第67話「オルブド区外壁」考察

オルブド区の名前の意味

オルブド=オードブル(前菜)のアナグラム。

もともとシガンシナ区やオルブド区のような突出部は、巨人の攻撃を突出部に集中させて、壁内人類が防衛しやすくするために設置されていると、1巻の「現在公開可能な情報 1.街が壁から突出している理由」で説明されています。

防衛する壁内人類が一番困るのは、同時多発攻撃や多正面作戦ですから、敵の攻撃が一カ所に集中すると分かっていれば、そこに防衛力をあらかじめ集中させる事が可能になるというわけです。

つまり、突出部は巨人を集めるための誘蛾灯であり、被害担当艦なのです。

 

しかし、「オルブド=オードブル(前菜)」という読解が間違っていないなら、逆の解釈も可能ではないでしょうか。
突出部は巨人を倒すためではなく、「巨人にエサを与えるために作られた」のではないでしょうか。

 

ここで一つの仮説を立ててみます。

「突出部の街=オルブド=オードブル(前菜)」だとすれば、この名前には、突出部は「巨人をウォール・シーナの中央に誘導するためのガイド」であり、「人間(エサ)補給所」だという意味が込められているのではないでしょうか?

実際にエレン達のいる三重の壁は、壁ごとの突出部をたどって行けば、自然にウォールシーナの中央に行き着く構造になっています(ご丁寧に東西南北に川まで延びている)。

つまり、エレン達のいる壁は、「壁そのものが巨人の食事のために用意された料理皿」、

「ガイド 兼 エサ補給所である突出部によって巨人に人間を補給させつつ壁の中心に誘導」、

「最終的にウォール・シーナの中央にできる限りベストの状態の巨人を到達させる」。

そのための、巨大な生け簀(す)。

 

だとすると、レイス家の継承者が真実を公表しないのも理解できます。

壁内人類は巨人のエサとして閉じ込められている存在だからです。

第1話の冒頭ナレーションのように、人類が「恐怖」や「屈辱」を感じるのも当然です。

要するに、寿司屋の店頭の水槽で泳ぐ魚と同じ運命が待っているわけです。

 

 

 

 

奇行種の方が正常?

上記のように、壁が巨人のために作られたものだと仮定します。

そうすると、ハンジ・ゾエの「奇行種」の説明が気になります。

 

ハンジ 「目標の巨人はより大勢の人間が密集する方へと吸い寄せられる・・・いわゆる「奇行種」」

 

少し話題から外れますが、当時、読者からは、このハンジの「奇行種」の説明は、従来の奇行種についての解釈と違うんじゃないのかという疑問が呈されました。

今までの作中の描写から、奇行種とは文字通り「通常と違う行動=奇行」をするタイプの巨人のことだと思われていたからです。

実際、1巻で奇行種がエレンの班を襲っていますが、エレンの班はそれほど大勢とは言えない人数です。

2巻ではコニーがエレン巨人を「巨人を殺しまくる奇行種」と呼んでいますし、9巻ではミケも獣の巨人を見て「ただ歩き回っているあたり奇行種に違いないだろうが…」とナレーションしています。

また、ジャンも2巻第8話「咆哮」で、ガス補給所に突入した後、巨人に囲まれたときに、「しまった…… 人が集中しすぎた…」と語っていますので、通常種にも人の多い方に集まる習性があるようにも見えます。それともすべて奇行種なのでしょうか?

コニーとミケの場合は、通常の巨人とは違って「人を襲わない巨人」「人の方に近づいて来ない巨人」を奇行種と呼んでいることになり、ハンジの説明とは異なります。

何故こんな矛盾する説明が急に出てきたのか?

あくまで想像ですが、原作チームは連載長期化に伴って、一部の設定やストーリーを改変しているのではないでしょうか。

だとすると、原作チームは少々無理をしてでも、作品前半の伏線を無かった事にしたり、別の解釈に差し替えたりする可能性があります。(実際に鎧の巨人などはデザインが大幅変更されている)

ただ、ハンジは奇行種全体の定義ではなく、単に「通常と違う行動をするから奇行種に含まれる」と言っているだけなのかもしれません。

その場合は、文章のプロである編集者がチェックする連載漫画で、なぜこのような誤解を生みやすい文章にしたのかという問題が生じます。

たとえば、

「目標の巨人はより大勢の人間が密集する方へと吸い寄せられる「奇行種」」

「目標の巨人はより大勢の人間が密集する方へと吸い寄せられるタイプの「奇行種」」

と書くだけでも、かなり誤解は防げます。

なぜわざわざ「いわゆる」という言葉を付けたのか、少々謎です。

 

 

さて、門のある突出部にわざわざ大勢の人間を密集させているこの壁は、まさにこの「奇行種」を誘導するのには都合の良い構造です。

つまり、壁はもともとこのタイプの奇行種を中央に誘導するために作られたのではないでしょうか。

オルブド区外壁 突出部で中央に誘導.jpg

突出部はグリム童話の『ヘンゼルとグレーテル』における「パンくず」に相当します。

(※ウェブサイトで、訪問者が現在どの階層の、どのページを見ているのかを見失わないように設置されるサイト内リンクの一覧を「パンくずリスト(breadcrumb list)」と呼ぶ)

レイス家以前に、最初に壁を作った者にとってはこのタイプの奇行種の方が正常であり、通常の巨人の方がむしろ、本来の目的から見るとイレギュラーなのではないでしょうか。

 

しかし、突出部が誘導のために設置されているとしたら、ロッド・レイス卿の巨人のサイズでは突出部が大きすぎる気がします。

実は、壁は「ロッド・レイス卿の巨人よりも、もっと大きな巨人」を想定して作られているのではないでしょうか

 

 

 

 

硬化能力とライナー・ブラウン

 

「ヨロイ ブラウン」の注射液を飲んだことにより、エレンに硬化能力が発現します。

用途別の巨人注射があるという仮説が、一応これで証明されたと考えていいでしょう。

硬化能力を発動した後のエレン巨人は、今までと違って硬質化した体が残っています。

その顔の目元は、ライナー・ブラウンによく似ています(口元はエレン巨人のまま)。

残念ながら、エレン巨人が硬化能力を使っているシーンはカットされていますので、私が以前から指摘している「1巻冒頭の巨人はブラウン巨人。冒頭の巨人と鎧の巨人は口の右から蒸気を吐く点で共通しているから」が真実かどうかを確かめることは出来ませんでした。

硬化能力を得たエレン巨人が口の右から蒸気を吐いていれば、「鎧の巨人はウルトラセブンのカプセル怪獣のように、注射液で発現する能力である」という可能性が高まり、冒頭の巨人の謎を分析する一助となったと思うのですが、エレン巨人が動いているシーンが無かったことは残念です。

 

特に最近の『進撃の巨人』では、このように謎の手掛かりになるはずの場面をカット、あるいは展開を飛ばすことが多くなっている気がします。

 

同時に、今まではライナーたちの巨人化した姿から、巨人の容姿は変身前の容姿に左右されると考えられてきたが、「ヨロイ ブラウン」の注射液でエレンが変身した巨人がライナーに似ていることから、注射液の種類でも巨人の容姿が変化することがほぼ確実となりました。

そのため、第1話の超大型巨人も、ベルトルトではない可能性が考えられます。

 

 

 

骸骨エレンの意味

 

今回の1ページ目は、意識を失ったエレンの見る夢?の映像から始まります。

夢の中で、エレンは蛇のように背骨の長い骸骨になっています。

この骸骨は、前回でロッド・レイス卿が変身した巨人の骸骨16巻表紙でヒストリアの後ろにいる骸骨に似ています。

おそらくこれは、エレンとレイス家の共通性を表していると考えられます。

そこで、この骸骨について少し考察します。

 

 

◎注射液「ヨロイ ブラウン」の影響

まず考えられるのは、注射液がエレンに影響を与えたという可能性です。

この場合、共通性があるのはレイス家と注射の中身の骨髄液だという事になります。

つまり、骸骨の夢を見たのはエレン自身が原因ではないという事です。

 

◎背骨=鎖(連鎖)と同一イメージ

次に、エレンが原因だと仮定します。

背骨と鎖は連鎖を表す記号だと考えられますので、エレンとレイス家は、何らかの反復経験を継続している家系であると見ることができます。

それが親食い(記憶と力の継承システム)なのか、ループなのか、リセット/リスタートなのかは不明です。

現時点で考えられる可能性は2つ。

 

(1)ロッド・レイス卿巨人の背骨が長いのは、歴代継承者の記憶を保存するため

歴代継承者の膨大な記憶を保存するために大量の骨髄液が必要なので、ロッド・レイス卿が変身した巨人は背骨が長いのではないでしょうか。

つまり、ロッド・レイス卿は「生きたハードディスク」であり、「データベース」

現在、作中でハンジも発言していますが、注射液の中身は骨髄液だと考えられます。

ロッド・レイス卿の巨人は、実は「巨大な骨髄液の注射器」なのではないでしょうか。

 

(2)エレンも大量の記憶を保存している

(1)が正しい場合、エレンとレイス家の骸骨が同じという事は、エレンの中にも歴代のイェーガー家?の記憶が大量に保存されているという事になります。

つまり、イェーガー家も親食いによって記憶と力を代々継承してきた家系という事です。

 

すると、ひとつの疑問が生じます。

レイス家は、この親食いで継承した記憶と力によって、真の王とされてきた。

という事は、この親食いは「壁の王家特有の習慣」ではないでしょうか?

つまり、イェーガー家も王家だという事です。

 

この場合、2つの可能性が考えられます。

①エレンはこの壁の王家である(レイス家の血統 or レイス家以前の正統な王家)

②エレンは別の壁の王家である

 

 

 

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最終更新:2015年08月08日 00:33