自我同一性
自我は社会的発達の過程において、多くの他者や集団や社会の価値・規範・役割期待などを取得するが,その結果,それぞれの他者・集団・社会に対する複数の「・…としての自分」と,それぞれの他者・集団・社会と共通する観点・一般化された他者の観点を獲得する。
また個人はそれぞれの状況に応じて一定の社会的役割を果たすことによって自分の自我を確認し検証する。
例えば,長男(長女)としての自分,
友人としての自分,
男(女)としての自分,
会社の一員としての自分,
日本人としての自分
などである。
このようなそれぞれの「・・・としての自分」を選択しつつ行為するが,これら複数の「・・・としての自分」の同一性を統合し,秩序づけ組織化する普遍的統合的自我の連続性・斉一性・普遍性を自我同一性(ego-identity)と,
エリクソンは呼んでいる。それは,個人独自の存在であることの証明である。
各々の同一性は,個人が役割取得の過程で次々に獲得したものである。
この同一性の獲得は,社会的経験を深めるごとに累積的に行なわれ,職業人としての自分,退職者としての自分,親としての自分,老人としての自分などの役割を取得するように, 生涯継続する。
例えば,子どもから大人への移行期である青年期は,自我がこれら多数の同一性の中から,成人した自分にふさわしいもの、自分のものとして肯定しうるものを,あらためて自覚し選択しなおす時期である。
すなわち,青年期の自我は,彼が生まれ育った環境,その時代・社会が提供する価値や規範,役割,行為,権威のなかから自分の自我同一性と適合するものを意識的に選択し,独自の体系化を行なう。
この自己選択と,
幼児期以来,
無意識的に獲得していた同一性をいかに統合するかが,彼の重要課題となり,これが青年期の自我の自覚であり個々に自我の危機が生じる。
そして,自分にふさわしい「・・・としての自分」(同一性)を選択する青年期は,自己の内部に沈潜する
モラトリアムの時期である。
それはさまざまに自己選択と自己定義を模索し苦悩する修行期間であるから,社会の側が一人前の大人としての社会的責任や義務を一時的に猶予する時期として位置付けられる。
りえ
最終更新:2007年11月13日 01:36