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DESTINY単発-04

──CE73年。ロード・ジブリールが死んだことで戦争は終結。
世界はデュランダル議長の手によって平和を取り戻す──はずだった。
議長が宣言したデスティニープラン施行に反対するものがいたのである。
ラクス・クラインとカガリ・ユラ・アスハだった。
両名は自由という言葉を振りかざし、真っ向から議長と対立した。
──反吐が出る。
彼はスチール缶を握り潰しゴミ箱へと放り投げる。
カランと虚しい音を建てて、スチール缶はゴミ箱へと吸い込まれていった。
苛立ちは募るばかりだった。
俺が求めているのは自由ではなく平和だ。
戦争のない世界を議長は約束してくれたのである。彼がラクス達を支持する理由などなかった。
そもそも、彼はラクス達にはあまり良い印象は持たなかった。
いや、彼だけではなくザフトの兵の大部分はラクス達には良い印象を抱いていなかった。
当然と言えば当然だろう。彼らのせいで死ななくて良いものが大勢死んでいるのである。
彼らは不殺を掲げているとよく耳にするが、それはあくまでも表向きの話だ。
海の上で撃墜されたものを誰が助けられよう。宇宙空間に取り残され、母艦を──戻れるところを失ったものに待つのは何か。
議論するまでもない。死である。
シンは宇宙を見上げる。
嵐の前の静けさとでも言うのだろうか。辺りは恐ろしいほどに静寂を保ったままだった。
その怒れる瞳が見つめるのは果たして何なのだろう。未だ知るものはいない。
「シン!」
後ろから声をかけられる。
振り向いた先には赤毛の美しき少女──ルナマリアがいた。
先ほどまでの怒れる瞳はどこへいったのやら。
シンは人懐っこい笑みを浮かべ応対する。
「シン……いよいよだね」
「ああ」

二人して宇宙を見上げる。
ラクス率いる歌姫の騎士団がプラントへと向かってくるという情報を既に二人の耳にも届いていた。
防衛ラインは布かれているけれど、それが意味を持たないことも重々承知していた。
それだけキラ・ヤマトとアスラン・ザラは圧倒的な力を持っていたのである。
「シン……死なないでね。必ず生きて帰りましょう」
目に涙を浮かべながらそう言うのはルナマリア。
シンはその姿を愛しいと心の底から思った。
──誰にも彼女をやらせはしない。守れなかった妹とステラの分まで俺が守る。
心の中でそう誓ったシン。
そして、無言でキスを交わす。
情熱的とは言えないが、子供らしいとも言えない。そんな二人の微妙な年齢を表すには相応しいものと言えよう。
唇を離して向かい合う二人。若干頬が赤くなっていた。
「ああ、大丈夫だ。あの裏切りものをもう一度殺して、必ず戻ってくるから」
「……そう」
ルナマリアの声のトーンが低くなったことにシンは気づかなかった。
「シン……目を瞑って」
言われた通りにシンは目を瞑る。
何があるんだろうとシンは胸を踊らせていた。
不意に肉を裂かれたような感覚にシンは襲われる。
それから燃えるような激しい痛みを彼の体が訴えた。
恐る恐る目を開けるシン。
ただでさえ赤いシンの軍服が血によって黒に変色していた。
ナイフを持つ無表情のルナマリアがシンの視界に入ってきた。
彼は辺りを見回したが、他に誰もいなかった。
つまり、犯人は彼女で──助けを呼ぶことも出来ないということである。
諦めたようにシンはルナマリアに向かい合った。
「……何故?」
消え入りそうな声でシンは言った。
「……シンが……シンがアスランさんを殺すなんて……言うから」
「そっか……」
そう言ってシンはルナマリアの肩を優しく掴んだ。

「ごめん……ルナマリア」
そのまま眠るようにシンは倒れてしまった。
笑みを浮かべたままシンは息を引き取った。
カランとナイフと地面がぶつかる音が辺りに響いた。
「ごめんなさい……ごめんなさい……」
もう息をしていないシンへとルナマリアが抱きつく。
その顔は涙でぐちょぐちょだった。
ごめんなさい、衛兵に発見されて引き剥がされた後も彼女はそう言い続けた。
彼女は罪悪感に押しつぶされてしまった。
皮肉なことに最期を迎える時のシンの笑みが彼女の心を壊してしまったのである。
辺りは恐ろしいほどに静寂だった。

その後デュランダルは敗北を認め、自害をした。
シンとルナマリア両エースを欠いたまま勝てるなどとデュランダルは傲り高ぶってはいなかった。
レイ・ザ・バレルも後を追うように死んでいった。
世界はラクス・クラインの下に統制されたのだった。





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最終更新:2008年07月22日 17:38
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