「ますた~、ますた~、起きてくださいよ~。もう朝ですよ」
間延びした可愛らしい女の子の声と、自分の体を揺さぶる振動にシン・アスカは目を覚ました。
ぼやけた視界を拭うように、目を擦りながら体を起こし始める。
だが、その動作を終える前に何かがシンの上に飛び乗った。
「ぐえっ!」
「えへへへ、おはようございます」
抱きつくように飛び乗ってきた人物をじろりと見返す。
サラサラとした絹のような金髪とクリッとした翠の瞳。 そして、瞳の下に伸びる印象的なピエロのような赤いライン。
少々変わっている部分もあるが文句無しの美少女だ。
その少女に向かってシンは疲れたように言った。
「あのなデスティニー。起こしてくれるのはありがたいんだけどもっと優しく起こしてくれよ。 毎朝飛び乗ってこられたら俺の体が持たない
よ。それに…」
シンは視線をデスティニーの顔から下にずらした。
「その格好は何の真似だよ…」
疲れたように声を絞り出す。
彼女の格好は男物のブカブカのYシャツに下はショーツのみ。おまけにノーブラである。
「どうです?似合いますか?」
その場で立ち上がると、シンに良く見えるようにクルッと回ってみせる。
「男の人はこの格好が大好きだって聞いて。後、ロマンとかなんとかよく分からない事を…」
「待て。誰に聞いた?」
「えっと、ヨウランとヴィーノですよ。マスターを喜ばせるにはどうすれば良いのか、って悩んでたら相談に乗ってくれて」
「…またあいつらか」
何が問題なのかまったく解っていないといったニコニコ顔でデスティニーは語る。
シンは同僚二人への怒りを抑えながらデスティニーに言った。
「その格好はこれから禁止だからな」
「な、何でですか?!マスターを喜ばせようと思ったのに!!」
「とにかく禁止!解ったな!?」
シンからしてみれば同じ部屋に住んでいる美少女がこんな格好でうろついているのは色々な意味でたまったものではない。
現に今も、目の前にある幼い顔に似合わない自己主張の激しい体は目に毒だ。
そんな事を考えていると
「ううっ、もしかしてマスター嫌いでしたか?」
「ああ、だから、そうじゃなくて」
どんな結論に至ったのか、泣き出しそうになっていた。
その後シンが必死の説明を終え、納得させた頃にはすっかり昼近くになっていた。
仕事が非番で特にやることも無いシンは、午後に予定のあったレイの用事に付き合うことにした。
「ところで、デスティニーの調子はどうだ?」
用事も済み、近場にあったカフェで一服ついているとレイが言った。
「ああ、デスティニーなら今日も元気が有り余ってるみたいで、一緒について行きたいって散々ごねたよ」
「ふっ、そうか」
シンの優しげな苦笑いにレイも微笑を浮かべる。
「レイのほうこそどうなんだ?レジェンドは大人しいみたいだけど」
「お前に会いたがっているぞ。言葉には出さないがな」
「そっか…」
言葉を句切り、自分達を取り巻いている不思議な環境とその発端にシンは思いをはせた。
ブルーコスモスに支配された連合と一進一退の攻防を繰り広げるザフト。
戦火は地球圏全土に広がり、前大戦を上回る爪痕を残していった。
そして、月のダイダロス基地軌道上での一大決戦に向け両軍が集結し、いざ決戦が始まるかというときに地球圏、いや太陽系全域を未知のエネルギー波が襲った。
それが神のイタズラなのか何なのかは解っていない。 だがその日を境に存在する全てのMSに異変が起こった。
始まりは一機のザクだった。
エネルギー波による動作不良を起こした見られたこの機体を整備するためパイロットが降りた瞬間、格納庫を包む強力な光を発したのだ。
光が収まった後に残っていたのは人間とほぼ同サイズに小さくなり、自我をもったアンドロイドというべき存在だった。
その後、世界各地全ての場所で同じ現象が起こり機動兵器としてのMSは姿を消した。
後にSD(スーパーデフォルメ)化現象と呼ばれるこの事件により戦争は強制的に終結。
唐突に平和が訪れる事となった。
事件後も徹底抗戦を唱える派閥は存在したが、彼等の思惑どうりにはまったく行かなかった。
エネルギー波通過後に生産されたMSも、完成と同時にSD化し兵器の増産ができなかったのだ。
更に、SD化し人間とほぼ同じように物を考えられるようになったMSたちは戦いを嫌い人間と共存することを選んだのである。
連合各国、プラントはMSたちの受け入れ政策に追われた。
そうして終戦からほぼ一年たった今も戦争の予兆はまったく無く。概ね平和と呼べる状態だった。
長くそして一瞬の思考の海のダイブを終えたシンは前から疑問に思っていた事をレイに尋ねた。
「そう言えばレイはどう思っているんだ?デスティニーたちだけが人間とほとんど同じ姿になったって事を」
SD化現象にはもう一つ不思議な効果をもたらした。
それは極一部のMSは元の姿のまま縮んだ大半のMSと違い、人間となってSD化したのだ。
しかも現在で確認できているかぎりでは全て女性の姿であり、体機能もほぼ人間の女性と同じだということである。
おまけに戦闘モードになれば元の姿の武装をまとい、オリジナルとほぼ同じ戦闘力を発揮できるのだ。
無論、小さくなった事により質量的、面積的な破壊力は大幅に落ちているが。
「俺も何とも言えんな。ギルも原因は未だにさっぱりわからないそうだ。ただ…」
「ただ?」
「とりあえずとは言え戦争が終わり、家族というべき存在が増えたのは喜ばしい事だ」
そう言って満足気な顔をするレイにシンも同意する。
「ああ、そうだな……うわっ!?」
突然、ポケットの中に入って携帯が鳴り始める。
シンが慌てて携帯にでると、受話器の向こうから彼の愛機の怒鳴り声が聞こえてきた。
〈マスター遅い!いつ帰ってくるんですか?!もうそろそろ夕食の時間です!!
ひもじいですっ寂しいですっ!…まさか、レイさんの所のレジェンドちゃんと一緒にいるんじゃないですか?!
それとももしかして三重人格のインパルス姉さんと一緒ですか?!マスターはーやーくーにーげーてー!!〉
受話器から耳を遠ざけて、あまりの暴走についつい苦笑を浮かべる。
「ごめんレイ。俺、先に帰るよ。あいつ寂しがりやだから」
「ああ、そうしろ。それと暇な時でいい。レジェンドに会いにきてやってくれ」
「うん、わかった」
シンは自宅に向かって走り始めた。
寂しがりやの妹分をどうやって宥めるか考えながら。
fin
(嘘)予告
「私に会いにきてくれたのだな。うれしいぞ、シン・アスカ」
主に似てクールビューティーな金髪美女 レジェンド
「あなたの家族を撃ったのは私なのですね…」
争いを嫌う清楚な大和撫子 フリーダム
「あたしの物にするって決めたから!逃がさないよ!」
誰よりも自由に奔放に振る舞う少女 ストライクフリーダム
「放っておけないのよね、彼」
お節介焼きなお姉さん インフィニテットジャスティス
「おうシン私と……えっと、あの、よろしければ……あははーデートなんてどうかなー!?」
変幻自在の三重人格娘 インパルス
「あなたに誓います。あなたの故郷を二度と焼かせはしないと」
守護者として身を捧げる少女 アカツキ
他、まだ見ぬ少女たちとの受難がシンを待ち受ける
果たしてCEとシン・アスカの明日はどっちだ?!
………
……
…
「なんで私の紹介はないのですかー?私は主役機、つまりメインヒロインなのですよー?!」
続くかどうかわからない!
最終更新:2008年08月06日 23:48