シン「はぁ、今日も忙しかったな。体がガタガタだよ」
機動六課に配属になってもうすぐ一年。最近はスカリエッティも事件を起こさなくなり(むしろナンバーズをつれて遊びに来るし)
六課の面々は本気で来るのか来ないのか分からなくなった『カリムの予言』を信じて日々、訓練に明け暮れている。(最近休日が多くなった気がするけど)
シン「後はこの報告書をはやて部隊長に届けるだけか」
最近は俺もティアやスバルたちと共に訓練に加わっている。 理由は俺の斜め後ろをふわふわとついて来る・・・。
デス子「今日も激しかったですねマスター。私壊れちゃうかと思いましたよ?」
シン「誤解を招くことを大声で言うな!」
このはた迷惑なミニ美少女?にある。なんでも俺の相棒だったディスティニーがロストギアを取り込んだ結果こうなったらしいが俺は断じて認めたくない、いや絶対に認めない!
問題は調査の結果、このデス子(愛称)はユニゾンデバイスらしく俺と融合すると、魔力がまったく無い俺でもほどほどに魔法が使えるらしいということだ。
シン「しかし、はやて部隊長がじきじきに訓練してくれるなんてな。でも、なんで途中からいなくなったんだ?」
デス子「貧血だそうです。鼻血を出しすぎたんでしょう」
訓練中にどこかにぶつけたのか?隊長格でも油断すれば怪我をするんだ。俺も早く実戦の勘を取り戻さなくては・・・。
シン「はやて部隊長、入りますよ」
はやて「・・・。」
返事は無い。この時間帯ははやて部隊長しかいないはずだが・・・。 思い切って部屋に入るとはやて部隊長は何かをじっと眺めていた。
あれは・・・・デバイス?
シン「はやて・・部隊長?」
デス子「気づいてないみたいですね」
少しためらいながらも、俺ははやて部隊長に近付いた。 心なしか目が潤んでいるように見える。
出直したほうがいいのか?と考えているとはやて部隊長も俺に気付いたらしい。
はやて「な、シ、シン!?お、女の子の部屋に来るのにノックもなしじゃ嫌われるで!」
と、真っ赤な顔を膨らました。
シン「自動ドアでノックも何も無いでしょう。それに一応声はかけましたよ」
デス子「ところで何を眺めていたんですか?その・・・悲しそうでしたけど・・・」
はやて「ああ、前にいったことがあるやろ、リインフォースのことを。 これは彼女が残してくれた形見・・・みたいなものやねん」
そこまで聞かされて俺はようやく気が付いた。この世界にはじめてきたとき絶望し、死ぬことばかりを考えていたとき、はやて部隊長が聞かせてくれた話。
闇の書事件ではやて部隊長が多くのものを得た代わりに失った、大切な人。沈黙が重苦しい雰囲気となって場を支配する。
シン「見せて・・・もらえませんか?」
特に意味があったわけじゃない。ただ、触れてみたかった。 今はもう傍にいなくても、思いは残っていると信じたくて・・・。
はやて「・・・うん、ええよ」
はやて部隊長は少し微笑んで俺にそれを渡してくれた。
さっきまで握られていたからだろうか?受け取ったそれはほのかに暖かい。
???「おま・・にも、いずれ・・・る。」
シン「!!!えっ」
驚いて周りを見回す。この部屋に隠れられる場所は無い。 そしてこの部屋にいるのは俺とデス子とはやて部隊長だけ。
なら、今の声は・・・・・?
はやて「どうかしたんか、シン」
デス子「マスター?」
この感覚は、確か前にも・・・。
???「海・・り深く愛し、・・・の幸福を守りた・・・思える・・・と」
手に持ったデバイスが輝き始める。
それと呼応するように俺の意識もすこしずつ薄れていく。
デス子「いけない!強い思いに引きずられてる!マスターそれを離して!」
はやて「シン!しっかりしい、シン!」
なに言ってんだデス子。こんな悲しいそうな声をほっておけるわけ無いだろう。
はやて、顔が青いぞ。まだ貧血が治ってないんじゃないか?
???「出会えればな」
謎の声が完全に聞き取れたと思った瞬間、 デバイスの輝きが部屋の全てを包み込んだ。
シン「寒い。何で九月に雪が降ってるんだ?」
目が覚めると俺は報告書を脇に抱えたまま雪の上に寝そべっていた。 どうやらまたどこかに飛ばされたらしい。
シン「もう慣れたけどな。さて、とりあえず情報を集めるとするか」
見たところデス子はいないようだ。持ち物は・・・特になし。
場所は・・・。
シン「なんだ海鳴市じゃないか。ってことは地球に飛ばされたのか」
それなら安心だ。この公園も前になのは隊長やヴィヴィオと一緒に来たことがある。しばらく歩き回ってみた。間違いない、前にも来たことがある。 現にあそこにも・・・・。
シン「・・・・・・ちょっと待て。あそこにあんな遊具は無かったぞ。」
いやな予感がした。
すぐに公園のゴミ箱を漁りまくる。
シン「冗談じゃない。そんな・・・そんなことがあってたまるか!」
ありえない!時空管理局すら次元は移動できても時は移動できなかったんだ。
だが、もしも、もしもそうだとしたら・・・。
指先にガサリと紙をつかむ様な音がした。あった!昨日の新聞だ!
うそだと思いたかった。 信じたくなかった。
しかし、現実は俺に逃げることを許さない。
シン「そんな・・これは・・・どういうことなんだ・・・。」
そこに書かれていたのは何度見返しても約十年前の日付だった。 時間を移動できない六課には、彼を救う手段はない。
シンの帰還は絶望的だった。
- ミットチルダ機動六課会議室(シンが消えてから3時間後)
シンが公園のど真ん中で絶望感に浸っている頃、ミットチルダでは機動六課のメンバー全員に非常招集がかけられていた。
事情を聞いたメンバーはみな愕然とした。
ことりという少女と出会った時もドルファンという国に意識だけが飛ばされたときも、シンの肉体はこちらの世界にあった。
しかし、今回は状況がまるで違う。 肉体ごと丸々他の世界へ飛ばされたのだ。
みんな口にこそ出さないが、
スバル「もう、戻ってこないのかな」
訂正、天然が一名口に出したが、大体スバルと同じことを考えていた。
ティア「スバル!不吉なこと言わないでよ。」
スバル「でも、シンは元々この世界の人間じゃないんだよ! 彼の帰る場所は・・・ここじゃなくても・・・・いいんだよ。」
ここにいる誰もが考え、そして否定しようとした一言だった。
キャロ「たとえ離れ離れになるとしても、最後に一言いいたかったです。」
エリオ「そうだね。こんなの突然すぎるよ」
ドアが開いて、シャマルとなのはが入ってきた。 あまりいい知らせでないことは、言葉にしなくても伝わってきた。
フェイト「どうでした?なにかわかったことは?」
シャマルは黙って首を横に振った。
なのは「シンの消えた現場には、魔力反応は一切なし。 探し出そうにもまるで手がかりがないの」
シャマル「魔力を媒介にして向こうの様子を探ろうとしたんだけど、反応すらしなかったわ。」
クロノ「遅れてすまない」
続いてクロノも会議室に入ってきた。
フェイト「何かわかった? お兄ちゃん!」
クロノ「そ、その呼び方はよせ。それより大変なことがわかったぞ。ここ数日、ミットチルダ一体では次元転移は全く観測されていない」
ヴィータ「そんなはずねーだろ!次元転移をおこなえば・・・。」
シグナム「多かれ少なかれ、必ず次元に揺らぎが生じる。 クロノ提督、念を押すようだが観測にミスはなかったのか?」
クロノ「残念だが・・・ない。シンは次元転移とは別の方法で消えたことになる」
ザフィーラ「その方法とは・・・?」
クロノ「さすがにそこまではわからないが・・・。」
ヴィヴィオ「・・・役立たず」
クロノ「ぐっ!」
なのは「余計わかんなくなっちゃったよ」
ティア「シン、本当に・・・どこに行っちゃったのよ」
デス子「・・・過去です」
今まで黙っていたデス子がいきなりとんでもないことを言い出した。
デス子「マスターは今、過去の海鳴市にいます。」
クロノ「いや、いくらなんでもそれは・・・」
全員「「「「 黙ってて! 」」」」
クロノ「・・・はい」
デス子「マスターには元々、時空を越える能力があります。 それがあのデバイスにこもった思いに反応して・・・。」
シグナム「暴走したというわけか。いや、あのデバイスだからだろう」
シャマル「それなら納得がいくわ。次元の揺らぎが起こらなかったのも、何故急にこんなことが起こったのかも」
エリオ「あの、話が読めないんですけど、その話に出てきたデバイスって?」
ザフィーラ「・・・話しておいたほうがいいだろうな」
ヴォルケンリッター達は話し始めた。自分たちの過去を、はやての苦悩を、そして、消えていったかけがえの無い彼女のことを。
ティア「そんなことが・・・(もう、軽々しく狸なんていえないじゃない)」
スバル「そういえば、八神部隊長はどうしたんですか?姿が見えませんけど」
なのは「部屋に篭って出てこないの。リインもついてるから心配ないはずだよ」
この判断は誤りだったと後に機動六課全員が思い知ることになるのだが、現時点でそれを知っているのは本人と縛られたリインのみであった。
リイン「むぐー(はやてちゃん正気に戻ってください)」
はやて「逃がさへんで、シン。ふふふ、こんなこともあろうかとレリックを一つ隠しといてよかったわ。今行くでダーリン♡」
シン「考えてみりゃ十年たったら会えるんだよな。」
さきほどはありえない状況にかなり動揺したが、冷静に考えてみれば何のことは無い。 用は十年間生き残ればいいのだ。そうすればまたみんなに会える。どの道一度ならずに三度捨てた命だ。たかが十年待てないほどじゃない
???「あの」
問題は金だ。身分証明書もなしに就職できるだろうか?
???「あの、すいません。」
身分を問わないところ・・・フランスの外人部隊にでも行ってみるか。しかし、フランスに行く金がない
とにかく今夜の寝床を・・・
???「あの! すいません!」
シン「何だよいきなり!俺は今急がし・・・。」
目の前に信じられないものが立っている。確かに予想はしていた。
面影もあるし、声も聞き覚えがある。 だが、彼女が彼女である証の『冥王のオーラ』がそこにはない。
たのむ! 間違いであってくれ!
シン「・・・・ヴィヴィオ、なのは隊長のコスプレか? 似合ってるぞ」
なのは「ヴィヴィオ?だれのこと?私は高町なのはだよ。 な、何で泣いてるの?どこか怪我でもしたの?フェ、フェイトちゃーん」
シン「・・・・時の流れって・・残酷だ」
- ミットチルダ機動六課会議室(シンが消えてから4時間後)
シャマル「ちょっと待って下さい!デス子ちゃん!あなた確かシン君が過去いるって言ったわね」
デス子「そうですよ。正真正銘、過去の海鳴市です」
シャマル「そんな・・・」
シャマルの顔が目に見えて青ざめていく。
シグナム「どうかしたのかシャマル?顔色が悪いようだが・・・」
どうみても様子がおかしい。彼女の料理を作ってシンが倒れた時も、薬の分量を間違えてシンが死に掛けたときも、これほど狼狽はしなかった。
ヴィータ「おい、シャマルなんだってんだよ。シンが過去にいるとなんかまずいことでもあんのか?」
シャマル「まずいなんてものじゃないわよ、ヴィータちゃん」
声が震えている。長く同じ時を過ごしてきたヴォルケンズもこんなシャマルを見たことが無かった。
シャマル「もしも、もしも過去の世界でシン君が、なのはちゃん達や私達ヴォルケンリッターに遭遇してしまったら・・・。」
「最低でもシン君は人々の記憶から消滅、最悪ミットチルダ自体も連鎖崩壊します」
最終更新:2008年07月03日 23:07