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ひぐらシンのないた後に-03

宝探し(奪い合い)編 その1

 今日も今日とて平和な日々。特に違うのは詩音がいないぐらいか。まぁ、そりゃ毎日はいられないよな。
 ともかく、例え詩音がいなかろうとどうであろうと部活は行われる。
「うーん、サバイバル風船割りはやっちゃったし、何にしようかねぇ? トランプは飽きたしぃ……」
 昨日のサバイバル風船割りはアカデミーの白兵訓練よりも疲れた……いや、それでいてなかなか面白かったが。
 魅音が一人でぶつくさ言ってるのを尻目に俺はそーんなことを考えていた。
 すると突然レナが荷物を持って帰り支度を始めてしまう。
「? レナ、用事か?」
「大方宝の山の宝探しってとこだろうな」
 俺の疑問に圭一が答え、レナが頷いた。宝の山とはレナの隠れ家があるガラクタ山のことだ。
 初めて見つけた時は驚愕しちまったよ。ガラクタ山の中から少女が見つかったんだから。
 まるで冒険か何かが始まるんだって、わくわく──まあ、それについては置いておくか。
 それまで何かにうなされていたようだった魅音がいきなり手をポン、と叩いた。
「今日は宝探し! 誰が一番価値ありそうなものを競い合うって感じに! それならレナも参加できるしさ! おじさん頭良い!」
 魅音が珍しく空気読んだよ。なんてことだ。明日は間違いなく大雪。
 多分ロリコンが美女ページモンスターに拉致られるぐらいの大雪。
「うん、レナは別に構わないよぉ」
「僕もおっけーなのです」
「わたくしも大丈夫ですわ」
「俺も大丈夫だぜ」
 残るはお前だけ、と言わんばかりに皆の視線が俺の降り注がれる。
 俺に断る理由はない。だから俺は皆に続いておっけーを出した。
 魅音は「そこはだが断る、でしょ……空気読めてないなぁ」なんて呟いていたが知ったことではない。そもそもお前に言われたくはない
 結局、その後の話し合いの結果一度家に帰ってから宝の山に行くこととなった。

 家に帰ってもやけに俗っぽい魔道書がワイシャツ一枚で出迎えてくれるわけでもないのでとっとと宝の山へ向かう。
 その道中、薄いピンクに髪を染めた人と遭遇した。
 その人はやけに天然系でドジっ娘で巨乳で可愛かったりもしたが、
 その人が実は春日部出身でのちに■■■──検閲──という娘を生んだり、
 同じく母親に似て天然系でドジっ娘で巨乳で可愛いくなるなんてことは、誰にも関係のない、どうでもいい話だ。

「うっわ、何時観ても爽快には程遠い景色ですね。忘れかけてたあの甘酸っぱい青春みたいにはっちゃけている君に熱いボイスー。
 今夜君は一人かーい、寂しくないかーい。と、軽く現実逃避してみて……」
 誰が分かるんだろう、こんなうろ覚えで適当に繕った台詞の元ネタ。
 なんて考えながら宝の山もといガラクタの山もといゴミ山にさっと身を投げ出す(沙都子のトラップにかかったとも言う)。
 いい感じに錆びた鉄が俺を迎えてくれた。
「おーっほっほっほ。無様ですわねぇシンさん」
「みぃ、打ち所が悪ければお亡くなりなのです」
 沙都子の憎たらしい声と梨花ちゃんの可愛らしい声が聞こえた。
 なんて可愛い子達だ。じっくり可愛がってやる、泣いたり叫んだり出来ないようにしてやる。
「遅刻するから沙都子のトラップにかかるんだよシンちゃん。さて、ルール説明といくよ?」
 錆びた鉄にキスしている俺を置いて(むしろ足で踏みながら)話を始める魅音。圭一やレナさえも素知らぬ顔だ。
 かくして、この壮大かつくだらない戦争は幕を開けるのであった。

次回予告

 ただの宝探しのはずだった……
 みんなで笑って楽しむ、ただの部活のはずだった……
 それが、何故……相手を倒してでも奪い合う、こんな悲しいことに……?

宝探し(奪い合い)編 その2

「ルールは簡単。今から二時間以内に一番価値がありそうなお宝を探し出すってことさ」
 単純明快とはまさにこのこと。判り易い。すると今まで黙っていた沙都子が手を上げた。
「何をしても、よろしいんですの?」
 それに魅音は不敵に笑って答える。
「ああ、何でもさ。宝探しとは、時に無情な争奪戦にもなりうるからねぇ……くっくっく」
 争奪戦……いいぜ、血が煮え滾ってくるぜ!
「それじゃ、宝探し……スタート!」
 それを合図に俺達は一斉に駆け出した。

 駆けだしたはいいが、どうしたものか。
「宝探しっつっててもなぁ……何がどう価値あるんだぁ?」
 とりあえずあらかた探しては見たけどなぁ……
 光ってる偏四角多面体の玩具(何か世界の因果に関係しそうなもの。混沌の庭が封じ込められてそう)、ガンダムのプラモデル(インパルスに似ていてびっくりした)。
 古びた水鉄砲。嬉し恥ずかしそういう本。折れた箒。錆びた椅子。
 腐った木材。改造モデルガン。散弾銃……え? なんに使ったんだ? つか、誰がこんなん棄てたんだ?
 置いておく。一番良さ気なのが犬なのか何なのかよくわからない頭、ずんぐりとした二頭身、くりりとした瞳が特徴的な人形。
 愛くるしいなぁ。名前っぽいプレートの部分は削られててよく見えないけど『ボン大』と、書かれている。ぼんだいって読むのかな?
 見たことないけど、一応足しにしておこう。ボン大人形と嬉し恥ずかしそういう本を携帯して俺は立った。
「うーん、偵察でもするか……」
 と、口から漏らす。結局、いちいち人のこと気にする俺は駄目なやつか。そんなこと言ったってしょうがないじゃないか!

 しばらく歩いていると意外に広いゴミ山の、奥深い場所で一人うずくまっている魅音を発見した。
「調子どうだ?」
 俺がやぶからぼうに声をかけると魅音は一度振り向いて、手を振りながら返した。
「だぁめですぁ。マシな物は一個も見つからない、って……シンちゃんそれ何?」
 魅音が怪訝そうに俺の持っているボン君人形を指差す。
 俺は魅音のいるところまで駆け下りると、首を振りながらその疑問に答えた。「知らない。ボン大君人形だってさ」
「はぁ~、そいつぁまたシンちゃんには似合わないもの見つけたねぇ!」
 似合わなくて悪かったな、所詮俺は返り血が似合うミントのようにクールな男ですよ。へーんだ!

 なーんて、どうせ突き帰されるのはわかっているのに魅音に差し出したりしてみる。ところが……
「え、えええ!? いや、あたしはそういうの、その、がらじゃないし、ね、ほら、がっがさつだしさ!」
 なんだこのうろたえよう。冗談だったんだがな……と思いつつ、
「いいからもらっとけよ。ほら。あんたなら十分似合うさ」
「……その、ありが――」
 魅音がおずおずと手を伸ばし、それを受け取る直前――

 ガキィンッ! といった感じに金属同士がぶつかり合う音が聞こえた。

「みぃちゃん……そのお人形かぁいいなぁ……お持ち帰りしたいなぁ……」
 声のする方を振り向けば、鉈を手に持ったレナが俺達を見下ろすように立っていた。
「……残念だけど、そいつぁやれないねぇ……」
 腰から改造モデルガンを抜きながら言う魅音。洒落になってないぐらい怖いんですね。これが。
「みぃちゃんの豆鉄砲は当たらないよ……? 速過ぎるレナに、掠らせる事もできないよぉ?」
「レナの鉈は当たんないね……そんなのろのろした動きじゃ、掠らせる事もできないよ!」
 獅子と虎。その間に佇む獲物(俺)。どうしろと。どうしろというんです。
「一撃で叩き割ってあげるよぉ!」
 姿が一瞬見えなくなるほど素早く、レナが跳躍した。気づいたときには目前に。
 そのまま鉈が振り下ろされる。おいおい、当たれば即死だぞ!? そんな俺の考えを他所に、鉈が俺の横にいた魅音の頭を――
 叩き割らなかった。その代わりに俺の真横5センチのところに置いてあった雑誌が真っ二つになる。その場に魅音はいない。
 いつの間にか素早く横っ飛びに移動し、モデルガンをこちらに向けていた。
「園崎家党首代行園崎魅音の名において、レナ、アンタの行動を認めるわけには……いかないねぇ!」
 魅音が華麗な動作で膝をつきながらモデルガンの引き金を引いた。おいおい、当たれば重傷だぞ!?
 だがレナは避けない。冷静に鉈を――振るった。弾き飛ぶモデルガンの弾丸。
 再びレナが跳躍し、膝をつく魅音を瞳に収めた。
「アッハハハハハハ! これで……ラストォォ!」
 そして笑い、叫んで鉈を振り下ろした。が、魅音はそれを転がって避け、モデルガンを放つ。しかしそれはやはり鉈によって弾かれてしまう。
 だが魅音は不適に笑って、
「獲物の前で舌なめずり。三流のやることだね!」
 言い放って見せた。
 跳んで、斬って、弾いて。転がって、狙って、撃って。

 プロの軍人にも勝る速さで攻防を繰り広げる二人に気おされながら、思わず俺は口から言葉を漏らしてしまう。
「美しい……」
 そう、あの二人は、多分──よく判らないが──下らない理由で戦っていながら、あまりにも美しかった。
 かたや誇らしく立ち上がり、かたや気高く舞っている。運命(さだめ)を受けた戦士のように。
 せんのかーくーごみにまといーみたいな感じだ。よゐこのみんなは分かったかなー?

 ともかく、それとこれとは 別だ。こんな場所にいて巻き添えを食らうわけには行かない。
 戦略的撤退、ということにしておいて俺はボン君人形を手にそそくさと戦場を立ち去った。

宝探し(奪い合い)編 その3 に続く





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最終更新:2008年07月11日 16:40
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