アットウィキロゴ

東京魔人學園伝奇ネタ-08



『ここはどこだ?』
辺りを見渡すが何も無い。
『お兄ちゃん』
声がした方を見る。
『マ、マユ』
妹のマユがいた。駆け寄るが近づけない。
突然マユの姿が消えた。
『マユどこだ!? ん』
足元になにかある…
『あ、あ…』
『お兄ちゃんだけずるいよ…』
足元には血だらけのマユの身体があった。

『な…マユ…』
また突然マユの身体が消えた。
『マユ!?』
『シン』
自分を呼ぶ声がする。振り向くと、そこにいたのはステラだった。
『ステラ!!』
『シン、ステラ護るって言ったのに…どうして護ってくれなかったの?
 シンのせいでステラ死んだ…シンのせいでステラ…』
『ごめんステラ…本当にゴメン…』
『シン』
背後からまた自分を呼ぶ声がする。いつの間にかステラは消えていた。
振り向く、ルナマリアがいた。
『ルナ…』
『シン…私を殺そうとしたよね? 私のこと護るって言ったくせに嘘付き…』
『あ、あれは周りが見えなくて…』
『言い訳するんだシン…メイリンを討って次は私を殺そうとしたんでしょ?シンは人を殺すのが好きだものね』

『ち、違う…』
『違わないよお兄ちゃん。軍に入ったのだって戦争をなくすんじゃなくて、罪に問われないで人を殺せるからだよね?』
『違うよ…』
『フリーダムを討ったのも…ステラのためじゃなくてただ殺したかったからなの…?』
『違うんだ…』
『護る気なんてないくせに護るって言わないでよ。この…』
『『『人殺し!!』』』

「違う!!」
気がつくと俺は寝台に寝かされ腕と足を固定されていた。
「おはよう目が覚めたかい? ククククク、こんなに早く麻酔から覚めるとは思わなかったよ。その身体は薬物に対する抵抗力
 も高いみたいだね」
身体を動かすが拘束具が外れない。
「何のつもりだよ、これは!!」
「飛鳥さん…」
比良坂が俯いたまま顔を上げない。
「飛鳥シンくん。 紗夜はねぇ、僕の命令で君を観察してきたのさ」
な…に? そういえば唐栖の時に比良坂に初めて…美里が入院した時も比良坂に会った…
「君の行動、性格…力は一度も使っていないからわからなかったが、君が僕の研究素材として相応しいかどうか、それだけを見
 るためにね」
「偶然だって言ってたのに…最初から…最初から俺を監視してたのかよアンタは!!」
「………」
比良坂の返事はなかった。

「何か答えろよ!!」
「紗夜、飛鳥くんに何か言ってあげたらどうだい?」
「…飛鳥さんごめんなさい…本当にごめんなさい」
騙してたって言うのかよ……こんなこと、こんなこと!!
「あやまることはないさ紗夜。彼の身体は人類の為に役立つんだ。感謝されても恨まれる覚えはない」
「黙れ!!」
クソッ拘束具が外れない!!
「ククク、さぁ紗夜。手術台のスイッチを入れてくれ」
死蝋が比良坂に指示を出した。クソッこんな所で…こんな所で俺は…
諦めかけたその時、上の部屋で物音がした。

「ん、侵入者か。ククク、ついてるなあ新鮮な素材が自らやってくるなんて。紗夜、死人たちの部屋を開けてきてくれ」
比良坂を見ると俯きながら震えていた。
「…もう…もうこんなことは止めて!!」
死蝋の指示に比良坂は反発した。顔を見ると比良坂は泣いていた。
どういうことだ?
「飛鳥さん。今、拘束具を外してあげます」
そう言うと比良坂は拘束具を外しに近寄ってきた。
「比良坂…アンタ」
「紗夜、どうしてそんなことをするんだい? お前の行動が理解できないよ。……紗夜!!」
比良坂は死蝋の問いかけに答えず拘束具を外している。

「飛鳥さん」
比良坂が俺に語りかけてきた。
「わたし、いつもあなたのことを見てきました。あなたの笑顔、あなたの強さ、あなたの優しさ…初めはあなたに近付くためだ
 けだったけど、いつからかそんなあなたに魅かれ始めてました。人は、復讐の心だけじゃ生きられない。人は一生をそのため
 だけに捧げることはできない。そう思い始めたんです。わたし…間違っているでしょうか?」

復讐…俺も復讐の為に生きた。フリーダムを倒すために俺は生きていた。
復讐を果たせば心も晴れると思っていた、ステラも喜んでくれると思っていた。
だけど、ただ虚しいだけで…ステラも喜んでくれるはずもなかった…
「復讐しても…何も得られない…」
「そうか、そういうことか。最近、様子がおかしいと思ったら!!許さないぞ紗夜、お前は僕の物だ。お前の心も身体も全て僕
 の物だ!」
「止めて!! 止めて兄さん!!」
兄さん? 兄弟なのか!? あの写真に写っていたのはコイツか!!
「わたしは兄さんの物じゃないわ!! わたしは生きているの。わたしは自分で考えられるの、兄さんが創った怪物と一緒にしな
 いで!!」
「………飛鳥シン。お前さえいなければ紗夜は僕の物だった。お前さえいなければ…そうだよ簡単なことじゃないか。飛鳥シ
 ン、お前が死ねばいいんだ。そうすれば紗夜は僕の元へ帰ってくる。腐童!!」
死蝋が腐童と呼ぶと、奥の扉から緑色の大男が現れた。
「腐童、こいつを殺せ。この男を…」
死蝋の命令と共に緑色の怪物が俺に近寄ってきた。
拘束具はまだ外れていない、このままじゃ…殺される。万事休す、目を瞑って自分の死を覚悟した。
「…何ともない?」
怪物の拳を振り落ろす音と何かに当たる音が聞こえたが、全く痛みを感じなかった。
目を開けてみる。目の前には比良坂の顔があった。顔から何か滴が垂れている。赤い滴。

「俺を庇ったのか!?」
「えへへ、よかった、飛鳥さんに怪我がなくて」
「どうして庇ったりしたんだよ!? アンタが死んでしまうだろ!!」
「わたしなら大丈夫です…今、それを外してあげますね」
そう言って比良坂は俺の拘束具を外した。外したと同時に比良坂が倒れこむ。
急いで比良坂を受け止めた。
「なんでだよ紗夜… どうしてそんな奴を庇うんだ…?」
「ここか?」
突然入り口の扉が開いた。入ってきたのは京一、醍醐、美里、小蒔。
「シン!!」
京一が俺を見て叫ぶ。

「わかったよ紗夜。こいつらに騙されているんだね… 紗夜をお前達の好きにはさせない、行け死人たち!!」
奥の扉から数十体のゾンビが出てきた。
「美里、比良坂の傷を治してやってくれ」
「え、ええ…」
比良坂は俺を護ってくれた。だから今度は…
「比良坂…アンタは俺が護る」
「飛鳥さん…」
もう誰も失うわけにもいかない。今度こそは護ってみせる。
比良坂を美里に預け緑の怪物に向き直る。

「こいあたたたた!!」
いきなり胸を刺す痛みが襲ってくる。今までにないほど強烈な痛みに情けない声を出してしまった。
辺りの空気が少し寒い…
「…ゴホン。京一 醍醐 小蒔、雑魚は頼む」
みんなが頷く。俺は再び緑の怪物に向き直った。
「アンタは俺が討つ! 今日! ここで!!」
俺の中で何かが弾けた。頭がクリアになっていく。
踏み込んで怪物を殴るが、まるでモビルスーツを殴ったみたいに硬かった。
俺の拳を体で受け止めた怪物が蹴りを繰り出す。こんなのに当たってやるわけにはいかない。

後ろに跳び余裕でかわした。武器はないか辺りを見回す。机の上にメスが数本あった。
メスを取ろうとするところを怪物が攻撃する。威力のある右ストレート、これを喰らえば確実に骨の一本や二本は逝ってしまう。だが当たらなければ意味がない。軽く回避し、怪物が腕を引く前にメスで斬りつけた。
『ガキィィィン』
メスが真っ二つに折れてしまった。予想以上の硬さだよコイツは…
こんな時死の線をみることが出来たら十七分か…いや何でもない。
またメスを取り怪物に向き直った。どうすれば倒せる… 怪物をよく観察してみる。
…顔に継ぎ目、そうか!

「ククク、無理だよ。僕の最高傑作だ。君には傷一つ付けれない」
「やってみなけりゃ分かんないだろ!!」
怪物が攻撃を仕掛けてくる。攻撃のモーションをとっている。隙だらけだ今がチャンス!!
怪物の顔の継ぎ目に沿ってメスを刺した。
案の定、ここは硬くなかった。ズブッという音を立ててメスが顔に埋まっていく。
「グギャァァァァ」
怪物が悲鳴を出しながら俺を払い除けようとする。当たってたまるか!!
バックステップで避け新しいメスを取った。怪物は苦しんでいる。
継ぎ目はまだ開ききっていない。次で決めてやる。

「この一撃は外さない!!」
メスが怪物の継ぎ目に沿って流れていく。傷口が完全に開ききり緑色の液体が噴出した。
「ギィィィィィヤァァァァァァァ」
怪物がこの世のものとは思えない断末魔を上げ倒れた。
「やったか」
「そんな…僕の最高傑作が…」
死蝋がその場に崩れる。いつの間にか京一たちもゾンビを倒し終えていた。
「比良坂!!」
治療を受けていた比良坂のところに駆け寄った。顔色が良くない。
「飛鳥さん…聞いてください」
辛そうな顔で比良坂が話しかけてくる。

「辛いんだろ…喋るなよ」
「聞いて欲しいんです…」
比良坂の話は自分の境遇のことだった。
事故で両親を亡くした比良坂と死蝋は別々に親戚に預けられた。
そこで酷い仕打ちを受けたこと、死蝋が高校を卒業したのと同時に一緒に暮らし始めたことを。

「わたし飛鳥さんに会ってわかったんです…護ることの大切さを…わたし、飛鳥さんに会えてよかった」
「もういい、喋るなよ」
比良坂の顔から血の気が引いている。無理させないほうがいい。
「そうだ…今度、どこか…行きませんか?」
「どこにでも行ってやるから…だからもう喋るな!!」
「えへへ…楽しみだなぁ………なんだか…ちょっと…眠くなってきちゃった」
比良坂の目が閉じていく。

「飛鳥さんの腕って暖かい…」
止めろよ…止めてくれよ…
「紗夜、えへへ。えへへへへ」
「ちっ役にたたねえ奴らだぜ」
突然、聞き覚えのない声がした。さらに、声と同時に研究所が炎に包まれた。
「なんだてめぇ!!」
炎の中に面をつけた男が立っている。
「鬼道五人衆が一人、炎角。俺達の名前は鬼道衆。この東京はもうすぐ俺達の手に落ちる。縁があれば相まみえることもあるだ
 ろう。ハハハハハ」
笑い声と共に男の姿は消えた。いきなり出てきてなんだよアイツは!

『バリバリバリ』

「うわっ」
天井の柱が炎によって崩れ去る。炎が回る勢いが早い。逃げないと…ん?
「比良坂は!?」
「えっ!?何処…あっ」
比良坂は部屋の奥に死蝋と共にいた。柱が落ちてくる早く助けないとッ!!
クソッ思った以上に火の回りが早い。近づけないッ
「わたしたちが犯した罪はこんなことで購えるものじゃないのはわかっています。みなさんありがとうございました…」
比良坂が死蝋を支えながらそう言った。顔色が明らかに悪い。
「何言ってるんだよ!! 今そっちに…」
「飛鳥さん!! …わたしもっと早くあなたに会いたかった………ごめんね兄さん。でもこれからはずっと一緒だから」
護るって言ったんだ…だから俺は護らないといけないんだ!!
これ以上誰も失うわけにはいかないんだ!!

「待ってろ比良坂!!」
「無理だよシンくん!!」
「お前まで巻き込まれてしまうぞ!!」
「シン止めろ!!」
京一と醍醐に引き止められる。
「離せよ!!離せ!!」

『バリバリバリ』

俺達と比良坂の間に柱が落ちる。
「ここにいるとまずい!! 外に出るぞ!!」

廃屋前


「ふう、なんとか出られたな」
「何でだよ!!何で止めたんだよ!!まだ助けることが出来たのに!!」
まだ間に合った!!まだ助けられたのに!!
「本気でそう思っているのか飛鳥? あの炎の中、助けに行けばお前が…」
「俺に…力がないからか!? 俺にアンタ達みたいな力がないからそんなこと言うんだろ!!俺のこと…どうせ陰で笑ってたん
 だろ。力が無いから、アンタ達みたいな力がないから、足手まといだって陰で笑ってたんだろ!!」
次の瞬間、頬に痛みが走る。
「な…小蒔?」
俺の目の前には小蒔がいた。いつかと同じ泣き顔の小蒔が。

「そんなこと…そんなこと言わないでよ!! 力なんかなくてもシンくんはボクたちの仲間だよ!!」
小蒔…
「俺たちだって助けたかった。だけどあの状況ではどうしようもなかった。わかってくれ…」
「だけど…だけどッ!!」
「飛鳥君がいなくなるのは嫌…」
美里…
「シン、お前の気持ちはわかる。だけどな、俺たちだって悔しいってことを忘れるなよ」
………また護れなかった。また、俺は護ることができなかった…

力が欲しい。護りたいものを護れる力が。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁー!!」
『…流石に今やるのはマズイかしら?』


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2008年06月25日 03:44
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。