「開かれた
特殊教育へ」と題された次の記述に注目したい。
「昭和42 年度に実施された児童・生徒の心身障害に関する調査からも明らかなとおり、心身障害児の
障害の実態は複数多岐にわたっており、これに即応できるような、よりきめの細かい適切な教育体制が必要と成っ
てきている。また最近、心身障害児対する教育内容、方法等がかなり改善され、教育の効果についての社会の期待
と関心は急速に高まってきており、特殊教育のいっそうの充実整備が強く望まれている。このような実情に即し、
特殊教育については各種の改善を行うよう配慮する必要があるが、これまでの心身障害児に対する教育は、特殊教
育諸学校や
特殊学級を中心として、これらの教育機関への就学を奨励し、比較的固定した教育措置のもとに教育を
行うことを建前としてきたことなどから、
学校教育において別個の教育分野であるかのように、受け取られる傾向
も見られ、いまだ学校教育全体の中において心身障害児の様々な状況に応じた教育的配慮が十分に行われるような
態勢が整っているとは言えない」と明言し、その2 番目に「特殊教育の改善充実のための基本的な考え方」(辻村答申,
1969)として以下のようにまとめている。
①心身障害児の能力・特性等に応じ、柔軟で弾力的取り扱いをすること。
②普通児と共に教育を受ける機会を多くすること。
③早期教育および
義務教育以後の教育を重視すること。
④優れた教員を育成し、確保すること。
⑤一般社会に対する啓発活動を徹底すること。
この答申は、特殊教育の在り方を再検討する必要性があると叫ばれていたような社会情勢のもとで、未来への方向
付けがなされたものであり、我が国の特殊教育の発展に多大な影響を与えたものであるといえる。この答申には、「心
身障害児の全員就学」とも「統合教育」論ともとれるような提言がなされている。とりわけ心身障害児の就学に際
して「特殊教育の改善充実のための基本的な考え方」の①で述べられている「能力・特性に応じ、柔軟で弾力的な
取り扱いをすること」は、適正
就学指導を考える上で、これまで論じられてこなかった新たな点である。
最終更新:2013年03月04日 10:04