アナザーCE 鋼鉄の少女たち!

ストライク・フリーダムさんの場合


 「……」

 シンは何かに耐えるような表情で道を歩いていた。 不機嫌な感情を抑えられないのか、足音が普段よりもいささか大きい。
 そんなシンの後ろを、トコトコと可愛らしい足音がついてくる。 我慢の限界か、後ろを振り向いて言った。

 「いつまでついてくるんだよ!?アンタは?!」
 「シンがあたしの事を無視するからだもーん」

 少女がプイッと顔をそむける。
 自身の身長とほぼ同じ長さの紫の髪を纏めたポニーテールがふわっと揺れる。

 「俺が何でアンタなんかと仲良く会話しなきゃいけないんだっ!」
 「あたしがシンとおしゃべりしたいからよ。アーユーオーケイ?」

 聞く耳をもたないあまりのマイペースぶりにシンは頭を抱える。
 だがそれでもシンは抵抗を試みる。

 「とにかく、俺とアンタは敵同士だったんだ。いきなり出てきて仲良くしようで納得できるわけないだろ」
 「む~」

 不満そうに口を尖らせる少女。
 だが何かを思いついたのだろうか。
 シンによく似た赤い瞳に小悪魔的な色が浮かんだ。

 「酷いわっ!昔はあんなに私の事を追いかけ回したのに!しかもあうたびにもの凄く大きくて長くて硬そうなモノを
 私の前で見せびらかして、ブンブンブラブラ振り回して更にそれを私に突き刺そうとしたくせにぃぃぃぃっっ!!」

 天下の往来でとんでもないを事を大声で叫び出す少女。
 慌ててシンが周りを見まわすと、道行く人々は皆あしを止めシンと少女を見ていた。
 軽蔑しきった目や殺意の籠もったような目、道ばたに放置されたゲロを見るような目で見てくるものもいる。
 少女はというと、顔を覆い泣いてるフリの真っ最中だ。
 窮地に陥ったシン。打開策が思い浮かばず進退窮まったと思われたその時

 -パリーン-

 頭の中で何かが弾ける。戦争中も幾度かあった感覚。
 どうやらシンの体が、この状況を生死の刹那の瞬間と同じモノとして認識したようだ。
 それはともかく、体のリミッターが外れたシンは少女を抱え一目散に離脱した。

「はぁ…はぁ…はぁ…なんだってあんな事をするんだよ!?」

 息もとぎれとぎれに怒鳴るシン。少女は演技をやめ、すました顔で公園のベンチに腰掛けている。

 「シンが悪いんだからね。あたしはシンと仲良くしたいだけだって言ってるのに」
 「…何でそんなに俺に拘るんだ?俺とアンタはずっと敵だっただろ」

 観念したように問いかけるシン。もう怒る気力も無いようだ。
 すると真面目な表情になって少女は言った。

 「敵だったとか関係無いよ。あたしがシンの事を気に入ってるのは本当だよ?それじゃ、ダメかな?」

 真顔で面と向かって気に入っていると言われシンの顔が赤くなる。

 「…そ、それは」
 「なーんてね。シンはからかうと面白いし一緒にいると退屈しなさそうだからかな?」

 一転、軽い口調であんまりな事を言ってくる。

 「…お前っ「あっーーーーーーーーっ!!」

 ポカンとした後、怒りが再燃しそうになったところに新たな乱入者が現れる。

 「お前はアークエンジェルの白いいけ好かない奴!こんなところでマスターと何をやっているのですか?!
 もしかして善良で単純なマスターを洗脳しにでも来たのですか?!」
 「いきなり出てきて失礼ね。あたしはシンと仲良くおしゃべりしてただけよ。 機体バランスが悪いせいなのかな?性格がそんななのも」
 「なんたる暴言。ゆ、許さんのです。今日こそ刀の錆にしてくれるのです!」
 「あたしに勝てるわけないでしょ。力の差を思い知らせてやるわ」

 当事者を放置して盛り上がる二人。
 両者ともMSの装甲の様な鎧を纏い、武器を展開している。
 展開に置いていかれているシンは一つの事が引っかかっていた。

 (さっきアイツの表情、本当に冗談だったのかな)

 さっきはついつい怒ってしまったが、あの一瞬だけ見せた態度はとても嘘に見えなかった。
 と、何故あの少女の事を気にするのだと思い直したシンは、頭をふってくだらない考えを追い出した。
 そして、廃墟に向かってまっしぐらな公園を救う為、二人の少女に近づいていった。





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最終更新:2008年07月18日 17:56
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