◇MATdmc66EY氏の作品
私、ルナマリア・ホークは憂鬱だった。
陰鬱な気持ちで胸がいっぱいになる。
俗に言うラブレターなるものを書いたのだが、自分には合わなすぎた。
先ほど読み返してみたのだが、あまりに恥ずかしい内容で顔から火が出そうであった。
次の瞬間、私はラブレターを破り捨ててしまった。
そしてそのことで私には女の子らしい可愛らしさがあまりないことを殊更に実感してしまったのである。
おかげで気分はブルーになる。
心には貪欲とした雲がかかる次第だ。
そんな陰鬱な気持ちを晴らすためにメイリンに撮って貰った愛しの彼の写真を眺める次第である。
だが、皮肉なことに彼の姿を見ると先ほどのラブレターがちらついてしまう。
私のどんよりとした気分は一向に晴れることはなかった。
「こんなところでくよくよしててあなたらしくもないわよルナマリア」
自分を奮い立たせるために声に出して言う。
私と彼は既に恋仲にある。
ザフトのスーパーエースとなり、実質この世界における最強のパイロットの一人となった愛しの彼はザフト内でも人気があった。
彼を狙っているものは多いと耳に入ってきてはいた。
私に羨望の眼差しを送るものもいれば、中には嫉妬の視線を送るものもいる。
メイリンのようにミーハーな女の子が多いということだ。
……私も人のことは言えないが。
さもあれ、彼に人気が出るのは彼女として誇らしいが、そんな視線を送られるのはたまったものじゃない。
言いたいことがあれば、直接言えば良いのに……と思う。
──直接?
何か引っかかる。
そうだ。私もラブレターとかいうまどろっこしい手段は使わずに直接言えば良いんだ。
名案だと私はポンと手を叩いた。
恋する乙女は盲目だとはよく言うけれど、私までそうなるとは思わなかった。
私は急ぎ足でシンの部屋に向かう。
胸の高鳴りは抑えられない。
私は思わず笑みを浮かべてしまっていた。
シンの部屋の前につくと私はノックをする。
反応はない。別に彼女だし入っても問題ないだろう。
幸いレイは今別任務中だ。
部屋に入ると愛しの彼はベッドの上で横になっていた。
可愛い寝顔が見れるかしらと彼に近づいていく。
いつもムスッとした表情を浮かべる彼ではあるが、今は可愛らしく寝息をたてている。
私は急にいたずらをしたいという思いにかられ、顔を近づけてみた。
普通眠りの姫を助けるのは王子であるが、私の方が年上だし問題ないだろう。
「……ステラ……」
……ふと嫌な言葉を聞く。
聞きたくないと耳を塞ぐことも出来た。
聞かなかったことにして全てを忘れることも出来た。
だが、私はどちらもしない。
私は所詮あの子の代替品だったんだ。
先ほどまで浮かれていた自分を馬鹿らしく思えた。
そうだ、所詮彼も私にとって代替品なんだ。
偽りの関係──私はアスランを──彼はステラという少女の代わり。
私一人が「代替品」という感情を越えてしまっただけだ。
──ふざけるな。
何て馬鹿な考えに至ったんだろう。
嗚呼、何て幸せものなんだ私は……。
そんな自分に反吐が出た。
彼の寝顔を再度見やる。
不思議と憎しみは湧かなかった。
その時理解した。
私は彼──シン・アスカのことを心底愛していることに。
私は寝ている彼をそのままに自室に戻った。
「そうだ……あの子のことを忘れさせてやれば良いんだ
それだけの幸せを彼に与えてやれば良いんだ」
そう思うと笑いが止まらなかった。
見ていろステラ!
私がお前の全てを消してやる! あの人の中から何一つ残さず全て!
……私は自分が泣いていることにすら気づかなかった。
最終更新:2008年07月15日 19:02