書きフライ☆wiki支部内検索 / 「例えるならば、それは甘い音色を延々と垂れ流しされるように」で検索した結果

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  • 壊れる日々に射す、優しい光
    ... the rain 例えるならば、それは甘い音色を延々と垂れ流しされるように 第一章 ―邂逅― Day when Tuesday cleared up 斜角55゜からつまづく転び方は、最も美しい転び方である 名前 コメント
  • 例えるならば、それは甘い音色を延々と垂れ流しされるように
     空を覆う灰は、その色を一層と深め、その内に内包する水のしたたりを、大地に吐き出していく。  大地に当たっては爆ぜ、霧散する水の無形。次第に勢いを増していく雨の音色は、轟々という音を立てながら地面を強く叩いてゆく。  赤いレンガ造りの地面、長方形が規則正しくならんだ赤い絨毯を濡らし、その合間を川のように流れてゆく雨は、一体何処へ向かうのだろうか。  そんな他愛の無い事を考えている、一人の少年が居た。  櫻井雪、  そう名付けられた少年は、プラスチック材の屋根が立てられたベンチに座り、流れる滝が如く様々な思考をつらつらと流しながら、その双眸を深みを増していく空へと向けていた。  艶のある黒髪の合間から覗く黒曜石の瞳、日本人独特の線の細い、儚さを感じさせる輪郭に、整った鼻梁。見る者にガラス細工のような儚い魅力を感じさせるような少年だった。  黙考し、思案に耽る彼。その内に流れるの...
  • 例えるならそれは、甘い音を耳に延々と垂れ流しされているかのように
       
  • 9話
     例えば結末。  物語には必ず必要となるものだ。  言うならば起承転結の「結」、序破急の「急」に当たる部分。  要はどんな話にも終わりは着てしまうものだ。  例外なんてものもない。もし作者が死んでしまえば、そこが結末といえよう。打ち切りなんて物でも同じだ。  次の物語を失くしてしまえば、そこで何でも終わりだ。  人生でも同じ、死なない人なんていない。精々人間というものを例に出せば百三十歳がいいとこだろう。それ以上も確かにいない事もないが、流石に二世紀も存在し続ける事は不可能だ。別の生 物で例えてみても、人間より長い寿命を持った生物もいるが、確実に死は訪れる。  しかし、結末というのはそれほど重要なものだろうか?  私にしてみれば細く短く目立たない物語だってある。無理に盛り上げから終わろうとしても、それは起承転結の「結」の部分にまた別の物語を作るような物だ。  そのまま終わらせてしまえばいい...
  • ・世界は思っていたものとは違っていて
    世界は俺が思っていたものとは全然違った。 頭上の空は、どこまでも広がっているものではなく、巨大なビル群に囲まれ、切り取られたもので、それに澄んだ青ではなく、濁った色をしていた。 また、風は清らかな、そして母のように優しくつつんでくれるものではなく、身体を舐め回していくかのような、生温かく、毒々しいものだった。 だが、その2つ以上に僕の想像を見事にぶち壊したものがいた。 それは、象のような、だが象の数倍はある巨大な身体を道いっぱいに広げ、血のように赤い頭から尾に続くたてがみをなびかせながら、するどく巨大な牙を剥き出しにして、黄色い殺気だった目で俺を睨みながらこちらに向かってきていた。 「助けてくれ!!」 必死に叫び声を、恐怖で潰れそうな喉から吐き出すが、誰もがちらと俺のほうを見て、そして怪訝そうな顔をするだけだった。 ゆっくりと、だが圧倒的プレッシャーをはなちながら歩くその怪物から、俺を助け...
  • 未定
    アレックスは薄暗い室内で煌く人口の光にその目を釘付けにし、静まり返った室内に響く音声に耳をかたむけていた。 「――本日未明、ドイツの研究所で謎の爆発事故が起こりました。 発見された生存者は確認されているかぎり1名のみで、現在現地の病院で治療を受けているようです。 また、事故当時撮影された映像には研究所から出てくる人影らしきものが確認されており、今回の事故との関連性が調べられています」 揺らめく煙と炎の奥に、それらにとけてしまいそうなほどうっすらとした人影が確かに画面に映っていた。 だが煙が濃く、それはあくまでぼんやりとした人影としてしかとらえることができなかった。 そこで、アレックスはこう願った。 『あの人影の正体を見せろと』 そして、そう願った彼が見たのは1人の少年だった。 その髪も、肌も、瞳も、全てが白い少年。 純白などではなく、寒気がするような毒々しい不気...
  • 雷は大地を轟かし、悲惨は電波に乗って世界を回る
     空気を焦がし、舐め回すかのように燃え上がる炎、燃やされた者たちの悪意が湧き上がってきたかのように辺りを満たす濁った灰色の煙、鼻をつく肉の焼けた臭い。  そこは、まさしく地獄絵図だった。  恐怖と絶望で染色された悲鳴が飛び交い、さらにそれらをあざ笑うかのように炎が喧しい音をたてて燃え広がっていた。  突然、そんな地獄絵図を切り裂くかのように蒼い光が走った。  そして、その光の後を追って地獄の喝采をかき消すほどの爆音が鳴った。 「あァ、眩しいなァ、オィ。 それにうっせェなァ」  そんな混乱と混沌の中で、リジェンはその白髪をかきむしりながら、面倒くさせうに、しかし邪悪な笑みを浮かべながらそう言った。 煙の中からゆらりと現れたその不気味なまでの白を見て、逃げ惑っていた研究者たちはその顔をより一層、深い絶望の色で染めあげる。恐怖の重圧で押しつぶされそうな肺へ...
  • *3
    書:mack  デニスは作成書の端っこに書かれた「Jesus!」の文字の横に、自らのサモンを描いてみた。大剣を描き、それを持っている自分の姿も描いてみる。  昼から延々と続く補習は既に二時間、退屈な上に手首も痛くなってしまう。普段は明るく元気なデニスも、いい加減に辟易してしまった。 「ああ、もう……さっさと補習終わらないかなぁ~」  紙の上に、適当な絵を描きながらデニスは呟く。ついつい楽しくなってしまって、それを続けていたら、赤猿の科学教師が声を荒げた。 「デニス、そんなようにしてサボっているようならば、単位をくれてやらんぞ? 永遠に補習を遣り続けるのか、この馬鹿者!」  デニス以外にも数人、作成書に向かっている生徒が、教室内にはちらほらといる。彼は慌てて黒板の文章を写す作業を再開する。  一年生から三年生までの面々が、顔をつき合わせて机に向かっている姿は...
  • 「ならばもう終わりにしましょう」
    「ねぇ」 「ん?」 「・・・・ちょっと、話、いいですか?」 「何だよ、そんなかしこまって。お前にしては珍しいな」 「・・・・そういうときも、あるんです」 「あっそ。で、話って?」 「えっと・・・・何から、話せばいいのか・・・・・・・・」 「・・・・・・・・おい」 「はい?」 「その前によ、俺もお前に用件あんだけど、先にそっち済ませていいか?」 「・・・・いいですけど、何です?」 「簡単に、本当に簡単に言うと、その用件ってのは、お前に一言言うだけなんだけどよ――」 「――お前のことが、どうしようもなく、好きなんだ」 ――どうしようもなく。 否、どうしようもできないくらいの、力。 それが今、目の前にあった。 「・・・・レン、シー・・・・じゃ...
  • チンパンジーの陰謀と阿部さんの深意
    「小沢様!優秀なる我が軍により、現在、日本のおよそ8割を駆逐することに成功いたしました!」 可南子は高々とそびえる小沢の玉座(高さ8mくらい。)に深々とひざまづいて、甲高く申し上げました。 薄暗い小沢の部屋は(小沢は病弱なので、光にあたると芽が出てくる、もやしっ子)とてつもなく広く、中央には、幾度となくその場で処刑された人間たちの血の色と遜色ないレッドカーペットが敷かれていました。 松明が風に揺られて弱く笑う… 「うむ。」 と一言、小沢はうなずきました。 可南子の隣の阿倍さんが何かを言うかと思えば、ずっと口を紡いだまんまで、可南子は急にうれしくなり、にやけました。…なんだ、何も成果を上げていなかったのか! しばらく沈黙が流れました。パチパチと松明だけが広い空間に小さくこだましました。 だが、その沈黙も作者がダラダラ語る気も無いので、急に破られました。いきなり可南子たちの背後の扉が開いたので...
  • サクラビト
    私は少女なのです。 唯の少女なのです。 そこら辺に居るような少女なのです。 一介の、普通の、平凡な――女子学生なのです。 だから此の物語の中で、私についてはあまり触れません。 触れたくもありません。 どこにそんな必要があるのでしょう。 誰も望まないことでしょうし、勿論私もそんなこと望みません。 注目されるのは、苦手ですから。 だから此れは――ある一人の青年が主人公の話なのです。 奇しくも語り部は私になってしまいますが、その点は嫌々でもいいので、御了承ください。 では始めます。 +++ それは三月中旬あたりの出来事。 学校から我が家に帰るために、私は川沿いを歩いていました。 風が吹くごとに、私の左側からピンク色の花びらが舞って来ます。 素直に綺麗だと思いました。 同時に邪魔だと思いました。 嗚呼、...
  • 創作する際の自身の気持ちの持ち方。
     俺は、周りから何かと持て囃されるが、別に小説を書くにあたり何十時間も文章について勉強をした事は無い、せいぜいハウトゥーサイトの小説を書くにあたっての諸注意を2、3回程読んだ位だ。 他の小説から独学で、こういう風に書けば良いのかと思いながら常日頃文章を書いている。 では、本項では、俺が小説を書くにあたっての、向上心や文章力を上げる為のステップをお教えしよう。 ―Lesson1― 『まずは基本的な文章の書き方』 これは、小説を書く上での、最低限のマナー。そう『……』や『?』、『!』等の使い方。 これ自体は他のトピックにも記載されているので、一々書き加える必要は無いと思うが、とりあえず『……』は『三点リーダ』と変換すれば出てくるので、沈黙を表現する際に活用しよう。 『!』、『?』は、使った際には必ず一文字スペースを空ける動作をしておこう。 「この手に持っている物! なぁんだ?」 上例を見てもら...
  • 殺人請負ネット番外編-諦-
    「諦……?諦ってば人の話聞いてる?」 「……っ、ああ何だ?聞いてなかった」 「諦ってば、も~っ」  俺こと古宮 諦(フルノミヤ アキラ)は、最近理由もない空しさ、虚無感に襲われている。運動はもちろん、勉強もでき、彼女までいる。世で言う完璧な人間だ。だが、何かが足りない。パズルでいうならば、メインのところのワンピースが足りないという感じで、はたまたロボットで例えるならば、操縦者のいないような感じだ。そしてそれは、何をやっても埋まるどころか逆に開いてゆくのだ。秋の落ち葉と夕日がこんな思いをさせているのか? 「諦ぁ~、今度の土曜日……その……暇?」 「ああ、どうかしたのか?」 「いや……、で……デートしたいなぁ……、なんて」 「別に何でもいいけど」 「本当……!?ありがとう」 デート、か。これで俺の空しさが埋まるのならば、何でもやってやる。あ...
  • 3話
     例えばリストカット。  これは言うまでもなく自虐行為である。  でもそもそも自虐行為を何故するのか?  最近ではネタにしか捉えていない様な、ただの構ってちゃんの様な存在が見てほしさにする行為として成り立っている。  じゃあ自虐とはそもそも何なのか?何故行うのか?  まず分かりやすく、極端だがお金を例に挙げてみよう。  例えばパターンAの場合、宝くじの1等でも当たったとしよう。まず殆んどの人が「夢がも知れない」と、疑いを掛けてしまう。  逆にパターンBの場合、借金で破産してしまったとしよう。まず、殆んどの人が「夢だったら良い」と、疑いを掛けてしまう。  ここで言うならば、それが現実であるかを初めにどう受け入れられるかという事だ。パターンAとパターンBの違いはその出来事を現実としてどう受け止めるかで、パターンAの場合、大金がいきなり手に入ると言うのは、「夢かも知れない」という、現実を実感し...
  • ・白と紅、その2つは相容れぬもの
    ライオンの身体に、血のような不気味な赤みをおびた人面、そして蠍の尾をもつ怪物マンティコアが、その鋭利な歯を見せつけながらルールへと跳びかかって行く。 しかし、ルールはそんな怪物に対してまったく注意を向けず、氷のように冷たい瞳で1人の男性を見ながら、機械のような、感情のこもらない動きでその手に持った拳銃の引き金を引いた。 乾いた銃声に、管楽器のような怪物の悲鳴が重なり、奇怪なメロディーが奏でられた。 そんな風に、表情一つ変えず、何の躊躇もなく人を殺していくルールは、正義の味方や、警察官などにはまったく見えない。 だが、悪人や、狂った殺人犯にも見えなかった。 そう、例えるならば神や、まさしく呼び名の通り 【ルール】 絶対的な法のように思えた。 「オィ、ルール。 そいつは俺が殺るって言っただろが!!」 「仕事は終えた。」とでも言うように、男の死体から背を向けて歩き出したルールの前に、大河がそう言...
  • 「それでは、戻ります」
    「――どうして、退学なんかしたの?」 「その理由は・・・・お前なら分かるだろ」 「・・・・もう、抑えられないのね・・・・」 「オレだってもっとここに居たかった。けど、それよりも、好きな人を巻き込みたくは無い」 「なら! 私が、貴方の傍に死ぬまで居てあげるから――!!」 「無理なんだよ、もう」 「だけど、私は貴方の対極だから・・・・私なら貴方を――」 「駄目、なんだ。・・・・今、目の前にいる最愛のお前でさえを――」 「オレは壊したいと思っている」 雷の音が、今まで快晴だった空を埋める。 地響きが、今まで平和だった地を染める。 希望が絶望に成っていく。 「・・・・アブソー、チェイン・・・・すいません」 「・・・・なんでお前が誤るんだよ・・・・クルー」 クルーは情けな...
  • 海地戦記『一話』
    五十数隻の水上バイクが、大海に波しぶきをあげて走っていた。 二列縦隊の隊列を組み、先頭には矢じり形に三つのバイクが並んでいる。 レジスタンスでも最強の貫通力を誇る、ポセイドン要塞のオーシャンスピアである。 海色の水上バイクが槍の如く隊列を組んでいる姿は、さながら海の神がその槍を掲げているかのようである。 先頭の三隻に乗るのは、ポセイドンのリーダー、トゥルー・ランスとレジスタンスリーダーのケビン・クレイン、そしてポセイドンの指揮官を務めるイワン・カルカロフである。 レジスタンスのリーダー、ケビンがこの偵察隊に加わっているのは、先の会議に端を発する。 その会議では、今後の方針や戦略、現在保有している資材や武器などの確認、そして現在の戦力で十倍にも及ぶ敵をいかにして丸め込み、撃退するかというものに議論が集中することとなった。 諜報部のヤマトの情報によれば、...
  • 三章.
     明くる日。 「風邪?」 「だから今日休みからよろしくね」 「分かりました」  いつもの様に柚姫を呼びに行くと珍しく風邪を引いたようだ。馬鹿はなんとやらと言うのは迷信の様だ。  と言う訳で今日は私一人だけで登校して学校に来ていた。 「風邪ですか、大丈夫なんですか?」 「馬鹿はなんとやらっていうのにね」 「鵺さんも人の事言えないでしょう?」 「うっ」  心配していた茜に対して、馬鹿が馬鹿といっていた鵺さんに釘を刺しておく。 「それほど酷くはないそうだからそこまで心配する事もないですよ」 「そうですか、大事じゃなくてよかったです」  茜は安心して大きく息を吐く。 「でも柚姫の事だから明日明後日も休むかもね」 「それを聞くと本当に安心していいのか気になってしまうのですが……」 「大丈夫よ、少し長引く程度だから。柚姫なにかと治癒能力人並よりも少し低いから」 「それ本当に大丈夫ですか……」  とり...
  • 希望的に強大な魔力の主
    「火事ですか。困りましたね。さて、どうしましょうか・・・・」 「どうしたもこうしたも無いですよアポトニティー様!!」 リビーはクルーの両手を『再生』しながら、今にも泣きそうな顔で言う。 そして、その横で――アブソーはじっと遠くの赤い炎を見ていた。 どこか憂いのあるような、恐れているような、曖昧な表情で。 リビーは掠れた声で言う。 「デパートからも出れないし、さっきのお店に戻っても、ファントが――」 「その点は問題ナッシングだぜ」 ふざけたように、皆の背後でチェインは言った。 「あ、チェイン様」 「え、ていうか火事かよ!! どーすんだよ、これ」 ま、とりあえず、と言って、チェインはクルーの目の前でしゃがみこみ、 「クルー、ありがとよ」 「? 何がです?」 「いや、俺が言いたかっただけ「あぁ!! チェインさん手から血が出てますよ!!」 アブソーは叫んで...
  • それは信頼関係とも恋愛関係でもないことを、知っておきましょう
    太陽が傾いて。 民家の金修飾が――オレンジ色に輝いて。 ノアとセシルが、その光景に息を呑んで。 零が制服のあちこちに、汚れをつけてホテルに帰って来て。 アイリスとエレナが、大きな紙袋を両手に提げて同じくホテルに帰って来て。 エレナが零の姿を見て、「どこでそんなに汚したのですか!」とまるで母親のように怒って。 零は素直に謝って、エレナはすぐに許してくれて。 ――そして。 時間を守り、各々が入浴し、夕食を味わい、部屋へと戻って――。 以上が今現在に至るまでの経緯である。 と、かなりの省略がされてるが、それほど大きな出来事が無かったのだから仕方がない。 所変わって。 場面はノアと零とセシルが寝泊りする部屋。 シングルベットが部屋の真ん中に二つ、その向かいに一つ設置されている。三人はまだ寝ておらず、ソファにノアと零が、そしてその後ろ――つま...
  • レトルの食的空間
    そして あれは結局夢だったのか。 もしくは現実か。 今となっては分からないけど、しかし―― +++ 見る人によると、今更になるが――説明しよう。 フォルテの私的空間、とは。 別名(正式名称)を『一線を越えた世界』と言う。 その世界を一言で言い表すために、生と死の狭間という言い方を借りれば――現と夢の狭間、であろう。 しかし、そこは決して平和で素敵な楽園ではない。 敢えて言うならば、牢獄だろう。 何故なら。 『諸事情』により此処に来た者は例外なく――フォルテ=ラインオーバーと成るからだ。 そして。 フォルテに成った者は、『不法侵入者』を幸せにしながら、長い年月を私的空間で過ごさなくてはいけない。 しかも、一人で。 たった、一人で。 孤独に、生きる。 ……ここで終わるとフォルテとい...
  • 「平和ですね」
    そして、コアの内部では。 平和と期待と運命と――そして希望が、互いに螺旋していた。 美しく咲いていた花は徐々に枯れて、唯の雑草と化していく中、チェインはディーバの腕を掴ん だままで、 「――なあ、何か無いのかよ」と、言う。 「何がです?」 「お前が死ぬことなく、世界の崩壊を止める方法だよ」 チェインのそんな問いに、ディーバは微笑んで答える。 「無いですね」 即答。 僅かに抱いていた希望もそんな一言で破られて、チェインは深いため息を吐く。 ――方法が無いからって諦めたら、あいつ等に会わす顔が無いしな・・・・。 と、チェインが心の中でぼやいていると、目の前の少女が突然。 「あ、だけど・・・・もしかしたら、可能かもしれない」 「ホントかっ!?」 するとチェインは、ディーバの両肩にそれぞれ手を置いて、真っ直ぐにディーバの...
  • 「私は貴方の騎士【ナイト】ですから、貴方を死ぬまで護ります」
    あの時から―― 後悔はしなかったのか、悔しくはなかったのかと、 自分にずっと問い続けてきた。 自分にずっと唱え続けてきた。 忘れないように。 忘れないように。 自分を言葉で痛め続けて。 決して忘れないように、と。 そして、 これはきっと、復讐なのだろう。 けど、きっと彼女は復讐などという悪意に満ちた言葉を、嫌うだろうから。 オレはこれを、奇跡とでも呼ぼうか。 +++ 「お前ら全員こっち向きなよ!!」 タイニーが突如、叫ぶ。 皆は無意識にそちらを向く形になり――結果的に、その言葉に従う。 一人の少女に、視線が集まった。 「た、タイニー、一体どうしたんですか」 「もう儀式をする準備は整ってんだ。早くお前もこっち来いよ」 クルーとチェインが、それぞれにそんなことを言った。 「そうそ...
  • 「んんー? 僕のこと、呼んだかな」
    それは陳腐な妄想だけども。 人はそれを考える。 深く、深く。 広く、広く。 そして、人のその行動は決して使命とかでは無くて―― 「例えばの話。子供が過去に遡って、自分を産んだ人物――つまり自分の母をナイフで刺して殺 したら、どうなるか」 「・・・・何を話すかと思ったら、物騒な御伽噺ですか・・・・」 「そう言うなって。で、お前はどう思う?」 「そうですね・・・・私は、両方死ぬと思う。ていうか、常識的にそうじゃないですか?」 「・・・・常識、か。そんな思想の制限みてぇなのに捕らわれてたら、本当の答えは出ないな」 「そう、ですか。なら、貴方はどう思うのですか?」 「オレか? そうだな・・・・オレだったら、こう答える――」 「――親にしても子にしても、強い方が生き残るってね」 その...
  • 妖精界立第一高等学校
    「……最悪だ」 暖かい日差しが適度に差し込み、それと相.殺,するように、少し開いた窓から入る風の冷たさがそれこそ気持ちの良い朝と言えるほどの素晴らしき環境をつくっている。 にも関わらず。 金髪と黒髪が混じるという、奇妙な髪の毛を持つ少年はもう一度。 「……最悪だ」 と、言う。 「入学式の日だっていうのに、こんなベタ過ぎる始まり方……」 まるで漫画の中の世界じゃないか。 少年は心の中でぼやくと、先ほどまで凝視していた手に持った目覚まし時計をベットの隣に在る棚に置き、右回れをする。 そこにはしわ一つ無い、白のラインが入った紺色のブレザーとネクタイ、そして灰色のズボン。 紛れもなくそれは、妖精界立第一高等学校の制服であった。 と、まあ。 そんな風に、制服の描写を暢気にしている時間は、一秒も彼には許されていないのだが。 「――ふっ」 ...
  • 妖精界立高等学校
    「……最悪だ」 暖かい日差しが適度に差し込み、それと相.殺,するように、少し開いた窓から入る風の冷たさがそれこそ気持ちの良い朝と言えるほどの素晴らしき環境をつくっている。 にも関わらず。 金髪と黒髪が混じるという、奇妙な髪の毛を持つ少年はもう一度。 「……最悪だ」 と、言う。 「入学式の日だっていうのに、こんなベタ過ぎる始まり方……」 まるで漫画の中の世界じゃないか。 少年は心の中でぼやくと、先ほどまで凝視していた手に持った目覚まし時計をベットの隣に在る棚に置き、右回れをする。 そこにはしわ一つ無い、白のラインが入った紺色のブレザーとネクタイ、そして灰色のズボン。 紛れもなくそれは、妖精界立第一高等学校の制服であった。 と、まあ。 そんな風に、制服の描写を暢気にしている時間は、一秒も彼には許されていないのだが。 「――ふっ」 ...
  • 口調や語尾について
    何気に初めて使います、こんにちは。ルンシィです。 口調語尾というのは、実に興味深いもので、日本にしか存在しないものではないのではないか、というくらい、世界で見るととても独特な存在です。 ですから、コイツを生かさないと、やっぱり日本人として、やっていけない『ってばよ!!』 この口調や語尾というのは、キャラクターをとても容易に性格を植え付けることができます。 漫画では、この口調や語尾を重視する漫画と、ペルソナ(人格)を重視するものの二つに分かれます。 しかしながら、ペルソナというのは、とても作ることが難しく、それなりにオリジナリティを問われます。このペルソナ重視は、非常に難しい反面、一 番流行る要素となります。そして、その逆に全く面白くないということにもつながります。むしろ後者のほうが多いです。ですから、甘い考えでやるとキャラク ターにおいて、全く面白くない話になりかねません。 しかし、中堅の...
  • 友達の話を聞く姿勢を改めましょう
    ――ウォールワット。 観光地としても有名な、緑と金装飾の街。 と言っても(金装飾は民家に施されているにしても)、何もそこらじゅうに草やら木やらが生えまくっているわけではない。 緑、即ちウォールワット自慢の大森林は――奥にひっそりと存在するのだ。 「よーし。重い荷物もホテルに置いてきたことだし、早速買い物を始めるわよ!」 「アイリスさんアイリスさん、私は金のブローチを買いたいのです」 「分かってるわよエレナ。ならまずは――歩かないと」 「歩いて探してお店に入って、商品を見極めて見定めて、そして最後は買うのですね!」 「ふふん、油断したわね。楽しむ、が抜けてるわよ」 「あ、本当です……」 と、俯くエレナの肩にアイリスは手を置いて、 「落ち込むな、少女。買い物はまだ、始まったばかりであるぞ」 貫禄ある偉人の如く、アイリスは言ったのだった。 ...
  • 隠れ家
     春だった。一人の男が、寂れた街道沿いの小さな酒屋で、ちびちびと酒を呑んでいた。 腰には、装飾の施されていないマンゴーシュを帯びている。階級の低い役人か、もしくは山賊の手下か。もしかすると、一人旅の男かもしれない。片側のホルスターには、リボルバーが一丁下がっている。 背は高く、金髪だった。真っ赤な革の胴着は、古いがよく手入れされており、やはり赤に染められた麻の下衣も清潔なものだ。しっかりした、大きな旅行鞄には、金貨と食料が唸っているのがよく分かる。 男は、マンゴーシュとリボルバーの他にも武器を持っていた。よく磨かれたシミターだ。 おそらく、いかなる武器も使いこなすのだろう。その多様さは、彼の英雄であるスティン・リオゴナスを彷彿とさせる。 喉かな空気と、アルコールの弱い酒を楽しんでいた男は、不意に口を開いた。「マスターさん、この辺で面白い噂なんかないですか? 「面白い噂? ああ、それだったら...
  • 四章
    「どういう事だこれは?」  極陽は見ていた紙から目を離し、眼光を光らせ権一を刺すかのように目を向ける。 「聞かなくても分かっていたのじゃないか?」  権一は逆に極陽が全てを解っていたかのように聞き返す。  私はこの園芝組に移動している間も無言だったので、紙にどんな事が書かれていたのかすらまだ何も知らないでいる。だが、その紙に重要な事が書かれているのは確かだろう。恐らく自称天使から貰った物だと推測は出来た。  それにしても私が口を挟めるような空気ではなく、ピリピリしている。 「確かに粗方の事は俺も事前に知っていた。だが、これ程事細かに知りはしなかったな」 「園芝組組長宮左御 極陽ともあろう方が知らなかったと」 「何?お前は俺に喧嘩を売っているのか。調子に乗るな」  極陽は今にも襲いかかりそうな形相になっていた。逆に権一はわざと怒らせたような感じで、二人は仲が悪いのだろうか? 「それにこの情報...
  • サイラー兄妹
    私は鼓膜を劈くような金属音で、目を覚ました。 横を見ると、目覚まし時計が鳴っている。 私はそれを止めると、その反対側に視線を向けた。 「うー。あ、エド兄様、おはよぉ・・・・」 うす紫色の髪を乱れさせて、愛しい我が妹は私にそう言った。 「おはよう、リビー。ところで、髪がすごいことになっているよ」 「え、ホント? ちょっと鏡見てくる!」 リビーはベットから降りると、洗面所の方へとことこと歩き出した。 そこで改めて今の状況を確認する。 まず、私達は何故ここにいる? 私達は確か、馬車に乗って城に帰っていたはずだなのだ。 そして、気付いたら妖精界ではない世界にいた。 私が思うに、ここは時空なのだとは思うが。 幸い、宝石をいくつか持っていたので、ここの世界の紙幣に替えて生活することはできるのだが――帰れるかどうか分からない、というのが現状だ。 ただ、一番心配なの...
  • それはひとつの果実から
    それはひとつの果実から ○お知らせ○ 3/15 それはひとつの逸話から タイトルのみ公開。 3/08 それはひとつの果実から 最終章 後日談 まで編集完了。 3/01 それはひとつの過去から 二人の騎士編 まで編集完了。 ※諸事情により、一章と二章は粗筋のみとなります@w@;;; 第一章 とある少女と八妖精 粗筋 第二章 森林の中の悪戯と恋 粗筋 第三章 砂漠の空の過去と花  1.ティーとマニ  2.向日葵の悲劇、八妖精の戦闘  3.黒幕  4.過去における絶望の話  5.様々な可能性 それはひとつの過去から 文化祭編 文化祭・前編 文化祭・後編 第四章 都会の赤の絶望と絆  1.サイラー兄妹  2.喜劇悲劇笑劇!  3.二人の騎士vsファント  4.希望的に強大な魔力の主  5.赤い絶望は幕開けを告げる それはひとつの過去...
  • 11話
    「な・・・・・・に・・・・・・?」今まで光を失っていた男の目に、力が戻った。 星光(シングァン)は言った。「カ.マをかけてみたが、図星か」男は目を大きく見開いたまま何も言わない。 星光は挑発するように片眉を上げた。「刺客が拷.問を受けてまで守ろうとするもの。忠誠か、そうでなけ れば家族くらいのものだ。貴様は誰かの盾では無さそうだ。ならば忠誠ではないだろうな」  男は震える唇から言葉を搾り出した。「貴様・・・・・・何をするつもりだ・・・・・・!」「言っただろう?お前が協 力的なら、助けてやると言っているんだ。」「助けるだと・・・・・・どういう意味だ」星光はフンと鼻を鳴らして 言った。「しらばっくれるな。貴様の主人に、家族を人質に取られているんだろう。例え死.んでも口を割ら ぬようにな。貴様の態度によっては俺が保護してやって...
  • 2話
     情報という物は様々な所から入ってくる。  それはテレビだったり、新聞だったり、インターネットだったり、身近に言えば誰かからの会話だったり、ふと見上げた空だったり、もっとくだらない事で言えば、体に出来た傷から伝わる痛みもそうだ。  結局のところ情報というものは五感を通して、脳に情報として送られてくる。  私が「それ」を情報として理解するには聴覚だけあれば、全部情報として伝わってくる。と言っても見えない、触れない、匂わない、食べれないので他の感覚を使っても「それ」を情報として変換する事が出来ない。 「それ」はいつの間にか私の傍にいたのだが、いつ現れたのか、既に記憶の片隅に置かれているのか、末梢されてしまっているのか、思いだす事が出来ない。  脳は意外と便利で忘れるという事が出来る。例えば、自分にとって意味のない物を忘れる。要は出会いの話なんてのは必要なかったものなのかも知れない。  と、まあ...
  • 赤い絶望は幕開けを告げる
    微かに泣き声が聞こえる中で、場にそぐわない、轟々と鳴る音が聞こえる。 アブソーはまだ、炎の中にいる。 チェインは遂に、いてもたってもいられなくなり立ち上がった。 「・・・・チェイン?」クルーが訝しげに彼に視線を投げる。 「・・・・」 チェインはそれに無言で答えて、炎へと歩き出す。 クルーは目をみはり、リビーを置いてチェインの腕をつかみにかかる。 「・・・・・・っ! チェイン! 貴方一体何を――」 チェインはクルーを一瞥し、腕を引いてクルーの腕を振り払った。 そして、 「何もできないことが苦痛なんだよ!!」 誰とも無く、語り始める。 「あいつが、炎の中で今・・・・体中が炎で燃えているかもしれねぇってときに、俺はただ黙って見てることしかできねぇってのが――悔しくて仕方が無ぇんだよ」 「何故、ですか」 クルーが言う。 平然と...
  • エソラの美的空間
    そして あれは結局夢だったのか。 もしくは現実か。 今となっては分からないけど、しかし―― +++ 「………………」 お気に入りの白い枕買ったばかりの目覚まし時計そしてわたし。 それらの中心に堂々と、その人は暢気に眠っていた。 「……わたしは何をしている」 そうだよ。 わたしは何をしているの。 勝手に男の人を――しかも初対面のそれを、テリトリーというなの要塞(簡単に言うならば寝室)に入れてしまうなんて。 わたしらしくもない。 こんなのわたしではない。 わたしでないとしたら一体? 「んう……んあ?」 その人は、まず。 眼を開けることは勿論、ゆっくりと上体を起き上がらせて、眼を擦って、乱れた髪を軽く撫でて直し――目線の照準をわたしに。 「馬っ鹿野郎かお前は。オレ様のプラオベー...
  • 悪党は時として、作戦を実行し、敵と遭遇するので、警戒しておきましょう
    静寂と言う時間が流れている、というわけでもないし。 沈黙と言う空気が泳いでいる、というわけでもない。 セシルがノアに優しく声を掛けてからのこの雰囲気はきっと――気まずい、と言う。 誰しもが言葉を発せずらくなった状態。 幾分かの時間、騒がしい森から(本来あるべき姿である)静かな森へと変わる。 ――と。 「御免……みんな」 ノアは俯いて、小さな声で、呟くように。 「ぼくがあんなに大声で喚いても……二人は、帰らない。迷惑をかけるだけだった」 「まあ、分かればいいのさ。さて、これからどうする?」 セシルはノアに巻かれていた鉄の蛇を手で触り、輪の花に変えると、ノアと零の顔を交互に見て問う。 すると、零は相変わらず落ち着いた声で。 「まずは、警察だろう。あの二人は迷子になっただけだろうから――日が暮れていたらまだしも、今は昼前。それほど緊急のことで...
  • トピカの絵的空間
    そして あれは結局夢だったのか。 もしくは現実か。 今となっては分からないけど、しかし―― +++ 「…………は、蜂蜜っ!?」 開口一番に何故かそう言った黒髪の少女は、反射的に仰向けになっていた体を起き上がらせようとするが、しかし。 直後。 ゴンッと、鈍い音が響いた。 「いったぁああああ!」 涙眼になりながら頭を押さえて、思わず体を丸める少女。どうやら狭い場所にいるらしい。 と。 「おい、うるせぇぞ」 いかにも不機嫌そうな声で――ピアノの下ですすり泣く少女を覗き込んだ彼。 少女からは見えないが、彼は黒いタキシードを完璧に着こなし、赤いネクタイを締めている。そして仕上げに黒いシルクハットを頭に。 「あーあ、よくもオレ様のピアノに一撃食らわしやがったな、小娘」 「……ふ、不可抗力ですぅ。それにおじさん、あたしは小...
  • ~始まりのoverture~
    JIHAD ~始まりのoverture~ 「はぁ・・・・・はぁー・・・・・・」 疲れた足を引きずって、緋色の髪をした少年はため息を吐いた。 重たい頭を上げて、空を見上げる。 ぎっしりと生い茂った木々の枝が空を殆ど遮って空は見えない。 まだ昼間にもかかわらず、ラグジュリエントの森は夜のように暗かった。 「つ、疲れた・・・・・」 暗い森の中で、少年は側の大木に寄りかかった。 重くなりかけた目蓋の裏に、今日の出来事が甦る。 早朝の教室―――― 『・・・返して、よ』 伸ばした手は空を掴んだ。 『やーだよ。返して欲しかったら、俺から奪ってみろってーの』 少年より30cm以上も背の高い子供が、茶色い筆箱を持っていた。 『ファレンってチビだよなー。ビビッてばっかで女みてー』 緋色の髪の少年の名はファレン。 幼い頃に...
  • 6話
     例えば今までの仮定を否定してみる。  今まで「それ」を人間という生命の形をした存在として仮定して考えていた。  今回はそれを否定し、全く別の存在として扱い考える事にする。  つまりは人間としての大きさや、質量を別のものと仮定する。物理法則を全て無視するのは次の機会にするとしよう。  まず最初に「それ」の情報を整理してみよう。  壹、「それ」は一度も視界に入れて見て、確認した事がないので、大きさと形は一切不明である。  貮、「それ」は背中から声を必ず掛けてくる。  參、「それ」は私と会話出来ている。つまりは「ヒト」としての言葉が使える。  肆、「それ」は私より高い声を出しており、性別で言えば女性という仮定が有力である。  伍、「それ」は家から離れても付いてくる事が出来る。  睦、「それ」は移動中の音が一切無い。  漆、「それ」は私の近くに他人がいる時は一切発言をしない。  捌、「それ」は...
  • 五重奏な日々
    怪物に捕まってしまったアイリスは言った。 私を助けて、と。 それに対し、ノアは何も言わず――命がけで、その言葉に従い、そして見事彼女を救出した。 何故、このようなことができるのか。 その理由の発端となる、昔の出来事についてをを語る機会は後に回すとし、とりあえず二人の関係について今後のために簡単に触れておこう。 アルター=ノアとクルー=アイリスの関係とは――まさに、騎士と姫。 そして、決してそれは恋愛関係の部類には入らない。 むしろそれよりかは、もっと深い、もっと強い、もっと永い関係なのかもしれないのだ。 互いが互いを信じ信じられ、頼り頼られ、そして何より――護り護られる。 そんな騎士と姫の関係が今の今まで、途切れることなく続いている。 そしてそれはきっと、未来永劫続く――はずだ。多分。 何はともあれ。 兎にも角にも、怪物との...
  • 殺人請負ネット ※原作:はむはむ1965さん
     1 某都会の某マンションの三○何とか号室にて。 無機質な音が響く。 カタカタカタカタカタカタ、と。 聞き慣れしまいすぎて、自分の呼吸音や心臓の鼓動音と間違えてしまいそうなくらい、駿河心象(するがしんしょう)はパソコン中毒者だった。 こう成ったきっかけというのも、また自業自得だが。 それは後々にして。 「……なんだ、これ」 思わず、心象は呟く。 彼は親元を離れた一人暮らしなので勿論、この部屋には彼の他には誰もいない、それ故その呟きは自動的に独り言になってしまう。と言っても、別に彼に損も得も出るわけでもないが。 心象が見つめるモニタ――開かれた黒一色のページには、大きな白い文字で『殺.人請負ネット』と書かれていた。 最初は好奇心。 近頃の日本は、自殺やらなにやらで随分と物騒な世の中になっていた。それに影響されたのかは定かではない...
  • 無人島
    雑談では「推理物」とか言ってたけど、「冒険もの」だよ!! 一人の人が続けて書くようなことは、極力控えましょう。 二人の人が交互に書くことも控えましょう。 世界観と主人公だけ先に決めておきます。その他の設定、登場人物については、自分で作るようにしましょう。 【ストーリー背景】 寄り付く島のない孤島。 浜辺には、墜落したセスナと、後ろを向けばいかにも怪しいジャングルと雲に差し掛かる山々が見える。川もない! 男はアフリカの人事開拓支援を指揮をするためにやってきたにも関わらず、その途中、乗っていたセスナが墜落。 パイロットと、他の3人の乗客が見当たらなかった。 これからどうやって生きる……そして、4人をどうやって探す……ジャングルには何かがある…… 実直ニホンジンの無人島攻略がいま、始まる! 【主人公】 伊藤 忠敬(イトウ・タダタカ) 26歳 ...
  • -ミーシャ-
     神の力の片鱗を、人が授かった時はどうするのだろう。  ミーシャは今日も、食料や金銭と引き換えに人を癒し、そして生活をしていた。いつの間にか与えられた住居、いつの間にか揃った家具、いつの間にか得る食料。神を敬う人の目は、そのまま畏れとなる。  いつもの場所で、ミーシャはただ、立っているだけで、食料を押し付けられる。そして必ず、次の言葉が続くのだ。 「私を、どうか癒してくださいませ」  現代の治療法では不治のはずのHIV、もはや絶望的である癌、その他諸々の怪我や病気。一度は、失った半身を時間をかけて再生させたことがある。  もしかすると、世界にとっての【癌】とは私なのではないか。病気が癒えることをミーシャが【願い】ながらも、頭の片隅ではそんなことを思ってしまう。  ミーシャの治療は簡単だ。なぜならば、【願う】だけでいいのだから。願うだけで全てが癒えるのならば、それほど...
  • 8話
     例えば友人。  私には俗に言う親友という者はいない。  友人はいるにがいるが、それはネットで知り合った顔も本当の名前も知らない、遠い場所にいる誰かも分からない友人で、これを友人と呼んでいいものかどうかも甲乙つけがたいが、これを友人ということを否定してしまうと友人と呼べるものは一切誰にも該当しなくなってしまう。これを思うと結構寂しいと今更ながら思う。  流石にネットで知り合って、名前も顔も知らなくても、親しいなら友人では呼べなくもないだろう。  ネットで友人になるかも知れない人とはコミュニティーサイトで知り合う事が多い。コミュニティサイトは主に情報を交換したりする場所で、ソーシャル・ネットワーキング・サービス、匿名掲示板やブログ、登録制でオンラインゲームコミュニティサイトと呼ばれるような場所など、色々あり規模も大きいものから小さいものまである。  中でもソーシャル・ネットワーキング・サービ...
  • ベンジャミンの剣的空間
    そして あれは結局夢だったのか。 もしくは現実か。 今となっては分からないけど、しかし―― +++ 「ひゃははははははははははああああ――っ!」 と。 一人の青年が――可笑しく笑いながら、狂うように叫びながら。 一人の男性へ――真っ直ぐに駆けていき、一目散に駈けていき。 フォルテに向かって、剣を突く――! ……が。 フォルテは間一髪、手に持つステッキを器用に使い、その攻撃を受け止めた。 しかし、青年が繰り出したそれは――速度と強さをもうしぶんなく詰め込んだ類のものであったので、フォルテは剣を受け止めた際に、まともに衝撃を喰らってしまう。 「ぐっ――こ、の、馬っ鹿野朗が!」 そして痺れる腕を気にしながら、フォルテは反射的に悪態を吐いた。 +++ ――少し時間を遡る。 彼は前兆も...
  • 夢幻花に宿る音
    とある病院の一室に響く、機械音の中に岡崎 織[オカザキ シキ]はいた。 回想~  織は生まれつき体が弱く、歩くことすらままならない少女だった。その代わり美的感覚、いや、内の世界というべきか……、それがとても豊かな少女でもあった。豊か過ぎて、周りが見えなくなることもしばしばあったが……。  それが織に災いをもたらした。織は庭の散歩中に、うっとりと鴬の鳴き声に聞惚れていた。そして見舞いに来ていた人とぶつかり、そのまま頭から地面へ(しかも運の悪いことに大石のところへ)。なんとも、どんくさい限りである。しかし彼女にはただ事じゃないのも事実である。 ~回想終了  そうして織は植物状態、つまり現実世界に出れなくなっていた。彼女は、彼女の世界に閉じ篭もるようになったのだ。彼女の両親は泣き崩れ、医師はただ苦い顔で一言、 「彼女は……、ずっとこのままでしょう、彼女自...
  • 星々と月
    願い叶わず この地に落ちた流星群 宇宙(そら)に残るは 希望を与える月と 望みを持つ数少ない星々 いつの間に星は落ちたのだ?? いや違う 我々が星を隠してしまったのか この地のどこかへ 星を隠してしまったのか ならば見つけよう 星が月から希望をもらえるように 星が月から望みをもらえるように
  • 4話
     例えばオンラインゲームと言うものがある。  俗に言うネトゲと言うものだ。  それは趣味として娯楽として成り立っている。という前提を置いて、それを生き甲斐としてやっている人々がいる。  俗に廃人と呼ばれる人々である。  ゲームの為に現実を捨てたという物で、仕事も辞め、それだけに没頭し、衣食住すらまともに行わない。他にも課金、要はゲームをする為に本当のお金、リアルマネーを使ったり、はたまたアイテムにリアルマネーを大量に使ったりする。  それが月に三千という金額であれば可愛い物だ。それが月に一万であっても珍しくもない。それが月に十万でも何十人といるだろう。  ネトゲと呼ばれる物は、すでにそれ自体が隔離した別の世界として扱われている。  私は一度この手のゲームをしたことがある。  その時は確かに始めはただのゲームという感覚であり、レベル上げというのも苦ではなかった。  しかしだ、このネトゲとい...
  • 三章
     権一君、君は実に面白い。  よく私の策略に気付いた物だ。  しかし一つ教えるとすれば、別に殺そうとしていた訳ではなかったのだよ。銃にも弾丸も入っていない。撃たれた奴も弾痕もあらかじめ用意していたのだよ。本当は殺そうとしているという風に思わせる為だ。しかし君のあの行動のお陰で、より効果的だっただろう。予定ではもともと爆発で引きつけたの理由は、二人の位置を固定し狙いやすくし、その隣に撃たれたと見せかける要員を配置する為だ。位置についてはそのままの意味で本当に狙われてると思わせる為で、要員は普通に歩いている状態で、隣に付きっきりでは明らかには可笑しいからだ。爆発での野次馬に交じれば全く違和感もない。  そして弾丸が外れたと思わす予定だったので、これには多少の違和感もあったが、権一君が輪廻を助けるという咄嗟の行為によって勘違いしてくれている。私は実に幸運だ。  それに君達二人にはまだ死ん...
  • @wiki全体から「例えるならば、それは甘い音色を延々と垂れ流しされるように」で調べる

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