その部屋にはモニターからの光しかなかった。
 何人もの人間が無言でキーボードを叩いている。彼らは敵に対して静かな戦いを挑んでいた、良く見ると中にはパソコンからのケーブルを体に直接つないでいる者もいる。反射速度が良くなるからと、危険を冒して脳から直接ネットにつないでいるのだ。
 オペレーター達は次々と入ってくる情報をハッカー達に流していた。情報を垂れ流しにするのではなく、必要と思われるものを選び出し伝える。こちらも電子戦を直接挑んでいるハッカー達に負けず劣らず、神経の擦り切れそうな作業だった。

 偵察機の情報をネットから探り操る。口でいうのはたやすいが、敵の情報がまったくない現状でそれをやるのは不可能といってもよかった。だができないとしっぽを巻くのは自分達のプライドが許せなかった。一人がだめでも何人かが集まれば糸口はつかめる。それを合言葉にして皆は戦っていた。

 一人が偵察機のシステムに対する進入経路を見つけた。それは瞬く間に全員に伝わり解析が始まる。

鍋嶋つづみ@鍋の国



接続…
情報戦機として強化された電脳に津波のように情報が流れ込む。

―まいどまいどの事ながらきっついな…こいつは

元々の性能故か、それとも日に日に肥大する情報の海の偉大さか。
痛む頭を押さえながら各所に配置された偵察機をハック。乱立するファイアーウォールをクラックし、時に受け流す。

―真面目にガードプログラムを組んでる連中には悪いがね…それでも護りたいものがあるんだ

国を、国境すら越えて、ありとあらゆる偵察機の電脳に忍び込み、ラインを忍ばせ、情報という情報をかき集める。

アタック…玉砕。

まともにファイアーウォールに引っ掛かった事によるダメージで電脳が悲鳴をあげる。

―くそっツールがIKUTSUKAブッとびヤガっTA

言語プログラムがやられたらしい。
だが…このくらいなら。
ハッキングには何の関係も無い。

―りぺAはあTOだ。まだやレる!

気を入れ直し情報の海を駆ける。
翔ける。

―俺にゃあ…護りたいものが在るんだよ!!

双樹真@レンジャー連邦



チャンスは数分。
敵機にレーダー照射可能な時間だ。
その間に全てをこなさねばならない。

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作戦の概要を指令本部から聞かされたとき馬鹿げた話だと思った。
高高度で超高速で敵プロトコル不明で時間は数分。

      • 無理だろ。

普通の神経の持ち主ならこの作戦は却下して他のまだ可能性のある作戦を行うだろう。
案の定この作戦は補助的なものでうまいこといけばいい、ぐらいの算段らしい。
主軸の作戦は聞かされていないのが気にかかるが・・・。
とにかく気楽にいけ、とのことだ。

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オペレーターA:「観測班より入電。方位2100より時速2万Kmで直進。高度50Km.」
オペレーターB:「敵数32を確認」

FEGが宇宙で拾ってきた敵残骸や我ら犬猫の領土に攻めてきていた無人機の残骸から拾った各種データが間に合った。
多様なパターンを短い準備期間の間にシュミレートした作品(ツール)が今ここに多数存在する。
犬と猫とハッカー、整備士、その他諸々の機械工学関係者の粋を集めたものだ。

さぁ根源種族ども、俺らのアートを食らいやがれ!

二郎真君@たけきの藩



ここはハッキングルーム。
多くのハッカーたちが、恐るべきスピードで作業をおこなっていた。
電脳下において、今まさにここは激戦区であった。
「オペレーターからのデータリンクよし。敵索敵データ入手、大分プログラム開始!」
「掌握開始!」
「システムダイブ開始、攻勢防壁確認!」
「泰一防壁突破開始、A0226からC2254まで掌握完了!」
「D3758からF4657まで掌握完了!第一防壁突破!」
「データリンク!オペレータールームに送れ!」
「了解!」
静かなる戦いが、今、始まった

山前靖也@無名騎士藩国



「未確認飛行物体が急速に藩国上空に接近中、各員第一戦闘配置に付け!繰り返す!未確認・・・」

ナショナルネット接続による分析を開始、周りが俄かに騒がしくなる中意識を集中させる。

「地表50キロを何かが時速2万キロで接近中だって、ミサイル・・・いや偵察機か。何もこんなタイミングでくることはないだろうに」

レンジャー連邦ではその戦力の大半が広島に向かい、戦力は激減している。広島組が出発するときに冗談で藩国の平和は任せとけと大見得を切ったのを思い出す。

「皆の帰るとこを守らないとな・・・これなら銃をぶっ放す方がどれだけ気が楽か」

声に出しつつも意識はネットに集中させ情報の処理を行っていく。

「この速度の飛行物を撃墜は厳しいか。時間もほとんどないとなると出来ることは嫌がらせか・・・ジャミングにハッキング、少しでも偵察機にやる情報を削ってやる」

左右で作業する猫士2匹に目配せで合図。

「よし、電子戦を開始する!!」

冴木悠@レンジャー連邦




 「パイロットにはパイロットの戦場があり、
  魔法使いには魔法使いの戦場がある。
  同様に、この電子の世界こそ我らが命を賭して戦う場なのだ」
―あるハッカーの言葉―

薄暗く、奥行きの広い一室。
無数のモニターが電子戦を生業とする者達、ハッカーの顔を青白く浮かび上がらせ、
ただただ、キーボードを叩く音と時々交わされる短い言葉が部屋を埋め尽くす。
戦場と呼ぶにはあまりに異質な戦場。
だが、彼らハッカーが知覚している、この世界の向こう側、電子の世界こそ彼らの支配する世界であった。

 「データリンクに成功」
「よし、偵察機ハッキング開始・・・・・・一機たりとも逃すな」
 「はっ」

彼らの、静かな、苛烈な戦いの幕が切って落とされた。

タルク@ビギナーズ王国



「ケーブルこんな細いんじゃ溶けちまう!もっと太いのだ!」
「ラジエーターもっともってこい!熱くなりすぎる?バカ野郎!だから使うんだろうが!」
「ジェネレーター大丈夫か?途中で電源飛ばないように分散しろよ!」

国内各所にある巨大なECM施設の中で、整備士たちが走り回っていた。
高高度偵察機に対してジャミングを行うためには既存の出力では足りないことが指摘され、
急遽施設の改造を行っているのだ。
発電所と言う発電所は稼動できる最大量の電力をつくり、それをじかに施設にまわしている。
国内には電化製品の使用禁止を言い渡し、少しでも電力をジャミングにまわすようにした。
それでも肝心の装備の準備ができなければ意味が無い。
だからこそ今整備士たちは意味を作るために不眠不休で作業を続けている。
そしてそれが意味を持つときが来た。

「敵機接近中!ジャミングの準備せよということです!」
「待ってましたぁ!」
「こちら発電所。こっちはOKだ。電力とどいてるか?!」
「大丈夫!ジェネレーターも順調に稼働中!」
「ケーブルも融解してません!」
「よし、ECM起動!あいつらまで俺たちの心を届けてやろうぜ!」
『おお!』

号令と共に起動シークエンスが始まる。
いくつものECM施設からほぼ全ての波長で妨害電波が発せられ始めた。

SW-M@ビギナーズ王国



今まで侵攻してくる敵に対して集められるだけの火力を持って対処してきた帝國・共和国連合部隊は
今回の戦いで初めて作戦の主軸として電子戦を行なうことになる。
過去の戦いで蓄積してきたノウハウが使えず、敵機の詳細情報がない今回の戦い、
事前に立てた作戦を各セクションが完璧に遂行して尚、成功するかは全く予測がつかなかった・・・。


電子戦担当の1部隊であるえ~藩国隊を指揮するのは摂政である関朝戸だった。
指揮下のメンバーは九鬼保、藤井海音、倉見虎太郎と犬士隊10名の合計13名。
犬士以外の3名は現在は広島へ行っている榊遊が集めてきた新規入国組のメンバーである。

「やれやれ・・・I=Dでの戦闘が本職なんだがな・・・まぁ、仕事は仕事だ・・・
 きっちり片付けてやるさ。・・・ここをこうしてやれば・・・よぉし、良い子だ・・・。」

「チッ、何でオレがこんな面倒な事を・・・あ?判ってますよ、摂政さんに逆らったりしませんよ!
 やらなきゃ国が滅びかねないんだからね!」

「え~っと・・・コレがコウだから・・・朝戸さぁん?コレで良いんでしたっけ?」


九鬼保、端末に話しかけながら自分の作業に没頭。
藤井海音、文句を言いつつ何気に仕事は迅速かつきっちり丁寧。
倉見虎太郎・・・即座に犬士が1名フォローに入る(爆)
残りの犬士も迅速に作業準備完了。

「うん・・・倉見さんの方も準備は良さそうですね。
      • それでは、みなさん。慌てず確実に作戦通り自分の作業を行なってください。」

作戦開始の号令を確認したのち関朝戸は各員に指示を出す。
前例のない作戦ではあったが関に不安はなかった。
部下を信じていたし他の藩国からも優秀な人材が集まっているのだから・・・。
だから今難しい顔をしている彼の心配事は別のことだったりする。

「(さて・・・この作戦の後、ギリギリの藩国の運営をどうしましょうか・・・)」

榊遊@え~藩国



最終更新:2007年05月16日 15:33