1
朝というよりまだ日の昇っていない時間に俺は起きた。
違う、戦士としての危機感が俺を起こした。
「ん・・んん・・・・苦しい」
そして、動けない。
アナコンダに締め付けられているような感じがする。
寝ている間にジャングルに迷い込んだか?
皮製の拘束具を縛りつけられているような感じがする。
寝ている間に牢屋にぶちこまれたか?
寝ぼけた頭で自身の状況を把握しようとする。
首は少しは動けるようだ。
すー・・・すー・・・、といういつもの自分以外の寝息が後ろから聞こえた。
「・・・ディエチか」
ようやく把握した。
俺はディエチに後ろから全身を使って抱き枕のように抱きしめられていたのだ。
ディエチは見た目に反して力が強く、俺は文字通り手も足もでない。
あ・・・・寝ている時はブラジャーを着けないんだ、生きてて良かったじゃなくて!!
どうする?! どうやってこの状況をすればいい!!
女の子独特のいい匂い・・じゃないッ!!
「な、なあディエチ、ちょっと起きヒャッ!」
耳に息を吹きかけられた。今の声聞かれてないよな?
オーケー、クールだ。クールになるんだ。あッ、ダメッ!!足をそんな風に絡めちゃダメ!!
「すー・・・すー・・・シン・・さん」
あ、起きたかな? 良かった。
「んー・・・いただきます」
え? この子、今なんて言いやがった?
あーん、と口を開けて何をするつもり?
何を喰うつもり?
ディエチさーん!! 俺、アンパンじゃねーよ!! アンパンマンでも直食いはさせねーよ!!
がちッ
なんとか最初の一噛みをかわす。
筈だった。
首に生暖かい液体の感触を感じる。
ヨダレだと良かったが、痛みが走っているので多分流血しているのだろう。
場所はすれすれ頚動脈ギリギリだった。
「これは・・本気(マジ)で死ぬかもな」
大声をあげてディエチを起こそうとした瞬間。
がちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッがちッ!
うおおおーー!!
俺は見えにくい背後からの攻撃(又は口撃)を必死に避け続けた。
もしかしたら俺、空間把握能力者?! やったー! ドラグーンが使える、じゃねーよ!!
その時、ディエチの右手の指先が俺の下腹部へいった。
あ!! そこはダメ!! 朝だからッ!! ターンホイザーが起動しているからッ!!
俺は不覚にも戦闘中にディエチの右手に呆気を取られてしまう。
ヤバイッ!!
後ろをみると既にディエチの綺麗な歯が見えていた。
ああ・・・もっと背中の感触を味わっておけば良かった。
ピピピッ ピピピッ ピピカシャ
そう思った瞬間目覚まし時計が鳴り、ディエチが止めた。
「ん・んー・・・おはよ。シンさん」
ディエチは何事も無かったように朝の挨拶をする。
「あ・・ああ、おはよう」
「ん゛・・・なんか鉄の味がする」
唇が少し赤かった。
俺の血だった。
「多分・・・寝ている間に口の中を噛んだんだろ。先に洗面台にいけよ」
俺は首の傷を見せないようにした。
「あと・・・・何これ?」
舌を出すと、その上に小さな膜のようなものがあった。
俺の首の皮だった。
「口の中の膜だろう・・・・。」
何とか誤魔化す。
「・・そっかな?」
「そうだよ!!」
全力で誤魔化す。
ディエチは「そっ」と言いながら、再び口の中にいれて。
ゴクンと飲み込んだ。カニバリズム!?
「あ」と俺は間抜けな声を出した。
だが。
「じゃあ、先に顔を洗うね」
ディエチはそう言って、洗面台に歩いていった。
以来俺は傷のあった場所を触れるたびにディエチの健康な歯の鋭さを思い出す。
2
「人が死ぬときにはね――そこになんらの『悪』が必然であると、『悪』に類するものが必然であると、この私は思うんだよ」
1人は灰色のジャケットを着た青年だった。
黒い髪で、紅い瞳を茶色いカラーコンタクトレンズで隠している。
そしてもう1人は――背の高い男だった。
しかしその痩せた身体は見る者に大柄という印象は与えず、その手足の異常な長さも相俟って、まるで中学校の中学校の美術室に飾ってある針金細工のようなシルエットである。
背広にネクタイ、オールバックに銀縁メガネというごく当たり前の、極々当たり前過ぎファッションが、驚くくらいに似合わない。
青年と針金細工は他に誰もいない車両内で、特に声を潜める風もなく会話をしていた
――というより針金細工は呆気に取られている青年に対し一方的に話かけていた。
針金細工は随分楽しそうだった。
「そう――ですか」
しかし針金細工は青年の相槌があるにも関わらずさらに言葉を続ける。
「私が何を言いたいのか分かるかな? つまりだね、『人の死』とはとことんをとことんまで突き詰めて『悪』につきまとわれた概念であり、そこには善意や良識の入り込む間隙はほんの一ミリだって存在しないということさ。
人の死の理論には隙がない。人が死ぬ物語にはどうしようもないような悪人しか登場しないし、またするべきではないのだよ。正義を説く聖人も倫理を説く善人も、それからついでに謎を解く何とやらも、
登場人物に名前を連ねる資格がないし、彼らにしたってあえて登場したくなんかないだろう。
そういうものなんだよ。人の死で愛や情やら心理やらを表現しようなんて、そんなことは不可能さ。人の死にあるのは『悪』だけだ」
「『悪』だけ・・・ですか?」
「『悪』だけ。他には何もない」
「でも、おかしいですよ」
青年は納得のいかない表情で反論した。
「ほう――何がかい?」
針金細工は嬉しそうに反論を待った。
「戦場では沢山人が死にます。けど、どちらが『悪』だなんて断言できないじゃないですか」
「その場合は『戦場』というような状況、そのものが既に『悪』なのさ。」
「まあ・・・その考え方なら納得がいきますけど」
「さっきの質問からすると君は戦場に出たことがあるのかい?」
「ええ・・・まあ。軍人として。今は辞めちゃいましたけど」
「君はなぜ軍人として戦場に出たんだい?『普通』で『当たり前』の人生に生きるという、素晴らしい選択肢もあっただろうに」
「・・あなたの言葉を借りるなら、俺の家族は戦う意思なんて無かったのに『戦争』という『悪』に奪われました。多分あなたにとって軍人は人を殺すから『悪』ということになるんでしょう。
でも俺は奪われたから、そんな思いは他人にはさせたくないから軍人になりました。他人の『当たり前』の幸せを、『花』を守れるなら俺は喜んで『悪』にでも『鬼』にでもなりますよ」
「『幸せ』というのは『普通』で『当たり前』というのを知っているんだね。君はそれを『花』とたとえるみたいだが」
「『人の幸せ』も『花』も自然に咲くものでしょう? 人為的に植えるものじゃないし、勝手な傲慢で吹き飛ばしていいものでもありません」
「そうだね。大切なのは他人に迷惑をかけずに、周りの人たちと仲良くやることなのだよ。それが哺乳動物の宿命なのだから。君は『戦場』で“敵”以外は殺したことはあるのかね?」
「民間人を殺したことはありません。相手は全員、戦場で戦う意思を持っていた奴らだけです」
「それは殊勝なことだ。きみは・・・・ええと、名前はなんと言ったっけな?」
「ジン・スカリエッティ・・ですけど」
青年は恐る恐る偽名を名乗った。
「ふむ!」
ぽんと手を打つ針金細工。
「仁(ジン)と来たか、仁とは良い名前だな。現代から江戸時代にタイムスリップしてしまっても医者として生きることを決意し、人を治療し続けた医者と同じ名前じゃあないか。他人を思いやることのできそうな名前だ」
偽名なんだけどなぁ。なんか悪い気がする。
「ジン君」
「はい?」
「君、お兄さんは欲しくないかい?」
どうやら針金細工は変人のようだった。
「妹以外は募集しておりません」
青年も“この域”では変人のようだった。
「妹か。ふむ! 妹はいいよね!」
変人ではなく変態だった。
「当たり前です! とくに『お兄ちゃん』と呼んでくれる妹なら最高じゃあないですか!」
つい話題に乗ってしまった。
「君・・・なんか手を出しそうだよね」
この熱意は危ない、針金細工はそう思った。人のことは言えないのだけれども。
「何を言っているんですか? 妹とは愛するものではありません。 愛でるものです」
これでも地球連合、オーブ軍、歌姫の騎士団からは『羅刹』の二つ名で恐れられています。
「・・・・負けたよ」
針金細工は何故か敗北感を感じた。だが悪い気分ではなかった、むしろ清清しかった。
「でも今朝その妹(ディエチ)から・・・・掃除の邪魔だから、と追い出されましたけどね」
「いいじゃないか・・・・私なんて変態呼ばわりだよ」
2人は数瞬、哀愁感を漂わせた。
「「でも可愛いことには変わりないん(だけどね)(ですけどね)!!」」
いい笑顔だ。
類(シスコン)は友(シスコン)を呼ぶ、という奴である。
「ジン君とは馬が合うし、話していると楽しいな」
針金細工は、うふふッ、と笑っていた。
「そういえば君、今何をやっているんだい?」
「ああ―――一応傭兵をやっています。軍人を辞めても、花を守りたかったので」
少し言葉につまりながら答えた。
「へえ、妹さんと一緒にやっているのかい?」
針金細工はほんの興味本位で訊ねた。
「いいえ、1人でやっています。妹には『普通』で『当たり前』に幸せで暖かい世界で生きて欲しいんです。だから兵器とかMSとかにはあまり触らせないようにしています。
というより触らせたくありません。ただし刃物の使用は俺に食事を作ってくれる時とリンゴをむいてくれる時、又は一般生活の範囲なら許可しています」
青年は真剣な声と言葉で答える。
青年は頭を横に振りながら答える。
青年は笑みをうかべながら答える。
「聞いてもいないのに心温まるエピソードをありがとう。それは自慢かい?のろけ話かい?」
「そうですが?いけませんか?」
「いやいや。いいよ、その気持ちはよく分かるから。仮の名前でもしっかり仁の心をもっている。うふ、うふふ。よかったよかった。きみは『合格』だ」
「え?」
嬉しそうにそんな言葉を使う針金細工に、怪訝そうに眉を顰める青年。
それに対して針金細工は誤魔化すように、大袈裟な動作で手を振った。
「いやいや、こっちの話だよ。それでは妹さんを大切に」
言って針金細工は車両の出入り口を指さす。計ったように同時に、速度を落としていた電車が停止して、そのドアが開いた。
青年にとっては丁度降りる駅だったので「それでは」と軽く頭を下げて、駅のホームに降り立ち、歩いていった。
ドアが閉まった。
青年は立ち止まった。
「あ・・・・名前聞くの忘れてたな」
もう電車は走り出している。
「それより、大丈夫かな?」
青年は怯えていた。
「大丈夫だろうな。あの人――俺より強いし」
あの針金細工に。
自分よりはるかに強いと断言できた。
青年は再び歩いて、帰っていった。
針金細工の背広は特別仕様で、内側にはホルスターを模したポケットがあり、そこには愛用している『凶器』が隠してある。
その『凶器』の拵えはいわゆる鋏の形を型取っているものの、一目見ればその尋常でなさ加減は判然する。
ハンドル部分を手ごろな大きさの半月輪の形にした、鋼と鉄を鍛接させた両刃式の和式ナイフを二振り、螺子で可動式に固定した会わせ刃物――とでもいうのだろうか。
親指輪のハンドルのついている方が下指輪のハンドルの方よりもブレード部がやや小振りだ。外装こそは確かに鋏であり、鋏と表現する他ないのだけれど、その存在意義は人を殺す凶器以外には考えられない。
針金細工はこの凶器を『自殺志願(マインドレンデル)』と呼んでいて、その名称自身は、かつて針金細工を表す単語になっていた。
針金細工は、何の気もないような動作で、背広の内側からその刃物、『自殺志願(マインドレンデル)』を取り出した。
しゃきん、と一度、鋏を開いては、閉じた。
「やあ――どうやら邪魔してしまったようで、悪かったね」
視線こそ向けないが、針金細工は隣の車両に通じるドアに向かって言葉を放つ。
1人の一般的なビジネススーツの女性が現れる。
服装は一般的だが、両手で一般的ではない大口径の拳銃が握られ、針金細工に向けている。
「なんで邪魔をするのッ!? アイツは『シン・アスカ』なのよ!! 私の大切な人はアイツに戦場で殺された!!」
女性はキッと針金細工を睨みつけた。
けれど針金細工はそんなことにははなから興味がないらしく、苦笑するように唇を歪めるだけだった。
「シン・アスカ――というのかあの青年は。なるほどなるほど。しかし、メディアで聞いた情報とは大分印象が違うな。偽名を使ったのはあまりいただけないが、まあいい――シン君、零崎にならないことを祈っているよ。まあなってしまったらなってしまったで私が“この世界で始めて”の私の家族(ファミリー)として迎えにいくがね。うふ、うふふふ」
針金細工には青年の名乗ったときの声の調べで偽名だと分かっていた。
針金細工は不敵に笑う。
針金細工は不気味に笑う。
「あなたは一体何なのッ?!」
仇討ちを邪魔された女性はわなわなと叫んで聞いた。シンの知り合いだと思ったのだ。
「私は零崎双識・・・いや――ソウシキ・ゼロザキという。戦場で殺された大切な者の敵討ちというのは素晴らしいが、諦めることをお勧めするよ。シン君はあなたの存在に気付いていた。私がいなければあなたはシン君に罪悪感なく躊躇なく当り前のように殺されていただろう。私がいなかった場合、一番『悪い』のは『戦場』という状況を作り出したあなた自身なのだから」
零崎双識は不思議に青年の言葉を信じた。
零崎双識は当り前に青年の言葉を信じた。
まるで家族の言葉のように。
「うふふ。これでも私は零崎の中でもとびっきりの変り種でね――いわば平穏主義者なのだよ。平和と正義を何より愛する、白い鳩のような男なのだ」
腰をシートから浮かし、ゆるやかにその身体を直立させる零崎双識。手足の長さが手伝って、鳩どころか、巨大な蟷螂のような印象を受ける。くるくるくると、下指輪に指をかけ大鋏を回して見せた。
「・・・・」
「だからここで退くこととシン君への復讐を諦めてくれるというのなら、私は今のことを忘れよう。あなたは私に見つからなかったし、私もあなたを見つけなかった。深追いしなければ、シン君もあなたを殺さないだろうし、あなたもシン君に殺されない。
――何より、あなたは私に殺されないし、私もあなたを殺さない。命のことを考えれば、取引が成立する余地はあるんじゃないかと思うのだがね?」
女性は零崎双識を睨み続けたままだ。
銃口も零崎双識を睨み続けたままだ。
どうやら双識の言葉は逆効果百パーセントだったらしい。やれやれ、とばかりに、双識は回転させていた鋏を止める。
「“この世界”に来た――いや、来てしまったばかりだというのにこんなことをしている場合ではないんだけどね――ま、仕方ないってこともあるか」
零崎双識は『自殺志願(マインドレンデル)』の刃先を二つを二つ、女性に向けて突きつけて、笑みを消して見得を切る。
「――それでは零崎を始めよう」
(ジン・スカリエッティ改めシン・アスカ――合格)
3
『みんな守れますように、もとより戦いのない世界になりますように シン・アスカ』
『みんなにまた会えますように ディエチ・アスカ』
「じゃあ、吊るすか」
「んー・・・待って、もう1枚書きたい」
「ん? じゃあ俺ももう1枚書くかぁ」
そして、短冊を吊るした。
「なんて書いたんだ?」
「んー・・・秘密ッ。シンさんは?」
「あー・・・機密だ。」
「ふふッ・・・」
「どうしたんだよ?」
「何でもない」
『もう少しの間でいいからディエチの作った味噌汁が飲みたい 『羅刹』』
『絶対に生きて帰って「ただいま」と言ってほしい 『狙撃する砲手』』
4
DHで書ききれなかった1シーン。ディエチと樹里のところに辿り着く前
警報が鳴り、シンとモーガンはMSで宇宙に出た。すでに戦場になっており多数のダークダガーLが飛び交っている。
シン「数ばかりゴチャゴチャとッ!!」
正直苛立っていた。早くあの娘の安全を確保したい。このまま敵陣の中心に突撃し一気に、終わらせたい。
モーガン『シン!』
シン「すぅー・・・はぁ・・・・分かってますよ」
モーガンの一声であの言葉を思い出し、一呼吸して頭をクールダウン。“仕事”だということを忘れるわけにはいかない。
モーガン『・・・フム』
モーガンは既に策を考えいた。シンがすぐに冷静になることを分かっていたように。運がいいことに2人は相性がいい、それは熟知した者と未熟な者だからかもしれない。
モーガン『撃ちやすくしてやる。シン、お前が決めろ!』
シン「了解ッ!」
2人はどのように戦うのかうち合せていない。だが2人は知っていた。互いの戦い方を経験的に。互いに協力すると言ったのならあとは体が勝手に動き、月下のに照らされて羅刹と狂犬によるダンスが始まるだけだ。集団戦術を知り尽くした者と対集団戦に慣れつくした者の共同戦線だ。
105ダガーはガンバレルを切り離し、ガイア2ndと共に突撃させる。それはMS5機編成の1個小隊のようだった。
『ガンバレルの動きに合わせろ!』
ガンバレルに搭載されたGAU-868L2 2連装ビーム砲が光を放つ。
が、それらの攻撃は全てかわされた。
『――かかったな!』
にもかかわらずモーガンは、してやったり、という顔をしていた。
「ターゲット、ロック。――墜ちろ!」
ガイア2ndの2連ビームライフルにより、回避中のダークダガーL達は撃ち抜かれ爆ぜていく。
いつもより効率がいい、というか撃ちやすい。
モーガンが敵に回避中という命に関わる行為をさせている時、しかもシンの撃ちやすい場所に“誘導”し。
シンが隊長機を見定めた上で真っ先に墜とすことで敵の連携を乱し、“誘導”された敵を討ち墜としていく。もちろん接近戦を挑んでくるものもいたが、結末は同じであった。
残り7機となったダークダガーL達はいつのまにか“一塊”になっていた。
紅いツインアイと青いバイザーが不吉に光る。敵は運が悪かった、というしかない。
『『月下の狂犬』の攻撃から逃げられると思っていたのか?』
「蜂の巣にしてやる!!」
五方の内、四方からガンバレルの8本のビームが降り注ぎ。
五方の内、一方から両肩に固定された120mmガドリングがビームと鉛玉をぶち込まれた。
まわりには月下の狂犬と羅刹に無残に食い散らかされたものだけが残っている。
警備隊員S『たった3分弱で21機のMS部隊を沈黙させただと?』
警備隊員Z『もうあの人たちだけでいいんじゃないのかな?』
シン「さて、とっとと敵母艦を――」
ロウ『シン、大変だ!! 樹里とお前んとこの譲ちゃんのところに正体不明機が向かっている!!』
シン「・・・え?」
モーガン『シン、そっちのほうへ向かえ。敵母艦は俺がギガムーヴの警備隊を率いていく』
シン「え?でも――」
モーガン『『ピエロ』、シン・アスカ、お前は自分の言葉と名前の知っている花も守れないのか!?』
シン「・・・・ッ!! シン・アスカ、ガイア2nd、征きますッ!!」
シンは数瞬目を瞑った後、見開き叫んだ。
ガイア2ndはMA形態に変形し、バーニアを吹かして向かって征った。
モーガン『若さゆえの特権というやつだ。貸し1つだぞ?』
モーガン・シュバリエは、笑っていた。
5
ディエチは変わっている。
あの娘は。
青い海が好きだと言う。泡立つ波が好きだと言う。潮風の匂いが好きだと言う。
緑が好きだと言う。日光や月光に照らされて光る葉が好きだと言う。風が運んでくる緑と土の匂いが好きだと言う。
朝日の暖かい光が好きだと言う。夕日の儚げな光が好きだと言う。月や星の全てに平等で優しい光が好きだと言う。
だから気付かされる。だから気付かせてくれた。
俺が色んなことを見落としていたことを。世界には言葉に表すことのできないくらい素晴らしいものがあるということを。
あの娘の近くで、あの娘の匂いをかいでいる時だけ、俺は鉄さびと硝煙の匂いを忘れられる。“赤”と“黒”で連想されるものを忘れられる。
丁度持ってきたラジオから、桃色の髪をした歌手の曲が流れ出した。
『キミの帰る場所』という曲だ。
見向きもしなかった曲だ。無視してきた曲だ。嫌いだった曲だ。わずらわしかった曲だ。・・・・羨ましかった曲だ。
あの娘と出会ってから好きになった曲だ。
目の前にはクルーズ将軍の好きだったというヒマワリ畑の花が咲いている。
今日は快晴だ。
木陰であの娘は笑顔で手を振って俺を呼んでくれている。
白いシャツ、緑色のスカート、頭には麦藁帽子をかぶったあの娘が俺を呼んでくれている。
ビニールシートの上にはあの娘の作ってくれた弁当が並んでいる。
俺は今から世界で一番贅沢な食事をするつもりだ。
どうだ。うらやましいだろ?
最終更新:2010年08月10日 00:37