ひぐらシンのないた後に-04

宝探し(奪い合い)編 その3


 魅音とレナの豪華な舞踏から逃げ出した俺は、一人ゴミ山の端っこの方に潜んでいた。
 今でもモデルガンから吐き出される弾丸と鉈がぶつかる音が鳴り響いている。
 ひぐらしの鳴き声も混ざり、何とも言えない雰囲気を作り出していた。
 ひぐらしの鳴き声。このひぐらしの鳴き声は俺が居たオーブでは聞く機会がなかった。けど──
 俺はこの鳴き声を識っていた。ここにくる前から。テレビで聞いたとか、そういうのではなく。
 俺の心が、覚えているんだ。この雛身沢の、ひぐらしの鳴き声を。
 有り得ない。そう理解はしている。しかし、俺はこの雛身沢を識っている。俺は……ここに──

「おーっほっほ! 隙だらけでしてよシンさん!」
 俺の考えを邪魔するように、幼い少女の聞き慣れた笑い声が辺りに響いた。
 沙都子の声だ。出逢って何週間かのはずなのに、凄く聞き慣れた沙都子の笑い声だ。
 俺は振り向いて高見から俺を見下ろし、不敵な笑みを浮かべている沙都子に声をかけた。
「沙都子。俺に何か用?」
 沙都子は相変わらず笑みを浮かべたままだ。アイツは何かを仕掛けようとしているみたいだ。「持っているお宝全部を寄越しなさいですわ! さもないと……」
 全部と言われましても、自粛しろ! と言われてもおかしくない本とボン大君人形しか持ってないんですが……
「さもないと、強靭! 無敵! 最強! の神のトラップをお見舞いして差し上げなければなりませんわぁ~……」
 何かスッゴい俺の意思を無視した展開ですね。どうしようか。
 俺が返答に窮しているのをどう受け止めたのか、沙都子が右手を思い切り引いて高笑いした。
 馬鹿にされてる気がするのは恐らく俺の勘違いではない。
「トラップ発動。ラーのタライ!」
「……は?」
 沙都子が右手の握り拳を解いた。なんだか嫌な予感。
 頭上から何かが高速で落ちてくる音。空気を切り裂き、落ちてくる物体は──
「やっぱタライですねッグハァッ!?」
 見事俺の頭にクリーンヒット。もんどりうって倒れる俺。
 これはタライ。金タライ。コント用のではない。本物だ。
 あれ、水が地面に……そうか。痛くて泣いているのか。痛くて泣いているのか。俺は声を荒げて叫んだ。
「何であんたらは俺の意思を完全に完璧に微塵の躊躇もなく完膚無きまでに無視して置いてくんだ!」

 もとより聞いちゃいない。最悪だ。
「二段トラップ発動! オシリスのドラム缶!」
 俺の反応に気を良くした沙都子が声を荒げて叫ぶ。
 続いて背後のゴミの山から何かが激しく転がってくる音。電車の走る音に似てればいいかもしれない。
 オーケー。シンアスカ、ここまで来ればオチも読める。大質量のドラム缶だろう。質が悪い、が!
「俺は逃げも隠れもするが、嘘もつく。ゴミ係兼傘係の、正真正銘シン・アスカだっ!」
 思わず大喝采! と声を荒げて叫んでしまうほど素晴らしいバックステップでドラム缶をかわ──
Q.ドラム缶はどこから転げ落ちてきましたか?
A.ドラム缶はあなたの真後ろから転げ落ちてきました。
「わあぁぁぁぁぁいっ!?」
 嗚呼、今俺の肢体はドラム缶に吹き飛ばされ、地表5、6メートルの高さにある。マユ、俺飛べたよ。兄ちゃんやったぜ。
 ああ、地面が目の前に迫る。
 マユが入ってる風呂に間違えて入ってしまったことや間違えてマユの下着を掴んだことが走馬灯のように駆け巡り──
 なんか絶対起きてはならないような音が首の付近から聴こえた。
 なのに生きてる、畜生、生きてるのがこんなに苦しいなんて初めてだ。
 よろよろと立ち上がり、それでもキツくて膝を突いた途端、
「三段トラップ! オベリスクの落とし穴!」
 足場が突如崩れた。暗くなる視界。その先に、何故かレイがお茶を飲んで微笑を浮かべているのが見えた。

 気がついたときにはそこは我が家。何故か綺麗になってるボン大君人形とアレな本が脇に添えられている。
「……」
 妙だ。この人形を俺は識っている。何度も見たことがある。頭が痛い。
 ただのデジャブだろう。そう思って俺はさっさと着替えて、布団敷いて、ぐっすり寝ることにした。

宝探し(奪い合い)編

終わり






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最終更新:2008年07月15日 17:48
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