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DESTINY単発-05

ひぐシン ◇LuqsQs0P4wの作品

 よう皆。俺、俺だよ俺、シン・アスカ。
 そう、メサイア戦役で無様にもアスラン・ザラの乗るジャスティスに傷一つ負わせず撃墜されたシン・アスカだ!
 俺もいろいろあって、何とか軍人辞めることができたよ。ラクス政権の元で働くのなんて真っ平ごめんだったからね!
 んにしても運がよかったぁ。
 俺は今まで何十機、いや何百機というMSを、艦を葬ってきた。
 その結果、危険手付けにプラス何割かってーおまけがついてきてさ。今俺は地球の、東アジア共和国の日本地区でニート生活さ。
 酒飲む金にも遊ぶ金にも放送上不適切なゲームを買う金にも困らない。最高だね! エンドレスバケイション! いぇい!
 で、時期がちょうど8月の半ば。夏休みの半ばになった頃だ。そんな時、あいつらはやってきた。

「へーい、かつてのザフトの英雄。今は愛すべきニート。シン・アスカのうちはここかい?」
 俺が放送上不適切なゲームを真昼間からやっていると、かつて聞いたことのある男の声が玄関の扉越しに聞こえた。
 このノリは……とりあえず俺は来客の対応をしようと玄関へ向かう。
 そして俺が躊躇せず鍵を外し、扉を開けると――
「へーいシン! SHIN! 俺だよ俺、分かる?」
 かつて見たことのある顔が、二つ分見えた。片方は肌が黒い。片方は頭頂部の髪が赤い。こいつらは……ああ!
「イロ・グロ! 懐かしいなぁ、隣に居るのは……ケ・チャップ!」
 二人がバナナの皮を踏んだかのように転げ、頭を打って転がりまわった。懐かしいなぁ、こういうノリ。うんうん。
 何とか痛みを抑え、立ち上がったイロ・グロとケ・チャップが肩で息をしながら、力を振り絞るようにして口を開いた。
「お……俺は人間をやめるぞー! じゃない! 俺はヴィーノ・デュプレ! ミントのようにクールでライオンのように強い!」
「お……むぅ、思い浮かばん。俺は……ヨウラン、えっと、そう、ケント! ゴルゴのようにクールでチーターのように速い!」
 ヴィーノ。えっとーVの……? 違う違う、そう、俺にラッキ×××べとかいう暴言を吐いた糞野郎だ! 洋蘭? そんなやつシラネ。
「おーう、ヴィーノ! 懐かしいなぁ、で、何の用だい? ヴィーノ」
「酒だ酒。久々に会ったんだから、積もる話もあんだろ。どーせ暇だろ?」
 酒か。別に飲んでもいいが、放送上不適切なゲーム付けっぱなしだなぁ……まぁ、いいか。
「目処はついてんのかヴィーノ?」
 俺が半神半疑な目で見ると、かっかっかと笑ってヴィーノは答えた。
「あったぼーよ、聞き込みしてね、最近出来た『鷹の止まり木』って、厨二病臭い店がおったまげるらしい。震えながら言ってたぜ!」
 そいつぁ期待大だ。うっへっへ、飲みまくるぜ!

 なーんて期待度を100にして俺とヴィーノと洋蘭で行ってみたは良いが……
 別にそこは震えるほど喜べるような店ではなく、むしろ狭くて煙たい店だった。カウンターに椅子が六つ。それだけの詰まらん店だ。
 客は居ない。一応営業しているらしいが……とりあえず、適当な椅子に座ってから
「うっへぇ……外れだったな、ヴィーノ」
「だな……ママ、お勧めは?」
 言われて俺はカウンターの向こう側の女性の存在に気がついた。
 暗がりで顔はよく見えないが赤い髪の毛で、ぴょんと毛が立っているのだけが分かる。
「……」
 無言の間。結局話し合った結果、適当に頼もう、ということで俺は焼酎、ヴィーノはウイスキー、洋蘭は梅酒となった。
 これにも女性は無言で応えた。
 慣れた手つきで焼酎を注ぎ、ウイスキーを注ぎ、コップに落とした梅に……水道水を注いだものを渡した。
 何も言えずに口にする俺たち。
「……そ、そうそう、新しいラクス・クラインってなんか好けないよな! とくに××がさ! ありゃまな板!」
「そそ、そうそう、ありゃまな板だよな。やっぱり前のラクス・クラインのほうが良いよ」

 会話に弾む俺とヴィーノ。そんなどうでもいい会話も酒の勢い相まってヒートアップしていく。

「そうそう、ルナも気持ち悪かったよな! ミーハーで騒がしくて、品がない。後アホ毛! ないない、刈り取りたくなるよな?」
「後メイリン! ミーハーなとこが姉そっくりで、裏切ったくせに禿ランと一緒に豪遊三昧だぜ!? あのい××い野郎!」
 うーん、やっぱ友達との話ってのは面白いな! まず人ときちんと話すことが久しぶり。
 集金の人と宅配の人ぐらいとしか会ってなかったからな。
 なーんて俺たちが浮かれて話していると、カウンターの向こう側の女性が椅子を立ってこちらに向かってきた。
 続いてカウンターの奥の厨房からもちょっと小さめの女性が出てくる。
 掃除か? なんて俺たちが囁きあっていると、大きいほうの女性が、
「悪かったわね……ミーハーで騒がしくて品がなくてアホ毛で……」
 以前聞いたことのある声で言い、もう一人の女性が、
「悪かったわね……ミーハーで裏切って豪遊三昧どころか普通の贅沢な生活すらしてなくてい××い野郎で……」
 これまた以前聞いたことのある声で言った。

 最初、この二人が何を言っているのか分からなかった。
 だが次第に近づいてくる二人の顔を見て――分かった。理解(わか)ってしまった。
 この二人は……! この二人は……!
 ルナマリア・ホークとメイリン・ホーク!
「逃げろ!」
 俺たちは必死で狭い店内を逃げ回った。死にたくないから。
 当然だ! 時には洋蘭を盾にしたり洋蘭を見捨てたり洋蘭を囮にしたりもした。
 それでも、だめだった。抵抗しても無駄だった。洋蘭が、
「お、俺何も言ってな……なっ!何をするだァッ! ゆるさ……っ!?」
 なんとも意味不明な声を発して、木刀で食われた。そういえば居たんだな。
 悲しい断末魔だ。

「分かる……? これがわたしたちの魂の痛み……」
 その断末魔と呟きを耳にした俺とヴィーノはより一層必死に抵抗し、足掻き、逃げた。でも無理だった。ヴィーノが、
「クソ、なんでお前……っらっ!」
 最後まで反抗して、声を荒げてバットで食われた。
 悲しい断末魔だ。

「分かる……? これがあたしたちの心の痛み……」
 恐ろしい呟きだ。
 次に、次に、そうして皆食われていったんだ。俺には、どうしようも出来なかった。
 先ほどまで、馬鹿みたいに笑いあって酒を飲んでいたのが嘘のように。二人は食われてしまった。
 悔しくて、悲しくて、足掻いて、抵抗して何とか扉の前までやってきた。狭いはずの店内がまるで体育館のように思えた。
 扉の取っ手に手を伸ばし、捻る。開かない。
 そして、ついに俺は追い詰められた。逃げられない。もう駄目だ。
 冷たい、殺意を灯した二対の眸が二つ、俺に向けられる。
 抗えない。そう直感で悟り、最後の力を振り絞って聞いた。

Q. あなたは、私の罪を赦し、私の罪を受け止めてくれますか?(明日にはミンチにされてしまう悲しい可哀想な豚のような顔で)
A. それは、無理なことです(それを見て、どんな味かとわくわくしながら美しい笑顔で)

 そうか……
「俺……分かったよ、自分の気持ち。俺の一番は……」
「そしてこれが……」
「ルナマ」
『(わたし・あたし)たちの、ハートの痛みよっ!』
 ルナとメイリンのはもった声を最後に俺の意識はとだ――

(殴ったり踏んだり叩きつけたり惨い音をお楽しみください)

 後日、まったく売り上げが上がらないバーに、無給で働いてくれる三人の従業員が加わったとか加わってないとか。

終劇




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最終更新:2008年07月15日 16:45
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