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ガンダムSEED DH 11話-2

20


『死の連鎖』。
一見は中2病が考えたセンスだ。
けどこれは、確かに存在するし、これ以外にこれ以上良い呼び方が無いのも確かだ。なにかの専門家ならもっとちゃんとした呼び方をするのではないかとは思うけど。
『死』というのは大きい。
とても大きい。
存在が大きい。
影響が大きい。
大きすぎて、戦争を呼び。
さらに多くの人死にを起こす。
たとえば、ある国の人たちが国に対してデモをおこしたとしよう。そしてデモの最中に、警備隊の一人がデモ隊から投げられる石や訴えの声の勢いに恐怖して誤って発砲し、デモをしていた一人が死ぬ。
するとどうなるだろうか? 
つまりは、崇高な、正義の、最初の犠牲となる。
止まって犠牲を無駄にはできないから止まれなくなる。
さらなる犠牲を出すわけにはいかないから力を持って進む。
だってそれももうすでに正しいことの1つだから。
どんどん、どんどん巻き込んでいく・・・・そして鉄の歯車は回り出す。
死んでいった者の意思なんて関係なしにその者を大切に思っていた人間関係。
家族関係。
恋人関係。
友人関係。
師弟関係。
深い関係が全てをさらなる死の連鎖に巻き込んでいく。
たんたんと、たんたんと、あっけなく巻き込まれた人たちはあっけなく死に。
さらにさらに多くの人たちを巻き込んでいく。
繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し、繰り返し。
その繰り返しの増長の果てに起きるのは。
名前の無い戦争。
名前の無い戦争からさらに規模の大きく歴史の教科書にのるような、名前のある戦争へ。
繰り返し、繰り返し、繰り返し、、繰り返し、繰り返し、繰り返し・・・・人類の歴史もその繰り返し。
歩みを止めれば終わる。
けど。
終わらないし、止まらない。
止まれないし、終われない。
それは『正しい』ことだから。
シン・アスカもまた。
家族の死、という鎖に連なっているともいえる。


家族の遺志とは関係なくに・・・・今はまだ。


「おい、飯食おうぜ、飯!」
ドアの前でノックを2回。
ドアが開いて暗い部屋。
あえて暗くした部屋で、膝を抱えたライが空っぽの瞳で弱々しくいた。
そりゃそうだ。誰かが死んでてもおかしくはない状況を作ってしまったんだ。
しかもその状況の中で一番に死にかかったのが、俺だ。
申し訳ないという気持ちからだとすれば、俺だって理解できる。
「・・・・・・・・・・」
「無言ってことはOKってことだな。」
凍った表情に空っぽの瞳・・・・か。
        • 懐かしい。いつかは俺もしていた。
「よし行くぞ!」
にかッ、と軽く柔く笑い。
そう言って、赤い服の上着をきていないシンはライの手首を半ば強引に掴んで引っぱって、反省用に詰め込んだとある一室の暗闇から連れ出した。いかんよ、引きこもりは。
「あ」
とライは驚いた声を出す。
それは感情が動いている証拠だった。その一瞬の希望の動きをシンは見逃さず。
それを見て、まだ手遅れじゃあない、と安心した。
「・・・・あの、なんで俺を・・?」
ライゴは
「話をしたかったんだ、お前と。それだけじゃ駄目か?」
不思議なことを聞かれたようにきょとんとし、シンは落ち着いた声で返す。
「・・・怒ってますか?」
「いいや、俺の分は怒ってない。エドさんにはしぼられたか?」
シンはライの気持ちになって考え、すぐに命令違反のことだと理解した。そして自分の気持ちを伝えた。
「・・・・はい」
しゅんとした声だった。
「なら、俺は怒ってない。」
「それでも・・ッ、ごめんなさい!!」
う~ん、とうなりながら振り返った。
「まあ、恐かった、よなぁ・・・・。
後になってさ、気持ちが冷めて・・自分がやってしまった事実を段々理解してきて・・・。
でももう何もできなくなってて・・・。
もしさらに何かが起きたらって不安になって・・・・。」
ぽんぽんと肩を叩いて頭を上げるように促す。
「・・・・・・・・はい」
だがライゴは頭を深く下げたままだった。
「でもさ、それは・・ちゃんと自分の過ちを受け止めた証拠だと思う。だから俺はもう何も責めないよ」
静かに優しく伝える。
「でもッ!」
ライは責任感から必死だった。
「なら便所掃除だ。」
それを見かねたシンはきっぱりと人を率いる者の口調で言う。
ここでちゃんとした罰を与えなければ、不満を抱えたライゴはまた何かをしでかすと分っているからだ。
「罰として2週間の便所掃除を命じる。
なお、この問題行動には第2分隊隊長シン・アスカにも原因があるため、この者にも便所掃除を命じる。」
「?!」
訳が分からない、という風な表情でライゴはシンを見た。
シンは真剣な表情でそれに応える。
「お前だけの責任じゃないよ。
お前の行動力を侮っていたことと、行動の原因には俺にも非はある。悪いのはお前だけじゃない・・・・“俺たち”だった。
上官命令だ、文句は受け付けない。答えはイエスか、はいだ」
「・・・・はい」
うつむいたままライゴは申し訳なさそうに返事をした。
「よし。」
快くその返事を聞いた後。
シンは数瞬苦い顔をして、最後の覚悟を決めた。


「それともう1つ・・・“アイツ”を憎むな。」
渇いているように言う。
凍えているように言う。
死んでいるように言う。
歩く死人の目線から、言う。
「ッ!!?」
「あっちだって商売なんだ、だからやった、たかがそれだけだ。割り切れ」
理想が乾いて、損益だけが残っている現実。
それが現実(イマ)。
「じゃあ聞くけど。お前はなんでここにいる? オヤジさんはなんでここにいた?」
復讐もまた、思想の分類なのだ。
思想の反対は、現実だ。
「それは・・・・」
戸惑った少年の心を、
「金を稼ぐためだろうが!」
容赦なく切り込む。
「金のために俺たちはここにいて、敵はここにくる。
そのために俺たちはここで、殺し、殺される。
それがここでの戦争だ。シンプルだろ?」
それがここでの現実だった。
何のことはない。
歴史の教科書に載せるぐらいに、コンパクトにまとめればこの程度で終わる。“よくあること”だ。
戦死もまた――契約の一部で、それにサインしている筈だ。
そこに感情というものは、無い。
それは『戦争屋』の俺にも言えることだけどな。
「それにジャンク屋だって一歩間違えたら『死の商人』だろう。国際法で煙に撒きやすい分、本筋よりもタチが悪い。
つまり自分の利益の為に動く立場上、“その時の戦い”が終った時点で俺たちに誰かを恨む資格なんて無いんだ。」
「・・・・・」
その真実を教えられた時、確かとライゴの目の色が変わった。
そして胸の中でしぼんでいた十代の少年の何かが膨らみ始めた。
「そもそもどうやって見つけるんだ? お前なんかが見つけられるわけないじゃん」
だが『悪役』はそんなことを気にも留めずに続ける。
まるでおどけた道化のように。
「止めとけ止めとけ、仮に見つけても返り討ちにされんのが関のや――」
「オヤジが殺されたんだぞ!!」
ライゴは突然、頭を上げると、そのままの動作でシンの頬を殴った。
「そんなことでき――」
「――ったなッ!」
二言目を言わさず、シンはライの頬を殴り返す。
だが殴り返されたライゴの目は・・・・熱く燃えている。
まるで、もう遠慮はしない、というふうに。
まるで、閉じ込めていた感情が解き放たれた、ように。
「くははっ」
まあそうだろうぜ。
理屈の言葉は、所詮ただの言葉だ。
感情を抑え込むことなんて無理だ。
ただ言葉じゃあ感情を抑えることなんて無理に決まっている。
――ならやることは決まっている。
「来いよっ、クソガキ!」
シン・アスカは、クイクイ、と左手人差し指を立てて自らのほうへ振った。


そこから始まったのは、ケンカというより、殴りあいというよりも。
ただただ一方的に、ライゴがシン・アスカを殴る、という行為だけだった。
シン・アスカは、生きている、人間だ。
汚くて、弱くて、・・・・血の通う人間だ。
善くも悪くも、善も悪も兼ねそろえた人間だ。
『悪役』を名乗ってはいても…・温かな人間だ。
無情な戦場では悪鬼でも、日常では有情の甘い男である。
その優しさが、甘さがシン・アスカをこの行動へと選択させた。
へッ・・・・馬鹿だよなあ、とシン・アスカは殴られながらも自身を嘲笑する。
何かここで颯爽と、何かを悟ったように、何か適当にそれらしいことを言えば、架空の物語の理想の主人公のように決められるのかもしれない。
それが物語における理想の主人公、というものなのかもしれない。
そうすれば万人に好かれる偶像になれる、かもしれない。
だが。
そんな自己満足を望んでなんかいない。
手を伸ばしたい、ライゴの手に。
聞きたい、本当の心を。
だからこそ、その身に受け止める。
拳というかたちの言葉を。
拳というかたちの思いを。
―――心の奥底の純粋な思いに辿り着くまで・・・・。
「ははっ、くははは、あははははっ!」
フック、アッパー、ストレート・・・ではなくクロスカウンターが極まった。なあにディエチの拳はもっと効いたぜ。
殴られているのに、笑ってしまう。
懐かしい・・・・。
懐かしいなレイ。
俺たちも最初は“こう”だったな。
こうやって相手の肌に触れて。
こうやって相手の拳を受けて。
ようやく分かる!
悲しみが!
憤りが!
怒りが!
嘆きが!
それらのもとになっている感情が!
くははッ・・・・なんだよ、笑えるぜ。
何がコーディネーターだ。
何が空間把握能力者だ。
何が新しい人類だ。
何が宇宙へ進出だ。
何一つ一歩も人間は変わっちゃいないじゃないか!!


「なんだよ、もう終いか?」
顔を何ヶ所か腫らし、口の中を切って血を口先に滲ませるシン。服の中も数か所腫れているだろう。
だがまるで何もなかったように、背筋をぴんと伸ばして立っている。余裕の表情で軽く挑発的に笑っている。
その気になれば数秒後にはライを気絶させることもできるだろう・・・・。


“力”でねじ伏せて聞かせれば簡単にすぐに解決するだろう。ただしそれは一時的な暴力だ。
そんなことが目的なんかじゃない。
その場の雰囲気はよくてもその後はどうなる? 
雰囲気で誤魔化すような薄っぺらいマネをしろってのか?
ふざけんな! 
それは人間同士の話し合いじゃない! 
それは犬とか動物とかの躾け方じゃないか!!
俺はライゴの思いを受け止めるために、俺の思いをライゴにぶつけるために、思いをぶつけ合うためにここにいる!
ここに、自分の意思で来たんだ!!
「かッ・・ゼェ・・ッ・・・クっ・・ッ!」
それに対してライゴは呼吸を乱しながら思いをぶつけていたため、もうすでに呼吸を荒くしてばてていた。体力が尽きて、ばてるほどに思いをぶつけていた。
呼吸とは精神の現れ。
呼吸を乱させる“理由”が、胸に詰まっているのだ。
乱れて、短く、浅い呼吸は、呼吸といえるような効果を体にもたらしてはいなかった。
シン・アスカはある程度呼吸を操り、頭の集中力や体の治癒能力を高めることができる。だが、それは乱れぬ精神を保っている時のみだ。
乱れた精神の呼吸は、逆に多くの不調をもたらす。
ライゴはその不調からくる苦しさに汗を流して顔を歪める。
「フざ、・・・ふざけるなアアア!! あいつは・・アイツは笑っていたんだ!!」
掠れた声で悔しさを叫ぶ。
「だからどうした?」
また。
冷たく、それを切り捨てる。
「お前には復讐をする資格がないんだよ。」
渇いた声で――歩く死人の目と顔でシン・アスカは言った。
「そんな・・そんなことをするのに何がいるっていうんだ!!?」
少年は必死になって問う。
問わなければならない。
「“そんなこと”だからこそ、あるんだよ。」
シン・アスカの答えを。
ライゴはいつの間にか、シンの言葉を聞くようになっていた。
「復讐をしてもいいのは明日の無い、死んでもいい人間だけだ。歩く死人だけだ。」
まあ、もっとも。
家族が殺されて復讐の途中さらに自分が殺されたとしてもさらに家族が自分の分を含めて仇討ちをしてくれる―――なら幸せだ、復讐をしよう。という最悪な集団がいたら話は別だが。
「お前はミランダに大切にされている――死んでいい人間じゃないだろ。」
問わないのは、分かりきったことだからだ。
「けど・・・姉ちゃんだって・・・悔しい筈だ・・・ッ!」
ライゴはなんとか反論しようとした。
その叫びには強迫観念からくる焦りと戸惑いが含まれていた。
「ミランダはそう言ったのか?」
シンはそれを聞き逃さない。
「言ってないけど・・・・」
言い難そうにライゴは言った。嘘、をついたのだ。
「この大馬鹿野郎が!!」
シンは初めてライゴに怒鳴った。
「!?」
初めて聞くシンの怒号に体がビクッと震えて固くなり動けなくなる。
「それをミランダに言えるわけがないじゃないか! 
お前も、オヤジさんと同じぐらい大切に思っているのに!」
「あんたに・・・・ッッ、お前に何が分かる!」
ライは最後のため込んだ感情の爆発をさせた。半ば涙を流しかけている。
なんだよ、その決まり文句は。とシンははかすかにイラつく。
がよくよく思い出せば自分もそうだったと思い出した。


「途中までの絶望なら分かるさ。俺もお前と同じようにオーブでの戦闘に巻き込まれて家族を喪った。
正直言って俺はお前が羨ましい」
思い出しながら――自分の過去を頭の中で思い出しながら過去を話す。
「え」
なぜあの『英雄』が俺に? という素っ頓狂な返事だった。
ライゴは『シン・アスカ』の表のことしか知らなかった。
どこで生まれ、どこで家族を喪い、どこで軍人になろうと決心したのかさえも、知らなかった。
「お前がそんな風に自分の意見をしっかりと言えるのはオヤジさんがお前を本当の息子のように育ててくれたからだろ? 血のつながりなんて――人種なんて関係なく、厳しく温かく育ててもらったからなんだろ? そして本当の家族になったんだろ!!」
家族を喪ってから、いつかの日々・・・。
レイ、ヨウラン・ヴィーノ、ルナ、ほかにも沢山の人たちがいつの間にか俺の前にいて。
よくヨーランとヴィーノは俺とレイを連れまわして――連れまわしてくれて、本当に楽しかった・・・・。
だから、ありがとう、ヨウラン。
お前も俺を救ってくれた最高の親友だった。
――その勇気を俺に分けてくれ!
タイイチロウさん・・・・俺はあなたの声も聞いたこともなければ、顔も見たこともない。けど俺はあなたを尊敬します。
あなたは俺よりもはるかに人間として大きい。こうやって立って初めて分かる、人一人の人生の重さが。
ライを俺と同じような人生に歩ませなかったことに、本当にありがとうございます。
俺はライに『嫉妬』します。俺もあなたと出会いたかった・・・・そしたら違う昨日があったのかもしれない・・・・。
あなたの役目はどうか・・・あなたの大切な息子さんは・・・『家族』は、どうか。
――・・・今は俺に任せてください!
「なあ答えろよ。お前はなにがしたいんだ?」
問う。
考えさせる。
聞く。
無力だなあ、俺にはこんなことしかできない・・・・ッ!
「もうわけ分かんないんだよ、自分のことなのに!! 
あんたに憧れてッ! 
でもオヤジが殺されてッ! 
俺は・・・どこにいきたいのか!!」
ライゴは、泣いていた。
涙と汗、拭うことも忘れ、シンに思いをぶつけ続ける。
その涙はライゴ自身の憎しみで汚れかけていた心そのものを洗っていた。
「でもな。はっきりしている現実はある。」
悲しさが伝わってくるようだ・・・。
こいつ(ライ)はこいつなりにいろんな理由で全部表に出すこともできず、泣けなかったんだ・・・。
簡単に、感情をぶちまけることができたなら――多重人格障害、サイコ、その他諸々の言葉は生まれない。
色んな感情が邪魔をして・・・・ッ。
色んな意思が邪魔をして・・・・ッ。
辛かっただろうに・・・・ッ!
苦しかったろうに・・・・ッ!
痛かっただろうに・・・・ッ!
泣け・・・ッ!
泣いてしまえ!
今、この場、俺の前でしか泣けないのなら泣き尽せ!!
もう一度――もう一度立ち上がるためにッッ!!!
「現実を見ろ、ライ。復讐は・・・・」
―――!?
復讐は・・・・ッッッ、復讐はァ・・・ッっっッ・・・・!
ッ!!??
喉が!?
胸が!?
腹が!?
次の言葉が出てこない!!?
無理・・なのか・・・・!?
そりゃ、そうだろうな・・俺の2年前の俺に言えば自殺させるような言葉だもんなあ。
                        • けどなッ! 悲劇の駄作はもう沢山なんだよオオオ!!!

「復讐は、何も生まない、何も手に入らない。失っていくだけだ。」

        • 言った!
言ってやったぞ、俺は!
過去に勝ったぞ、俺は!


「『堪える』か、『堪えない』か、それが今のお前の選択肢だ。」
ここからだ。
ここからが本当の、対話の始まりだ!
「俺は『堪えない』を選択したよ。何も無かったから・・・・――いや、何もないと思っていたけど、色んなものを奪われていった・・・・」
ああ、苦しい・・・・息が詰まる!
網膜に蘇ってくるッ、あの悪夢が!
殺したい、あのクソッタレどもを!
「でもそれは文句の言えない当然のことなんだ。銃を持った時点で『殺される覚悟』もしなきゃいけないのが、暴力の世界だから・・・・」
我ながら駄目だなあ。
言葉がまるでちぐはぐだ。
これは脚本家が叩かれるレベルだぜ。
「ごめんな、上手く言えなくて・・・・」
ライ、本当に、ごめんな。
もう少しだけ・・もう少しだけ、俺の話を聞いてくれ。
「俺にも復讐を否定することは、できないんだ・・・・」
出来ないんだ。
けど。
「だけど俺はお前に死んでほしくない!
 俺にできることは、お前の言葉を聞くこと、俺の気持ちを言葉にして伝えること――話をすることだ!」
無様でもいい!
「確かに復讐は過去の因縁に決別をするための行為だ、必要な場合が多い。」
ただ・・・ただ伝えたい!
「でも・・・・思いだけでも、力だけでも、両方あったとしても――仮に復讐が成せたとしても・・・駄目なんだよ!
最後に、お前とお前の大切な人の笑顔がなきゃ意味がないんだ・・・・ッ!」
俺の思いを!
「だから、だから焦らずにさ。もうちょっと一緒に考えようぜ、な?」
シン・アスカ、精一杯の言葉だった。
そこには疑う余地のあるような流ちょうさは無く。
ちぐはぐで、不器用な、でも優しくて熱い真正面からの思いと言葉。
ライゴはシンの優しさを見た。
それは表の怒りをおびた強さとは違う。
それは奥の哀しみの元となる優しさだった。
芯の優しさだった。
その優しさがあるからシン・アスカという男は、束の間の安らぎも振り切って、ここにいてくれていることをようやく理解した。
「・・・分かって、いたんだッ・・・・! ・・けど・・・・だけど・・・ッ!」
膝を折り、顔を覆い、嗚咽しながらライゴは泣いた。
シンをライゴは、
信じて、
頼って、
泣くことができた。
外にブチ撒けたかった感情を外に出すことができた。
「まあ、他人の言葉が無くちゃ、止まって考えれないもんな・・・」
苦笑いをしながら、ライゴの手前でシンも片膝を折った。そしてライゴの頭に優しく手を乗せて、クシャクシャと撫でた。
「・・・はい・・・ッ」
もしかしたらオーブで家族を喪った時の分も泣いているのかもしれない。
「くははっ。・・・・ったく、手のかかる奴だぜ」
と、まるで軽く笑いながらシンはそばにいた。もし俺に弟という存在がいたとしらこんなかんじなのか、と思いながら。


しばらく時間が経った頃。
「少しは頭を冷やせたか?」
ライゴはまだ残る嗚咽を押さえようとしながら恥ずかしそうにコクンと頭を縦に振って無言の返事をした。
そっか・・・・、と静かにどことなく嬉しそうに確認。
シンは真っ直ぐに立ち上がった。


「俺さ、家族を大切にする奴が大好きなんだ。」
唐突にシンは言葉を発し。
ライの目をまっすぐに見た。
そして。
「俺の弟にならないか?」
と。
まるで簡単なことのように。
とてつもなく当たり前のように
微笑みながら言って手を伸ばした。
「?」
当然呆気にとられるライゴ。
伸ばされた右手はさっきの強引に掴んだ手とは違い、明らかに自分を待っている。
「だ、か、ら、俺の弟になれ。お前が気に入った」
今度は聞き取りやすくはっきりと言った。
「ん。嫌か?」
「で、でも・・俺は・・・、ハーフ、コー…」
もう何が何だか分からない。夢だ、きっとこれは性質の悪い夢なんだ。
とライゴは思った。
たとえ夢だとしても、現実の世界の常識という枷がある。
「俺の知ったことか」
だがシンはそれを言わせない。
簡単に否定した。
C.E.というこの世界の常識を簡単にして乱暴に薙ぎ払った。
「え」
「関係ないんだよ。俺にとってお前はコーディネーターでもナチュラルでもハーフコーディネーターでもなく、『ライゴ・マツナガ』だ!」
「………」
世界の常識を簡単に否定し、まるで『シン・アスカ』という個人の世界だけが全てであるという風な言い方。
人間の理想像というものからはかけ離れている―――だがシンの思うシン・アスカでは理想に近かった。
「納得できないなら言ってやる。」
とシン・アスカの笑みと言葉は力強さを感じさせた。
「俺はシン・アスカだ。
自分の意思でザフトに逆らい、連合に牙をむいて、『羅刹』の名をつけられた悪鬼だ!
 どんな自由や正義や神を掲げる奴も、頭のイカレたクソ電波も、敵なら全て薙ぎ払う! 
だから関係ない!」 
そしてシン・アスカは力強く笑う。
空の上の誰よりも頼もしく。
空の下の誰よりも不敵に。
誰よりも傲慢に。
「でもまあ、無理に呼ばせる気はないよ。けど、いつか、必ず兄と呼ばせてみせるぜ?」
ニカッ、と気持ちよく笑った。
空間把握能力者は時折、人間の精神の波長のイメージが見えることがある。
ライゴはシンを見た。
その心と魂は東方から昇る日輪の如く赤く熱く燃えている。
「・・・・」
言葉がでなかったのではない。
声が出せなかった。
不敵に、無邪気に、そして頼もしく思えるその笑みに。
そして脳裏に蘇る、あの日のことが。
「・・・・そう、こんな感じだった。初めて出会った時・・・・・」
そしてオヤジはこう言ったんだった。

【無理に父ちゃんと呼ぶ必要はない。けどな、必ず父ちゃんって呼ばせてみせるからな!】

と。
目の前の男のように微笑んで・・・・。
歳も、背丈も、肌の色も、普段の雰囲気も、歩んできた人生も違うのに・・・・なぜこうも雰囲気が似ているのか。
子供を育てるということは大変だ。
父親は常に子という観察者を気にかけ、強くあろうとする。
ライゴの2人目の父――タイイチロウもまた全力で生きた男であり。
その姿は2人の心の中で生きている。
つまりタイイチロウもまた2人にとってのヒーローだったのだ。
「あ!」
突如、向かいの通路の角からミランダが見えた。
「姉ちゃん!」
ライゴが叫ぶ。
「何を!」
ミランダはすごい剣幕でこちらに走って向かってきた。
誰にだって顔を腫らしたシンと倒れて上半身を起こしただけライゴの図を見れば2人が喧嘩をしたと思うだろう。そしてどちらが強いかは明らかだ。
ミランダは冷静ではいられない。
その激情もまた、家族を想う心ゆえである。
シンはその反対にただ凛然と迫ってくるミランダを迎え見た。
「私の弟から離れてよ!! やっぱりあんたは最低のクズ野郎だ!!」
ミランダは女ながらに体重を乗せ、思いっきりシンの頬をぶん殴った。
だが。
「ッ!?」
シン・アスカは顔面で拳を受け止め、一歩も動かなかった。
「なんで避けないんだ!?」
女の拳ならば、たとえ軽さゆえに早くても避けられた筈だ。
それに対し。


「避けられなかったからだ。受け止めるさ、その弟を想う思いも」
と真っ直ぐとした態度で答える。
「へへっ・・・強いなあ、お前の姉ちゃん。そこいらの男よりもよっぽど強い」
ふと軽い調子になり、右手でミランダの手を優しく掴んで下ろし、ライゴのほうに顔を向ける。
「でも、手首を痛めているぜ?」
やれやれ、という風に呆れたように、と思えば。
「まったくあんたも・・・・ッ。
恐くても痛くても傷ついても、家族を守るっていう意気込みは立派だけどさ。
傷ついたら心を傷める家族がいることを自覚するべきだ!」
怒った声だった。
怒った理由は殴られたことではなく、殴った手のことで。
「俺は!!」
その時――。
他者の為にという青い瞳は、
自分の為にという赤い瞳を強い眼差しで見上げた。
「俺は・・俺が姉ちゃんを守る!!」
否。
自分の足で力強く立ち上がり、自ら赤い瞳と同じ目線になって見つめた。
「だから・・だから・・・いつか・・・・ッ!」
「いつか・・いつかなんだ?! 男なら言いたいことは最後まで言えよ!!
 答えは“そこ”にあるだろ!!」
ライゴの胸を指でさし煽る。
見てみたい、この少年の成長の瞬間を。
青い熱さを。
「俺はあなたよりも強くなってみせる!!!!」
と少年は吠えた。
その瞬間。
「くはッ・・・」
シン・アスカは、とてもとても嬉しそうに笑った。
「くはははっ、あはははは!!!
 ははははは、アハハハッ、クハハハハハハハハハ!!!
 く・・・あははは、はははははははは・・・・ははははア!!!!」
言った・・・ッッ!! 言いやがった~~~!!!


「好きにしろ!!
 その答えを決めていいのは俺でもない誰でもない、――お前だけだ! 最期まで貫いてみればいい!!」
いっそ貫け!!
俺よりも誰よりも強く生きろ、雄々しく!!
そして戦争の傷跡だらけのこの世界に戦火とは違った炎の煌めきを魅せてみせろ!!!
「自分の人生、守りたい者、欲しいものがあるならこの世界から奪ってみせろッ!!! そのために力が欲しいなら俺から盗んでみせろッ!!!」
そのライゴにむかった“吠え”はライゴを認めた証拠であった。
シン・アスカは、ただ自分の意思を貫くだけの男ではない。
相手の意思を認める男でもある。
相手の意思を無視して自分の意思を貫くのではなく、相手の意思を認めた上で自分の意思を貫く。
「………」
ライゴはいつか時代が移り変わっても忘れないだろう、シン・アスカという男に認められたことを。
「前にあなたは――」
シンはミランダを見た。
「俺に誇りを貫けと言った・・・・。」
他人のためには動くことができないのなら身内にしてしまえばいい。
身内にする、ということは、男は最後まで守り抜く責務を負う、ということである。
それを明後日先も分からぬ男が背負ったのだ。
「貫くさ、最期まで。俺は俺のこの傲慢を最期まで貫く。
あなたも、ライも、ディエチも、ほかのみんなも、俺がここにいる限り必ず守りぬく!」
『傲慢』、その一言である。
だが。
それが。
それこそが。
シン・アスカの誇り(プライド)であり。
シン・アスカの傲慢(プライド)であり。
自身が『シン・アスカ』だということの証明なのだ。
「守りぬくって・・・君は一体・・・・?」
この不安定な世界において、『守る』と言う言葉は決して軽いものではない。

「俺はガンダムのパイロット。シン・アスカ――戦場の『英雄』だ。」

かつて南米の『英雄』は、祖国の自由の為に『英雄』の名を背負った。
そして。
今ここでシン・アスカは初めて・・・・たった2人の姉弟を守ろうとする自分の為に。
初めて自ら、『英雄』の名を。
名乗り。
背負い。
「だから心配しないで、花は花らしく強く笑っていなよ。」
守り抜くと力強く約束した。


「こう、にーッてさ。別嬪さんが笑えば男もつられて笑うってのが世の理だ。もったいねえぜ?」
両手の指で自分の口の端を押し上げて冗談っぽく。
「・・・・ジョークの、つもり?」
「いやいや大マジだぜ、大マジ! これが冗談を言う顔かよ?」
わざと大げさなリアクションを加えコミカルに。
「・・・そんな腫れた顔じゃあ・・・・」
「え! ・・・なんてこった! これじゃあ女の子が口説けない・・・ッ!」
「・・・・奥さんに叱られちゃうよ?」
「姉ちゃんいくらほしいんだい?」
「つうか弟の前で姉ちゃん口説くなよ・・・・兄貴!」
「え~~、いいじゃんか~~。俺シン・アスカだよ? 女難ものがお約束だよ? 時代はご都合ものハーレムだよ?」
「テメーから女の子に言い寄っていくハーレムものの主人公がどこにいんだ!? そんなだからあんた人気がないんだ!」
「ウッセーんだよ! 女の都合のいいキャラになって薄い本でチンコ咥えるよりましだ!!」
「○(マル)つけろやああああ!!」
「・・・・うっせー、声でかい! いきなり元気になりやがって、さっきまで泣き虫だった奴がよ~~!」
「うっせーんだよ! あんたなんか吸血鬼なんかじゃなくて、ウサギだウサギ!」
「上等だ、やんのか、コラァ!」
「やってやんよ~! いつかじゃな、今ここで超えてやんぜ!」
「表出てこいや!」
「表宇宙じゃねえか!」
「・・・・ならば!」
「やることは!」
「「MSでステゴロだアアアア!!」」
「ぷっ・・なんだよそれ・・・っ・・・・」
「「!」」
「姉ちゃん・・・・」
「・・・・ようやく笑ったな」
してやったぜ、という風に悪戯小僧のように笑う。
この笑い方を知っているのはディエチだけだった。これまでは。
「っ!?」
とミランダは自分の口を両手で押える。
「知らないのか、俺は『ピエロ』でもあるんだぜ?」
シン・アスカはまるで子供が得意げに自慢するかのように言った。


正義は、正義と口に出した瞬間から正義ではなく。
英雄は、英雄になろうした瞬間から英雄ではない。
口に出さず、なろうとせず。
あえて。
傲慢を着こみ。
強欲を膨らませ。
憤怒を足に込め。
誓いを武器に変え。
自分の小ささを分っていながらも範疇を超え、自分よりも遥かに大きなものに立ち向う道は――『覇道』。
その『覇道』を歩み征く者こそを人は魅せられ―――
「本当に…・本当に、傲慢・・で可笑しな人、だね・・・・」
『英雄』と認めるのだ。
今日、この場こそが、戦場の『英雄』――の本当の始まりだった。
「――そうだよ。けど今はそれが俺のプライドだ。」
『羅刹』という誰からした悪役の呼び名も。
『英雄』という誰から求められた呼び名も。
『ピエロ』という誰かを笑わせる呼び名も。
全部、俺の過去で、俺の罪で、俺の一部で、一生背負っていくものなんだ。
否定することなんてできない。逃げちゃいけない。
肯定しなくちゃいけない。向き合わなくちゃいけない。
過去に縛られるんじゃなくて、過去と向き合う。
そして向き合った過去の自分を超えることが『成長』というものなんだ。
そうだろ、2年前のクソガキだった俺よ?
さてと、悪役は去るとするかな。
「ライ、飯はまた今度な」
傲慢にして、強欲にして、憤怒する、『悪役』は軽い調子でまるでピエロのように笑いながら去っていく。くはははっ、と笑いながら。
「明日から殺す気でしごきまくってやるから死ぬなよ――なあ兄弟」


23
「へへっ・・・良いガッツだったな」
アドレナリンが切れた。
もう・・だめだ。
全身が熱い。炎症を起こして、いる。
あ、口ン中切っているな。
辛く苦しくなっていくのはこれからだ・・・・。
ちょっと壁にもたれかかろう・・・・。
「・・・ん?」
誰かがシンの体を受け止める。
「悪い」
体中が腫れ、感覚があいまいだった。
だが誰かは髪の匂いですぐに分かった。
「別に。ただ通りかかっただけだもん」
ディエチだった。
「ありがとな、信じて見届けてくれて。」
ディエチの両手を見ると、ずっと自分を止めようとしていたのだろう、手を握りしめて爪が食い込んでいた跡が消えていなかった。
「また、無理しちゃって・・・・」
そのようなことよりもディエチはシンの心配をした。ディエチにとっては“そのようなこと”で終わること、だった。
「無理なんかじゃないッ。
男ってのは・・・溜めこんだ思いを吐き出しながら殴り合って、ようやく分かり合える不器用な生き物なんだよ」
そう言って、今度こそ。
今度こそ本当に『怠惰』に命と心と体をあずけた。
安らぐ感覚に沈んでいく。
宇宙にも、地球にも無い。たった1つの安らぎの帰れる場所に。
「へへっ。道理通りさ」
それは背一杯の強がりだった。


「だったらいっそのことガンダムに乗って拳で語り合っていればいいよ!」
「ハハッ、いいなそれ! 戦争で人が死ぬよりかはよっぽどいい!」
世界が違う気がするが。
「なんだか、ここの来てから殴られたり叩かれたりばっかりだね・・・・」
「そうだな。けど今は悪い気分じゃない」
「・・・・私は正直、殴られているシンさんを見て、気分が悪い。」
しゅんとするディエチを見てシンは、少し苦い顔をした。
「いーんだよ。俺は『ピエロ』で、歌って踊っておどけて役を演じて、最後に観客が笑ってくれれば、それでいい」
が、最後まで強がろう決めた。もうちょっとだけ信頼してもらえるように。
「そうやって背負ってばかりで・・・・」
「そうだな、けど全部で俺なんだよ」
そしてシン・アスカは独り言のように言う。
「人は、自分の過去を背負って、自分の今を精一杯生きて、自分で未来を切り開かなきゃいけない。
俺はあいつの近くに元からあったもの、得てきたもの、失うかもしれなかったもの、これから背負うものを見えるようにしただけだ。」
だがここでシンの強がった態度は消える。
まるで過ちをおこした者のように。
「けど俺の行動は、正しかったのかどうか分からない、今でも・・・・」
けれど見たということはもうライは背負うものを無視することはできない。
もう戻れないんだ、子供には。
それでも、俺は俺と同じように家族を国の理念に殺されたライにこれ以上、もう大切なものを失ってほしくはなかったんだ・・・。
くははっ・・・・身勝手なエゴもここまでくると本当に言葉もないな。
「やっぱり俺は最低のクズ野郎なのかもな・・・・」
「間違ってなんかいない!」
視線を落としかけたシンをハッとさせたのは、かなり珍しい・・・ディエチの大きな声だった
「・・・・」
シンはただ茫然とディエチの言葉を聞いていた。
「絶対に正しくはなくても、シンさんは一人の人として心の底からぶつかって話し合いをした!!
あの子は取り返しのつかない過ちを犯す前にちゃんと考えるという道を選ぶことができた!!
無理やり強引に“力”を使わずにあの子の人生をいい方向に傾けた筈だ、私と同じように!!」
そこで言葉はいったん止まり、ディエチは数回息継ぎをして。
「だから私は生まれたこと、ディエチという名前をもったこと、そして――」
そして。
ディエチは言った。

「シンさんに出逢えて好かったって思えるんだ。」

ディエチは、言ってくれた。
その言葉は、今、俺の――シン・アスカの生きている意味と価値を証明してくれた言葉だった・・・・。
「そうか・・・・。なら、これまでの俺の昨日は・・無駄じゃ、なかっ・・・た・・んだな・・・・。」
俺がこれまで迷ってきたことは――傷ついてきたことは無駄じゃなかった・・・・ッ。
くははっ・・・・ディエチ、今は俺の顔を見るなよ。今は・・何も良く目が見えないんだ、何もかもが滲んでいて・・・・。
「ディエチ・・・・・・・・・ありがとな・・・・」
それに、滲んだ視界の中の君は、俺には眩し過ぎるんだ・・・・。


■ ■
24
そして現在、というより今回のオチ。


俺とディエチは今、芋の皮むきをしている。
「そういえばシンさん、最近あの子と仲がいいよね。・・・えーっと・・・」
ディエチは顎に人差し指を当て上を見上げながらおもいだそうとする。
あのツンツン頭で青い瞳をもった活発な少年を。
「ライのことか?」
シンは芋の 何かにつけてディエチを見たかったからだ。
「そうそう。最近、その子と仲がいいなぁって思って」
「ああ。かわいい弟だからな。」
満足気に言う。
「あと、なんだか頼もしくなった感じ」
「くはははっ。なんだよ、知らないのか?」
「何が?」
「『お兄ちゃん』ってのは父親の次に最強なんだぜ?」
「最強?」
「たとえ、『悪役』だとしてもな。」
悪役。
悪さをする役
正しさを持たない役
実際に俺はライに対して絶対に正しいことをしたわけじゃない。
キレイ、というよりはむしろ薄汚い。
結果としてライの“子供”はここで終わってしまった。
我ながら……自分であっても殴りたいほどの傲慢さだ。
今回この出来事が物語か何かのプロローグだったのなら、復讐に燃える主人公もいない、人の心に残らない駄作で決定だろうな。
でも。
悲劇の名作の始まりよりかはよっぽどいい(悲劇の駄作は最も駄目だけど)。
もしライにもいつか物語の始まりというのが来るのなら。
なれなかった俺は望もう。
主人公の少年が何度挫折しても、何度でも立ち上がって、その度に強く成長していき。
周りの人達にも恵まれ、最終的にハッピーエンドをむかえる。
そんな光に照らされる王道的な物語であることを―――。

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最終更新:2013年04月20日 18:54
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