それは、俺がこの昭和58年に来て何周間か過ぎてからのことだった。
俺はその頃にはもうすっかり村の皆や学校の皆と打ち解けていた。
そりゃ村の人に「おやおや、今日の罰ゲームはメイドさんかい?」と言われるほどにな。
生活費や学費は魅音が無理言って園崎系列の店で働かせてくれたのと、監督からの援助金のおかげで何とかなっているし。
正直に言えば、元の世界に帰りたい気持ちもあった。だけど今の生活も心地よく思えて──なんだか皆に申し訳ない気持ちだ。
「はいはいみんな集まってぇ! 傾注傾注!」
いつものように魅音が部活メンバーを集め、いつものように皆が集まる。
悔しいが、俺は皆の中じゃ一番弱い。ていうか、ナチュラルのレベルじゃないぞあいつら!?
さておき、魅音がなにやら含み笑いを浮かべながらこちらを見ていた。すっごい怖い。
「な、なんだよっ!」
「いんやぁ~既に連敗記録二桁のシンちゃんが可哀想に思えてきてねぇ……くっくっく、だからシンちゃんでも出来る簡単なのにしてあげる
よ!」
「本当かぁ~?」
そんな俺を見て圭一が肘で脇を突っつきながら、
「おいおい、魅音が相手を労るようなことをすると思うかぁ?」
するとレナも、
「うんうん、みぃちゃんいつも言ってるよお。獲物の前で舌なめずりは三流のすることだって」
いや、それ多分意味違うぞレナ。魅音がそれを聞いて心外な、といった顔でぶー垂れる。
「あるぇー、圭ちゃんにレナ、それはちょっと酷いんじゃないかなぁ? おじさん辛くて泣いちゃうよ」
「お姉が泣く? あっはっは、そんなことアメリカの首都がワシントンになるぐらい有り得ませんよ!」
「詩音……あんたねぇ!」
いや、アメリカの首都はもともとワシントンですから。それが普通ですから!
「みぃ……しぃは軽々しくそういうこと言わない方がいいのです」
梨花ちゃんにまで指摘されてるよ。
「あら? 詩音さん何か不思議なこと言いまして? 梨花」
お前もか沙里子。
結局、俺は連敗記録を更新することとなり、メイド服を着て眼鏡掛けて鳥さん腰に付けながら帰ることになりました。
圭一は俺に情けをかけてくれたが……魅音に詩音に梨花ちゃんに沙里子めぇ……ありゃチートだ。卑怯だ! くそくそくそ!
「今日は眼鏡っ娘鳥メイドさんかい? あんたも大変だねぇ?」
通りがかったおじさんに情けの言葉を貰いながら、古ボケた倉庫もとい我が家に帰るのだった。
最終更新:2008年07月11日 04:19