「おい、準備はOKなんだろうな?」
「もちろん! 万事ぬかりありません」
「……こんなことならもっと設備用意しとけばよかったな」
「なーに、我が国のミサイルの性能はトンデモないんだってのを証明してやりましょう。国の技術者を信じましょう」
「そうだな」
敵がやってくる……そんな時のために用意したミサイルである。しかし、実際に敵がやってくるとなるとどうしても慌ててしまうものである。しかし、ミサイル班は慌てず、今までの試射や訓練を思い出しつつも作業に取り組んだ。
慌てていてもしかたがない。むしろ、準備としてミサイルを用意していただけでもたいしたものである。上層部の人間の用意周到な所に感心しつつも軽口を叩き合う余裕もあった。それはただミサイルを準備していただけでなく、つねに試射や訓練、作業チェックを日常的におこなっており、いつ敵がやってきても対応できるようにしていたというだけではない。今までの戦いに実際に参加し戦を知るもの、また戦いのことを聞かされていた国民たち、皆の国を焼かれるわけにはいかないという気持ちがこの緊急時にあせる気持ちを抑え、敵への対応準備へと動いていた。
龍鍋 ユウ@鍋の国
「敵機急速接近中!有効射程まで2分です!」
ミサイル発射施設にその通信が入ったとき、既にそこは動き始めていた。
指揮者を中心にして慌しく情報と資料が行き交う。
「軌道予測急げ!観測班、天候はどうだ?」
「雨はなく、風も影響するほどは無いです。が、敵の気流が思った以上に厄介です」
「1分で再計算だ、急げ!」
「了解!」
言う前からソフトを立ち上げ、データの再入力を行う。
指揮者はミサイルサイロが映るモニターを見つつインカムを手に取った。
「調子はどうか?」
「ネジの緩み一つも見逃してません。表面の凹凸もなし、万全ですよ」
「あそこまで届くか?」
「届かせます」
「分かった。最終チェックを怠るなよ」
了解の声を待たずにチャンネルを変える。
飛行データを入力する班に繋げた。
「予測はできたか?」
「一通りは。回避された場合のパターンも数種類入れました」
「可能な限り増やせ」
「無理……は聞きませんよね」
「道理を引っ込めるのが俺たちの仕事だ。無理を通せ」
「了解!」
通信を切ってまだ空しか映していないモニターを睨む。
「来るなら来い。ただし、二度と返さんぞ」
敵に向けてそう告げて、再び指揮を執る。
敵が見えるまで、後1分。
SW-M@ビギナーズ王国
最終更新:2007年05月16日 15:00