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プロローグ

PERSONA4 Broken Destiny

プロローグ

「力で強制された平和で、本当に人は幸せになれると思っているのかお前は!!」
「だったらどうすればいいんだよ!! アンタの言う理想ってヤツで戦争を止められるって言うのか!?」
「何!?」
アスラン・ザラ。俺の元上官。しかし、今は倒すべき敵。
俺はこの人が嫌いだ。何でもわかったような顔をして俺に助言をするくせに、こちらからの問いには答えてくれない。
何でも知っているような顔でいるくせに、自分の中だけで完結して俺たちには何も教えてくれない。
俺はアスラン・ザラが大嫌いだ!!
「戦争のない世界以上に、幸せな世界なんてあるはずがない!!」
だから俺は戦うんだ、議長の示してくれた戦争のない世界のために。もう誰も失わずに済む世界のために。
「本気を出せッアスラン!!」
デスティニーの攻撃に対し、アスランはずっと防御の姿勢を崩さない。
…こんなときにもコイツは何も答えてはくれない。何も教えてはくれない。
正しいのはやっぱり議長なんだ。俺は正しいんだ。
「今のお前の姿は昔の俺に似ているな…」
「え?…」
「俺はかつて母を殺された憎しみだけで戦いに身を投じた。
 だけどなシン。 自分の無力さを憎み、ただ闇雲に力だけを求めてもその先には何もないんだ。
 お前の心が救われることはない。 だからもう過去に捉われたまま戦うのはやめろシン!!
 明日に、未来に目を向けるんだ」
…遅いよ隊長。 どうして今頃になって答えをくれるんだよ。 自分で考えて、悩んで出した答えなのに、どうして今そんなことを言うんだよ…
もう、俺は選んだんだ、この道を。 引き返せはしない。
「アンタが正しいって言うのなら、俺に勝ってみせろ!!」
「シン!!」


「アスラン、アンタやっぱり強いや」
推進力を奪われ月の重力に引かれ落ちていく愛機の中で、シン・アスカはそう呟いた。
彼は考え悩んだ末に答えを出した。 その答えが間違っているとは今も思えないが、心のどこかで疑問を感じていたのも事実である。
家族を失った日からシン・アスカは努力をしてきた。
戦争を知らなかった少年が超人集団のアカデミーに入り、エリートの称号を手に入れるまでの道程は決して生易しいものではない。
だけど彼はその道程を歩んできた。戦争を無くすために、大切なものを守る力を得るために、ただそれだけを心に辛い毎日を耐えてきた。
「結局俺は誰も守ってやれなかった…無駄だった何もかも…」
『そんなことないよ』
失意のシン・アスカの頭に声が響いた。 聞き覚えのある声。 自分が守りたかった大切な人の声だった。
『ステラ、シンに会えてよかった…だから前を見て、明日を…』
「…そうだなステラ。俺はまだ生きている…」
シン・アスカの意識はそこで途切れた。
「ぐっ…」
「業深き人の子よ。 もう苦しむことはない、私が直々に楽にしてあげよう」
刹那、辺り一面が紅に染まる。 断末魔と血飛沫が止み静寂が訪れたそこにあるのは、八つの抜け殻と黄泉の神。
「世界は霧に包まれるべきなのだ。 人間の望んでいるのは霧に包まれた世界なのだよ…」
神は先程まで人だったものに、そう言い放ち消えた。あとに残されたのは完全な静寂。
風が吹いた。その一陣の風とともに八つの抜け殻は消え、一人の女性が現われた。
「人の可能性はまだこんなものじゃないはず…もう一度、あと一度だけ機会を与えましょう。
 人よ、あなたたちの可能性を示しなさい。 そして母を…」
女性から光が放たれる。 光は地を貫き世界を包み込み消えた。


シン・アスカが目覚める。 しかし、彼の視界には写るものは無く、辺りは暗闇に包まれていた。
暗闇に包まれているはずであるが、なぜかこの場所がとても心地よく感じた。
『シン・アスカ』
シンの頭の中に己を呼ぶ声がする。 その声はとても温かく、懐かしい。
記憶の中にある、彼の母親の声と重ねてしまうほどに頭に響く声は母性に溢れていた。
『貴方に世界を託します。 人の可能性を、人の望む世界を守って見せなさい』
「何を言ってるんだ?」
『明日に生きると決めた、貴方なら運命を変えられます。 失敗は人の希望の断絶を意味します。
 真実を見極め、そして人を救ってみなさい』
「何のことだ!? それにアンタは一体何なんだ!? 」
声の主はシンの問いには答えず、何か呪文のようなものを口走った。
「うっ」
『これから貴方を異世界へと飛ばします。 貴方はそこで大きな謎に挑まなければなりません。
 しばらくは流れに身を任せなさい。 世界は貴方を受け入れてくれるはずです』
「何を…言って…」
『種を持つ貴方ならばきっと出来るはずです…きっと…』
シンの意識が薄らいでゆく、完全に意識がなくなる前にシンは視界に光り輝く女性を見た。



夢を見た。 いや、それが本当に夢であるのか現の出来事であったのかはシン本人にもわからなかった。
体を揺らす僅かな振動と単調なエンジン音が響く車内。蒼い照明の照らすゆったりとしたソファにシンは腰掛けている。
視界には異様に鼻の長い白髪の老人とその老人の秘書らしき若い女性がいた。、
老人の名はイゴールといい、女性の名はマーガレットと言った。
イゴールはシンにこれから向かう場所で災難に会い、謎を解かなければならないと言った。
そして、それを手伝う為に自分たちがいるのだとも。
何のことかわけがわからないシンは、その発言の真意を問おうとするも声が出ない。
「また近いうちに会うことでしょう。その時まで、ごきげんよう」
そこでシンの意識は本日三度目の消失を経験した。
「起きて下さ~い。起きて~」
シンが次に目を覚ましたのは、電車の中。
目の前には髪の長い女性がいた。
「八十稲羽駅に着きましたよ」
「え?」
「貴方が起こしてって言ったんでしょ」
シンはそんなことを言った覚えは無い。それどころか周りの景色にも見覚えが無い。
田園地帯が続く田舎の風景。確かに一度は行ってみたいと思ったことはあるが、実際は一度も行った事が無い。
「ほら、早く降りないと扉が閉まっちゃいますよ」
そう言いながら女性はシンを立たせ、扉の前まで押して行った。
「ちょっと何するんだよ。アンタ」
女性の方を振り向き不満を口にする。
『人の可能性を、人の望む世界を守って見せなさい。 シン・アスカよ』
シンの頭の中にどこかで聞いた声が木霊する。その瞬間、シンは女性に突き飛ばされホームに尻餅をついた。
尻餅をついているシンを横目に電車は走り出す。シンは女性が立っていた場所を見たが、そこには誰もいなかった。
「何なんだよ一体…」
立ち上がりズボンに付いた砂埃を払い辺りを見渡す。時代遅れの駅と疎らな建物、それなりの広さの田園風景が彼の瞳に写った。
自分の服装も確認してみる。パイロットスーツではなく、どこかの学校の制服を着ていた。
「俺、月にいたはずだよな。 どう考えてもここは月じゃない…」
夢の中で聞いた、女性の言葉を思い出す。
『これから貴方を異世界へと飛ばします。 貴方はそこで大きな謎に挑まなければなりません。
 しばらくは流れに身を任せなさい。 世界は貴方を受け入れてくれるはずです』
「違う世界…まさかなぁ」
もう一度辺りを見回してみる。一通り見回して溜息をついた。
「信じるにしても信じないにしても、まずは情報を集めないとな」
シンは駅を出るために、そして明日に生きるために、歩を進めた。

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最終更新:2009年09月09日 05:25
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