【第一章】
◇
四つの新たな犠牲を経て、
バーサーカーはより強靭に、より凶刃に――哀れな犠牲者を食い散らかしながら下北沢の大地を闊歩する。
ありったけの精、命、そして感情すらもその唇に吸い取られ――道に残るのは人間の死骸ですらない、
ただ残滓が――かつてここに何かがあったのだと訴えるだけなのだ。
最早、犠牲者の数すらも覚束ない――誰が、わかるのだ――その残滓がかつて人間であったものであると。
だから、何日も何日も家族の帰りを待って、そしてようやく下北沢の住民は知るのだ。
諦めきれぬまま、不在の家族の夕食の準備を行って、今日も無駄になってしまったと自嘲しながら、そして――それでも、ついついいなくなってしまった人間の好物を作りながら、
家族は二度と戻らぬのだと。
バーサーカーが二組の主従を撃破してから810分が経過し、その犠牲者は8101919114514人にも及んだ。逝キスギィ!
だが、それでも
バーサーカーの飢えが満たされることはない。
永遠に――何時の日か、自分以外の世界の全てが
バーサーカーの糧となり、
そして自分すら貪るその日まで、そしてその姿を鏡の奥の真実が嘲笑うその日まで――
バーサーカーは貪り続ける。一万円で。
一万円?!こんな怪物フェラで1万てぼったくりやろこれ!(正論) そうだよ(便乗)
かつて下北沢は東京のソドムであった――夢を追う者の楽園であり、才能無き者の地獄であり、ソドミストの巣窟であった。
強者が弱者を蹂躙し、ケツの穴をガバガバにし、ホモビデオに出演させ、徹底的に絞りとるゴモラであった。
だが、今は違う。
「 一 万 円 く れ た ら し ゃ ぶ っ て あ げ る よ 」
「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」
「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」「どぼじでぞんなごどいうのおおおおおおお!!!!」
「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」「やめてくれよ……」
かつて、理不尽な徴税官であったニコニコ動画のUNEIが――
バーサーカーによって、その矮小なペニスをしゃぶられている。
奪われるのだ、魔力を、精を、命を、感情を――そのペニスを通じて、狂気のあまりに早く終【しね】ることすら望むことも出来ずに。
下北沢は悪平等のエデンの園になった。
りんごを収穫するように、
バーサーカーは下北沢の全ての命を老若問わず、刈り取って行く。 やめてくれよ……(悲鳴)
誰も逆らうことは出来ない。
かつて彼女に対抗せしめた野獣先輩は――
バーサーカーの前に姿を現さない。
ただの人間に
バーサーカーに抗う術はない。
下北沢民の命は
バーサーカーの前に、もぎもぎフルーツも同然であった。
命がもぎもぎフルーツされていく、股間はもぎもぎフルーツされなかった、もぎもぎっていうかにぎにぎフルーツであった。
金玉とかがにぎにぎフルーツであった、二つの金玉はにぎにぎフルーツのチェリー部分だった。ペニスはバナナ。
にぎにぎといえば、闇金ウシジマくんの作者が沖縄にサイン会に行くらしいですね。
果たせるかな、
バーサーカーの宝具に必要な魔力はやはりその宝具によって賄われた。
宝具によってちんこをしゃぶり、しゃぶったちんぽで魔力を発動する。
最悪の永久機関であった。
バーサーカーの魔力枯渇による自然消滅は――最早望むことすら許されない。
下北沢の民は――ただ蹂躙されるだけの子羊――鉄板の上の焼き肉であった(ジンギスカン)
◇
「おじさん……」
かつて下北沢の街を歩いていたホモ達は、もういない。
意思を持った災害から逃れるために、ひたすら家に引きこもった(戸締まりすとこ)
かつてあった賑やかな下北沢はもう存在しない。
セイバーのマスターひでが歩く下北沢の道路は、街の死骸だった。
かつてひでが
バーサーカーに刻み込まれた恐怖は、未だ癒えない。
キャスターを失い、セイバーの勝ち筋は永遠にわからなくなった。
それでも、ひではセイバーと共に戦わなければならなかった。
そんなこと【恐怖からの逃亡】したら――パパに怒られる。
あまりにも幼稚な、しかし――芯の通った意志であった。
ひでは――父親に誇れる自分になりたかった。
小学校を十何年留年したことだろうか、最早家族に合わせる顔はない。
それでも――何時かは、と願い続けてきた。
親に胸を張れる自分に――大人のおちんぽになりたかったのだ。
「下北沢を守ろう」
「OK牧場」
セイバー虐待おじさんは、かつての友を再び失った。
810年前の聖杯戦争――その戦争で彼はやはりセイバーとして、そして平野源五郎はキャスターとして召喚された。
色々あって、キャスターは聖杯の泥に呑まれ、今日まで生き続け――そして死んだ。
仇討ちなどというつもりはない――死んで当然の男だ、死ぬべき男であった。
如何にも怪しく、忌まわしく、そして同じ趣味を持った男だった。
だから――友だった。
絶対に相容れぬ者、絶対の敵、信用ならぬ悪魔【メフィスト・フェレス】
それでもセイバーは、かつて同じ道を歩んだのだ――ACCEED三銃士として。
剣を構える。
何者をも断つ――絶対の竹刀。
それは嘘であり、真実である。
竹刀は――宝具ではない。ただの竹刀だ。
だが、剣聖とまで謳われたセイバーが用いれば、それはすなわち全てを断つ剣である。
しかし、セイバーの剣は
バーサーカーを斬ることはなかった。
如何に鍛えようとも――水面の月を斬ることは出来ない。
だが、諦めることは出来ない。
自分は仇を討つような人間ではない。
街を守るために戦うような殊勝な人間でもない。
主人のために命を捨てることが出来る武士でもない。
どうしようもなく、彼は虐待おじさんなのだ。
何時だって彼は攻める側でなければならない――化物に対してマゾッホにまわるなど、あってはならないのだ。
「下北沢を守ろう」
「OK牧場」
己の隣を歩むひでの声に、揺るぎない声でセイバーは返答した。
鍛錬の果てに待ち受ける敵は――怪物だ。
ドラゴンがそうであったように、鵺がそうであったように、鬼がそうであったように、幻想は――人間の手によって討たれなければならない。
「じゃあオラオラ来いよオラァ!!」
敵を呼ぶ。
策はない。新たな奥義に開眼したわけでもない。仲間が増えたわけでもない。
敵はけしてこちらの鍛錬を待ってくれはしない――武が日常の中にあるのならば、勝機は何時だって、今あるものの中から見出さなければならないのだ。
セイバーの叫びに呼応するように音が聞こえた。
セイレーンの歌というには、あまりにもグロテスクで。
ドラゴンの咆哮というには、あまりにも作音的であり。
鎮魂歌というには、あまりにも忌まわしい。
デデドン、と。
戦いを告げる音が聞こえた。
◇
『一万円くれたらしゃぶってあげるよ』
宝具が発動した瞬間、セイバーはひでを
バーサーカーの前に蹴り落とした。
ひでは死ぬ。しかし、今打てる最良の手はそれしかなかった。
セイバーがしゃぶられれば、ひでに戦う力はない。
しかし、ひでがしゃぶられている間は、セイバーは戦える。
あるいは
バーサーカーがひでを殺すまでに――セイバーが
バーサーカーを殺せるかもしれない。
成功率があまりにも低い賭けであったが、何もかもを投げ出さなければ――人間が化物を殺すことは出来ない。
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛も゛う゛や゛だ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
悍ましい――あまりにも悍ましい感触に、覚悟を決めていたひでも絶叫悶絶する。
――早く帰って、宿題しなきゃ。
バーサーカーと対峙する前、ひではセイバーにそう誓った。
早く日常生活に戻り、当たり前のように宿題をこなすと。
もうセイバーに迷惑をかけるような真似はしないと、大人になるから、と。
しかし現実は――あまりにも強大な敵だった。
バーサーカーはひでのペニシリンをフェラーリ・ジャパンだった。
フルスロットルである。口細胞がトップギアだぜ。
だが、誰がひでを嗤うことが出来るだろう。
ひではそれでも懸命に耐えていた。
一秒でも、一秒でも――と、セイバーに時間を与えようとしていた。
「ああ逃れられない(カルマ)」
逃げられないことはわかっている。
だから、戦うのだ。
ひでは剣を持たない――ごく普通の留年した小学生である。
だが、平成狸合戦ちんぽこが
バーサーカーにズブリスタジオされても、股間の谷でナニシタの中、股間の王蟲はとなりのトロトロでも動かぬ城であった。
バーサーカーの口にひでのちんぽがチャージインされた刹那、セイバーは
バーサーカーをその竹刀で切り裂いた。 気迫の籠もった良いチャージインだ!
だが、陽炎を切るが如く――
バーサーカーは意に介さず、ひでの股間をガブリンチョであった。股間はもはや一緒にサンバである。
わかっていたことである――念の為に試してみただけだ。
バーサーカーを斬ることは出来ない。
剣はあらゆるものを斬り裂く――だが、無を斬り裂くことは出来ない。 無は取得することしか出来ないのだ(TAS)
「動くと当たらないだろ?動くと当たらないだろォ!!?」
実際のところ、
バーサーカーは口をジュッポジュッポジュッポジュッポやっている以外は微動だにしていない、
しかしセイバーはあまりの斬れなさにブチ切れだった、悪態の一つもつこうものである。
「(狂気に)溺れる! 溺れる!」
一方ひでは案外耐えていた。
バーサーカーという圧倒的な化物に対し、福本伸行の今の連載ぐらいの粘りを見せていた。
(おじさんねぇ、君みたいな可愛いねぇ、子の悶絶顔が……)
常人ながら懸命に戦うひでを、セイバーは最早見ていられない。
悶絶顔は大好物であったが、今のひでの顔は――必死に頑張っていてくっそ気持ち悪かった。
思わず、セイバーは目を閉じた。ひでの顔から目を背けたかったのだ。
.
『 一 万 円 く れ た ら し ゃ ぶ っ て あ げ る よ 』
気づくと、ひでは干物になっていた。
やはり、死ぬ時は射精していた。
そしてセイバーもまもなく消滅する。
絶対のオーラルセックスの押し売りによって、
バーサーカーによってしゃぶり殺される。
――これぇ。
――お前見ろよこれなぁ。
――この無残な姿よぉなぁ。
ひでの死体は、人の形すら残していなかった。
ただ、黒いシミだけがあった。
存分に強化された
バーサーカーの宝具の犠牲者は肉体の全てを精液に変換して、消え死ぬのだ。
今、まさに――
バーサーカーがセイバーの魔羅を悪魔合体せんとした、その時。
己の瞳に映る
バーサーカーを、セイバーは、自身の両眼を切り裂いた。
バーサーカーは何時だって、現実の世界に身を置きながら――しかし、その姿は鏡の中にあった。
ならば、鏡の中にこそ――その真実の姿があると考えるべきではないか。
マスターは命懸けで時間を稼ぎ、その身を犠牲にして、セイバーにヒントを与えた。
セイバーがマスターの無様から目を背けんと目を閉じた時――セイバーは理解したのだ、幻を斬る方法を。
幻を映し出す――己の眼を斬るという荒業を以て。
「工事完了です……」
マスターも、友も守ることは出来なかった。
だが、仇だけは討った。
何の達成感も無い。
だが、最早何も映さない暗闇の中に、二つの影を見た時。
セイバーは笑って逝った。
――おじさん!
――フォォーッフォッフォフォッフォ!フォォーッフォッフォフォッフォ!
【ひで&セイバー 死亡】
【バーサーカー 死亡】
【第二章】
驚懼の中にも、彼は咄嗟に思いあたって、叫んだ。「その声は、我が友、李徴子ではないか?」
ややあって、低い声が答えた。「如何にも自分は隴西の李徴である」と。
――中島敦 『山月記』より。
◇
「……ゾ」
先程、一瞬だけ新たなるサーヴァントが
バーサーカーを戦場に誘うのをMURは見た。
それ以来、MURは池沼にも関わらず――考え込んでいた。
まるで、策を練る智将であるかのように。
ひたすらに、ひたすらに、脳の働きを――先程の光景に委ねていた。
――マスター、考えるのなんかやめよう!馬鹿らしいよ!」
アサシンは何度、そうやってMURに呼びかけただろう。
自分の屋敷に戻ったとはいえ、心ここにあらずといった有様だ。
もしも敵が来れば、MURの命は一瞬にして潰えてしまうだろう。
それでも、MURは考え続けていた。
知恵熱が出るほどに、ポッチャマすら溶けるほど熱く、脳細胞を絞り上げるように。
MURにとって、それほどに考えこまねばならぬ問題であった。
じきに、アサシンはMURに呼び掛けるのを止めた。
止めても無駄であるのならば――自分が守るしか無い、と。
MURの思考を邪魔すること無く、ただMURに寄り添って――彼を守り続けている。
MURはお気に入りのロッキングチェアに身を委ね、
喰うものも喰わず、飲むものも飲まず、ヤるものもヤらず。
ひたすらに、ひたすらに、考え続けていた。
そして始まりの思考から1919分が経過し、とうとうMURは立ち上がった。
「行くゾ」
理性的な声であった。怜悧な――知性の輝きをMURは瞳に宿していた。
今の彼は智将であった。
リミッターを解除した機械が壊れるように、無理に働かせた脳細胞は崩壊し、MURは死ぬだろう。
それはもう脳細胞が爆発して死ぬだろう。
しかし、MURには――死を賭してでも、やらねばならないことがあった。
「どちらに?」
アサシンの声に、MURははっきりと「後輩の元へ行く」と答えた。
アサシンはホモではないが、けつのあなを締めて掛かった。
MURは戦うのだろう。
あの愚かなマスターが、どうしようもない池沼が、決意を胸に秘めて、為さねばならぬことを成すのだろう。
アサシンは暗殺者として召喚されたサーヴァントである。
しかし、今の彼は暗殺者であると同時に審判者であった。
マスターの全てを見届けて、そして――罰が下るというのならば、それもしようがないと諦めるだろう。
しかし、マスターが王道を征くというのならば――如何なる不条理からも、彼を守ろう。
審判者として、法の担い手として――愚かで、しかし決心したマスターを何者からも守ろう。
「アサシン」
「何でしょう」
「出会った時、聖杯は『何でも叶える』と言ったゾ?」
「言いましたけど、それが?」
出会った時と、同じ問答を繰り返している。
だが、その意味合いが大きく異なっているのを、アサシンは感じた。
「どんな夢でも叶えられるかゾ?」
「もちろん」
「それだけ聞けば十分ゾ」
「マスターは何をするつもりですか?」
「――何をするつもりなんだろうな」
つう、と一滴の血涙がMURから零れ落ちた。
MURは意志の力で、魔眼を使わないことを選んでしまった。
◇
下北沢の街を歩く者は、
バーサーカーのせいで誰もいなくなってしまった。
故に、MURとアサシンを阻む者は誰もいない。
一般通過おじさんに引っかかることもなく、すらすらとMUR達は目的地へと辿り着く。
「ここは……?」
「母校ゾ」
煉瓦造りの歴史ある建造物の前にMUR達は立った。
下北沢立教大学である。
下北沢に立教大学は無いだろ!いい加減にしろ!とおっしゃりたい兄貴もいらっしゃるかもしれませんが、ままそう焦んないでよ。
そもそも、貴方達の知っている下北沢に8101919114514人もの人はいるのだろうか。
多分いないだろう、しかし
バーサーカーの手によっていないはずの8101919114514人もの犠牲者が出た以上は、8101919114514人は下北沢にいるのだ。
そして、8101919114514人以上の人間が下北沢で暮らしていることに比べれば、立教大学があることはおかしくはないだろう。
もし、それでも納得がいかないというのならば――その時は、しょうがない。
下北沢に立教大学があるという事実を信じられるようになるまで、自己暗示を掛け続けるのだ。
そうすれば、何時かは下北沢に立教大学があることに納得がいくようになるだろう。
閑話休題。
かくして、立教大学にたどり着いたMUR達は滑らかに空手部の部室まで歩を進めた。
迫真空手部――部員は、MURとその後輩の二人だけだ。
かつてはもう一人存在していた――しかし、行方不明になってしまった。
もう、うざくも軽妙なあのアドリブを拝むことは出来ない――MURはそう思っていた。
部室の中央に正座し、MURは来訪者を待つ。
バーサーカーの影響で、大学は無期限の休校である。
ならば、誰かが来るというのならば――それは盗人か、あるいは――
「お ま た せ」
今田耕司のように無表情に、暗殺者の今田耕司であるかのように静かに、
野獣先輩は、空手部の戸を開いた。
MURの魔眼が。
野獣先輩を見据える。
――汚物君。
――チン毛。
――うんこの擬人化。
――伊東ライフ。
――ゲロ男爵。
――くさそう。
――サイコパス。
――24歳学生。
――女の子。
――メタモン。
――クソアフィカス
幾千、幾万、幾億もの呪いを掻き分けて、MURはその目で野獣先輩を見た。
"後輩"を以外の有害な要素を全て、排除していく。
"後輩"を覆い隠す呪いを、排除していく。
再び、MURの目から血の涙が溢れ出した。
目が焼けるような痛みがあった。
魔眼とは自動的に発動するものである。
魔眼とはMURに与えられた祝福であり、MURの神である。
神を利用しようとするならば、神を拒もうとするのならば、神罰は下って然るべきである。
しかし、それはMURが後輩を見ない理由にはならなかった。
『無限の呪詛(ヤジュウセンパイ シンセツシリーズ)』
野獣先輩はその身に、無限の可能性を有している。
そうあれかしと、野獣先輩に可能性を押し付けた。
あらゆるものを野獣先輩にすることで、淫夢を――in dreamの世界を無限に拡張するために。
全てが、邪魔だった。
MURが無限の可能性の中から、たった一人の後輩を探すために――その全てが邪魔だった。
何もかもが、野獣先輩ではなかったはずだった。
野獣先輩は野獣先輩であり、
空手部の後輩は空手部の後輩であり、
王道を征くホモは、ソープ好きのホモであった。
神話がそうであるように、野獣先輩はホモセックスのようにあらゆる存在と結合された。
理想の野獣先輩を作り出すために。
だが、邪魔だ。
MURは野獣先輩の真名を呼んだ。
先輩が後輩を呼びつける、そのしっかりとした声で、彼を呼んだ。
「鈴木」
野獣先輩の中から、一人の可能性が分離する。
水泳部でもなく、インタビューを受けるソープ好きのホモでもなく、サイクロプスでもない。
ニャルラトホテプでも、天体でも、サイヤ人でも、ガッツでも、ニョロボンでもない。
MURの後輩である空手部の鈴木が、野獣先輩を掻き分けて、現れた。
神話を統合するように、ホモビは統合される。
膨大な風評被害の内に、偽りの関係性は真実になり、本来あったはずの真実は誰もが皆忘れ去る。
彼らは人間であり、セクシー男優であり、英雄であり、そして――我々の認識の中の物語にすぎない。
だから――媒体無き召喚においては、召喚者の祈りがそうあれかしとある存在を引き寄せる。
英霊とは――そう、そのようなものだ。
◇
「三浦さん」
「おう、鈴木。久しぶりゾ」
目から血を流しながら、MURは微笑を浮かべた。
昨日も会ったかのような、顔をして、他愛もない話題をMURは鈴木に振った。
誰も飲まないから、冷蔵庫の中で未だにビールが冷えていること。
美味いラーメン屋の屋台のこと。
菅野美穂のこと。
やんほぬのこと。
もう一人の後輩であるKMRをレイプした思い出。
アサシンが野獣先輩と戦っている間、MURは鈴木と他愛のない話を続けた。
野獣先輩が先ほどまでMURを襲わなかったのは、彼の中にある鈴木が所以だった。
故に、彼の中の鈴木を失えばMURを襲うことに躊躇はなく。
そして――鈴木を取り戻すために、再度己の中に鈴木を取り込むために、MUR達に襲いかかる。
それを、アサシンは食い止めていた。
野獣先輩といえど、アサシンを認識することは出来ない。
『存在のない男』を認識することは誰にも出来ない。
『存在のない男』を認識することは誰にも出来ない、と言った。
だが、唯一それが出来る人間がいる(前言撤回)
野獣先輩が無限の可能性を内包しているというのならば。
誰かが、野獣先輩は閉廷おじさんではないか――という説を立ててもおかしくはない。
自分だけは自分を認識できなければならない。
『終わり!閉廷!』
野獣先輩が閉廷おじさんの声で叫ぶ。
初めからいたかのように、閉廷おじさんの姿は道場にあった。
野獣先輩は今田耕司のように、冷徹に閉廷おじさんの霊核を握りつぶした。
それと同時に、限界を迎えたMURがその場に倒れこんだ。
【MUR&アサシン 死亡】
「じゃけん、夜行きましょうね~」
野獣先輩が、鈴木に己の下に戻れと声を掛ける。
鈴木は「じゃけん」
野獣先輩に向けて「よる」
剣を構えた「いきましょうね~」
鈴木はあくまでも、後輩をレイプしたりするただの空手部員であった。
だが、野獣先輩に取り込まれ、彼は英霊に――なってしまった。
鈴木は、その声も姿も、余すところ無く素材にされた。
じゃけんは『邪剣』になり、
夜と併せて、『邪剣 夜』になった。
行きましょうねは、『征きましょうね』になった。
『邪剣 夜』――言葉遊びが、彼の宝具になった。
元は野獣先輩であった彼は、英霊としての力を野獣先輩から奪い去り、
MURとの会話によって、鈴木という存在として確立された。
アスタロトは、イシュタルとアシュターに分かたれた。
元がホモビ男優の化物は、ホモの欲張りセットと空手部のホモに分かたれた。
神話存在として己を確立せんとするならば、相手の神格は徹底的に破壊しなければならない。
二度と混同されないように、徹底的に破壊されなければならない。
MURは獣の中にある後輩が、後輩として元に戻ることを祈った。
故に、鈴木は――そうあるために、戦う。
信仰よりも純粋な――ただの愛情である。
野獣先輩が行動を行わんとした刹那。
l │ 、 ,i′ ,{ \, ヽ\ て
ノ | ., llノ|゛ l \ ヽ ヽ/ !
\ ! メ/ . ,i'! / ゙h、 ゙l、 .!l
..l.| ./ ./ │ ! ゙i,゙'i、 l / l_z¬r
.リ ./ / . iゞ ! _-‐==l...lヽ、 .しイ .ヽ
,イ / i l゙ l _,,..-一ー¨¨ _l ヽ..ヽ 从__
'/ !゛ lゝ l -┬'''"´ _,,,.. --・''' ̄´ l ゙ly ヽ, } ハ
./ / .l゙ .! _,,.. -;;ニニ-ー'''゙゙゙´ l .゙乂 \ ∪ l /!
/ / !、 ,! _...;;;;ニニー''''"゛ ! .l .ヽ ∨{
│/ .、 ! │ _,,.. -''^゙´ l l .\ |
/./ 从 } ! -‐'″ l, .l ヽ, │
!/ N ヾl │ ! l ヽ
/ . ! ,! ! ∧ ヽ
! l ! ! lハ ヽ
.|!、 .l | ! . l .ヽ /
|,ヽ 〔 ! ! ! /
)._ ヽ l ! 『邪剣 夜』 ! / ._/゛
ヽ ヽ ! │ ! ! , /
.ヽ .`-ゝ l ,! '“゛
ィて L ! ,..-'" _
)ン ) ! ,..-'" _..-'゙//
ム .l ! ,..-'"゛ i.て
|ハ l ! _..-'"゛ _.. -''''" ._..-'´
│ ! _.. -'" ,..-‐"゛ _..-'゛_そ
'l./ .l _,, -''"゛ _,, て|,! -‐='゙′ て
.ヽ l _,, ‐'"゛ , て¨ ̄l}  ̄ ̄
、 ! |. .._,, ー''"゛ ゙,゙ニ=―'||
.l'、 .| |,,.. -‐''"゛ -‐¬¨¨¬--'"゛ l′
! ゙'ゞ ._,,,.. -ー'''"゛ て-‐== l
【第四章】
例え神であろうとも、文中で行動に移さなければ文章媒体では何も出来はしない。
故に、邪剣は――文章を斬り裂く。
王道を征くソープ好きの24歳学生とは違い、鈴木は躊躇なく邪道【レイプ】する。
1レスを丸々消費し、野獣先輩の行動を完全に消し去り、その間に鈴木は聖杯の元へと向かった。
谷岡の宝具がそうであるように、変態糞親父の宝具がそうであるように、超次元【メタ】宝具は条件が整っている限りは、何者をも寄せ付けない。
だが、この宝具も無尽蔵に使用出来るわけではない。
鈴木はあくまでも野獣先輩より分かれたはぐれサーヴァントであり、マスターは存在しない。
野獣先輩より分かれた際に、その魔力をもぎもぎフルーツしたが、年々小さくなる某菓子のようにその量は少なくとも宝具を無尽蔵に使用できる程ではない。
この世界と地続きの存在であるが故、存在しているだけならばそれほど魔力を消費しない。
しかし、宝具をもう一度使えば己は完全に消滅するだろう。
それまでに、聖杯の力で自己の存在を鈴木として完全に確立する。
それが鈴木の策略であった。
正直、そろそろ爆発オチで良いのではないかと思い始めている。
タイムリミットは残り少ない。
聖杯はすぐに見つかった。
下北沢――野獣邸、地下室。野獣先輩であった時の記憶にある己の家。
なるほど、オッサンのケツを聖杯に開発するというのならば、これ以上とない場所だろう。
「<●>∇<●>」
ALISON――霊夢を数十回ハンマーでぶっ潰したかのような男、GO教の教祖が鈴木を見据えた。
野獣先輩ではない、何があったのかはわからないが――統合された数多の霊格の中から独立してしまっている。
野獣先輩と呼ばれる数多の存在を一纏めにして、一にして全、全にして一の化物を創りだされたように、
ALISON兄貴はGOをアポロンと統合し、それをハッテンさせてゼウスと統合した、ALISON兄貴は、神格の統合を以て奇跡を起こす。
余談ではあるが、統合のルーツはホモセックス、すなわち男神がホモセックスで一つになる様子にある。
ALISON兄貴の隣で、オッサンのケツがふるふると震えていた。
オッサンのケツの穴の中で、無数の霊格が蠢いていた。
その様はブルブルと動くアナルビーズであった。
そろばんの珠で股間をずるずると滑らかにうごかすかのように、
元はホモビの英霊アナルビーズは豪のちんぽを動かしている。
鈴木は邪剣を構える。
真名解放はしない――否、出来ない。
それを使えば、己は消滅する。
そして、ALISON兄貴もまた、令呪を構えた。
令呪によって野獣先輩を呼び寄せれば、それでALISON兄貴の勝利である。
「令――」
ALISON兄貴が言葉を発した瞬間、鈴木は駆けた。
その姿は例えるなら風――そう、色のついたくっそ汚いおならであった。
瞬時にALISON兄貴の間合いに入り邪剣を以て斬り裂かんとしたその時、ALISON兄貴の頭部が玩具のようにかぱと開いた。
その様はキン肉マンのギミック超人か、あるいはからくりサーカスの自動人形か。
ALISON兄貴の頭部があった部分には、迫撃砲があった。
豪教教祖によって祝福された神秘の塊――元はホモビのサーヴァントを容易に撃ち抜ける神話に語られし近代技術の粋である
「しま――っ」
考えた時にはもう遅い、今まさに振りぬかんとした野獣の手は邪剣ごとALISON兄貴の迫撃砲によって吹き飛ばされた。
ついで、腹――頭部――念入りに、もう一度霊核を撃ち抜く。
【鈴木 死亡】
「令呪を以て命じる、自害しろ野獣先輩 重ねて命じる自害しろ野獣先輩 重ねて命じる自害しろ野獣先輩⌒∇⌒」
三度の令呪使用により、野獣先輩は自害した。
【野獣先輩 死亡】
「⌒∇⌒」
【下北沢聖杯戦争 勝者 ALISON兄貴】
下北沢聖杯戦争 終わり! 閉廷!
.
【第三章】
810年前、やはり下北沢において聖杯戦争があった。
無限の願望機――その効力自体は間違ってはいなかった。
だが、それは聖杯というにはあまりにも悍ましく――それはまさしく性杯であった。
その聖杯は一本のホモビである。
名を『真夏の夜の淫夢』
それ自体は何の神秘も宿さないただのホモビであったが、某有名野球選手の出演を切っ掛けに、世界の全てを真夏の夜の淫夢は取り込んだ。
風評被害、風評被害、風評被害。
『真夏の夜の淫夢』はあらゆるものに真夏の夜の淫夢のレッテルを貼り、
まず全ての国産ホモビが真夏の夜の淫夢になり、ホモビ出演者に似た人物が真夏の夜の淫夢になり、そして、真夏の夜の淫夢は次々に世界を風評被害の渦に巻き込んでいった。
そして、世界は――真夏の夜の淫夢を通じて、再度生まれた。
世界のあらゆる要素は、ホモビになり、世界はホモビであった。
元の世界とよく似ていながら、しかしホモビの世界。
それがこの世界である。
そして810年前。
そもそもビデオテープすら存在しない時代に、『真夏の夜の淫夢』はあった。
『真夏の夜の淫夢』を奪い合うために、数多の魔術師が兵士を呼び寄せた。
どの時代にも存在し得ない――しかし、何故か召喚出来るホモビ男優達。
魔術師はそれを疑問に思うことはなかった――世界はホモビ【in dream】だった。
優勝したのは、キャスター平野源五郎。
マスターは途中で死んだ。その理由を知るものは平野源五郎以外にはいない。
平野源五郎は『真夏の夜の淫夢』を手に、願った。
自身の理想世界――すなわち記憶の中だけにある、ホモビ世界の再現を。
だが、膨れ上がった風評被害を支配することは誰にもできない。
出来ることは、ただ見て見ぬふりをすることだけなのだ。
真夏の夜の淫夢の風評被害に取り込まれ、平野源五郎もまた――野獣先輩の一つになった。
野獣先輩平野源五郎説が誕生し、そして『真夏の夜の淫夢』は永遠に失われた――はずだった。
平野源五郎は放浪の果て、ALISON兄貴に出会う。
薬物中毒者であり、トリップの末に彼は何度も神を見ていた。
そこで、平野源五郎は考えた。
風評被害を支配することは出来ない、ならば――支配できるものを創れば良い。
聖杯――GOの精液が注がれた尻。
神の威光を以て、願いを叶える――都合の良い奇跡。
114年間、彼らは聖杯の開発に勤しんだ。
風評被害を支配することは出来ないが、聖杯という存在のためには神格の統合――つまりは風評被害の力を必要とした。
ALISON兄貴は信仰の力を以て、平野源五郎は己の中の風評被害の力を以て、その方向性を誘導した。
風評被害は支配することは出来ないが、誰かが言い出せばそうなるように、方向性を操ることは出来る。
そして、長年の施行の果てに――儀式を以て、聖杯は完成することとなった。すなわち聖杯戦争である。
平野源五郎は己の力を以て、ALISON兄貴は野獣先輩の力を以て、優勝する心積りであった。
そして下北沢の地において、聖杯戦争が開催され『不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。
後輩をかばいすべての責任を負ったALISON兄貴に対し、車の主、暴力団員谷岡に言い渡された示談の条件とは……』
【1章】
気づくと、ALISON兄貴は『不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。
後輩をかばいすべての責任を負ったALISON兄貴に対し、車の主、暴力団員谷岡に言い渡された示談の条件とは……』
「……馬鹿なッ!ライダーは死んだはずだ!」
「当たり前だよなぁ」
ALISON兄貴の衝突した黒塗りの高級車から降りてきた男は暴力団員谷岡――であった。
だが、確かにライダーは死んだはずである。
すぐさま――ALISON兄貴は、ある可能性に思い当たる。
「――野獣先輩か!」
「野獣先輩野獣先輩ではない説を探して死を回避するのすっげぇきつかったゾ~」
野獣先輩が谷岡の姿を取り、そしてMURの姿を取った。
最早、歯止めの効かなくなった風評被害は――野獣先輩は野獣先輩でありながら、野獣先輩ではないという矛盾すら許容する。
「真夏の夜の淫夢と言えば、俺ってはっきりわかんだね」
真夏の夜の淫夢の風評被害の力、その多くは真夏の夜の淫夢の顔である野獣先輩に注ぎ込む。
世界とは野獣先輩であり、野獣先輩は世界であった。
成ろうと思えば、全能神の神の姿を取ることも出来るだろう。
「じゃけん、聖杯取りましょうね~」
ALISON兄貴を歯牙にも掛けず、野獣先輩は聖杯の元へと向かう。
必要なのは受肉するための魔力のみである。
この世界に存在することさえ出来れば、奇跡を補うための魔力は平野源五郎よりも簡単に手に入れることが出来る。
野獣先輩は風評被害の大本であるがゆえに。
野獣先輩は死んだ。
冷静に考えていただきたい。
GOはエイズによって死亡した。
そしてHIVウイルス感染リスクを高めるのはゴム無しのセックスである。
そして聖杯を作るためにはGOの生中出しが必要である。
つまり、聖杯はHIV聖杯である。
野獣先輩はHIVを保有し、その時点で野獣先輩エイズ説が確定し、そして死亡説に上書きされ、野獣先輩は死んだ。
考えても頂きたい。
確かに、ホモセックスには妊娠のリスクは無い。
しかし、生中出しには何時だって病気のリスクが付き纏うのだ。
貴方の愛するパートナーのためにも、ホモセックスの際にもゴムを着用するべきだと私は思う。
そのために、野獣先輩は死亡という結末を取らせてもらった。
如何に下北沢聖杯をクソみたいなオチに出来るかと考えたわけではない。
皆さんにゴムありのセックスをしてほしいからこそのこのオチである。
以上である。
◇
野獣先輩が死に、下北沢の墓場にひっそりと墓石が増えていた。
その墓の名を、鈴木。
野獣先輩ではあるが、野獣先輩でない男の墓である。
下北沢聖杯戦争 完
ニコニコ本社は爆発した
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最終更新:2021年10月27日 18:43