翌日。
ミコトの消失を皆に伝えたシンはなるべくいつも通りを装っていた。
だが、誰の目から見てもその姿は儚く弱弱しい姿だった。
夜・格納庫。
夕食後、特に行く所もなくぶらついていたらここへ来ていたシン。
「……」
今は灰色に染まっているデスティニーを見上げる。 何気なしにそっと足元へと近付き、触れてみる。
冷たい。
そして脳裏に蘇る昨日のミコトの手は、暖かかった。
どうして、こんなにも違うのか。
同じデスティニーなのに、どうして……。
「……シン?」
名前を呼ばれて振り返るシン、するとそこにいたのは。
「はやて、部隊長……」
触っていた手を離し、体を向き直す。
「ど、どうしたんですか?」
「いや、さっき本局から帰ってきたトコでな。なんやここの明かりが点いてたから……」
確かにこんな時間まで明かりが点いていたら疑問にも思うというわけだ。
「あ、すいません……」
「ええよ。シンこそ、どないしたんや?」
「え? 俺は別に……」
そっぽを向こうとしたら、急に首が曲がる。
はやてが両手で顔を掴んで自分の方向へと無理やり向けたのだ。
「な、何を」
「シン、嘘ついたらアカン」
――――え?
「な、何言ってるんですか、俺は」
「別に……って言いたいんやろうけど、そんな悲しそうな瞳してたら誰だって気になるで」
悲しそうな瞳? 俺が?
周りからみたら今の俺はそんな風に見えるんだろうか?
「……ミコトさんの事、やっぱり気にしてるんちゃうの?」
ズキッ。と心に響くはやての声。
誤魔化す事も出来たのだろうが、今はそうしようとは思わなかった。
「……気にしてないって言ったら嘘になりますけどね」
「……そりゃそうや、気にしてないわけないやんか」
「?」
「シンがそんな人やとは誰も思ってへんよ。少なくとも私は思ってへん」
言い切ったはやての顔には一遍の曇りの表情も無かった。
「はやて、部隊長……」
「せやから、あんまし無理したらアカン」
「……」
――なんで、この人には解っちゃうんだろうな……――
「……ありがとうございます」
「ええよ、そんなん別に礼言われるようなコトしてへんし」
「……そうだ」
ゴソゴソとポケットを探り、昨日見つけたペンダントを出す。
「これって部隊長のですか?」
「……いや、私のやないなぁ……」
「そうですか……」
これで結局六課全員に聞いてみてもダメだった。 ならこれは一体誰の物なのだろうか?
「……ん?」
悩むシンをよそに疑問の声を上げるはやて。
「シン、それちょっと貸してくれへんか?」
「え? あ、はい」
そういってペンダントを受け取るはやて。
そして目を瞑り、何かを呟くように言っているが、シンには聞き取れなかった。
「はやて部隊長?」
「シン、これ少しの間借りてもええか?」
シンの呼ぶ声の直後に目を開け、問いかけるはやて。
「え? あ、はい、いいですけど……」
どうせ持ち主も分かっていないような落し物なのだから。
「こいつの持ち主に何か心当たりでもあるんですか?」
「う~ん、まぁそんなとこかな」
「??」
それだけをいい、はやてはその場から走っていった。
結局訳が分からないまま、シンは格納庫から帰り、就寝した。
3日後。
六課に響き渡る警報の音。
『ミッド南部にて大型ガジェットが多数出現! 各員第一種戦闘体勢に入ります!』
「大型が!? くそっ!!」
オフィスで事務仕事をしていたシンは即座に立ち上がりオフィスを後にする。
デスティニー・格納庫。
階段を駆け上がり、コクピットへと入るシン。 メインスイッチを押し、立ち上がるOS。
「こちらデスティニー、シン・アスカ! 目的地の地図を送信願います!!」
『その前に、ちゃんとシートベルトを締めて下さいね』
「あ、いけねまた忘れてた……」
――――え?
今の声……。
『シートベルトの着用はあなたの身を守る為に必要なことなんですよ』
まさか……。
『メインスイッチを押してからシートベルトを装着する癖、治しましょうね、"シン様"』
「…………ミコト、さん…………?」
『はい、何でしょう? シン様』
メインディスプレイに映る女性の姿。その姿は忘れるはずもない。
やっぱり、間違いない。
「え、あの、えと、何で……?」
確かにあの時、彼女はこの場所で消えていった。 それは一番近くにいたシンがよく知っている。
『それについては私が話すわ』
回線に入ってくるロングアーチ、機動六課部隊長八神はやての声。
『シン、3日前に私が預かったペンダントあったやろ?』
「あ、はい」
『実は、あれから魔力反応が感じられてな。それで気になって貸してもらったんや。
そしてロングアーチに調べてもらったら、なんとその中にミコトさんの情報が残されてあったんや』
「え?」
『というより、あのペンダント、ロストロギアと同じ様な物で、ミコトさんが具現できたのもあれのせいなんや。
そしてミコトさんが消えた後に、その情報のみがこのペンダントに残されてあったちゅうわけや。
それを元にデバイスメンテスタッフ一同でデスティニーのOSの自立型AIとして復元させたんや』
「そうだったんですか……」
『あの時、失ったと思った命でしたが……もう一度会えるなんて思ってもいませんでした』
「……俺だってそうだ」
涙目になりながらお互いを見つめるシンとミコト。
『さて、お二人さん。感動の再会もええんやけど、そろそろ出撃してくれへんかな~』
茶化すように促すはやて。
「え? あ、はい!!」
『ロングアーチより目的地の地図転送!』
「よし、それじゃ最速で行けるルートを割り出してくれ!」
『解りました!!』
開くカタパルト。その隙間から太陽の光が除々に差し込んでくる。
「シン・アスカ! デスティニー!!」『同じく、ミコト!』
『「行きます!!」』
そして、運命の名の元に、紅き翼を広げ、青空へと飛び立っていった。
それはたった一つの奇跡。fin.
最終更新:2008年07月11日 19:22