主題統覚検査(TAT)


 主題統覚検査(以下TAT)は被験者の内発的な欲求と環境の圧力を重視し、それらを対人的な場面の絵画に対する被験者の反応から分析するという投影法の代表的なものである。ロールシャッハ・テストに比べて意識水準が高く、対人関係的側面についての情報が得られるのが特徴である。

 TATで用いられる図版はいくつかの種類があるが、原型は1935年にマレーらによって作成されたハーバード版(マレー版)である。マレーは提示された絵を見て作られる物語は「その人の“生き方”がそこに示されるようなその人自身の世界」であるとし、TATはまさに人間の個性的側面を明らかにするといえる。


テスト方法
 TATは物語を作るテストである。検査者は必要に応じて何枚かの絵を1枚ずつ被験者に見せていき、被験者はそれぞれの絵に対して1つずつできるだけ想像力を働かせて架空の物語を作る。検査者は、前にどういうことがあったからその絵にあるようなことになったのか、現在は何が起こっているのか、その人たちはどんな気持ちで何を考えているのか、そしてこのあとの結末はどうなるかなどを踏まえて心に浮かんだとおりの被験者の考え方で物語を話すように教示する。また、物語が明瞭さを欠く場合や教示への合致などにおいて質疑をする際には1つの物語を語り終えた直後に行う。



テストの特徴
 TATの全体的特徴はまず、どのカードもなんとなく暗く、淋しげで憂鬱な感じがするということだ。これは幸福の姿は一様であるが、不幸の姿は個々に違っていて個性的であるといわれるように、被験者の作る物語が明るく楽しい絵によってワンパターンになるのを避けるためである。
 次の特徴として、カードに描かれている複数の人物がお互いの顔を見合せていないものばかりであるという点が挙げられる。これは人物を向かい合わせないことによって、複数の人物間に様々な関係を被験者の想像によって作ることを可能にしているのである。それは人間関係の様々な問題の検出に役立つという点で非常に重要である。
 そして3つめにカードが多義的でないものと多義的に描かれているものがあるということである。多義的でないカードには日常の場面に近い情景が描かれており、被験者も狙い通りの物語を読み取ることができる。しかし、被験者が防衛的である場合にはわざとはぐらかしたり、本当の感情を隠したりしかねない。一方、多義的なカードには非現実的・非日常的な情景が多く、狙いがはっきりせず、はぐらかすことができないなどの特徴がある。そして、このような場合では目には見えない内省観が物語に映し出されることが多い。
 また、親子の見方、異性関係の見方などある特定の性質を知りたい場合には各カードの特徴をよく理解し、その性質に応じて選択して実施することが大切である。


分析の方法
TATの基本概念としては標準的な反応からのズレと過去、現在、未来という時間軸を踏まえた物語の筋がある。物語が客観的な特徴から離れている部分にその人のパーソナリティが表れているという概念のもと、分析される。内容分析としては省略や歪曲、細部固執に着眼する。
最終更新:2008年08月09日 01:38