訪問教育
訪問教育とは、障害の状態が重度であるか又は重複していて、養護学校等へ通学して教育を受けることの困難な子どもが、養護学校に籍を置き、先生がその家庭や病院、児童福祉施設などに出向いて指導する教育形態の一つである。そのため、子どもの住んでいる家や病院、施設が校舎であり、その住んでいる町そのものが校庭のようなものである。
 また、この教育形態は、養護学校に通学して教育を受けることができるようにするための一つの方途としての意義もある。児童生徒の個々の実態にあった教育目標を立て、教育内容を工夫して指導が行われ、それぞれの健康の状態によって、ときには、登校して学校で友達といっしょに遊んだり、学習したりする集団指導の機会(スクーリング)を設けるようにしている。
日本で訪問教育が始められたのは、1960年代も終わりのころである。それは、「就学猶予・免除の子どもとたちをなくそう」という運動が、全国的にすすめられたことによる。
 当初、訪問教育は、各地方自治体で様々に取り組まれていた。これが、1979年4月に養護学校義務制がスタートし、国として行われるようになった。
 そして文部省の「訪問教育の概要」(試案)が、実質上の基準となり、現在に至っている。当初、指導回数・時間は週2回で1回あたり2時間の訪問教育も、1991年の教員定数法の改定で訪問教育も児童・生徒3人で1学級となり、地域によっては、訪問回数の改善が図られている。
 そして、訪問教育高等部も試行的実施とはいえ、1998年4月から全国的に実施されている。
 また、訪問教育に関して、1988年に全国の訪問教育に携わる教師や研究者などを中心に「全国訪問教育研究会」というものが結成された。この団体について少し紹介する。
●「全国訪問研究会」
「全国訪問研究会」では、訪問教育」を受けている子どもたちの教育環境の整備と充実を目的としてめざし、訪問教育の実践、そのあり方について、継続的、科学的に研究を組織し、全国における訪問教育の質的向上を図るための諸活動を行っている。
 これまで行われてきた主な活動としては、
  1)訪問教育の全国的調査(1989年5月実施、1993年5月実施、1997年5月実施)
 2)年一回の全国大会の開催
 3)隔月の会報(全訪研ニュース「こんにちは」)発行
 4)研究集録の発行
 などがある.
 1999年1月現在、会員数452名(訪問学級担任をはじめ、保護者、施設の職員や大学の研究者など訪問教育に関心のある方たちも多数入会している。)
※全国訪問教育研究会の研究と課題
 研究と課題について、次のようなことをあげている。
 1)各地のすぐれた訪問教育の実残、教材などの紹介
 2)訪問教育がかかえている教育条件等をめぐる情報の交換と交流
 3)最重度、重症の子どもたちへの教育内容、方法等の研究
 4)慢性病児、難病患児への訪問教育の実技およびそのあり方についての研究
 5)福祉施設、医療施設での訪問教育の実践およびそのあり方についての研究
 6)訪問教育の後期中等教育の実践及びそのあり方についての研究
 7)医療その他の機関との連携
※「全国訪問教育親の会」
 1995年夏、「全国訪問教育親の会」という活動が始まった。これは、訪問教育の高等部設置を目的として結成されたものである。
会誌により全国の親に情報を発信し、文部省、国会、都道府県に「訪問教育の高等部設置と制度的充実」を訴えたりしてきた。そして1996年には、文部省への要請書、国会への請願で、全国署名それぞれ23万8千人、21万人を集め、請願は両院で採択された。
 1997年4月、高等部が「試行」ながら、全国32都道府県で実施され、1998年4月には、全都道府県で「試行」実施された。
 訪問教育の高等部は、1999年3月「新学習指導要領」に明記され、念願の高等部訪問教育の全国的な本格実施は、2000年4月から始まり目標は達成された。しかし、幼児期から既卒者まで巾広く視野に入れた訪問教育を取り巻く環境の整備のために、運動は現在でも展開されている。
 また、現在、会誌を年6回発行、「親の会」全国交流研修会を年1回、東京にて開催している(本年度で3回目)。
また、今後の取り組みとしては次のようなことをあげている。
 1.教育制度面
  (1) 高等部への既卒者の入学促進
  (2) 「訪問教育」の内容充実と教育条件整備
  (3) 「訪問教育」幼稚部の設置
  (4) 卒後の問題への取り組み
 2.「訪問教育生」の状況把握
 3.親のネットワーク拡充
 4.活動資金の確保
  (1)購読料 (2)カンパ (3)助成金 (4)その他
※医療と教育研究会
新たな医療と教育の連携のあり方の研究を図り、特に、医療的ケアの必要な子どもの学校生活や卒業後の生活について研究する会である。
 活動としては、次のようなことがあげられる。
(1) 医療的ケアに関する情報交換をする。
(2) 医療的ケアに関する課題について理解・啓発を図る。
(3) 医療的ケアに関する課題について研究・研修する。
(4) 医療的ケアの必要な子どもの事例研究をとおして、学校生活
  や卒業後の生活等について研究する。
(5) 医療と教育の連携やネットワークについて考える。

このように、訪問教育について、さまざまな会が作られたり、多くの学校で訪問教育が行われている。しかし、最大の課題として、本来もっとも目をかけて力を注ぐべきであろうと思われる、最も障害の重い子どもたちの「教育」が、制度的にも、実態的にも、最も目をかけられていない遅れた状態にあるという事実もある。

homepage3.nifty.com/kazu-pageより一部引用
参考URL
www.geocities.co.jp/NeverLand/8145 -
www.abashiriyougo.hokkaido-c.ed.jp/homon/houmon.html
www.pref.mie.jp/GAKOKYO/plan/rikai/gakkou6.htm

りえ
最終更新:2007年03月01日 11:32