シン「う~…まさか俺が風邪を引くなんて……ゴホッ…」
言葉「あの、シンくん……やっぱりソファーで眠るのはよくないですよ。今日からはちゃんとベッドで……」
シン「あ、いや、ソファーで充分だよ。(さすがにダブルベッドはまずいだろ……)」
言葉「そんな……あの、私のことを気にしているんでしたら大丈夫です。その…シンくんでしたら私も構いませんから……」
シン「え……ま、まあどっちにしろ今日はソファーで寝るよ。言葉に風邪うつしちゃうかもしれないし」
言葉「だ、駄目ですよ!いつまでたっても治りませんよ!?とにかく今日はこのままこのベッドで寝てて下さい!」
シン「う……わ、わかった……」
言葉「では私は風邪に効くお料理を作りますのでシンくんは少し眠っていて下さい」
シン「あ、うん……その、言葉……世話かけてごめんな」
言葉「そんなの…気にしないでいいですよ。困った時はお互い様ですから」
シン(なんつーか……やっぱり妹がいるせいか言葉って年の割りにしっかりしてるよな……
姉がいれば…あんな感じ…なのか…な……zzz……)
言葉「えっと、かまぼこは微塵切りにしておいてあとでお鍋に入れる・・・と。
はぁ、こんなことならちゃんとお母さんにお料理習っておくんだったなぁ。」
作っているのは雑炊鍋。
本にはふんわりたまごと三つ葉の緑が食欲をそそる写真があった。
しかし、目の前にあるのはどう見てもカチカチ卵とじおかゆ鍋だった。
言葉「うう、味はちゃんと見たから大丈夫だけど・・・どう見ても失敗だなぁ・・・」
作り始める前、これを食べてもらう人はスースーと静かに寝息を立てていた。
そろそろ起きてくる頃だと思い、散々なににするか悩んだ末に、
一番簡単そうなこれにしたはずだったんだけど・・・
言葉「どうしよう・・・今からじゃ別のを作る時間はないし、他のはもっと難しそうだし・・・」
もちろん、料理をしなくても例のメモに雑炊鍋と書いて貼り付ければ本のままの鍋が出てくる
のだが、それだけはしたくなかった。
《・・・では私は風邪に効くお料理を作りますのでシンくんは少し眠っていて下さい・・・》
作るといった手前、ちゃんと自分でやらないとダメだし、なにより作ってあげたかった。
どこか自分と似た雰囲気のあるオトコノコ。
いつもなら絶対人見知りしているはずが、この人には違った。
なんでだろう?
そうぼんやり考えつつも、目の前の鍋を見てやっぱりこうつぶやいた。
「どうしよう・・・」
シン「ん・・・寝ちゃってたのか。」
あれから何時間経ったのだろう。確か風邪を引いて、薬飲んで横になったんだっけ・・・
ゆっくりと起き上がってみる。喉も節々もなんともない。おそらく完治しただろう。
思いっきり伸びをしたところで、キッチンのほうからなにやらいい匂いがしてきた。
シン「ん・・・?」
行ってみると、コンロの前でなにかつぶやいている言葉がいた。
その前には湯気が立っている小さな土鍋がひとつ。多分これは卵とおかゆの匂いだ。
声を掛けようとしたとき、そのつぶやきが聞こえてきた。
言葉「どうしよう・・・」
シン「どうしたの?」
言葉「!!」
俺が声を掛けると言葉はすごい勢いで振り返り、その鍋を必死で隠そうとした。
言葉「え、あ、、あの、お、おはようございます。そ、その、もう、もうお体はいいんですか?」
シン「え、うん。もう大丈夫。コーディネーターは免疫力も強化されてるから少し休めばすぐに体調も戻るんだ。」
言葉「コーディネーター・・・?」
シン「え、ぁぁぁ、なんでもない、それよりそれって、雑炊鍋?」
言葉「え、ぁぁぁ、あの、これはその、ちがうんです、あの・・・」
なにか必死に違うと言ってるけど、蓋が開いてるので中身はすぐに確認できた。
卵とじみたいで、おかゆとダシの匂いがする。
微塵切りのかまぼこと三つ葉が乗っかってておいしそうだ。
コンロの横に開いて置いてある本には雑炊鍋の写真と作り方が細かく載っていた。
言葉「これは、その、しっぱいしちゃって・・・だから・・・」
シン「この本のこと?」
言葉「そう、そうな・・・あっ!」
言葉の意識が一瞬本のほうに向く。
その一瞬で俺は横に置いてあったレンゲをつかみ、鍋の中身をすくって口の中に放り込む。
瞬間動作は俺たちコーディネーターの得意分野だ。
これくらい造作ない。しかし・・・
シン「あぢぢぢぢぢぢぢ、あぢあぢ!!」
言葉「ああっ、大丈夫ですかっ」
あまりの熱さに俺は思わず上を向いて口をパクパクさせる。
その口の中から湯気が勢いよく噴き出す。
しばらくしてようやく冷めたそれをやっとの思いで飲み込む。
言葉「もう、シン君てばひどいです。失敗だって言ってるのに。。」
シン「ごめんごめん、でもすっごくおいしいよ?ぜんぜん失敗じゃないじゃん。」
言葉「だって、雑炊のつもりが卵とじになっちゃってるから・・・」
シン「んーでも、俺、これ好きだな。もっつと食べたい・・・だめ?」
言葉「シンくんがそう言うのなら・・・恥ずかしいですが・・・どうぞ。」
こうして俺は言葉お手製の雑炊鍋にありつけたのだった。
シン「ごちそうさまでした」
言葉「おそまつさまです」
カラになった鍋を片付けながら、言葉は俺にとんでもないことを言った。
言葉「そうそう、これからはシン君もベッドでちゃんと寝てくださいね。」
シン「ええっ!俺はいつものソファでいいよ。」
言葉「だめです。また風邪を引いたら大変です。」
シン「もう大丈夫だよ。免疫もついたし、コーディネーターならこれでもう平気だって。」
言葉「その免疫強化されたコーディネーターさんが寝込むくらい無理な状況のところにまた戻すわけにはいきません。い・い・で・す・ね?」
シン「・・・・・・はぃ・・・」
一瞬なにかのプレッシャーを感じたのか、俺は言葉の意見に抗うことができなかった。
シンクに向かう言葉の後姿を見つつ、おれは小さくつぶやいた。
「どうしよう・・・」
~同じベッドで寝ることになった夜~
シン(眠れるわけないだろ…常考……)
言葉「ん……い、いや……」
シン(言葉…寝言か?)
誠『俺もう…桂のこと好きじゃないから……』
言葉「いやぁぁぁぁぁ!!」
シン「え!?ど、どうした!?大丈夫か言葉!?」
言葉「ハァッ…ハァッ……シンくん……?」
シン「あ、ああ俺だよ。どうしたんだ?怖い夢でも……」
言葉「…すみません、あまり思い出したくないことが夢に出てしまって……」
シン「……そうか……」
ギュッ
言葉「え!?シ、シンくん!?」
シン「俺、昔怖い夢見て眠れなかった時にさ、よく母さんにこうやって抱きしめてもらったんだ」
言葉「…………」
シン「そうすると不思議と落ち着いてきてな……なんか安心するんだよ」
言葉「……そうですね…落ち着いてきました……」
シン「ん、じゃあ寝ようか。まだ夜中だしな」
言葉「……あの、シンくん……今日一日だけ…このままで寝ていいですか?」
シン「へ?…あ、うん、言葉さえよければ俺は構わないけど…」
言葉「こうして包まれていると…なんかいい夢が見れそうな気がします」
シン(…こりゃ徹夜決定だな。こんな状況で眠れる気がしないぜ……orz)
~朝~
シン「(・・・やっぱり結局一睡もできなかったな・・・)」
言葉「ん・・・」
シン「あ、言葉、おはよう。」
言葉「おはよう、ございます。・・・ん~ムニャムニャ」
シン「何だ、まだちょっと寝ぼけてる?w」
言葉「は、はい・・・ごめんなさい、朝はちょっと弱いもので。」
シン「はは、そっか。オレもそんなに朝は強くないよ。」
言葉「コーディネーターさんも朝はダメなんですね。笑」
シン「こればっかりはねw ところで、いい夢は見れたかい?」
言葉「はい、おかげさまで。穏やかな夢が見れました。本当にありがとうございます。」
シン「いやいや、これぐらいいいって。」
言葉「シン君はよく眠れましたか?」
シン「ん、んん、まぁね。よし、じゃあ朝飯でも食べようか。」
シン「いやーやっぱ言葉のサンドイッチは美味いよ。」
言葉「そんな、まだまだ失敗ばかりで・・・」
シン「いやいや、もっと自信持っていいと思うよ。」
言葉「ありがとうございます、喜んでもらえるのはすごく・・・嬉しいです。」
シン「それにこの食後のレモネードもすごく落ち着くよ。」
言葉「///」
言葉「あ、あの、シン君、シン君は昨日どんな夢を・・・ってあれ?」
シン「・・・スースー・・・」
言葉「寝ちゃってる・・・もしかして昨日あんまり眠れなかったのかな・・・」
言葉「ふふ、でも寝顔、可愛いな。ごめんなさいシン君、もうちょっとだけ、見ててもいいですよね?」
最終更新:2009年03月05日 14:46