学習社会


学習社会とは、国民の生涯学習が普及した社会にことをいい、1968年に出されたシカゴ大学総長であるハッチンス(R.Hutchins)の著The Learning Society、を契機に広く使われるようになった。ハッチンスの「学習社会」の定義は、「すべての成人男女に、いつでも定時制の成人教育を提供するだけでなく、学ぶこと、何かを成し遂げること、人間的になることを目的とし、あらゆる制度がその目的の実現を志向するように価値の転換に成功した社会」のことである。価値の転換とは、教育目的が、職業教育から人間になるための教養教育へ転換することである。彼は、自由時間が労働時間を上回るのが未来社会だと展望し、自由時間における自己実現として学習を重視し、そうした社会の実現のためには制度の充実よりも価値の転換の方が必要であり、人々は「かしこく」「立派に生きる」ことを求め、教育はそのために人々に援助すべきである、そして「人間であり続ける方法は、学習を続けることである」と主張していた。また、ハッチンスの学習社会論は、1972年のユネスコ教育開発国際委員会報告書「フォール報告書」(Learning to be)に継承されている。
委員長の元フランス首相フォール(E. Faure )の名に因んだこの報告書は、「人間は存在を続け、また進化していくために、間断なく学習をしていかざるを得ないのである」として、ハッチンスの思想を敷衍して、「分割された人間」(man video)から「完全なる人間」(complete man)への転換として学習社会を構想している。中教審の81年答申では、学歴偏重社会から「人々の生涯を通ずる自己向上の努力を尊び、それを正当に評価する社会」をもって学習社会としている。しかし、最近は生涯学習社会という言葉のほうが一般的である。

参考URL
www.bunkyo.ac.jp/faculty/kyouken/bull/Bull12/shiino.pdf
www.tcp-ip.or.jp/~syaraku/manabu/jiten.htm
最終更新:2007年04月22日 21:32