バーサーカーvsセイバー

血の一滴も流れてはいない。
傷つくのは精神であり、膿むのは魂――そのような戦いをしている。

無銘のバーサーカーは、この聖杯戦争の内で最も弱く――そして、誰よりも人を殺している。
剣、槍、弓――如何なる武器も所持してはいない、ただ忌まわしきかんばせを見れば、人は狂い、死ぬ。

突如として狂気に陥ったマスター、
その理由をバーサーカーの姿に求めたセイバーはその瞳を閉じた。

「オラオラ来いよオラァ!!」

視力を封じた剣士は怪物を断つことが出来るかと云えば――出来る。
剣のサーヴァント、セイバーとは――達人中の達人、人の姿をした剣と言っても過言ではない。
その瞳を閉じたとて、その他の感覚全てが視力を補い――見える時よりも見えるようにするだろう。

――斬。

従者の様に斬撃は音に追随した。
そしてそれに追随して、血液と肉片、臓物。
怪物も中身は生物と変わらない。

一刀のもとにバーサーカーを切り伏せて、セイバーは目を開く。








   「    い ち ま ん え ん く れ た ら

             し ゃ ぶ っ て あ げ る よ     」








「これぇ!?お前見ろよこれなぁ!この無残な姿よぉなぁ!?」
自嘲する。自分で自分を嗤う。
油断した。
完全に油断していた。
目の前の怪物の実は――その身ではなく、どこか他の場所に存在していた。
笑いが止まらない。
楽しい。
なんて楽しいのだろう。

斬っても斬り殺せない怪物がいる。
楽しい。ピンキーの笑顔を見たのでSAN値チェックをお願いします。
なんて楽しいのだろう。
狂気度が上昇します。

なんて楽しいのだろう。
対魔力で各種効果は軽減可能だが、彼女の顔は(一説によると)人類の持つ根源的恐怖の具現であるため、効果を完全に打ち消すことはできない。
写真や横顔、精神汚染が進めば後ろ姿でも行動不能に陥る。
怖いなぁ……戸締まりスト4。じゃけん夜菅野美穂。

斬っても斬り殺せない相手がいるというのは素晴らしい。
『一万円くれたらしゃぶってあげるよ』

吸い上げられる。
魔力が、精が、その忌まわしき唇によって、セイバーの男根より。
舐る、その蛇のような下が。のたうち回る蛭。爬虫類。両生類。下劣なる者。
快楽ではない、恐怖が――子孫を残そうとする本能。サーヴァントが子どもを産めますか?おかしいと思いませんか?あなた?
恥垢を舐めとる。蚯蚓。締め上げる蛇。舌。顔が近づく。己を犯す者を直視する。恐怖。
怪物が嗤う。セイバーも笑う。なんて楽しいのだろう。
斬っても斬り殺せない蛭が亀頭の上で這いまわる。
唾液。
粘液。
地獄。
快楽。
呪詛。
呪詛。
後悔。
祈り。

無為。
吸い上げる者の顔を見てはいけない。
だが、セイバーは見てしまう。追加でダイスを振って下さい。正気度が減少します。

射精。

「セイバー助けて!!」

瞬間、ひでの声によって正気が戻る。
目を閉じて、後方へと跳ぶ。
ひでの身体を見れば、その令呪が一画消えている。
令呪の命によって狂気より一足先に抜けだしたらしい。

セイバーはひでを米俵のように担ぎ上げると、バーサーカーに背を向けて逃げ出した。

如何なる化物であろうとも、斬り殺すことは出来る。
だが、存在しない物を斬り殺すことは出来ない。

あのバーサーカーの実を斬るために、今は引かなければならない。
初めての恐怖と屈辱、そして忌まわしき快楽。
思い出すだけで、虫が全身を這いまわるかのような怖気が走る。

必ずや借りを返すと――セイバーは誓った。






   「    い ち ま ん え ん く れ た ら

             し ゃ ぶ っ て あ げ る よ     」



逃れ得ぬ恐怖。
宇宙の深淵。
因果の狭間にある闇。
怪物。
狂気の権化。

無銘の怪物は、たった今逃げ出したセイバーを意に介さず――新しい獲物を探し始めた。

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最終更新:2016年04月21日 22:46