合、もしも普通に巨人の顔を描いてしまったら、食べた巨人と、食べられたモーゼスが良く似ている事に疑問を持ち、真相に至る読者がいるかもしれない。
だから、作者チームは冒頭の巨人の顔を隠した。
その代わり、「口の右から出る蒸気」を描き、冒頭の巨人とライナー・ブラウン(鎧の巨人)は同一人物である、というヒントを残したのである。
グリシャとキースは、この方法で何人かの巨人スリーパーを人間に戻した。
この戻された人間が巨人化能力を使って、壁を本来の姿に戻すために、人類への攻撃を開始したのである。
キースの役割はそれだけではない。
訓練兵団104期に、巨人能力者やアッカーマン家の末裔など特殊な素材が集められたのは偶然ではない。
キースがわざと集めたのである。
また、9巻37話「南西へ」において、ヒストリアはユミルに、「 やっぱり…私の実力が今期の10番以内に見合うはずがない… 誰に聞いたって10番以内はあなただと答えるはず… どうやったか分からないけど… あなたは私に憲兵団を目指すよう促すばかりか その権利さえ私に渡そうとした… 何で…私にそこまでするの?」(「ユミル」参照)と疑問を投げかけている。
これも、 キースならばヒストリアを10位に入れることは簡単である。
また、4巻第15話「個々」において、キースは侵入訓練兵を罵倒する「通過儀礼」を行うが、エレンたち一部の人間には何も言わない。
通りがかった他の団員が「何も言われない者は、2年前の地獄を見て、すでに通過儀礼を終えている者たちだ」と読者に説明する。
これもキースが「別の理由」で通過儀礼をしなかったと考えれば納得できる。
キースに通過儀礼をされなかった者は、画面上で見る限り、アニ、ミカサ、ライナー、ベルトルト、エレン、ユミルである。
かつて王政の一員だったアッカーマン家(とされる)ミカサ以外は皆、巨人化能力者である。
もしもこの人選が、キースと関係の深い人間だとすれば、キースはユミルについても何らかの関係を持っていた(知識があった)可能性がある。
キースは今までのセーブデータ、言わば 「予言の書」に書かれた通りに行動しているのかもしれない。
しかし、キースには罪の意識もある。
腕だけになったモーゼス・ブラウンの母に、「息子の死は、人類の反撃の糧になったんですよね」と涙ながらに迫られて、 キース は感情を抑えられずに泣いてしまう。
実際には、モーゼス・ブラウンの母の言葉とは正反対だったからだ。
「モーゼス・ブラウンは”人類の糧(かて)”ではなく、巨人の糧(エサ)になった」
「そして、 あなたの愛する息子の死こそが、”この人類”を絶滅させる最初の一歩なのだ」
キースは罪の意識に耐えられず泣いてしまったが、自分たちの企みを知られぬよう、「巨人討伐が失敗し、モーゼス・ブラウンが死んだのは、わざと失敗させたわけではなく、あくまでも自分たちが無能だったからだ」という印象操作をする事も忘れなかった。
ただし、この「無能」という言葉には、
「自分たちにはやらなければならない使命がある。
しかし、自分たちは無能で、壁内人類を滅ぼす事しか使命を果たす方法を思い付く事が出来なかった。
誰も人なんか殺したいなどと思わない。
だが、誰かが自分の手を血で染めて、やり遂げなくてはならないのだ」
という意味も込められているのかもしれない。
すなわち”ベルトルト・フーバー”である。
グリシャやキースたちは、先代のライナーたちなのかもしれない。
この世界は多元宇宙の一つ。
多元宇宙のどこにいるのかを示すのが座標。
巨人あるいは液体の姿で多元宇宙を渡り歩き、前の世界で成功したところまでを再現。
失敗したところがセーブポイント。
失敗すると、その宇宙は崩壊する。
グリシャやキース達は自分たちの行動記録(セーブデータ)を持ち、それに従って前回のゲームプレイをトレースし、セーブポイントまで行動を進める。
キースがブラウン(の子孫または先祖)を食べさせるのも、壁襲撃も、シガンシナ区が最初に襲われるのも、レイス家襲撃も、すべて以前に起こった出来事をわざと繰り返している。
グリシャが自分をエレンに食べさせたのも、前のゲームプレイそのままの行動。
表紙の内容が本編と異なるのは、表紙は別の宇宙でのプレイ内容だから。
何故かどの宇宙にも、霊長類に相当する人型の生物が存在する。
どの宇宙でも、生物界の頂点に立つ生物は、進化すると人型になってしまう。
実は、巨人や液体の形で多元宇宙を渡り続ける「生物の素」が、それぞれの宇宙で生物に入り込む。
この「生物の素」が入りこんだ生物が進化し、その宇宙の生物の頂点に立つ人型の生物になるのだ。
これが、それぞれの宇宙の頂点に立つ人型生物=人類 の起源である。
そのため、 それぞれの宇宙の人類は、ルーツとなる生物が異なる。
壁内人類=犬から進化した人類。
黒髪は主人なので、白髪はつい命令に従ってしまう。
カルラ=黒、ハンネス=白。
ライナーたち=猿から進化した人類。
巨人化の注射液の中身には、多元宇宙を旅してきた全ての記憶が詰まっている。
15巻の表紙のエレンは、何代か前のヒストリアに食べられるバッドエンドのエレン。
エレンはヒストリアに食べられて、一瞬で次々に生まれては消滅を繰り返す全宇宙の俯瞰図とその歴史を見る。