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悠久幻想曲ネタ-45


「――これはまた、なんとまぁなタイミングでのご登場ですなぁ」

 波紋のように混乱が広がっていく広場、その片隅のとある建物の影でダークダガーはこの騒動の発生源である
一角を窺っていた。
 シンとデスティニー、カオス・ガイア・アビスの三人組、そしてデストロイ……
 下手をすればあの場に自分もいたのかもしれないと考えると中々な具合に背筋が冷え込むメンツだった。

「とはいえ、参りましたな~。まさか対象がすでにカオスさんらと接触してたとは。まったくどう報告していい
のやら……」
「言い訳を聞く気はないぞ」
「おぉう!?」

 背後からの声にビクッと身体を震わせて振り向くと、いつの間にか影に溶け込むように二つの人影があった。
 ひとつは黒いデスティニー。もうひとつは――シャドウ。

「あ、あはははは……珍しいですなぁこんな街中に来るなんて」
「元より来るつもりなどなかったのだがな。シャドウ、お前が見たがっていたのはあれか?」

 口ぶりから察するに、ここに来たのはシャドウの意思であったらしい。だが話を振られた本人はそれに応える
こともなくじっとデストロイを見つめているようだった。

「……おい、聞いているのか?」
「あァ? 何か言ったか?」

 顔を向ける素振りすらない様子に黒いデスティニーは不機嫌そうに眉間に皺を寄せたが、それ以上の反応は
見込めないと判断したのかそのまま壁に背を預けて腕を組んでいた。
 いつもと違う様子にダークダガーも訝しんだが、どう聞いても答えなど返ってくるとは思えなかったので自分
のやるべきことを優先することにした。

「それじゃま、私はあの人に報告しに行きますかね」
「お前は最後まで見ないのか?」
「ま~そうしたいのは山々なんですがね、所在がハッキリしたらすぐ報告しろって言われているので。まったく
人使いが荒いんですよね~。ヒキコモリ気質というかなんというか。その点黒い旦那と黒いお嬢さんは自発的で
いやんもう大助かりっていうか」
「別にお前のために動いているわけではない」
「ぐっは!? その欠片も愛のないザックリ具合がたまんねっす!」

 ハァハァと荒い息をつきながらもダークダガーはもう一度ちらりとシャドウを窺う。
 顔半分をマスクで覆われている男の感情などそうそう分かるものではない。彼女自身、今まで会った中ではっ
きりと分かったのはその口元が凶暴に歪んだときくらいのものだった。
 しかし今は違う。口元だけではない、全身から滲み出る気配がかすかながら複雑な感情を覗かせていた。

 ――はてさて、どう判断していいやら……

 思考を巡らせつつも答えなど出るはずもなく、また答えを得たとしても自分には何ら関係がないと割り切って
ダークダガーは無言で会釈をしてその場から去った。

 ……残された黒いデスティニーも再度シャドウの横顔を見つめ、そしてシンたちの方へと視線を移した。



 ――がおー。

 デストロイの発した第一声はシンだけでなくカオスたちまでも呆気に取られるほどの衝撃があった。
 いや、これを衝撃と呼んでいいのかは微妙だったが。

「えー、と……?」

 前に立つデスティニーが戸惑った声を漏らしつつカオスへと目を向ける。その視線で我に返るとデストロイの
隣へと飛び降り声をひそめて――といっても丸聞こえだったが――叱責を始めた。

「ちょっと、なんですの今のは?」
「…………?」

 「なにかいけなかった?」と言うようにデストロイは首を傾げる。カオスに続き降りてきたアビスも苛立ちを
滲ませた口調で告げる。

「何も喋るなって言ったろ? どうしろってんだよこの空気」

 最後に降りたガイアも珍しく眉を吊り上げながら厳しく責める。

「萌えが足りない。もっと可愛らしく」
「……うん」
「「お前か!? またお前の仕業か!?」」

 いつもの如く漫才を始めた3体+1にデスティニーは呆れながら半ば戦意を喪失させていた。もう適当にあし
らってこの場を去った方がいいのではないかとシンに指示を仰ぐために振り返り、
 そのあまりにも冷たい目を見てぎょっとした。

「――お前たちは、」

 一度落としかけたナイフを強く握りしめ、シンは静かに口を開く。
 それほど大きな声でもなかったにも関わらずカオスたちが口論を止め一斉に振り返ったのは、それに込められ
た例えようもない迫力のせいだった。

「自分たちがいったい何を連れて来たのか、本当に分かってるのか……?」

 怒りを徹底的に押し殺したようなくぐもった声。その視線の先には、どこか悲しそうに表情を歪ませたデスト
ロイがいた。

「ふ、フン! そうやって凄んでももう遅いですわ。さぁ! やっておしまいなさい!」

 ビシィッ! とカオスがシンたちを指差す。その圧倒的な火力を誰よりもよく知っている二人は一斉にデスト
ロイの攻撃に対応するために意識を向ける。
 だが、デストロイは一向に動く気配がなかった。
 それどころかあくびを漏らし眠たそうに眼を擦っている。その仕草は、どことなくガイアに似ているような気がした。


「こ、こら! なんですかその態度は! しゃんとなさい! やる気を出して……ヤる気を出せって言ってん
だろコラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 二度目のあくびを見て素を出したカオスの怒号だったが、当の本人は視線を向けることもなく目尻に涙まで
浮かべている。
 その後もなだめようとするアビスを無視して散々喚き散らすカオスだったが、デストロイはほとんど反応らし
い反応も見せず――ガイアにだけはたまに返事をしていたが――今にも踵を返して帰りそうなほど覇気の欠片
もない様子だった。
 怒鳴りすぎて息が切れたのか、ぜーはーと荒い呼吸をひとしきり繰り返し、地団太を踏みながらヤケクソ気味
に叫んだ。

「あーもう! 戦ったらなんでも言うこと聞いてあげますから! 今日だけでいいから私の言うことを聞きなさい!」

 まるで子供のように喚き散らすその姿に誰もが呆れ果てていたが、直後に全員が驚愕に目を見開いて一点に
視線を向ける。
 先ほどまで一切反応を見せなかったデストロイが、じっとカオスを見つめていたのだ。

「な、なんですの……?」

 カオス自身も意外な反応に戸惑っていたが、やがてその視線の意味を悟る。

 ――「なんでも言うことを聞くというのは本当か?」と。

「え、えぇ! なんでもすることをここに約束しましょう!」

 「できることならですけど……」と小声で付け足し、再び指を突き付けながらカオスは叫ぶ。

「さぁ! 今こそ復讐の時です! ブッ壊してさしあげなさい!」

 そのとき、シンははっと息を呑んだ。
 カオスが下した命令に、ではない。それを受けたデストロイが安心したように表情を和らげたのだ。
 その顔は単に戦えるからなどといったことではなく……そう、まるで救われたかのように見えた。

「マスター!」

 デスティニーの声にシンの意識が引き戻される。気が付けば無表情へと戻っていたデストロイが、顔の高さ
まで右手を掲げていた。
 五指に光が宿ると同時にデスティニーがシンの前に立ち塞がり、ビームシールドを構える。
 ――直後、光が弾けた。

「がっ……!?」
「デス子!? ぐっ!」

 五条のビームのうち三本が直撃して弾き飛ばされたデスティニーを何とかシンは受け止める。標的を見失った
残る二本の光弾が石畳に直撃し、広場に爆音が轟いた。
 事態を遠巻きから見守っていた人々から悲鳴が上がる。ある程度の騒動であれば慣れたものであるこの住人で
あっても蜘蛛の子を散らすように逃げ惑っている……その光景がシンには信じられなかった。

まるで、戦場のようだった。


 ――馬鹿か、俺は!?

 いつまで頭をぬるま湯に浸けているつもりなのかとシンは自身を叱責する。
 ここは戦場だ。戦場になってしまったのだ。
 そしてその根本的な原因は、自分にあるのだ――と。

「マスター?」
「あ……大丈夫か、デス子?」

 頷きを返したデスティニーをそっと放しデストロイをシンは睨む。追撃を仕掛けてこないのは妙ではあったが
腕を下ろす気配はない以上未だ戦う気であることは間違いないだろう。
 周囲にはまだ人がいる。先ほどのビームで近くからは離れているが巻き込まれる危険はまだ高い。カオスたち
よりもまず避難を優先しなければならない状況だ。

「……デス子、あいつの足止めできるか?」
「はい!」
「頼む。できるだけ高さをとって戦ってくれ。これ以上被害を広げさせるな」

 デストロイに背を向けてシンは駆け出す。振り向くことはない。背後の心配も含めてデスティニーのことを
信じているが故に必要はない。
 だから、

「――行かせると思いまして?」

 目の前に立ち塞がった3体は、自分の力でどうにかしなければならないのだ。
 足を止めることなくシンは鋭い声を上げる。

「そこをどけ!」
「はい分かりました……とでも言うと思ってんのかこのクソッタレがぁ!!」
「あー、もういちいち指摘すんのもめんどくせぇや」
「オープンハートしすぎて周りはドン引き。でもきっとコアなファンはできるよ、やったねカオス」
「「おいやめろ」」

 いつもの如く掛け合いをしながら各々武器を向けてくる3体に、シンは密かに右手に握り込んでいた玉を投擲
する。

「ハッ! そう何度も同じ手に引っかかると思ってんのかぁ?」

 鼻で笑うアビスに倣い他の2体も飛んできた玉を警戒せずに各々の武器を構える。既に煙玉の存在を聞いてい
たのだろう。怯みもしていない。
 それを確認してシンは速度をそのままに、目を閉じ耳を塞いだ。
 直後、

 ――バンッ!!!

 凄まじい破裂音と、目蓋の裏からでもはっきりと分かるほどの強烈な閃光に顔をしかめながらシンは目を開ける。
 不意の音と光を直に受け折るように身体を丸めた三人のすぐ傍を駆け抜けやり過ごす。モンスター相手でも
十分に効果を発揮するほどの閃光玉である。しばらくは目と耳がまともに機能しないだろう。
 そう判断し、3体に背を向けたまま逃げ遅れた人々へと一気に駆け出す。


「なっ……めるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 怒気に満ち満ちた声に反射的に背後を振り返る。
 顔を手で抑えつつも、指の間から閃光と大量に流れ出る涙で真っ赤に染まった目を覗かせたカオスが睨みつけていた。
 いつの間にか機動ポッドを射出し、砲身を展開させている。

 ――マズイ!

 無防備な背中を晒したまま、それも周囲に身を隠すような障害物もない。
 あとは撃たれるしかない。魔法で再現されたビームの熱量は容易く人の身体を貫通するだろう。その様を想像
して怖気が背中を走る。

「死――――」

 カオスが叫ぼうとした瞬間、上空から何かが落ちてくるような風切り音が聞こえてきた。
 直後、カオスたちのいる位置が爆ぜた。

「なっ……!?」

 思わず足を止め迫る煙と熱から顔を庇う。何が起こったのか分からないまま、爆心地に目を向ける。
 時折ピクピクと痙攣しながら3体は完全にノビていた。爆風に吹き飛ばされて頭でも打ったのか、とりあえず
五体満足ではあるらしい。
 ――再び風切り音。空を見上げるとミサイルが飛び交っていた。デスティニーが爆発に煽られながらも眼下の
デストロイに向けビームライフルを連射している。どうやら先ほどの爆発は目標をロストしたミサイルが飛んで
きたようだった。一応様子を見ているとどうやら3人とも気絶しているだけらしい。

「……ついてないな、お前らも」

 白目を剥いて痙攣しているカオスにそう呟いて、今度こそ振り返ることなくパニックを起こしている人々へと
駆け寄る。

「落ち着いてください! 早くあっちへ!」

 我に帰り逃げていく人の背を見送り次の集団へと向かう。かなりの人がいたこともあり広場から完全に人を
避難させるのはかなり時間がかかるかもしれない。
 未だ爆音とビームが発射される音が聞こえてくる。どうやらすぐに片が付けられるような相手ではないらしい。
 厄介な、そう思い舌打ちをしながらも避難の誘導を続ける。

 ――そんな中、頭の片隅ではあることに気が付いていた。
 カオスたちが気絶してしまった以上、デストロイを止める方法は限られてしまう。
 即ち、無力化……おそらくは殺してしまうしかないことに。
 だがその現実を疼くように沸いた胸の痛みと共に押し隠し、シンはただひたすらに逃げ遅れた人たちへと呼び
かけを続けた。

<次回予告>
 ハーイ! FREEDOM&JUSTICEの『尊敬するアニメ監督は金子ひらく監督』な方、ストライクフリーダム
です。っていうか最近私の出番少なくね? おかしくね? 私ライバルキャラよ一応。いやむしろおっπ分が
足りんぞそっちの方が重要だいったい何をしとるか。
 というわけで! 次回私めは無断でこの戦いに乱入し新キャラのバストサイズ測定を行うことに大決定しま
した。ノビてる3人娘もついでにおいしくいただく紳士回! たっぷりと、しっかりと、ねっとりとその様子を
克明に解説を交えて実況をし……え? 何? 次の投下はアイマスか東方?

 ……よし、これまでの予告はなし!

 次回! え? ふんふん、へーそう。
 SEE YOU!

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最終更新:2011年10月24日 02:00
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