1
「そういえば一輪、最近キミはシンと一緒にいる事が多いね」
「そうかしら? まぁ言われればそうかもしれないわ」
お昼の一時
それは共にお茶をしてくつろいでいたナズーリンの疑問
「おやおや? ああ言う若い子が好みだったかい? 君も隅に置けないねぇ」
「はいはい…というかそんなこと言ってると」
「あぁあああなたたちは、こんな昼間からなんて破廉恥な会話をしているのですか!」
言わんこっちゃない、世紀のうっかり者が召喚されてしまった
ナズーリンはといえば、やたらニヤニヤしてるし・・・わざとか
「それじゃ一輪、ここは私に任せて彼とのめくるめく熱い時間を過ごしてくるといい」
「はぁ…まぁ行ってくるわ、後は任せたわよ」
「ふえっ!? か、彼をそんないかがわしい目で見てはいけません!
それにこんなお昼時にそんな破廉恥な考えもいけません!!」
「という事は夜だったらどんな事を考えても良いのですかな? ご主人」
「なっ?! そんな事は言ってません!!」
「だが考えてもみてください、シンも思春期なんですよ
彼もご主人の考えるような破廉恥で淫らな行為にも興味津々だと思いますけどね」
「うぇ?! か、彼が、彼に限ってそんにゃ事を考えるはずが…」
「そうでしょうか? 彼も思春期を迎えた少年ですよ?
欲求の一つや二つあるに決まっていますよ
そしてそれを押さえつけるような事をすれば…
おっと、これ以上はこんな昼時に口にすべき事ではないですね、いや失敬失敬」
もはや言葉ですらない星の奇声を背に受け歩みを進める
彼女の役職は一体なんだったっけ
それにしてもナズーリン、嬉々として主をからかう辺り、日頃の恨みもあるんだろうか
仕方ないか、うっかりされる度に余計な仕事が増えてるし
ま、どうでもいいか
・ ・ ・
あの子は・・・この時間ならいつもの場所かな
あぁ、やっぱりね
案の定いつも通りに、雲山と楽しく話し込んでいた
―雲山さんは何だか"お爺ちゃん”って感じがするんです―
聞けば、祖父達は彼が生まれる以前に他界したらしい
だから、雲山に祖父のような感情をもっているのだと
雲山も雲山で、そんな彼を孫のように思って、不器用なりに可愛がっている
そして
この命蓮寺の皆も、彼を家族のように思っている
満面の笑顔
本当にいい顔をするようになった
あの時
全てを失ったあの子がここに流れ着いたあの時
あの子の表情は、あの子の眼差しは、あの子の心は
あの子の・・・全ては死んでいた
―どうして助けたんだと
―どうして死なせてくれなかったんだと
今でも思い出す
年端も行かない少年が
あんなにも・・・あんなにも絶望の涙を流すのかと、あんなにも絶望の篭った言葉を口にするのかと
両の目で正視できないくらいに、耳をふさいでしまいたいくらいに
本当に信じる事が出来なかった
あまりにも、あまりにも・・・哀しい子の存在を
でも彼は
彼は生きたいと望んだ、彼はもう一度笑いたいと望んだ
そして
その取り戻した笑顔を、私たちに向けてくれた
私たちのような人ならざる者を恐れるでもなく、今は家族のように思っていると言ってくれた
嬉しかった、それは皆も同じだった
ナズーリンにはからかい甲斐のある弟に
水蜜には航海の楽しさを分かちあう弟に
ぬえには共に笑いあえる弟に
姐さんには、未来を作ってくれる頼もしくも危なげな弟のような、あるいは息子のような存在に
星には、弟以上の感情をもった存在に
いつしかみんなの心の中で、彼はそんな存在になっていた
いろんな形で皆の家族になった、そんな彼を
私も含めて皆が大好きになっていた
本当に
本当におもしろい子だ
本当に
本当に生きいてくれてよかった
感傷に、物思いに耽るのもここまでにするか
まずは優しくて可愛い弟と、不器用なお爺ちゃんのためにお茶を入れてあげるとしましょうか
2
「あれれー、また服のサイズが小さくなってる」
「ばーろー、服が小さくなるわけないでしょ」
「えー、でも他の子も服がきゅーくつだって言ってるよー」
「…私たちひょっとして太った?」
ざわ・・・
ざわ・・・
「こうなれば働いてやせるわよ!」
「その発想はなかったわ!」
「おまえあたまいいな、さっそく働くぞー!」
「「「おぉー!!」」」
「という訳で妖精メイドたちが仕事に力を入れ始めました」
「へぇ、それはそれでいいことじゃない」
「それは良いのですが…彼女達は太ったとか背が伸びたとかではなくてですね、その…」
「はっきりとお言い」
「はい、あれは…その、胸とかそういった所が成長してるんです」
「あいつか、あいつの仕業か」
「はい、あいつのせいです
成長している妖精メイドは全員、あいつがパルマしたメイドたちです」
「咲夜」
「はい、お嬢様」
「あいつの仕事三割増しね」
「かしこまりました」
「…ということはつまり、私も別に太ったわけじゃないのか」
3
「お兄さんはさとり様のことをどぅ想ってるわけぇ?」
むせた
宴会は無礼講だ、それに酔うと本音が出るものだけど
お燐もそういうタイプなんだろう、聞き上戸って奴なのか
あいつもこっち見てるし
しかもあの顔はみんなの前で言わて周りの反応を楽しみたいって感じの顔だ
分かったよ
なら全力で言ってやる
「そうさ、どうせ聞かれるならみんなに聞かせてやるさ!
さとりぃ! 好きだぁー! さとり! 愛しているんだ! さとりぃ!!
お前がオレを助けてくれた時から好きだったんだ!
好きなんてもんじゃない! さとりの事はもっと知りたいんだ!
さとりの事はみんな、ぜーんぶ知っておきたい!
さとりを抱き締めたいんだ!
潰しちゃうくらい抱き締めたーい!
心の声にオレの叫びを付け加えてやる! さとりぃっ! 好きだ!
さとりぃっ!! 愛しているんだよ!
オレのこの魂の叫びをきいてくれー! さとりぃぃ!
お前の素敵な笑顔をみてから、お前の優しさを知ってから、オレはお前の虜になってしまったんだ!
愛してるってこと! 好きだってこと! オレに振り向いてくれ!
さとりがオレに振り向いてくれれば、オレはこんなに苦しまなくってすむんだ!!
優しいさとりなら、オレの心の内を知っている、オレに応えてくれるだろう!?
オレはお前を、オレのものにしたいんだ! その美しい心と美しいすべてを!
誰が邪魔をしようとも奪ってみせる!
恋敵がいるなら今すぐ出てこい! 相手になってやる!
でもさとりがオレの愛に応えてくれれば戦わない!
オレはさとりを抱きしめるだけだ! お前の心の奥底にまでキスをする!
力一杯のキスをどこにもここにもしてやる!
キスだけじゃない! 心からさとりに尽くす! それがオレの喜びなんだ!
喜びを分かち合えるのなら、もっと深いキスを、どこまでも、どこまでもしてやる!
さとり! お前が灼熱地獄の中に素っ裸で飛び込めというのなら、やってもみせる!!」
「お~いシン…うにゅ~シンってばー!」
「なんだよお空!? これからって時に!!」
「…お姉ちゃん聞いてないよ、ていうか倒れてお燐が部屋に運んで行ったよ
心と頭に同時にあんな告白聞かされたらそりゃあぁもなるよ
まぁ、幸せそーな顔して倒れてたから良いんだろうけど」
~地底~
「聞いてる方が恥ずかしいセリフを言うなぁ…酔いがさめたじゃないか」
「妬むのも馬鹿らしくなるわ」
「恋の病…というか別の病でしょ、これは」
「釣瓶で頭を強打すればいいのに」
~地上~
「霊夢、今のって」
「十中八九あの馬鹿でしょ…さとりも大変ね」
~天界~
「にゃははは! シンったらここまで聞こえる声で告白しちゃってさ!」
「地底にも激しいフィーバーをなさる方がいらっしゃるんですね…」
「…いいなぁ」
~外界~
「ねぇ
メリー」
「えぇ、結界をも超える愛の言葉…素敵よね」
「いや紅茶が砂糖水になってるんだけど」
~月~
「地球って怖いところなのね」
「これは…ご祝儀でも送った方がいいのかしら?」
4
1.
「ナズーリン、私は大変なものをなくした…いえ盗まれてしまいました!」
「はいはいうっかりうっかり…って盗まれた!? 誰にですか!!」
「シン君です、彼は大変なものを盗んでいきました」
「彼が、まさか彼のような人間が盗みをはたらくだなんて…一体何を盗まれたんですか?」
「私の心です」
「死んでくださいご主人」
2.
「最近熱いですねナズーリン」
「そうでしょうか? そろそろ初夏とは言えまだまだ涼しいと思いますよ?」
「ですがシン君を想うと、まるで体の奥から焼き尽くされる位の熱を感じるんです」
「そのまま灰になってくださいご主人」
3.
「彼に告白するのは恥ずかしいから手紙で想いを伝えようと思います」
「口で伝えてください星」
「聖の言う通りです、紙の無駄遣いは辞めてくださいご主人」
「でも何を書けばいいか分からないから手伝ってください聖、ナズーリン」
「勝手に書いてください…まぁ普通にご主人の想いを綴ればいいと思いますよ」
「そ、そんな十八禁で破廉恥な内容を私に書けというんですか!?」
「普通に書けって言ってるでしょうが!」
「いつもどんな事を考えてるんですかこの桃色脳!」
5
「という訳でだ、シン」
「どういう訳なんですかナズーリン先生~、てか人の部屋に一体何をばら撒いてるんだアンタは!」
「逃げられんぞぉ!」
「聞けよ! 答えろよ!!」
「まぁ何だ、君に幸せを呼び込むおまじないさ」
「胡散臭いおまじないだな、つか胡散臭い以前に粉くせぇよ」
「面白い駄洒落だね…まぁ待ちたまえシン君、これは知略と言うものだよ」
「返答の代わりに諦めと哀れみの混じった視線を向けてくるとは、まったくひどい人間だね君は」
「明日の朝ごはんは猫いらずで宜しいですか?」
「おぉ怖い怖い…それじゃ私はこの辺で失礼するよ」
「今度来る時は普通の用事で来てくれ、そして片付けてから帰ってくれ」
「そのことだがね、我がご主人がもうすぐココに来ることになってるんだ。
だからそれまで部屋を片付けないように」
「は? 何で…っておい、意味が分からない上に無視して出てくな!」
後はあの二人次第か。
まぁ結果は火を見るより明らかだがね。
だってマタタビという名の燃料を撒いたし、今宵の命蓮寺の一部が本能寺より激しく炎上する事請負だね。
本能寺ならぬ煩悩寺の変だね、ハハッ
最終更新:2010年06月11日 20:24