『花伝書』
『花伝書』:『風姿花伝(風姿華傳)』ともいわれる。
世阿弥が記した能の理論書のこと。世阿弥の残した21種の伝書のうち最初の作品である。亡父観阿弥の教えをもとに、世阿弥自身が会得した芸道の視点からの解釈を加えた著述になっている。
成立は15世紀の初め頃。全七編あり、最初の三つが応永7年(1400年)に、残りがその後20年くらいかけて執筆・改訂されたと考えられている。「幽玄」「物真似」「花」といった芸の神髄を語る表現はここにその典拠がある。最古の能楽論の書であり、日本最古の演劇論とも言える。『花伝書』との通称が使われていた頃もあったが、後の研究の結果、現在では誤称とされる。
内容は、能の修行法、心得、演技論、演出論、歴史、能の美学など。能の芸道論としても読めるし、また日本の美学の古典ともいう。Kadensho、Flowering Spirit などの題名で何度か外国語訳もされ、日本国外でも評価されている。
補充
花伝書は様々な特質があるが、教育の古典としては、発達段階にそって、その段階における指導原理を明確にしていること、しかもそれが小さい頃からかなり年配になるまでが配慮されていることが重要な点であろう。
ルソーが、子どもは単に小さな大人ではなく、それぞれの段階で特有の性質と価値があることを示し、「
子どもの発見」と言われているが、花伝書は規模は小さいし、また能の訓練という特殊な領域に限定されているが、ルソーよりずっと早く「子どもの発見」をしたともいえる。(わけい)
最終更新:2007年05月12日 22:36