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由来
宮域林きゅういきりんは約2,000年前、第11代垂仁天皇の御代に天照大御神が現在の神域に御鎮座なられたときから、神路山、天照山、神垣山などと呼ばれ、大御神の山として崇められている。
第40代天武天皇の御代に、20年に一度御社殿を造り替え、大御神にお遷りいただく「式年遷宮しきねんせんぐう」の制度が確立され、第41代持統天皇の御代(約1,300年前)に、第1回の式年遷宮が行われ、宮域林は、御造営用材を伐り出す「御杣山みそまやま」と定められた。
その後、材の欠乏により御杣山は他所に移ったが、御造営上最も神聖な「心の御柱しんのみはしら」は今でもこの山から伐り出されており、また、式年遷宮の最初の御祭である山口祭、木本祭もこの山で行われている。
このように宮域林は、古来、神宮の境内地として管理経営されてきた由緒ある森林である。
地況
宮域林は、伊勢市の南部に位置し、標高300~500mの尾根で囲まれ、内宮を南から抱える一団地をなし、五十鈴川の水源である神路山、島路山と宮川流域の前山とからなっている。
地質は主として古生層からなり、土壌はほとんど褐色森林土で、鷲嶺と朝熊山を結ぶ断層線を境として、北部は古生層下部の変成岩からなる御荷鉾みかぶ層に属し、土層も浅く、樹林の生育は良くないが、南部は堆積岩からなる秩父古生層であり、土壌が腐植物に富み土層も深いところが多く、樹木の生育には適している。
林況
年間降水量は3,000㎜弱、年平均気温は15℃を少し越える。
宮域林の半ばを占める天然林は、スギ、モミなどの針葉樹にカシ類、シイ類、タブノキ、クスノキ、ヤブツバキ、サカキなどの常緑広葉樹(照葉樹)が混交している。植物の種類も豊富で、一部に天然ヒノキ、他の地域には見られないトキワマンサクの自生地があるほか、クスノキやヤブツバキの純林が見られるなど木本類約120種、草本類約600種、シダ類約130種に及ぶ学術的にも貴重な森林である。
人工林は、御造営用材生産のためのヒノキを主とし、森林生態系の調和を図るため、広葉樹との混交林に誘導する施業を行っている。
宮域林の管理経営
- 宮域を大別して、神域と宮域林に分け、宮域林を第一宮域林と第二宮域林とに分ける。
- 神域の森林は、専ら神宮の森厳を保つことを目的として、自然の保護に努め、樹木の生育上必要な場合の外は絶対に生木の伐採は行わない。
- 第一宮域林は、神域の周囲並びに宇治橋付近、宮川以東の鉄道沿線より望見できる箇所で、五十鈴川の水源の涵養、宮域の風致増進を目的とし、風致の改良及び樹木の生育上必要な場合の外は生木の伐採を行わない。
- 第二宮域林は、神域及び第一宮域林以外の区域で、第一宮域林と同じく五十鈴川の水源の涵養、宮域の風致増進を図りつつ、御造営用材育成のため、ヒノキを主材木とした針広混交林を仕立てる。
以上の基本方針が大正12年の神宮神地保護調査委員会で決議され、この方針に基づき、最初の森林経営計画が編成されて以来、今日までこの基本方針を変えることなく受け継いでいる。
宮域林面積
宮域林(5,446ha) |
第一宮域林(1,094ha) |
・広葉樹他( 925ha) |
・ス ギ( 87ha) |
・ヒ ノ キ( 75ha) |
・除 地( 7ha) |
第二宮域林(4,352ha) |
・ヒ ノ キ(2,459ha) |
・広葉樹他(1,708ha) |
・ス ギ( 153ha) |
宮域林蓄積
宮域林(734,570㎥) |
第一宮域林(126,847㎥) |
・広葉樹他(87,453㎥) |
・ス ギ(26,887㎥) |
・ヒ ノ キ(12,507㎥) |
第二宮域林(607,723㎥) |
・ヒ ノ キ(445,482㎥) |
・広葉樹他(123,229㎥) |
・ス ギ( 39,012㎥) |
神域
神域は、神宮の森厳の保持を最大の目的に禁伐とし、自然の保護に努めてきており、学術的にも貴重な森林である。
内宮神域は、御社殿を中心に93haの面積を有し、その中央を島路川が東西に流れている。また、外宮神域は、御社殿を中心に90haの面積を有している。両宮とも森林は針広混交の天然林で、暖温帯林の代表的な林相を呈している。
なお、このほか、内宮・外宮神域以外の別宮の神域面積は58ha(月讀宮4ha、瀧原宮45ha、伊雑宮3ha、倭姫宮4ha、月夜見宮2ha)、摂社・末社・所管社の社域面積は26haである。
第一宮域林
面積は1,094haで、大部分が神域と同様の天然林である。
第二宮域林
面積は4,352haで、防火樹帯160ha、除地32haを除き、特別施業地と普通施業地に分けている。
1、特別施業地
面積は1,259haで、神路川、島路川や道路沿いの森林、クスノキ、ヤブツバキの純林等学術上貴重な森林を特別施業地として保護に努めている。
2、普通施業地
面積は2,901haで、大部分がヒノキ人工造林地であり、御造営用材生産のための施業を行っている。
(1)御造営用材の生産
① 御造営用材は、1回の遷宮に材積で約1万㎥(本数で約1万4千本)の素材が必要である。この材は胸高直径60㎝前後の立木からの採材が主体を占めていることから、この径級の材を出来るだけ短期間に生産できるよう、将来的に残す木を早い時期に選定し、この木の肥大生長を促進させる施業を行っている。
② ヒノキについて将来的に残す木のうち、大樹を期待できる木(大樹候補木)には、二重ペンキ、これに次ぐ成長を期待できる木(御造営用材候補木)には、一重ペンキで表示している。
③ 大樹候補木をha当たり50~70本程度選定できる箇所を第一作業級(A材分)、これ以外を第二作業級(B材分)として扱っている。なお、第二作業級であっても、ha当たり10~15本の大樹候補木を選定することとしている。
④ 大樹候補木の肥大成長を促進させるため、間伐は、隣接木で枝先が触れあう木を伐る(受光伐)方式を行っている。間伐を繰り返していく時点で、疎開した林地に広葉樹が侵入してくるが、このうち有用なものは育成し、生態的にもバランスのとれたヒノキ・広葉樹の混交林とすることとしている。
⑤ 200年で、ヒノキのha当たり本数は100本程度で、平均胸高直径は大樹候補木100㎝以上、御造営用材候補木60㎝以上を目標としている。
(2)大樹育成試験
出来るだけ短い期間に大樹を育成できるよう、ヒノキについて、受光伐と普通間伐の成長量比較、施肥と無施肥との成長比較を行っている。これまでの調査では、受光伐することによって肥大成長は促進できるが、施肥の効果はあまりないという結果が出ている。
佐八そうち苗畑
苗畑面積は4.1haあり、ヒノキ造林のため、宮域林内の優良木からの種子を採取し、ヒノキ苗木の生産を行うとともに、祭典用のサカキの生産にも努めている。
萱地
御社殿の屋根は萱で葺かれ、1回の遷宮に精選された直径40㎝の束が2万3千束必要である。この萱を生産するため、萱地は7箇所235haあり、現在ではこのうち、川口萱地99haのみからの生産となっている。
明治百年記念林
明治百年を記念して、昭和44年から伊勢湾台風の被害林処分による資金をもって、熊本、宮崎両県に設定された。将来、宮域林における御造営用材生産の補完的役割を担うものである。
明治百年記念林別面積・蓄積表
第一記念林熊本県水上村 : 66ha、 12,356㎥ |
第二記念林宮崎県西米良村: 299ha、 66,314㎥ |
第三記念林宮崎県椎葉村 : 101ha、 22,774㎥ |
第四記念林熊本県球磨村 : 239ha、 41,817㎥ |
第五記念林熊本県水上村 : 376ha、 79,428㎥ |
計 :1,081ha、222,689㎥ |
以上、神宮司庁営林部平成18年11月01日資料より
最終更新:2009年04月18日 11:45