MPI(モーズレイ人格目録/モーズレイ性格検査)
Maudsley Personality Inventory
MPIは基本的人格特性である
外向性-内向性と
神経症的傾向を測定することを目的とした検査であり、
アイゼンクによって1959年に発表された。アイゼンクは人格理論を類型論と特性論を統合するものとして評価されている。上から類型、特性、習慣的反応、個別的反応という水準によって構成されている階層構造も因子分析によって考えた。MPIはアイゼンクが勤務していたモーズレイ病院に由来している。
この検査は病院の外来および入院患者の性格診断として医師の助けになったり、心理相談、少年鑑別などの施設での指導、
カウンセリングの有力な道具として使用されたりしている。また、臨床現場だけでなく、教育現場での生徒の性格把握や職業指導、市場調査、人事管理など幅広く活用されているのである。
テストの体裁
外向性-内向性尺度をE尺度、神経症的傾向尺度をN尺度とし、2つの尺度に対してそれぞれ24の綿密な項目分析と因子分析によって選ばれた項目がある。日本版ではこのほかに、虚偽発見尺度(Lie Scale, L尺度)が20項目含まれている。L尺度は社会的には望ましい行為ではあるが実際には実行できそうにないことを項目としているため、この得点が高い被験者の全回答は信頼度が低いといえる。また、E.Nに類似しているが項目分析の際に不適当であった項目を12含んでいることから、全体では80項目が設定されている。(原著MPIはE尺度、N尺度合わせて48項目から構成されている。)よって、項目数が比較的少ないのが特徴である。また、被験者は16歳以上であり、集団検査、個人検査として利用できる。回答は「はい」「?」「いいえ」の3件法でおこなわれ、所要時間は15~30分程度である。
さらに、MPIは折衷法と再検査法の双方によって高い信頼性が認められており、他の検査と関連付けることで妥当性も確認されている。その他に、MPIで測定される外向性-内向性と神経症的傾向の2つの特性は、相互に独立したものであるということが言える。また、年齢差や男女差は有意というほどのものではない。このようにMPIは多くの利点があるため、広い範囲で利用されている。
採点方法
採点は所要の採点盤を用いることによって尺度別に容易に求めることが出来る。採点盤では、青の数字はN、赤の数字はE、黒の数字はLの得点であり、該当する項目の「はい」「?」「いいえ」に○印をつけ、尺度ごとに第2~4ページの粗点欄に記入し、合計を4ページの粗点合計欄に記入する。∑欄には「はい」「いいえ」の数を2倍したものと?の数を加えたものを記入する。合計で?の数が20以上ある場合は結果がかなり歪んだものになるおそれがあり、再検査が必要である。
判定チャートはE、N得点のおよその平均得点(24点)に0.5の標準偏差である5点を増減することにより、9つのカテゴリーに分類される。その際、被験者の年齢に応じてE、Nの粗点に修正点を加えた値を判定チャートに当てはめて、どのカテゴリーに入るかを求める。
解釈方法
結果は正常成人の平均点と比較して解釈される。以下に9つのカテゴリー別性格特性を簡単に記述する。しかし、単純に型に当てはまった特性だけでなく、下位特性についても考慮する必要があることは言うまでもない。さらにL得点の高低や不明(?)回答数についても考慮しながら解釈する必要がある。
E₀N₀型 比較的普通にみられる平均的な性格像
E⁺N₀型
外向性の特徴である。新しい場面へ高い順応性、仕事のテンポが速く人づき合いも良い現実に適合したタイプである。
極端にE得点が高い場合は軽躁的、精神病質との関係がある。
E⁻N₀型 口数が少なく控えめ、まじめであり落度が少ない。かなり恒常性を持っている。
社交性が乏しいため、無理をしてしまうこともある。
E₀N⁻型 落ち着いたこだわりの少ないタイプ。関心の幅が狭いが慎重で粘り強い傾向もある。
無感覚、遅鈍性、機敏さの少ない傾向が目立つこともある。
E⁺N⁻型 のんきで人づき合いもよく、仕事のテンポも速いが、物事をじっくり考えるのが苦手。
神経質でなく、劣等感や不安が少ないが思いこむと自我を通し融通がきかないこともある。
E⁺N⁺型 活動的で支配性も強く、物事を処理するテンポが速いが、過敏な面を持っていて気分にむらが出たりする。
E₀N⁺型 適度の社交性を持っているが、神経症的傾向が高いことが問題になる。
多少心気的であったり、仕事や対人関係での過敏性がある。神経症との近縁性がある。
E⁻N⁺型 小心、敏感、傷つきやすい。臨機応変な対応が苦手であるがまじめで責任感の強いタイプである。
神経症への発展を常に内蔵していることを考慮しておく必要がある。
L得点の解釈
L⁺型 検査が一定の目的を持って行われている時は高い傾向を示しやすい。
あまりに得点が高すぎるときは社会的経験の浅さや性格的な単純さを反映することが多い。
鬱病において高得点を示すことが多い。これは理想の自分を希望する心理の表れと解釈できる。
L⁻型 性格的に過度に正直すぎたり、融通がきかなすぎたりすることが稀ではない。
極端に後悔と反省の念に襲われたりする。また、あらかじめ検査の内容についての知識がある場合もL尺度が少なくなる。
最終更新:2008年07月13日 23:23