時効制度について


 日本の法律上、ある程度の期間を有しても解決しない事件の加害者は時効制度によって捜査が打ち切られることがある。このような時効制度の扱いは各国において差があり、アメリカでは殺人のような凶悪な事件に限って時効制度が認められていない。時効制度の取り扱いを考えたとき、重要となるのは被害者感情と加害者意識という相反する感情のどちらに重点的を置いたものであるかということである。
 時効制度を導入する利点は未解決事件を扱う人員や時間を削減できるという点が挙げられる。時間が経つことによって証拠や情報は減少し、捜査が難攻するだろう。しかし、事件はとどまることを知らない。よって、時効制度によって新たな事件への取り組みの強化が期待され、早期解決を目指す動機づけになるだろう。
 その一方で、時効制度は被害者やその家族が悔しい思いをすることにもなる。やはり、罪を犯した人間が裁かれないということは納得のいくことではない。このような被害者感情を満たすためには時効のような罪を帳消しにしてしまう制度は許し難い。
 しかし、今日の高度な技術によって事件当初は得られなかった証拠を見つけることが可能となったことも事実である。DNA鑑定もその1つだ。このように専門的な技術によって未解決事件を捜査している機関がアメリカでは存在しているという。つまり、ある程度の時間を有すことが事件解決を妨げるばかりであるとは言い難い。
 時効制度の利点と問題点を考えたとき、権利が認められるのは被害者なのかあるいは捜査する側の効率性なのかを考えなくてはならない。確かに期限付きの捜査ならば捜査する側も早期解決を目指して気合いが入るかもしれない。実際に、時効制度がある国とない国の事件の検挙数を比べてみても明らかなように捜査時間が長いからと言って時効制度のない国の方が検挙数が多いとは限らないのである。よって一概に時効制度の撤廃を認めることはできない。
 けれども、もしも殺人を犯した人間が見つかったが時効成立後だったために無罪となったとしたら被害者や世間からしたら許し難いことである。時効成立まで逃げ回っている間に精神的苦痛を味わったのであれば刑を受けたことと同様だろうと考えることもできるがやはり犯罪を犯したのであれば正規の形で罪を償うべきであると私は考える。
 よって、時効制度の全面的廃止は不可能であるが犯罪の凶悪性の度合いに応じて取り扱い方に違いがあっても良いのではないだろうか。このような点ではアメリカなどの取り組みを参考にすることもできる。時効の無い凶悪な事件については特殊な専門機関を置くなどして追い続けることも解決に加え凶悪犯罪への予防につながるのではないだろうか。



最終更新:2008年03月06日 01:33