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「シンさ~ん」
「ん?」
書類のコピーを終えたエリオが人懐こい子犬のようにシンの下に駆け寄る。
ひたすら凄まじい速度でブラインドタッチをするシンは、モニターから視線を逸らさずに短く答える。
それを気にする風でも無く、エリオはシンの邪魔にならないよう、腕を伸ばした時に倒してしまわぬよう、積み上げられた書類を次々と片していく。
傍らに置いてある、既に温くなった缶コーヒーのプルタブを空けるのを見計らってエリオはシンに話しかける。
「シンさんってご家族を亡くされた後すぐにプラントに行ってアカデミーに入ったんですよね?」
「ああ、そうだけど」
「お金とかどうしたんですか?」
素朴な疑問をエリオはお菓子の袋を空けながら口にする。
どちらからともなく、休憩の合図であった。
「おお、某国では作れるようになれば一人前のレディーの証と言われる」
「カントリーマー○です」
「このしっとりとした食感が……」
「病み付きになるというか……」
ほのぼのとした少年達のやり取りを、栗色の髪を肩のところで綺麗に切りそろえた少女の年頃を幾つか過ぎた美女が頬杖を付きながら見つめていた。
「なぁなぁティアナ」
すぐ傍で一心不乱に書類を整理し、作成し、カテゴリーわけしている少女に声をかけた。
常日頃であれば、ガンダムサンドロックのシンボルとも言えるヒートショーテルの如き見目麗しく、凛々しく、雄々しいツインテールがへにゃりとなっている。
目の下には、ファンデーションでは隠せない程に色濃い隈が浮き出ている。
傍らのスバルは口から何かヤバイ煙を吹いている。
脳の許容量を超えてしまったようだ。
衛生兵もいないという激戦区で足手まといになった負傷兵を観るが如き煩わし気な視線で一瞥くれると、ティアナは自身の上司を見る。
「何ですか?くだらない事言ったらおはようからおやすみまで殴り続けますよ?」
君が泣いても殴るのを止めないという奴だ。
冷たい、人を人とも思わないティアナの言葉を受けた、栗色の髪の美女、八神はやては、「たはー手厳しい」と手で顔を覆った。
顔を覆う暇があったら書類に判を押せこのアマ、口の中で辛うじてその言葉を飲み込んだ。
口を突いて出そうになったその言葉をティアナが飲み込んだのは上司への敬意 ―――― 等というものではなく、シンが同室にいるからだ。
勿論、シンはエリオとの会話に夢中になっているから吐き捨てたところで聞こえまい。
しかし、それでも想い人の傍で汚い言葉を遣いたくないのは乙女心であった。
「いま、ちょっと盗ちょ……げふんげふん、たまたま耳に入ったんやけど、シンってばアカデミーの入学金なんてどうしたんやろ?」
「今の言葉はとりあえず置いておいて、確かに気になる事ではありますよね」
「やっぱり賭けバトルですよ!!」
いつの間にか復活していたスバルが顔をキラキラさせて答える。
きょとんとして首を傾げたのはティアナである。
「賭けバトル?」
「うん」
◇
『赤コーナー~~~~常勝無敗のグラドル!!丹波文七~~~~~!!!!!』
無精髭を蓄えた頬は、痩せてはいるものの、それは男が貧相に見せているという訳ではない。
寧ろその反対、研ぎ澄まされたナイフのような空気をはらんでいる。
身体を覆う空手着は、所々擦り切れ、胴を締める黒帯は中の白地が覗くほどに使い込まれている。
それらの様子が、男を一振りの業物のような錯覚を起させていた。
『青コーナー~~~~挑戦者!!赤い目の異邦人、シン・アスカ~~~~!!!!』
対する少年は丹波とは対極の空気を放っていた。
色白な肌は、スポットライトを浴びて一層白々している。
指で一撫ですれば赤い痕が付くのではないだろうか。
観客の誰もが思った。
中には穢れなき白い肌を見て、何を思ったのか舌なめずりする者までいる。
鴉の濡れ羽色の髪は長く、その間から煌々と輝く瞳は真紅。
今夜は見目の良いウサギが、獅子に捕食されるショーに終わりそうだと誰かが溜息を吐いた。
ならば飛び切り良い声で泣き、存分に血を流して欲しい。
サディスティックな欲望がムクムクと観客の中から湧き出す。
しかし、少年の表情をよくよく見れば、それが思い違いであるという事がよくわかる。
地獄を見た者の目。
セコンドに付いた黒人の男が丹波を見ながら苦々しい表情になる。
先日丹波に破れ、へし折られた右腕が疼くのだ。
男は少年の耳元にそっと囁く。
「ブラザー。野郎はお前を舐めきっている。だったらソイツに付け込め」
少年は変声期を迎え始めた声で小さく呟く。
「ボブ。俺は何をすれば良い?」
「出来るだけ油断を誘うように近付け。そして目ん玉に指を突っ込んでやりな」
「それで勝てるのかよ……?」
ボブは、『出来ない』ではなく、『勝てるのか』と尋ねた少年の返答に小さく口笛を吹いた。
コイツはもしかしたら。
彼の中に万に一つだった可能性が、千に一つになった。
唇をニィっと吊り上げると、ボブは声を顰めた。
「野郎が怒り狂って向かってきたら勝負をかけな。わかってるだろ?」
「虎王……」
ボブはこくりと頷くと、「GOOD LACK」と拳を少年の胸に軽く当てた。
少年は昏い瞳のまま、一度スポットライトを仰ぎ見る。
紅の瞳はその奥を見通すかのように細められている。
何か、小さく、そして短く呟くと、視線を対戦相手に向けた。
「行ってくるよ……マユ……」
その声は鳴らされたゴングによって掻き消された。
◇
「はぁ~~……そういえばアンタ最近ホ○リーランドとか餓狼○とか読んでたもんね」
「えへへへへ~~~~」
呆れたようなティアナの視線を向けられたスバルは照れ臭そうに頬をかく。
図星であったらしい。
「でもええかもしれへんな~~~満たされない欲望を、昏い暴力の中に吐き出すシン……バイオレンスな男って…ス・テ・キ……」
「バイオレンスなのは貴方の頭です」
うっとりと宙を見上げるはやてをティアナはばっさりと切り捨てる。
それにムッとしたのか、唇を尖らせると、はやてはティアナをむ~~っと睨む。
たじろぎもせずに、ティアナはその視線を真っ向から受け止める。
「そない言うんなら、ティアナはどうなん?」
「私ですか?私は……」
◇
「よっと……」
シンは鉢植えを棚に乗せると、額を流れる汗を拭った。
タオルで汗を拭きながらシンは辺りを見渡す。
一面には色とりどりの花。
一段落が着いた自分の仕事の成果ともいえる光景。
少しむせ返るような花の香りが、しかしシンには決して不快ではなかった。
「虹の海だ……」
様々な花弁に埋め尽くされた店内をシンは思わずそう評していた。
四季の無いプラント。
それ故に季節感の無いこの店はシンにとっては新鮮であった。
プラントに来てこの光景を見ることが出来た事は、嬉しいことだと素直に思う。
「中々詩人だね、アスカ君は」
「店長…」
好々爺といった風情の店長がシンに声をかける。
その顔には孫を見るような優しい笑みが浮かんでいる。
物心がついた時には既に祖父母が他界していたシンにとって、この店長の見せる包み込むような笑みはどこかくすぐったいものがあった。
微かに頬を染めると、シンは俯く。
自分の呟いた言葉が聞かれてしまっていたことを思い出したのだ。
「恥かしい事聞かないで下さいよ~~」
この店長を前にすると、シンは知らず知らず甘えるように喋る事に気付いてはいなかった。
大人に甘える心地良さを、この店長はシンに与えてくれている。
それはあるいは、子供を甘やかす心地良さを店長が知らず知らずの内に求めている故の自然な成り行きなのかもしれない。
店長は、同年代の少年達に比べると未だに小さい部類に入るシンの頭を撫でると、頷く。
「恥かしい事ではないよ。アスカ君のような花を愛する子に愛でられるのが花にとっては一番の栄養になるんじゃ」
擽ったそうに、子猫のように首をすくめながら、それでも撫でる手を払い除けることなど考えもしないシンは照れ臭そうに笑う。
微笑むとくしゃくしゃに皺が寄り、瞳が隠れてしまうこの優しい店長の笑みがシンは好きであった。
まるで店長自身が穏やかに、健やかに年月を帯びた大樹のようだと心の中で思う。
優しい形の皺は、穏やかな年月を刻んだ年輪とでも言い表せる。
暫し、店長の撫でるがままにしていたシンの耳に来客のチャイムが飛び込む。
耳の遠い店長は、シンのまるで物音に気付いた子猫のような仕草で客の来訪に気付く。
シンがパタパタとかけていくと、オレンジ色の髪をツインテールにした勝気そうな少女が立っていた。
その頬は、走ってきたのだろうか、薔薇のように紅潮している。
その割には息が切れていないな、そう思いつつもシンは深く考えなかった。
「いらっしゃいませ」
「あ、あの、その……」
少女は勝気さを潜めると、モジモジと手を合わせながら、チラチラとシンの顔を見る。
首を傾げるシンの様子に、意を決したのか、少女は顔を上げると、一つ息を吸う。
「こ、今度試合があるの!!!」
「は?」
「だから、その先輩が引退試合で…」
「はぁ」
「だから……贈りたくて…花を…」
「ああ……」
ようやく得心がいったようにシンは手を叩く。
引退に贈る花を頭の中で検索する。
「じゃあスイートピーなんていいよ」
自然と、同年代を相手にしているせいだろうか、言葉遣いが素になっていく。
少女は頬を赤らめながら、シンの言葉に耳を傾け、シンの顔をじっと見つめる。
店長がその様子をくすくすと笑って見ているのが、シンには少しだけ疑問であったが、気にせずに花の説明をしていく。
「じゃ、じゃあ、それにするわよ」
「ありがとうございます」
「そ、それと、そのアンタ」
「何?」
「い、いつもこの時間にバイトにいるの?」
「はぁ?」
何故そんな事を聞くのだろうかという疑問を露わに聞き返すと、少女は一層顔を赤くする。
「何でも良いでしょ!!どうなの!!」
「えっと……」
シンは面くらいながらも、少女の言葉に正直に答える。
「俺さ、その学校……かな、一応。そこに入る為にお金稼いでるんだ。だからそれが貯まると……」
「あ……」
少女の顔に露骨に落胆の色が浮かぶ。
シンはちくんと罪悪感が胸を刺すのを覚える。
だからだろうか、シンは目に付いた花を手に取る。
「これ」
「え?」
「プレゼント……その、アンタが俺の見立てた花を買ってくれた最後のお客さんになりそうだから」
「あ……ありがとう!!」
それはオレンジ色の薔薇の花であった。
少女は感極まったのか、真っ赤になってそれを受け取る。
らしく無い事をしてしまったという意識があるのか、シンも真っ赤になる。
幼くぎこちないやり取りを、店長はにこにこしながら見つめていた。
◇
「私が言えた義理じゃないけど、ティア少女マンガ読みすぎ」
「うるさい!!」
「ていうか、ラストのオレンジの髪の少女っていうのが気に入らんなぁ」
「友情出演ですよ」
露骨に気に入らないといわんばかりのはやてと、何か面白くないと言いたげなスバルから顔を逸らすティアナ。
その頬は真っ赤に染まりきっている。
恋する乙女の妄想を思わず曝け出してしまった事が気恥ずかしかったのだ。
「やっぱり二人とも甘いなぁ」
「甘い?」
「シンは格闘技のプロやないんや。賭けバトルなんて出来ひんやろ」
「う……」
「それに、花屋なんて、割りのいいもんでもないし。そもそもそれはエピローグ向けや!!!」
「くっ……」
そこで、はやては余り豊かえではない胸を反らせる。
「みんなのYAGAMIさんが見本をみしたろう」
◇
「ふふふ……綺麗やな…」
はやてはスゥーっと白い肌に指を滑らせる。
月明かりに照らし出された少年の白い肌は、何の抵抗も無く指の腹を滑らせていく。
指先は、少年の腹を通り、胸を経て白い喉下に向かう。
「く……」
悔しさを滲ませた表情で、紅の瞳がはやてを射抜く。
しかし、その視線ははやての中の嗜虐心を煽るだけだった。
はやては少年の喉を滑り降りる汗に鮮やかな赤い舌を這わせる。
塩味がするはずのそれは、しかし、はやてにとってはたまらない甘露ともいえるものであった。
同じ汗であるというのに、同僚の、はやての美貌に卑しい下心の篭った視線や、下卑た眼差しを向ける同僚達のものとは成分からして違うように思えた。
「ふふふふ……ええ味や…」
存分に少年の汗を堪能したはやては、つうっと舌を離す。
淫靡な銀糸がはやての赤々とした舌と、少年の、シン・アスカという捨て猫の白磁のような肌とを繋いでいた。
その光景に、はやての脳裏はぢりぢりと焼け付くように熱を帯びていく。
この捨て猫を拾ったのは、先週の事であった。
若くして出世コースを邁進している日常に虚しさを覚えていた雨の日であった。
行き場を失ったように蹲っていた少年に声をかけたのは気まぐれであった。
しかし、俯いていた顔を上げたとき、その紅の瞳にはやては射抜かれた。
『なぁ、アンタ俺を買わない?』
何を馬鹿な事言うのだ、そう言おうと開かれた口からは思いがけない言葉が飛び出た。
『アンタが私のペットになるんならいくらでも』
救いの無い契約が成立した瞬間であった。
シンの黒い髪に、はやては鼻先を埋める。
不快な匂い、吐き気を催すような職場の男共の体臭とは異なる香りに、くらくらと来る。
はやては、すんと鼻をならし、その香りを吸い込む。
汗の匂いさえも全く違うんや、驚きにも似た思いが湧き上がる。
シンが身じろぎをする。
自分の髪の匂いを嗅がれて恥かしいのだろうか。
そんな少年らしい仕草をはやては好ましく思う。
そして、同時に、もっと意地悪をしてしまいたくなる。
「アカンでぇ?シンは私に買われたんやから。何でも言う事きかな」
「……わかってます……」
シンの勝気な赤い瞳に屈辱と、嫌悪感、そしてはやてへの軽蔑の色が浮かぶ。
はやての背にゾクゾクとした昏い快感が走り抜ける。
この少年だけだ。
唯一全てを曝け出せるのは。
それが例え金を餌にしたものだろうと、身体だけのものであろうと。
「私は好っきやで?シン……」
そう言ってはやては恋焦がれていたかのように、深く口付けると、シンの上に跨り………
「「ストーーーーーーップ!!!!!」」
「なんや、人がせっかく……」
「せっかくも何も無いです!!ここは全年齢板です!!」
ティアナが真っ赤になって叫ぶ。
はやてはフンと不遜に鼻を鳴らす。
「だから、シンの武器は身体そのものだと思うんや」
「だ、だからって何ですか!!はやてって」
「友情出演…」
「妄想でしょう!!」
「そんなんティアナが言えた義理か!!」
「私は可愛い恋する乙女の夢です。貴方のギトギトのレディコミ的妄想と一緒にしないで下さい!!」
「なぁんやて!!!!」
はやてとティアナの口論が始まる中、既にスバルは顔を真っ赤にして煙を出していた。
そんな様子を遠巻きに眺めながらエリオとシンは疲れたようにコーヒーを啜っていた。
はっきり言って丸聞こえだった。
「実際のところはなんですか?」
「奨学金」
二人の視線の先では臨戦態勢に本格的に入ったティアナとはやての姿があった。
2
「やぁ、アイも変わらず骨肉のキャットファイトをしているようだね六課の諸君」
アロハシャツで軽快に現れた男を、六課の誇る二大ツインテールが出迎える。
「喧嘩を売ってるなら破格の値段で買い取るわよ?」
「今の季節なら手早く森の滋養になるわね」
前者がツンデレのツインテールであり、後者がアフロダイAのようなツインテール(シン談)だ。
尚、金髪ツインテールにアフロダイA、ニート剣士にビューナスAというあだ名を付けているというのは、
シンとエリオの二人だけの秘密だ。
まぁ、実際ミサイルだと思うよ?羨ましくない事も無い。
「相変わらずと愛が変わらないというのを掛けたのだが、キャロ君、気づいたかな?」
「死んでください」
「手厳しい!!」
「それで、野望を打ち砕かれた悪の首領が一体何のようかな?引き金は軽いよ?」
ぐおんぐおんと集束音を立てて凝縮されていく魔法の光を熱そうに浴びながら、アロハの男ジェイル・スカリエッティは傍らのウーノに目をやる。
頭の沸いたアロハシャツとは異なり、黒のロングスカートに、水色のブラウス姿のウーノはさながら良妻の如く。
手にしていた包みを六課のテーブルに置く。
「何やの?これ」
「いや、色々と迷惑を掛けてしまったからね。ちょっとしたゲームのようなものだよ」
「ゲーム!?」
スバルが瞳を輝かす。
書き忘れたが、現在彼らがいるのははやての執務室。
メンバーははやて、ティアナ、スバル、なのは、フェイト、キャロだ。
書いているだけで胃が痛くなるメンバーである。
ちなみに、シンはエリオと一緒にいる。
何をしているか、少し覗いてみよう。
エリオ「シンさん、この木綿豆腐と挽き肉を炒めたの美味しいですね。今度レシピ教えてくださいよ」
シン「ああ、いいぞ。でも十分料理できるじゃん」
エリオ「いや、やっぱりいつまでもフェイトさんに甘えているわけにも行きませんし、早く自立したいな…って」
シン「う~~~ん、個人的にはそんな三段飛ばしで自立しなくても良いと思うぞ」
エリオ「どうしてですか?」
シン「俺が料理作れるようになってから、母親スッゲー寂しそうだったもん」
エリオ「ああ、妹さんのために色々料理勉強したんでしたっけ?」
シン「ああ、ある日妹が『お母さんがいなくてもお兄ちゃんがいてくれれば安心』って言ったのがかなり堪えたみたいだ」
エリオ(この人意外と凝り性だから、ホントに色々作れるようになったんだろうな……)
シン「どうした?」
エリオ「いえ、何でも」
実に平和な光景である。
もっとも、平和な光景というのは得てして、その後に来る嵐を予感させるのだが。
このスレ的に。
「で、ゲームって一体なんなの」
腕を組み、その手にはずしりとした質感をもった銃を持ちながら、ティアナが胡散臭そうに包みを見る。
気にはなるようだ。
すかりえ……めんどいので、アロハとするが、アロハは不敵な笑みを浮かべる。
包みに手を掛けゆっくりと解いていくと、それはノートPCのようなものがあった。
「パソコン」
スバルが小首を傾げる。
やけに、その仕草が彼女を幼く見せる。
なのはやフェイトも小首を傾げる。
まぁ、19歳でその仕草は正直自分に自信が無い限りするべきではない。
じゃないと、同性は軽くイラッとする。
アロハは、視線をなのは達に巡らせると、ティアナに視線を留めた。
「君に決めた!」
「私!?」
国民的ネズミの飼い主のセリフを淡々と吐くと、アロハがキーボードをぽちぽちと叩く。
天才科学者なのに、指一本打ちとはこれいかに!?と全員が思った。
一通り入力し終えたのか、アロハは良い汗かいたと爽やかな笑みを浮かべると、ウーノがそっと汗を拭う。
表示されているのは、『シン』『ティアナ』『ignited』『種的』というワードが表示されている。
「そしてエンター」
アロハがエンターキーを押してからしばらくすると、スピーカーから音楽が流れ出す。
曲はハイネ・ヴェステンフルスがインディーズで出した名曲である。
「あ、シン君」
スバルが画面に見入る。
他の面々もそれに見入る。
yagamiは魅入られている。
フェイトも便乗している。
しかし、徐々に、シンが現れてニヘラとしていた女性陣の柳眉が跳ね上がった。
約一名を除いて。
「ちょ、こ、これ何よ///////!!」
ティアナが真っ赤になって画面を指差した。
その映像は宇宙空間に裸のティアナと、その瞳から溢れた涙を拭う同じく裸のシン。
まぁ、ぶっちゃけ種名物「裸ダイブ」である。
「これぞ名付けてPV君!!!」
「「「「「PV君ッ!?」」」」」
「特定のキーワードと曲を入力すると、それにそってプロモのようなものを作ってくれるという優れものだ」
「それってようはMAD製造機っちゅーことやん」
「ふ……MADでこのナチュラルさが出せるかい?個人的にMADという言葉の響きは大好きだがね」
「そんなコアな機械渡されても……ねぇ?」
「そうそう、そうだよね」
なのはとフェイトが苦笑している中、説明書を読み耽っていたキャロが、おもむろにキーボードを手繰り寄せる。
カタカタっと鮮やかな手付きで入力された語は『シン』『エリオ』『BL』である。
途端に耽美な曲と共に、シンとエリオが……まぁ一部の女性が喜びそうなスキンシップを取り始める。
「「「「「きゃ~~~~///////」」」」」
女性陣は黄色い歓声を上げる中、キャロはふむと頷く。
「つまり、あらゆる曲に合わせて自分の妄想を充たす道具なんですね」
女性陣の肩がピクリと動いた。
アロハは気を悪くするでもなく、誇らしげに頷く。
「報われぬ恋に愉快……じゃなかった、苦しんでいる君達の心の慰みにと思ってね」
「GJ!!!先程の発言は聞き流しておいたるわ!!」
「うん、一瞬マジ殺してやろうかとも思ったけど、確かにGJ!!」
「最初ッからこういうの作れよ、なの」
「ティア、面白そうだね~~私とシン君でも何か出るかな~~~えへへへへ」
「ま、まぁ、話のタネにやってみるのもわるくないわね。別に、曲はあえて適当に恋愛ものから選べば良いだけで」
「ティアなに検索してるの……『名作恋愛映画主題歌集』……ティア……」
「何よ、その目!!やるからには中途半端は良くないでしょ!!!それだけなんだから、そうそれだけ!!」
「マスター、喜ばれて何よりでしたね」
「そうだね、これで妄想が熟成されていくのだろうね」
「いい女難が生まれそうですね」
「ああ、とてもいい女難が生まれそうだ」
最終更新:2009年09月27日 01:38